ゴルフ中の不意の事故!損害賠償はいくら認められるのか?

ゴルフ中の不意の事故!損害賠償はいくら認められるのか?

コロナ禍の昨今ですが、ゴルフを楽しむにはいい季節になりましたね。

でも、実は、ゴルフは危険と隣り合わせのスポーツなんです。

楽しいレジャーだったはずが、一歩間違えば多大な借金を背負うはめに……なんてこともあるかもしれません。

今回は、実際にあった事例を紹介します。

打った球がとなりのホールの男性のボールに直撃

千葉県のとあるゴルフ場でゴルフを楽しんでいたAさん。

ミドルホールの2打目をウッドクラブで狙い、キャディからの合図を確認してショットを放ったところ、ボールは右に大きくそれてしまいました。

運悪く、70メートル先の隣のホールで移動中だったBさんの胸にボールは直撃し、Bさんは肋骨を骨折してしました。

Aさんは、ボールを打つ前にBさんの存在に気が付くことはできませんでした。

長い裁判の末の判決は・・・

被害者であるBさんは、肋骨骨折の治療費や自らが経営していた会社経営への影響、ゴルフの楽しみを奪われた精神的苦痛に対する慰謝料等として、総額442万円あまりの損害賠償を求めてAさんを訴えました。

6年間にも及ぶ長い裁判の末、裁判所はBさんの訴えを認め、Aさんに対して約200万円の損害賠償を命じる判決を出しました。

損害賠償責任

六法全書
Aさんは、ボールを打つときに、Bさんの存在には気付いていませんでした。

しかも、Aさんはキャディの合図に従ってボールを打ったのです。

打球事故が起こると予見することは難しかったともいえるでしょう。

それでもAさんは、約200万円もの慰謝料を支払わなければいけないのでしょうか。

判決では、ゴルファーには自分の技量に応じて打球が飛ぶ可能性のある範囲を十分に確認すべき義務があること、今回の事例ではAさんが十分に確認をしていればBさんがいることを確認できたであろうことを指摘し、Aさんの注意義務違反を認めました。

Aさんの注意義務違反は過失であるとされ、不法行為による損害賠償責任が認められたのです。

民法第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

ゴルフの特殊性

自分の打った打球がどこに飛ぶのかを完全に把握することは不可能であり、遠く離れたところに人がいるかどうかも簡単には分からないなかで、損害発生を予見する重い義務を課されるのは、なかなか厳しいものがあると思われるかもしれません。

これには、ゴルフというスポーツの特殊性が関係しています。

ゴルフは静止したボールを金属製等のクラブで打つスポーツであり、ボールは時速300キロという猛スピードで飛ぶこともあります。

このようなスポーツを認める以上は、ゴルフプレーヤーは安全なプレーをするために、自分自身の打球を把握して周囲に最大限に配慮し、事故が起きないように注意することが法律上義務付けられているのです。

また、キャディの合図に従って打った場合でも、打者の責任が問われます。

ゴルフとは、高い自己責任が要求されるスポーツなのです。

損害賠償責任はケースにより様々


今回の事例では、打者であるAさんの注意義務違反が過失であると認められ、約200万円もの損害賠償請求がされました。

しかし、一口に打球事故といった場合でも、打者に過失があったかどうかの認定は個別具体的に判断されるため、損害賠償責任の有無やその賠償額はケースによって様々となっています。

過去の事例では、打球が被害者の元に届くとは通常予見できないとして打者の損害賠償責任が否定された一方、ゴルフ場の構造に瑕疵があるとしてゴルフ場会社に損害賠償責任が認められた例もあります。

別の事例では、打者の注意義務違反が過失として認められたものの、被害者にも一般的なゴルフマナーに反して打者より前に出てしまったという落ち度があったことから、被害者の側にも過失が認められ、賠償請求額のうち6割が過失相殺されたという例もあります。

ゴルフにおける注意義務は、打者の経験や技量等によって個別具体的に判断されます。

また被害者の側の過失も、ゴルフマナーの遵守状況や打者とのプレー経験の有無等の個々の事情によって判断されます。

このように、ゴルフ事故の損害賠償責任の判断は個々のケースによって異なるため、トラブルに遭った場合はまず弁護士に相談しましょう。

まとめ

楽しいはずのゴルフも、一歩間違えば大事故につながりかねません。

他人に危害を加え、自らも多大な借金を背負ってしまうという危険性もあるのです。ゴルフをする際にはそのことを常に意識して、周囲の状況に十分注意しながら楽しんでくださいね。

ゴルフ事故によって法的トラブルに発展した際は、弁護士へ相談するといいでしょう。

弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用を負担してくれるので助かります。