弁護士費用や裁判費用を相手に請求できる(負担させる)ケースとは?

 

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この記事の執筆者

福谷 陽子(元弁護士)

弁護士費用や裁判費用を相手に請求できるケースとは?
普通に日常生活を送っていても、法的なトラブルに巻き込まれることは多いです。

たとえば貸したお金を返してもらえない場合、賃貸住宅を人に貸している場合に賃借人が家賃を払ってくれない場合、離婚トラブル、交通事故など、さまざまな問題が発生します。

このような法的なトラブルが発生した場合には、示談交渉や裁判などを弁護士に依頼することが多いです。

そうすると、当然弁護士費用や裁判費用などの費用がかかりますが、かかった費用を事件の相手方に請求することは出来ないのでしょうか。

出来るとすればどのような場合にどのくらい請求出来るのかも知っておきたいところです。

今回は、事件の相手方に弁護士費用や裁判費用を請求出来るのかについて、解説します。

弁護士費用はどのくらいかかる?

日常生活で法的なトラブルに巻き込まれる機会は意外と多いものです。

不動産の境界問題で隣人と争いになることもありますし、貸したお金を返してもらえない場合もあります。エステなどを受けて事故があって怪我をすることもありますし、離婚問題もよくあります。

交通事故に遭っても損害賠償請求をしなければなりませんし、住宅を人に貸している場合に賃料を支払ってくれなくなったらその請求もしなければなりません。

このような法的なトラブルに巻き込まれた場合、自分で対処することが困難な場合があります。すると、弁護士に問題解決の手続きを依頼します。

弁護士に依頼すると、当然弁護士費用がかかります。

その場合の弁護士費用はどのくらいかかるのでしょうか。

弁護士の費用には着手金と報酬金がありますので、以下では分けて説明します。

着手金

弁護士に事件の解決を依頼する場合には、着手金という費用がかかります。

着手金とは、弁護士に手続きを依頼した場合にかかる依頼料のような費用です。当初の依頼の際に一括払いする必要があります。

弁護士の着手金の金額は、事件の内容によって異なります。

ただ、たとえば交通事故の場合には20万円程度であることが多く、離婚調停では20万円、離婚訴訟の場合には30万円程度かかることが多いです。

※関連ページ→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由

弁護士の着手金は、数十万円レベルになります。

報酬金

弁護士の費用としては、報酬金という費用もあります。報酬金とは、事件が解決した場合にその解決の内容に応じて発生する弁護士費用のことです。

報酬金の金額は、その事件の解決内容によって異なります。

だいたい、回収出来た金額の○%という割合で定められることが多く、通常10%~15%くらいになります。

たとえば相手方に150万円請求をして、100万円を回収できた場合、報酬金の割合が10%なら、100万円の10%である10万円が報酬金になります。

裁判で弁護士費用を請求出来る?

裁判で弁護士費用を請求出来る?弁護士に事件解決を依頼した場合には、着手金と報酬金がかかるので、これらを足していくとかなり大きな金額になります。

この弁護士費用を相手に請求することは出来ないのでしょうか。

自分が裁判に負けた場合に請求出来ないことは当然ですが、自分が裁判に勝った場合には、相手方に支払を求めることが出来るのではないかとも思えます。

実際にどうなっているのか、以下で説明します。

基本的には弁護士費用は請求出来ない

裁判をして勝訴したら、相手方にこちらの弁護士費用を請求出来るのでしょうか。

このように、裁判で負けた方の当事者が相手方の弁護士費用まで負担しなければならない制度のことを、「敗訴者負担制度」と言います。

日本では、この敗訴者負担制度は採用されていません。

よって、裁判を起こして勝訴しても、相手方に弁護士費用を請求することは基本的には認められません。

以下で、具体例を確認してみましょう。

たとえば裁判を起こして100万円回収出来たとします。

この場合、弁護士に依頼したため、弁護士の着手金が10万円、報酬金が10%として10万円かかるとします。合計20万円が弁護士費用になります。

すると、相手方からは100万円取り立てることが出来ても、弁護士に合計20万円の費用を支払わなければならないので、自分の手元に残るのは80万円になります。

このように、裁判を起こして勝訴しても、基本的に自分の弁護士費用は自分の負担になるので、相手方から回収したお金が全額手元に入ってくるわけではないことに注意が必要です。

