忌引きで休ませてくれない!労働基準法ではどんな扱いなの?

 

葬式による忌引をとらせてくれない※この記事は『ワークルール検定問題集』などの著者であり、労働法の研究者である平賀律男氏による寄稿文です。

お盆休み、今日から出勤という方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

長めの連休の後だと、すぐには仕事モードに切り替えられない、なんていうこともあります。

長めの連休といえば、やはり忌引きですよね(ちょっと強引だったでしょうか)。

休みとはいっても、葬儀の何から何までを手配しなければいけなかったり、遠方の親類の葬儀に泊まりがけで参列したりと、逆に気の休まるヒマもないのが本当のところでもあります。

今日は、会社における忌引きの実態に迫ってみましょう。

労基法には規定がない

いつもなら、「まずは労基法の規定を見てみましょう」と入るところですが、忌引きについては労基法に何の規定もされていません。

休暇として労基法が定めているのは、1週1休の原則と年次有給休暇、産前産後休業、それに生理休暇くらいです。

しかし、実際には、親族の葬儀による忌引き制度がある会社は全体の9割にのぼっており(東京都産業労働局の調査による)、忌引きがとれることはもはや日本の常識になっているといえます。それらの企業はどうやって忌引きの制度を導入しているのでしょうか。

労働条件といえばやっぱり就業規則

会社が労働条件を定めるのにもっとも一般的に利用するのは「就業規則」です。

就業規則は、労基法やその他の法律に抵触しない限りは、基本的には会社が自由に内容を定めることができます。毎度お決まりの展開ですね。

会社は、その就業規則のなかで、年次有給休暇とは別に、労働者に対する福利厚生の一環として慶弔休暇や病気休暇などの制度を設けている、というのがよくあるパターンです。

このように、会社が特別に与えている休みを「特別休暇」ともいいます。よく聞く「リフレッシュ休暇」なんかの仲間だと思ってください。

厚労省のモデル就業規則でも、以下のとおり、慶弔休暇や病気休暇を設ける際の例が示されています。

(慶弔休暇)
第26条 労働者が申請した場合は、次のとおり慶弔休暇を与える。
① 本人が結婚したとき ○日
② 妻が出産したとき  ○日
③ 配偶者、子又は父母が死亡したとき ○日
④ 兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母又は兄弟姉妹が死亡したとき ○日

(病気休暇)
第27条 労働者が私的な負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合に、病気休暇を○日与える。

※関連ページ→「就業規則の周知義務。見たことがない規則に効力はある?

忌引きの規定がある=有給というわけではない

モデル就業規則の第26条のように、会社が就業規則に忌引きの規定を設けた場合には、会社は労働者からの忌引きの申し出を拒むことはできません。

しかし、忌引きの規定があるからといって、それが必ずしも有給で休めることとはイコールではないことに注意が必要です。

モデル就業規則の第26条には有給か無給かが記載されていませんが、例えば第26条のあとに「ただし、慶弔休暇は有給とする。」と定められていれば、会社は忌引きの労働者に賃金を支払わなければなりません。

逆に、「無給とする」とあれば、労働者は給料なしでただ休む権利だけがあることになります。

そして、モデル就業規則のように、どちらとも定めのない場合には、その会社の慣習によることになるでしょう。

忌引きの規定がないときは?

会社が忌引きの制度を定めていないからといって、会社が「忌引きを認めない!」と突っぱねることはできません。

労働者は年次有給休暇を使えば会社を休むことはできますし、会社が年休の利用目的によってその申請を拒否することは原則できないからです。

では、すでに年次有給休暇を使い切っているとか、雇入れ後すぐでまだ付与されていないとかいう場合はどうでしょうか。

労働契約によって、労働者には会社に対して労務を提供する義務がありますが、「欠勤権」みたいなものが認められているわけではないので、理由はどうあれ勝手に休むと、その日の賃金が支払われませんし、それどころか査定や契約更新などに影響する可能性もあります。

ですから、かなりシャクではありますが、会社にしっかりと事情を説明して理解を得たうえで、無給での欠勤をするのがベストな選択になるのでしょう。

それでも会社が休ませてくれない

それでも会社が欠勤にウンと言わなければ……。私見ですが、忌引きのような正当な理由があるのに、会社が欠勤を頑なに拒むことは、社会通念に照らして適切な行為だとは到底いえません。

いくら会社には労働者からの労務提供を受ける権利があるからといっても、労働者は会社のあらゆる命令に従わなければならないわけではないからです。

会社が「絶対に休ませない」と言って出勤を強要するのは労働者の人格権に一切の配慮がありませんので、そのような指揮命令は権利の濫用として不法行為に該当するものと私は考えます。

「この会社もブラック企業かもしれない」と考えるきっかけは、日常のちょっとしたところにも転がっています。

おかしいなと思ったことがあっても、会社という組織の中ではなかなか口には出しにくいものですが、そういうときに誰かに相談できる環境を整えておくことが、自分を守るためにも大切なことだといえます。

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平賀 律男(パラリーガル)

平賀 律男(パラリーガル)

1982年,北海道生まれの33歳。北海道大学大学院法学研究科にて労働法を専攻し,修士号を取得。2008年からは,パラリーガル(法律事務秘書)として法律事務所に勤務し,企業法務・破産管財などの法律実務に携わるかたわら,在野の労働法研究者としての活動も続けている(2005年より日本労働法学会会員)。著作(共著)に『ワークルール検定問題集』『おしえて弁護士さん 職場のギモン48』(以上,旬報社)『18歳から考えるワークルール』(法律文化社)など。好きな食べ物はラーメン。
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