日本版司法取引を徹底解説。メリット・デメリットやアメリカとの違い

司法取引が日本でも導入間近?メリット・デメリットやアメリカとの違いまとめ

司法取引を提案する男

日本においても司法取引制度が,平成30年6月1日から導入されましたが、そもそも司法取引って何だかご存知ですか?

外国映画でよく出てくる「罪を認めれば、刑を軽くしてやるぞ」という制度です。

日本人にとっては、これまで外国の映画の中でした見たことがない司法取引ですが、平成29年になって、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、司法取引制度の新設について、答申をまとめたことを契機として日本においても、司法取引が開始となりました。

記憶に新しいのは、国内大手自動車メーカーの日産自動車、元会長カルロス・ゴーン氏の事件にて、検察と日産役員、社員の間で司法取引がなされました。

これが導入されることによって、私たちにどのような影響があるのでしょうか?

また、日本で導入された司法取引と、欧米諸国で取り入れられている司法取引はどのように異なるのでしょうか?

その司法取引についてわかりやすく解説いたします。

そもそも司法取引とはどんなもの?

実は、司法取引と一言で言っても、日本と欧米諸国では取り扱い方が異なります。

これまで欧米諸国で一般的であった司法取引は、被疑者や被告人が捜査機関に自ら情報提供するなどして、自らの量刑を軽くすることができる取引のことを言います。

しかしながら、日本で平成30年に導入された司法取引は、欧米諸国とは少し異なり、他人の刑事事件について情報提供をすることにより、自らの犯罪の量刑を軽くすることができる取引です。

日本人の感覚からは、法廷というのは、真実が追求される場であるという認識が一般的だと思います。

一方、取引というと、どちらかというとビジネスで使われる用語ですので、そこに違和感がある人もいるでしょう。

また、司法取引には大きなデメリットもあるため人権を守る立場から、日本弁護士連合会(日弁連)等は、司法取引の導入につき反発してきた経緯があります。

なぜなら、司法取引により、捜査をかく乱させる目的の虚偽の供述が行われ、それが採用されれば、事件と関係ない人々が罪に問われる事態を引き起こすことになりかねないからです。

一方、司法取引の導入は、日本の捜査当局の側が、新たな捜査手法として求めていたという経緯があります。

それでは次に、司法取引の持つメリットとデメリットについて、ご説明します。

司法取引のメリット・デメリット

メリット①捜査費用・裁判費用の節約になる

司法取引のメリットとして、まず挙げられるのは捜査費用・裁判費用の節約です。

あなたも難事件に対し、膨大な捜査人員が投入されたり、解決までに相当な時間がかかるケースがあることをテレビなどを通じてご存知かと思います。

捜査にあたるのは、警察官や検察官といった公務員ですから、この人たちが証拠集め等に大勢関わる事件というのは、つまり、人件費が多くかかっているということになります。

その人件費は、彼らは公務員なので国民の税金から支出されていることになります。

昨今の国家財政は厳しいものがありますから、やはり、司法の現場でも費用対効果という点は、考慮されなければならないでしょう。

その点、司法取引を行えば、被疑者・被告人しか知りえない事柄を効率よく集めることが可能になります。

メリット②真犯人を見分けるツールになる

司法取引は、使いようによっては、真犯人を見分けるツールになります。

なぜかというと、例として、もしも無実の者が、誤って逮捕されていた場合を考えると、この者は、通常は検察官から持ち掛けられた司法取引に応じず、裁判に進み、裁判官が真実を明らかにしてくれることを期待するでしょう。

なぜなら、司法取引に応じれは、刑の軽重はあるにしろ、必ず有罪になるのに対し、裁判官が真実を見極めてくれれば自分に無実が証明されるからです。

一方、被疑者・被告人が真犯人であるという場合、その者は、自分が犯した犯罪については知っているわけです。

反対に検察官は、知らないわけですが、検察官がその経験や有するデータから、被疑者・被告人が犯したであろう犯罪を予測することは可能です。

そしてそれが当たっていた場合は、被疑者・被告人は司法取引に応じれば、通常課される刑罰よりも軽い刑で済むので、司法取引に応じる可能性が高いでしょう。

なぜなら、裁判においてその犯罪が証明された場合、通常の刑罰が科されることになるからです。

また、検察官は、すでに経験やデータに基づいて、被疑者・被告人が犯したであろう犯罪を予測していますから、裁判過程においてもそれを立証できる可能性が高いと考えられるので、裁判官が真実を見誤る、つまり真犯人を逃してしまうことは少ないでしょう。

このように、使いようによっては、真犯人を見分けるツールとなります。

デメリット:犯罪が増加する危険性がある

デメリットとしては、犯罪が増加したり、凶悪化したりする危険性がある点が挙げられます。

「司法取引を使えば、犯罪をおかしても罪が軽くなるからいいや」

と思う人が増える可能性があるのです。

犯罪を企てる男

例えば、刑事司法に関する予算が少ない場合、まず低コストで犯罪を抑止しようと考えるならば、厳罰化の流れとなります。

予防のためのパトロール人員や捜査人員を増やすのはコストがかかりますが、条文上で刑罰を重くするのは、コストがかからないからです。

そして、そのような状況の中で、犯罪を行った場合、次は、捜査費用や裁判費用を抑えようと、司法取引が多く使われることとなります。

そうすると、厳罰も絵に描いた餅となるので、かえって犯罪の増加に拍車をかけることとなってしまいます。

司法取引が導入されているアメリカのその実態は?

