オワハラの法律的な対策はあるのか

 

オワハラ 対策
※この記事は『ワークルール検定問題集』などの著者であり、労働法の研究者である平賀律男氏による寄稿文です。

鬼怒川の堤防決壊をはじめとして、全国的に大雨被害のニュースが繰り返されています。

私も川のすぐそばに住んでいるのですが、昨年札幌が豪雨に見舞われたときには、あと数十センチの高さまで川の水面が迫ってきたため、深夜になすすべもなく避難しました。

幸い、川の水が堤防を越えることなく豪雨はおさまってくれたものの、自然に対する人間の無力さを痛感しました。

オワハラは仕方ない?

さて、内定やオワハラについて記事を書いてきましたが、今日はその3回目です。

オワハラを問題視する人がいる一方で、ハラスメントだなんて甘えんじゃねえよ、と考える人もいるようです。

社会人になればこの程度のことは日常茶飯事だとか、別に「じっくり考えたい、他社も受けたい」と正直に言えば済むことじゃないかとか、現役社会人からの厳しい意見もチラホラ見られます。

会社側は、時間とお金を掛けて選考手続を進めているわけですので、せっかく選んだ数名の内定者に辞退されたくないという気持ちはわかります。

インターネットの普及により、採用枠に何十倍、何百倍もの学生が集まる時代ですから、どれほどの辞退者が出るかは事前に想定しにくいものです。

また、オワハラなんて甘えだと考えている社会人もいるでしょうから、その意味ではオワハラを根絶するのは困難かもしれません。

今年度の就活戦線におけるオワハラの実態は?

「オワハラ」という言葉が定着し、いわば社会問題化したこともあって、文部科学省も調査に乗りだしました(平成27年度就職・採用活動時期の変更に関する調査)。

全国の大学・短大82校(就活生3934人)を対象として行ったこの調査によれば、学生側から見てハラスメントと感じられるような行為を、5.9%が「受けたことがある」と回答したそうです。

 この調査では、自由回答の形式で具体的なオワハラの事例が寄せられています。オワハラの実態とはどのような感じなのか、見てみましょう。

・第一志望でないのであれば、別の学生を次の選考に進ませると言われた(別の企業の選考は待てないと言われた)。
・内々定と引き替えに他社への就職活動をやめるよう強要された。
・テストの関係で内定祝賀会への参加が難しいと答えたところ、参加しないと最悪内定取消しもありうると言われた。
・何度も呼び出し(泊まりを含む)をされ、他社の選考を受けられなくなった。
・座談会が多数開催される。
・内定後、7月31日までに入社承諾書を書くかどうか迫られた。
・内定承諾するなら就活をやめるように言われた。
・研修が6月から週1回あった。
・内定承諾は先着順、及び承諾する場合は必ずリクナビ退会。
・内々定を出すから就職活動を止めるように言われた。その後、強要するようなことはなかったが、圧迫されている印象を受けた。
・8月上旬にバーベキューや清掃活動などへの参加を呼びかけられている。

また、就活生から大学・短大に寄せられた相談の中で、強烈なものを紹介します。

・面接を受けているその場で、内々定を出す代わりに、他企業へ断りの電話をかけるよう強要された。
・内々定承諾書や指導教員推薦状の提出を8月より前を期限として求められる(提出するまでしつこく連絡が来る)。
・内定辞退の希望を示唆したところ、長時間(長期間)に渡って説得され精神的に参ってしまった。

オワハラが違法となる場合は?

オワハラの対策と法律

オワハラとはいっても、もともとは会社が内定辞退をされたくないという動機によるものであるため、上記の体験談をみても、具体的な法律の規定には抵触しない場合がほとんどだといえます。

会社によるオワハラが違法となる可能性があるとすれば、以下のようなケースでしょう。

刑法上の「脅迫罪」

害を加える旨を告知して、就活生の意思決定の自由を奪った場合がそれに該当します。

まさか「殺してやる」とか「ブン殴る」とかいう担当者はいないでしょうが、そのような犯罪行為でなくても、「損害賠償で訴えてやる」とか「内定辞退したと他の会社に言いふらしてやる」などと言われた場合はギリギリ該当するといえそうです。

いずれにせよ、脅迫罪が成立するのはかなりレアケースだと思われます。

刑法上の「強要罪」

害を加える旨を告知して、する必要のないことをさせる場合です。

モンスタークレーマーが店員に土下座をさせてツイッターで拡散した事件がありましたが、これが典型的な例であり、就活生に土下座をさせるとか謝罪文を書かせるとかいうケースがそれに該当します。

「脅迫罪」よりも、オワハラとの親和性が高そうです。

民事上の損害賠償責任(不法行為)

刑法上の罪が成立しないからといって、民法上の損害賠償責任を問われなくなるわけではありません。
会社の苛烈なオワハラによって就活生が精神的な苦痛を受けた場合には、それ自体が損害賠償の対象になりえます。

上のオワハラ事例のなかで、これらの法律に違反しそうなものはいくつあるでしょうか。

いずれも程度の問題で、挙げられた事例の字面だけでは判断が難しいといえます。既存の法律では、よほど悪質でない限り対応しかねる、といったところでしょう。

会社の良心に委ねるしかない

オワハラは、かつて問題となった圧迫面接と同じで、どちらも得をしないものです。

就活生が嫌な思いをするのはもちろんですが、会社としても、ネットで悪評が「拡散」されイメージが低下するおそれがあります。

実際に悪質なオワハラを行う会社はほんの一部かもしれませんが、オワハラがこれだけ社会問題化すると、就活生側も過敏に反応してしまい、会社が謂われのない批判を受けることにもつながりかねません。

会社としては、批判を受けることのないよう、よりいっそうの配慮が求められるといえます。なんとも難しい時代です。

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平賀 律男(パラリーガル)

平賀 律男(パラリーガル)

1982年,北海道生まれの33歳。北海道大学大学院法学研究科にて労働法を専攻し,修士号を取得。2008年からは,パラリーガル(法律事務秘書)として法律事務所に勤務し,企業法務・破産管財などの法律実務に携わるかたわら,在野の労働法研究者としての活動も続けている(2005年より日本労働法学会会員)。著作(共著)に『ワークルール検定問題集』『おしえて弁護士さん 職場のギモン48』(以上,旬報社)『18歳から考えるワークルール』(法律文化社)など。好きな食べ物はラーメン。
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