国選弁護人とは?弁護士費用の負担と選任方法は?

 

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この記事の執筆者

川島 浩(弁護士)

国選弁護人とは?弁護士費用の負担と選任方法は?

一般市民として暮らしている日常において、弁護士との付き合いがある方はそう多くないでしょうし、ましてや、依頼人として弁護士と関わることは一生に一度あるかないかという方が大半だと思います。

これはつまり、

「日本では医者には気軽に相談するのに、弁護士に気軽に相談をする文化がない」

「弁護士が身近な存在ではない」

ということであり、私はここが一番の問題だと思っています。

損害賠償・お金の貸し借りといったいつ発生してもおかしくない一般人同士の争いごとを扱う民事事件ですら、「自分には無関係」と割り切る人が多いので、逮捕・起訴というような一般人対国家権力という構造になる刑事事件は、さらになじみのない世界かと思います。

特に刑事事件の場合は、民事事件にはない国選弁護人制度というものがあり、さらに複雑に感じる方も多いと思います。

そこで今回は、国選弁護人制度について、気になる費用や選任方法などを整理してご説明いたします。

国選弁護人制度と私選弁護人制度の違い

弁護士の関わり方を民事事件と刑事事件で比較した時の大きな違いは、刑事事件の場合は、国が弁護人をつけてくれる場合があるということです。

これを国選弁護人制度といいます。

一方、依頼人が自分で弁護人を選んでつけることを私選弁護といいます。

民事事件の場合は、自分の弁護を弁護士に頼みたいときは、自分で探してくるしか方法がありません。

国選弁護人制度ができた背景

ではなぜ、刑事事件においては、国選弁護人制度が設けられているかというと、その理由は歴史を振り返ると見えてきます。

実は、戦前の日本では刑事事件の場面において、一般市民の人権がないがしろにされた背景があります。

例えば、国家権力側にとって気に入らないという国民がいれば、いろいろな理由を付けて、その人を犯罪者に仕立て上げて自由を奪うことが可能なのです。国家権力というものはそれだけ大きな力を持っています。

一方で、そのような嫌疑をかけられても、その人に、優秀な弁護人を雇うだけの資力があれば、自分に降りかかった火の粉を振り払うことはできるでしょう。

逆にそこまでの資力がない者は、冤罪に苦しめられることになります。

このような人権侵害が、戦前の日本では存在したということに対する反省をもとに、日本国憲法では刑事手続きに関する詳細な条文が定められました。

憲法には刑事手続きに関する条文が10条もあり、これは他国の憲法と比較しても、類を見ないほどの分量です。

そしてその中の憲法37条に国選弁護人の制度は定められています。

【憲法第37条】
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2,刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与えられ、又、公費で自己のために強制手続により証人を求める権利を有する。

3,刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

憲法にこう定められたことにより戦後からは、刑事事件においては、自力で弁護人を付けるだけの資力が乏しい者に対しては国が弁護人を付ける制度が整備されていきました。

総合法律支援法

憲法で国選弁護人について定められていてもなお、一般人にとって、国選であれ私選であれ、法律の専門家は遠い存在でした。

そのため、刑事・民事事件問わず、法治国家である日本に住む国民が、トラブルに巻き込まれたときに、法律知識の助けを容易に借りることができる支援体制を作るために、総合法律支援法が2004年に制定されました。

この法律では、第5条にて迅速かつ確実な国選弁護人の選任が行われる態勢の確保がうたわれるとともに、民事の場面でも、民事法律扶助事業の整備発展がうたわれています。

そしてこれを受けて、法テラスという組織が設立され、そこで国選弁護人の事業が運営されることとなりました。

国選弁護人制度の移り変わり

国選弁護人制度

国選弁護人制度は、順次改良が加えられていきながら今日の形になっています。

近年での大きな転換点は、2006年に「被疑者」段階での国選弁護人制度が導入されたことです。

「被疑者」という言葉になじみが無い方のために、その定義について解説します。

ある事件が起き、犯人と思われる人が逮捕勾留されたとします。

まずその人の刑が確定するまでは、無罪の推定が働くというのが大前提にあります。

犯人と思われる者を指す用語としては、一般的には「容疑者」という言葉が使われます。

しかし実は、これは専門用語ではなく専門的には、逮捕・勾留はされていても起訴はされていない段階の人を「被疑者」といいます。

一方、起訴された人のことは、「被告人」と呼び両者を分けています。

2006年に制度が整えられるまで、被疑者となった人は、当番弁護士制度により接見をしてくれる弁護士しか味方がいませんでした。

なお当番弁護士制度による接見は二回目からは費用がかかります。

ですので、弁護人をつける力がない者は、過酷といわれる取り調べを味方がいない中で、一人で耐えなければならないこととなりました。

このような実情にかんがみ、被疑者段階で弁護人をつけなければ、憲法が目指す人権保障ができないとの反省があり、2006年に被疑者段階での国選弁護人制度が導入されました。

それ以降、被疑者段階で国選弁護人がつけられる範囲が順次拡大され、現在では、大半の刑事事件に対し、勾留段階で国選弁護人がつくこととなりました。

但し、痴漢や暴行罪など国選弁護人がつかないケースもあります。

国選弁護人はどこに所属している?