アメリカにおいて司法取引は、ごく普通に行われている刑事裁判における手続きの一つとなっています。

だいたい8割程度の裁判が司法取引によって終結しているといわれています。

アメリカでの司法取引

具体的な流れは、たいてい裁判の第1回公判では、被告人が無罪を主張することが常ですので、次回の期日で、裁判官、弁護人、検察官がそろって、この裁判をどのように進行させるか、つまりどのような刑罰で裁判を終わらせるかを話し合うのです。

この場が、司法取引の場となります。

アメリカは陪審員制度を採用していますので、どのような判決が出るかは陪審員の構成次第で、大きく変わる可能性があり、予測がつきません。

その点、司法取引は、その想定内の結果におさめることができますので、当事者たちにとってメリットがあるのです。

日本での司法取引はどうなっている?

ついに2018年6月1日に日本でも司法取引が施行されました。

ただ、日本における司法取引は、アメリカのそれとは異なる面もあるようです。

対象となる者

まず、自分の犯した犯罪ではなく、他人が犯した犯罪が対象となります。

つまり共犯者の犯罪を明らかにした場合に、その見返りとして刑事処分を軽くするという取引となります。

つまり、自分にかけられた嫌疑を早期に認めても、処分は軽くなりません。

対象となる犯罪

また、全ての犯罪に適用されるというわけではなく、対象となる犯罪も限定されています。経済犯罪である汚職や詐欺、横領といった犯罪や、銃刀法違反や、覚せい剤取締法違反といった銃器・薬物犯罪がその対象となります。

さらに条件として、司法取引成立に際しては、被疑者・被告人の同意だけでは足りず、弁護人の同意が必要となってきます。

日本の司法取引が適用される事件のほとんどは、反社会的勢力が関わるなどの組織的犯罪や、企業犯罪となっています。

合意と署名

そして、被疑者・被告人と弁護人、検察官が全員署名のもと合意文書を作成することになります。

取引の具体的な選択肢は、

1,起訴の見送りや取り消し

2,適用する罰条つまり犯罪を軽いものに変更する、

3,求刑を軽いものに変更する

といったものになります。

また、関係のない他人を巻き込むことを防ぐため、虚偽の供述をした場合は、5年以下の懲役という罰則規定も盛り込まれます。

このような司法取引が行われる犯罪として想定されるのは、組織的な詐欺や暴力犯罪における事案で、いわゆる下っ端の者に対し、組織の上層部の者の関わりについて供述を求めるケースが考えられるでしょう。

刑事免責

さらに、刑事免責という制度も設けられます。

これは以前、かの有名なロッキード事件で問題となったものです。

その内容は、証人自身も、何らかの刑事訴追(検察庁から起訴されること)を受ける可能性がある事情がある場合において、法廷で証言をしてくれるなら、その証人への刑事訴追をしないという約束をすることをいいます。

司法取引導入で懸念される問題点

問題点としては、事件に関係のない人が巻き込まれる恐れがまず挙げられます。

これに対しては、罰則規定の他に、やり取りの可視化が必要という声もあります。

また、日本での制度では、アメリカと違って、取引の過程で裁判官は関与しないので、取引が成立しても裁判官が、検察官の求刑を採用しなければ、被疑者・被告人にとって何のメリットも感じられないこととなり、制度として機能しなくなる恐れがあります。

つまり、この制度のメリットを生かすか否かは、これからの制度設計次第だといえるでしょう。

今回は、近い将来、日本で導入される可能性の高い「司法取引」について考察してみました。

最近のニュースでは、アメリカのサンディエゴで日本人妻が殺害された事件でも司法取引によりアメリカ人の元夫が罪を認めて逮捕に至ったというものがあります。

グローバル化が進んだ現在では、日本人にとっても司法取引は他人ごとではありませんね。

今後、日本で導入される司法取引でも弁護人を立てることが当たり前になると予想されますので、人生のあらゆるリスクへの備えとして弁護士保険への加入を推奨します。

【※※2016年5月25日追記※※】
2016年5月24日に衆院本会議で刑事司法改革関連法(可視化法)が賛成多数で可決、成立しました。

「可視化法」とは容疑者の取り調べ録音・録画や「司法取引」の導入などを盛り込んだ犯罪捜査に関する法律で、2018年までに施行される予定です。これにより刑事裁判や捜査のあり方が大きく変わることになりそうです。

「司法取引」は、本記事にもあります通り、主に経済事件で、他人の犯罪解明に協力して不起訴などの見返りを得ることを、検察官と弁護人、容疑者の三者で合意できる制度です。これにより通信傍受の対象を振り込め詐欺などに拡大することなり、また自白以外の証拠を集めやすくすることが期待されています。

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