床に落ちていたアイスクリームで転倒!店舗の責任は問える?

 

雨が降っているときなどに、思わぬところで滑って転倒してしまったことがある人は結構多いのではないでしょうか。

実はこのように、転倒して怪我をしてしまった場合、場所や状況によっては治療費や慰謝料などの損害賠償を請求できることもあるのです。

今回は、店舗で転倒して怪我をしてしまったAさんの事例(岡山地裁、平成25年3月14日)をご紹介します。

Aさんの事例

Aさんはその日、ショッピングセンターで買い物をしていました。

買い物袋を載せた大型のショッピングカートを押して歩いていたAさん。

1階のアイスクリーム売り場の前の通路を通りがかったとき、何かに足を取られて転倒してしまいました。

アイスクリームが床に落ちたまま放置されていたため、それに足を滑らせて転んでしまったのです。

Aさんはこの転倒事故によって、脚や腰の骨を折る大怪我をしました。

複数の病院で約3ヶ月の入院治療、さらに約3ヶ月の通院治療を受けることになったAさん。

しかしAさんの症状は完治せず、脚の関節に重い障害が残ってしまいました。

そこでAさんは、ショッピングセンターの運営者が店舗の安全管理を怠ったとして、不法行為に基づく約2600万円の損害賠償を求めて裁判を起こしました。

裁判所が下した判断は・・・

裁判所は、 事故現場の状況から、Aさんが転倒したのは通路上に落ちていたアイスクリームが原因であるということを認めたうえで、後遺障害についても今回の転倒事故により生じたものとするのが相当である、と判断しました。

そして、ショッピングセンターには顧客の安全を図る義務があるにも関わらず、その義務を尽くさなかったとして、裁判所はショッピングセンターの不法行為責任を認めました。

一方で、Aさんにも足元への注意を払うべき義務を怠った過失があるとして、20%の過失相殺を行うべきであると判断しました。

これらのことから、裁判所はショッピングセンターに対して、不法行為に基づく損害賠償として約860万円の支払いを命じました。

不法行為責任とは?

Aさんの裁判で認められた不法行為責任とは、何なのでしょうか。

不法行為責任については、民法で以下のように定められています。

民法
第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

すなわち、故意または過失によって他人の身体や財産などを侵害して損害を与える行為を不法行為といい、不法行為を行った者は、その被害者に対して不法行為責任を負うことになります。

そして、不法行為責任を負う者は、被害者に対して原則として金銭によって損害を賠償することが定められているのです。

今回のケースでで不法行為が認められた理由

今回の事例では、ショッピングセンターが店舗の安全管理を怠ったことから、不法行為責任があると判断されました。

これは一体、どういうことなのでしょうか。

一般的に、ショッピングセンターは年齢や性別などが異なる不特定多数の人を顧客として呼び寄せて営業しています。

不特定多数の人を呼び寄せている以上、ショッピングセンターは、不特定多数の人が通常とるであろうと考えられる行動を前提として、その安全を図る義務を有しているとされます。

事故のあったショッピングセンターでは、午後6時までは外部の清掃業者に清掃を委託していました。

そして、午後6時以降はショッピングセンターの従業員が不定期に3~4名で店舗内を巡回することになっていました。

事故の起こった時間帯は外部の清掃業者がいない時間帯でしたが、事故当時は少なくとも3名の従業員が店舗内を巡回しており、一定程度の安全管理体制はとられていました。

一方で、アイスクリームを購入した顧客が通路上でアイスクリームを食べ歩くなどして、床にアイスクリームを落として売り場付近の通路の床面が滑りやすくなるということは、ショッピングセンターとしては当然想定していなければなりません。

また、事故当日は一部のアイスクリームが値引き販売されていることもあり、多数の顧客がアイスクリーム売り場を訪れることは容易に想定されました。

これらのことから、事故当日のショッピングセンターは、アイスクリーム売り場付近に十分な飲食スペースを設けて誘導したり、外部の清掃業者に対する清掃委託を閉店時間まで延長したり、従業員による巡回を強化させたりするなどして、床面にアイスクリームが落下している状況が生じないようにする義務を負っていたと判断されました。

そして、ショッピングセンターはこの義務を果たさなかった過失によってAさんに損害を負わせたことから、不法行為責任が認められたのです。

過失相殺とは

一方で、今回の事故についてはAさんにも過失があったとされ、20%の過失相殺が認められました。過失相殺とは、一体どういったものなのでしょうか? 

過失相殺については、民法で以下のように定められています。

民法
第722条 (略)
2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

すなわち、不法行為における被害者の側にも過失があった場合には、それを踏まえたうえで損害賠償の程度を調整することが規定されています。

例えば事故などの場合には、被害者側にも原因があることもあります。

このようなとき、損害を公平に分担する観点から、被害者の責任の割合に応じて加害者の損害賠償額が減額されるのです。

今回のケースで歩行者側にも過失が認められた理由

今回の事例の場合、被害者となったAさんとしても、アイスクリーム売り場付近の通路上にアイスクリームが落ちており、足元が滑りやすくなっていることは予測できたはずでした。

そして、Aさんは足元への注意を払うべき義務があったのに、それを怠った過失があるとされました。

しかしながら、Aさんは買い物袋を載せた大型のショッピングカートを押していたために、前方の床面が見にくい状況でもありました。

これらのことを踏まえて、Aさんの過失割合は20%が相当であると判断され、本来の損害賠償額から20%が過失相殺(=減額)されたのです。

弁護士に相談しましょう

店舗で転倒して怪我をしてしまった場合、店舗に責任があれば治療費や慰謝料などの損害賠償請求ができるということがお分かりいただけたと思います。

しかし、店舗で転倒して怪我をしたという事実があっても、それが店舗の不法行為に該当するかどうかは、その時の状況などによって大きく変わってきます。また、被害者側の過失割合の判断においても、様々な事情が考慮されます。

これらの判断には非常に高度で専門的な知識が必要となりますので、転倒事故にあってしまった場合、弁護士に相談して適切に対処することが望ましいでしょう。

まとめ

店舗などで転んで怪我をしてしまったとき、場合によっては損害賠償を請求できます。

何もしなければ、ただの怪我として自分が損をするだけとなってしまいます。

後悔しないためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。

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弁保社長

弁保社長

慶應義塾大学卒業後、大手エネルギー関連企業、ベンチャー企業の取締役を経て、2014年に弁護士保険募集代理店として㈱マイクコーポレーションを創業。 幼少期をアメリカで過ごし、訴訟リスクについて親友の父(弁護士)より学ぶ。 自身の離婚経験、友人の相続トラブル、後輩の勤務先企業からの不当解雇など身の回りで弁護士に依頼をした事例が多数起こり、日本での訴訟リスクの高まりと弁護士費用保険の必要性を感じたことをきっかけに、「誰もが小さなトラブルでも気軽に弁護士に相談できる社会」を目指し、広く日本初の弁護士費用保険である「Mikata」の普及促進を図っています。(さらに詳しいプロフィールはこちら
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