前述のとおり、国選弁護人に関する事業は、国からの委託に基づいて日本司法支援センター(以下、「法テラス」といいます。)が扱っています。

法テラスは、国選弁護人活動を行おうとする弁護士と契約を交わして、国選弁護人の名簿を作成し、それを裁判所に通知したり、国選弁護人の報酬や費用の支払い業務を行ったりします。

国選弁護人の選ばれ方

まずは、刑事手続きの流れについてみておきましょう。

・捜査段階
警察官が、被疑者を発見し、証拠を集めたりすることによって、事件を明らかにすることを捜査といいます。
逮捕してから、48時間以内には、検察官に対して被疑者の身柄を検察に引き渡す手続きをしなければなりません。

このことを送致(そうち)といいます。

次に、送致を受けた検察官が、その後も引き続き被疑者の身柄を留めて捜査を行う必要があると認めたときは、今度は裁判官に対して、勾留請求を行います。

これが認められると、最長で20日間勾留されます。
勾留とは、被疑者が逃亡や証拠隠滅をする恐れがあるときに、その身柄を拘束することをいいます。

・起訴・不起訴を決める段階
検察官は、勾留期間中に、被疑者を裁判にかけるかどうかを判断します。
裁判にかけることを起訴といい、起訴された人を被告人といいます。

一方、裁判にかけないと判断することを不起訴といいます。

・国選弁護人の選ばれ方
国選弁護人は、前述通り法テラスと契約している弁護士の中から選ばれます。

勾留中の被疑者のもとへ、選ばれた国選弁護人が接見にやってくるところから弁護人の活動が始まります。

国選弁護人の費用はいくら?支払い方法は?

国選弁護人の費用

国選弁護人の費用というのは、国が弁護人に対して支払うことにすることになっています。

なぜならこれは、資力がない人のための制度だからです。
具体的には、資力が50万円に満たない人をいいます。

但し、被疑者・被告人に資力があれば、負担を求められることとなります。
執行猶予の場合は、負担を求められることが多いでしょう。

これは裁判所が判断します。

それであっても、10数万円程度といわれていますので、一般的に40~60万円といわれる私選弁護の報酬の相場よりはずっと安いと言えるでしょう。

依頼者が捕まっている場合は誰が払う?

被疑者・被告人である依頼者が勾留されている場合は、どうやって弁護士に依頼すればいいのか、報酬はどうやって払えばいいのか心配な方もいらっしゃると思いますが、国選弁護人はそういったときのための制度です。

被疑者・被告人に対し、訴訟費用と呼ばれる国選弁護人等の費用を負担させるか否かは、裁判所が判断します。

その者が、訴訟費用を負担できない場合は、裁判所がその者に対し判決で訴訟費用の負担をさせることを命じたときから、20日以内に免除の申し立てをします。このことは、刑事訴訟法に定められています。

なお、私選弁護人の場合は、捕まっている人と普段から親しい弁護士がいればその弁護士に依頼することになるでしょうし、いなければ、実際には身内の方等が探して依頼することとなります。

報酬金額や支払い方法なども弁護士との依頼契約の内容次第になります。

お金がかかりそうなら弁護人なんていらない!は通じる?

弁護士に頼むとなれば、費用が心配になり、弁護人なしではダメなのかと思われる方もいらっしゃると思います。
こういった場合については、刑事訴訟法に定められています。

【刑事訴訟法第289条】
1,死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
2,弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなったとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
3,弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

つまり、死刑や無期というようなある一定の刑罰が予定されている犯罪の場合は、必ず弁護人をつけなければなりません。
弁護人なしでは、裁判が始められないからです。

国選弁護人は民事事件でも頼める?

残念ながら国選弁護人制度は、民事事件では利用できません。

但し、法テラスでは民事事件を対象とした民事法律扶助制度というものが準備されています。

これは、資力に乏しい人でも法律サービスが受けられるようにと準備された制度です。

具体的には、相場で、30分5000円ほどかかるという法律相談が無料で受けられます。

また、弁護士費用や司法書士費用の立て替え払いの制度もあり、月5000円ないしは1000万円程度の返済で借りることが可能です。

国選弁護人はやる気がない、優秀じゃないと言われているが・・・

国選弁護人については、一部利用者からのクレームがあるという側面もあります。

また弁護士の中には国選弁護人にならない、法テラス経由の仕事を請けないという考えの人もいます。

これは国選弁護人の業務が大変な割に報酬が一般の弁護に比べて安いからという見方があります。

しかしながら、法テラスには「困った人を助けたい」「刑事弁護をやりたい」という正義感から弁護士を志した方や優秀な方も多く所属していることも事実です。

それでも合わない場合は、解任して別の弁護士に交代できる?

依頼人と弁護人の関係も人と人同士の関係であり、事前に依頼人側が選べないシステムとなっている以上、依頼人側からしたらどうしても合わないと感じることも出てくると思います。

そういった場合の手続きですが、勝手に依頼人の方から解任するということはできず、裁判所に対して、国選弁護人の解任と新しい国選弁護人の選任をお願いするということになります。

なお解任が認められる場合については刑事訴訟法に規定があります。

【刑事訴訟法第38条の3】
1,裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一,第30条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなったとき。
二,被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
三,心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
四,弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五,弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。

まとめ

今回は、一般の方にはあまりなじみのない国選弁護人について解説しました。

尚、2011年にテレビ朝日で田村正和さん、真矢みきさん主演の「告発~国選弁護人」というドラマが放映されていましたので、興味のある方は是非見てみて下さい。

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川島 浩(弁護士)

川島 浩(弁護士)

2010年12月、弁護士登録後、都内の法律事務所勤務を経て、2014年2月独立。大和法律事務所開業。「クライアントの皆様がどんなことでも相談できるような存在であり続ける」弁護士を目指し、日々の業務に取り組む。趣味はスポーツ観戦、歴史、釣り、お酒。第一東京弁護士会 犯罪被害者に関する委員会委員。第一東京弁護士会 若手会員委員会委員。著書に「ビクティム・サポート(VS)マニュアル -犯罪被害者支援の手引き-」(共著)がある。電話・メールによる無料法律相談を受け付けております。事務所ホームページの問い合わせ欄よりお気軽にお問い合わせください。
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