お隣との距離が近すぎて自宅が丸見え!目隠し窓をつける義務が発生するかも?

 


自宅は、外の世界で疲れた心と身体を休めてホッと一息するための場所。

しかし、あなたの部屋の中が、隣に建った建物の窓から丸見えになってしまったら……落ち着いて生活できなくなってしまいますよね。

このような場合に、プライバシー保護を主張して対処することは可能なのでしょうか? 

今回は、実際にあったAさんの事例(さいたま地裁、H20.1.30)を御紹介します。

Aさんの事例

とある土地に建物を建てて暮らしていたAさん。

隣の土地は、長い間畑として使用されていました。

しかしある日、隣の土地の所有者であるBさんが、その土地に賃貸用の3階建てマンションを建築することになりました。

そのマンションは、Aさん宅のある敷地の境界線から1m未満という、至近距離に建てられることになったのです。

Aさんは、Bさんのマンション建築に際して、建物の窓に目隠しを設置することなどを要望しました。

しかしBさんはその要望を聞き入れず、目隠しの設置はしませんでした。

これでは、BさんのマンションからAさんの住宅内が丸見えとなってしまいます。

そこでAさんは、Bさんの建物の西北側の窓すべてに目隠しを設置することを請求する訴訟を起こしました。

敷地の境界線から1m未満に設けられる窓には目隠しを設置することが民法で規定されていることから、Aさんはその規定に基づいてBさんを訴えたのです。

しかしなんとBさんは、Aさんの住宅の窓にだって目隠しが必要ではないかと、Aさんの住宅の東南側の窓すべてに目隠しの設置を求める反訴をしてきました。

Aさん宅もまた、Bさんの敷地の境界線から1m未満の位置に建てられていたためです。

裁判結果

Aさん、Bさん双方が互いの建物の窓に目隠し設置を要求したこの裁判。

裁判所は、Aさんの訴えの一部を認めてBさんに対し一部の窓に目隠し設置を命じる一方、Bさんの訴えは認めませんでした。

Aさんの訴えも、すべてが認められた訳ではありません。

Bさんが建築した賃貸用マンションは、総戸数12戸の3階建てで、各戸につき居間兼食堂・台所・洗面所・浴室の4ヶ所ずつに窓が設置されていました。

Aさんはそれらの窓すべてについて目隠しの設置を要求しましたが、裁判では、1階および2階の居間兼食堂の窓にのみ目隠し設置が命じられたのです。

そして、Aさんの建物については、Bさんの土地との境界線から1m未満の位置にあるにも関わらず、Bさんの訴えは認められず、Aさんには目隠し設置が命じられませんでした。

どうしてこのような結果が生じたのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

境界線付近の建築制限

敷地境界線付近の建物の建築について、民法では下記のとおり制限が設けられています。

第二百三十四条  建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

第二百三十五条  境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
2  前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

第二百三十六条  前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

つまり、下記の2つのことが法律上定められているのです。

①建物を建築する場合には隣地境界線から50cm以上離して建築しなければならないこと
②隣地境界線から1m未満の距離に他人の宅地が見える窓などを設置する場合には目隠しを付けなければならないこと

この規定は、プライバシー保護を目的とするとともに、互譲の精神から相隣する不動産相互の利用関係を調整しようとする趣旨で設けられているものです。

ただし、地域性等により、この規定と異なる慣習がある場合には、その慣習が優先されるとされています。

例えば、同地域の他の建物の多くが窓に目隠しを設置していない場合などには、目隠し設置義務が認められない場合もあります。

今回の判例のポイント

今回の事例の場合、Bさんのマンションに設けられた窓のうち台所の窓は、滑り出し窓であり、その構造からすると、意識的に窓からのぞきこむ等の行為をしない限り、通常の状態ではAさん宅を観望できないと推認されることから、目隠し設置義務のある民法上の「他人の宅地を見通すことのできる窓」には そもそも該当しないとされました。

残りの窓のうち、洗面所の窓と浴室用の窓については、「他人の宅地を見通すことのできる窓」には該当するものの、その用途や大きさからして居住者が日常的に開放して使用するとは考えがたいことから、これらの窓によりAさんが被る不利益が重大とは認めがたいとされ、Aさんの目隠し設置請求は認められませんでした。

また、Bさんのマンションの3階部分の窓についても、主にAさん宅の屋根しか見えないと認められることから、Aさんが被る不利益が重大とは認めがたいとされ、Aさんの目隠し設置請求は認められませんでした。

しかし、Bさんのマンションの1階および2階の居間兼食堂の窓については、その大きさも大きく、特に1階部分の窓はAさんが日常的に使用している居間に面していることから、Aさんが日常生活において被る不都合は大きいと考えられ、Aさんの目隠し設置請求が認められたのです。

一方、BさんもAさん宅に目隠し設置を請求しましたが、Bさんが建築した賃貸用マンションにはBさん自身が居住している訳ではなく、マンション居住者からも、Aさん宅によりプライバシーが侵害されているという苦情はありませんでした。

具体的なプライバシー侵害が認められないことから、BさんのAさんに対する目隠し設置請求は、権利の濫用であり許されないという判断が下されたのです。

住宅トラブルは弁護士に相談しましょう

このような住宅トラブルは、私たちの日常生活を脅かしてしまいます。

建物が建ってしまってからでは遅いので、建築計画が明らかになった早い段階で、適切に対処することが重要です。

また、今回の事例では、敷地境界線から1m未満という条件は同じであるにも関わらず、窓の構造や用途、苦情の有無などによって個別具体的にプライバシー侵害の有無が判断されました。

このような判断は高度な専門的知識が必要であるため、トラブルに巻き込まれた場合は、弁護士等の専門家にすぐに相談した方がよいでしょう。

まとめ

私たちが安心して生活するため、住宅にもプライバシー保護が必要なのです。

敷地境界線付近の建築制限について定めた今回の民法の規定は、ぜひ覚えていてください。また、トラブルに巻き込まれた場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。

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山根浩

山根浩

フリーライター。東京都生まれ。2008年よりインターネットメディアを中心に法律、スポーツ、健康といった幅広いジャンルで執筆活動を開始。2010年以降は法律ジャンルに特化し、離婚、相続、交通事故、近隣トラブル、職場トラブルといった身近な法律トラブルに関する執筆を多く担当している。
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