不法行為の場合には弁護士費用の請求が可能

弁護士に依頼して裁判を起こした場合、弁護士費用は基本的に相手方に請求することは出来ません。

しかし、一部の請求においては、相手方に弁護士費用の一部を請求することが出来ます。

相手方に弁護士費用の請求が出来る場合は、「不法行為」にもとづく損害賠償請求をする場合です。

不法行為にもとづく損害賠償請求とは、違法行為により損害を被らされた場合に、相手方に賠償を求める請求のことです。

たとえば交通事故の場合、犯罪被害に遭った場合、エステの施術に失敗して怪我をした場合、不貞(不倫)されて相手方に慰謝料請求する場合などが不法行為にもとづく損害賠償請求になります。

これらの不法行為にもとづく損害賠償請求を裁判で行う場合には、弁護士費用の一部を相手方に負担させることが可能です。

反対に、債務不履行(支払う約束をしたのに相手が支払わない)による請求の場合は不法行為ではないので、対象外になります。

相手に負担させることができる弁護士費用は一部のみ

不法行為にもとづく損害賠償請求をする場合には、判決で相手方に弁護士費用を負担させることが出来ますが、この場合、弁護士費用全額の請求が出来るわけではありません。

具体的には、判決で認められた賠償金額の10%が、弁護士費用として認められます。

たとえば、交通事故で300万円の損害が認定された場合には、その10%の金額である30万円がこれと関連する弁護士費用として認められるのです。

結果として、判決では相手方に対して330万円の支払い命令が出ます。

ただ、この費用は実際にかかった弁護士費用とは異なります。

たとえば、実際に弁護士に依頼した場合には、着手金が20万円、報酬金が300万円×10%=30万円、合計50万円程度の費用がかかるかもしれません。

ところが、判決で認められる弁護士費用の金額は、あくまで「認容金額の10%」になります。

もし、判決で認められた損害賠償金の認容額が5万円なら、弁護士費用として認められるのは5,000円だけということになります。実際に弁護士費用が30万円かかっていても判決で認められるのは5,000円です。

このように、判決で弁護士費用の請求が認められる場合であっても、実際にかかった弁護士費用全額が認められるわけではないことに注意が必要です。

和解になった場合は弁護士費用の請求が出来ない

不法行為にもとづく損害賠償請求の場合には、上記のとおり、相手方に対して弁護士費用の一部の請求が出来ることがあります。

しかし、これは、裁判をして判決を出してもらった場合に限られます。

同じ不法行為にもとづく損害賠償請求であっても、示談交渉の段階や調停の段階では、弁護士費用を上乗せしてもらえることはほとんどありません。

さらに、裁判をしたとしても、必ずしも弁護士費用を支払ってもらえるとは限りません。

それは、裁判上で和解をすることがあるからです。

裁判では、判決をしてもらうことなく、当事者同士で話し合って和解をして裁判を終わらせることが可能です。

この場合、和解内容として、相手方から賠償金額の全部や一部を支払ってもらう事になるのが普通です。

ただ、和解で解決する場合には、通常は弁護士費用の上乗せはしません。

よって、裁判をしてお金を回収出来る場合であっても、必ずしも弁護士費用を請求出来るわけではないのです。

もちろん、こちら側が敗訴した場合には、相手方に弁護士費用を請求することは出来ません。

このように、相手方に弁護士費用の請求が出来る場合というのは、日本では極めて限られたケースだということになります。

示談交渉の際に上乗せして請求出来る?


事件の相手方に弁護士費用の請求が出来る場合は、極めて限られた場合になってしまいます。

そうだとすれば、示談交渉の際に、当初から弁護士費用を上乗せして請求すれば良いのではないかと考える人もいるでしょう。

たとえば、不貞(不倫)相手への慰謝料請求の事案を考えてみましょう。

もともと相手に支払ってほしい金額は200万円だとします。

しかし、弁護士に支払う費用として、着手金10万円、報酬金20万円の、合計30万円程度を見込んでいるとします。

この場合に、当初から相手に230万円の請求をすることが出来ないかという問題です。

たしかに、そのような考え方は可能です。

ただ、実際にはそのような請求の仕方はあまりしません。

このことは、示談交渉の方法とも関連します。

最初は多めに請求する

示談交渉で損害賠償請求をする場合、通常は相手に支払ってほしい金額より多めの金額を請求します。

当初に相手に金額提示をしても、その金額をそのまま相手が受諾してすんなり支払うことはほとんどないからです。

たとえば、当初から相手方に200万円を請求したら、相手方は100万円に減額してほしいと言ってくるかもしれません。

そうして両者で交渉して条件を詰めていって、結局は130万円程度などの金額に支払金額が落ち着いてしまうのです。

よって、200万円を支払ってほしい場合には、当初は200万円の請求ではなく300万円や500万円の請求をします。

そうすると相手方は200万円にしてほしいと言うかもしれません。

それであれば示談すれば良いですし、150万円にしてほしいと言ってくれば、さらに交渉を重ねて最終的に200万円程度に落ち着ければ良いのです。

このように、示談請求の場合には、当初は多めに請求額を立てます。

そこで、ここにかかる弁護士費用も折り込んで請求すれば良いのです。

たとえば最終的に損害賠償金200万円+弁護士費用30万円を支払ってほしい場合には、当初は300万円分や500万円分の請求を立てて、最終的な取り立て額として230万円以上を目指せば、弁護士費用分の回収が出来ます。

当初から「200万円と弁護士費用30万円を支払ってほしい」と言っても、通常はその支払いに応じてくれることはほとんどないので、覚えておきましょう。

「訴訟費用は被告(原告)の負担とする。」の意味とは

生理休暇の判例
裁判をするときには、弁護士費用以外にも費用がかかります。

具体的には「訴訟費用」があります。

裁判所で判決が出るときには「訴訟費用」の支払についても決定が出ます。

訴訟費用とは一体何なのでしょうか。以下で具体的に見てみましょう。

訴訟費用は印紙代

訴訟費用については、一般的に弁護士費用であると誤解されていることがあります。

判決では、敗訴者に訴訟費用を負担させることが多いので、負けた側が弁護士費用を負担しなければならないのだと誤解しているケースが多いのです。

たしかに、判決で、

「訴訟費用は被告(原告)の負担とする。」

と言い渡されることがあります。

しかし、訴訟費用は弁護士費用ではありません。

訴訟費用とは、裁判を起こす場合にかかる印紙代のことです。

裁判を起こす際には、裁判所の手数料として印紙代がかかります。

印紙代の金額は、裁判での請求内容によって異なります。

請求金額が高くなればなるほど印紙代の金額も上がります。

たとえば300万円の請求をする場合の印紙代は20,000円、500万円の請求をする場合の印紙代は30,000円になります。

訴訟費用の負担は判決で決まる

裁判をして判決が出ると、訴訟費用についての負担割合が決定されます。

通常は敗訴者の負担割合が多くなります。

敗訴者が全額負担することもありますし、原告と被告が3:7や1:3などの割合で負担することもあります。

たとえば当初に3万円の印紙代がかかっているケースで、判決で訴訟費用は全額被告(訴えられた人)負担となった場合には、請求者は相手方に対して、裁判後3万円の請求をすることが出来ることになります。

もし訴訟費用の負担割合が原告と被告で1:2であれば、請求者は相手方に対し、3万円×3分の2=2万円の印紙代分の支払い請求をすることが出来ることになります。

ただ、このように印紙代の請求が出来るのも、裁判をして判決がでた場合に限られます。

裁判をしても和解で解決した場合などには、印紙代の請求は出来ないので、請求者である原告が全額負担することになります。

まとめ

今回は、裁判にかかる弁護士費用や裁判費用(訴訟費用)を相手方に請求出来るのかについて解説しました。

弁護士費用には着手金と報酬金があり、高額になることが多いです。

裁判をしても、相手方に弁護士費用を請求することは基本的には出来ません。

ただ、交通事故や不貞の慰謝料請求などの不法行為にもとづく損害賠償請求の場合には、認容された賠償金額の10%が弁護士費用として認められます。

そして、この金額は、実際にかかった弁護士費用の金額とは異なります。

示談や調停、和解での解決の場合には弁護士費用の請求は出来ません。

示談交渉の際に、弁護士費用を請求したい場合には、弁護士費用の金額も折り込んで多めに賠償請求をする方法を執ることが出来ます。

また、裁判費用としては訴訟費用もあります。訴訟費用は主に印紙代で、判決が出た場合には敗訴者が負担することが多いです。

判決で訴訟費用の負担割合についての決定があった場合には、相手方に対してその負担割合に応じた金額の支払請求をすることが出来ます。

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福谷 陽子(元弁護士)

福谷 陽子(元弁護士)

京都大学法学部卒。在学中に司法試験に合格し、2004年に弁護士登録。その後、弁護士として勤務し、2007年、陽花法律事務所を設立。女性の視点から丁寧で柔軟なきめ細かい対応を得意とし、離婚トラブル・交通事故・遺産相続・借金問題など様々な案件を経験。2013年、体調の関係で事務所を一旦閉鎖。現在は10年間の弁護士の経験を活かしライターとして活動。猫が大好きで、猫に関する記事の執筆も行っている。
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