養育費に連帯保証人をつけられる?未払い対策などのメリット

離婚時、子どものために養育費の取り決めをしたのは良いものの、元夫からちゃんと継続的に支払われるか不安という方や、元夫が死亡した場合の養育費の支払いはどうなるか、再婚した後の請求がどうなるのか気になる方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

慰謝料のように一括で清算できてしまえば未払いの心配などがないため気持ちも楽なのですが、養育費に関しては一括で支払われることはほとんどありません。

子どもの成長にあわせて将来にわたって支払い義務が発生し続けるものなので、よほどのことがなければ(支払われる金額多い、双方が一括支払いに同意している)、定期的に支払われるのが一般的です。

そこでどうしても不安という方は、元夫の養育費に連帯保証人をつけるという選択肢もあります。

法的には疑問の残る養育費請求の手続き

元夫が本当に支払い続けてくれるのかが疑わしいために、養育費に連帯保証人をつけることは一応は可能です。

しかし、法的には疑問の残る手続きになるため注意しなければならない点もあります。

まず、養育費請求というのは、対象となる子どもの親であるからこそ生じ得る固有義務であるため、子どもの親以外の誰かに生じることはありません。

たとえば、養育費の連帯保証人に子どもの祖父母がなった場合(実際、子どもの祖父母がなるのはよく見受けられます)、養育費の支払い期間中に支払い義務者である夫が死亡したとしても、支払い義務が夫の父母に受け継がれることは法的にはありません。

養育費を除く、通常の相続では、連帯保証債務は主債務者(もともとの支払い者)が死亡した場合、相続の対象となるのですが、養育費は相続される性質ではないのです。(一身専属義務といいます)

子どもの親以外にそもそもの養育義務がないのだから、夫が死亡すると、その養育費の支払義務は消えてなくなることは当然と言えます。

上記のような問題点があるため、裁判官や公証人によっては養育費に連帯保証人を付けること自体認めないといった判断をされるケースもあります。

養育費を連帯保証するというのは、将来的に面倒な問題が絡みすぎるため、否定的な判断をされる傾向があるのです。

未払いリスク軽減!連帯保証人をつけた場合のメリット

とはいえ、養育費には絶対に連帯保証人がつけられないというわけではありません。

稀なケースではありますが、快く引き受けてくれる第三者がいれば、連帯保証人をつけることも、それを公正証書として残すことも可能となっています。

それでは、養育費に連帯保証人がついた場合、どういったメリットがあるのか見ていきましょう。

まず、支払いを受ける側からすれば、未払いの可能性を下げることができますし、相手の支払いが滞れば、連帯保証人に対して請求することが可能となります。

未払いへの不安を解消し、安心感を得られるという意味では精神衛生上も良い効果が期待できます。

次に、支払いをする側からすれば、養育費がしっかり支払われるか心配で離婚を拒否する相手に対して、連帯保証人をつけることで支払いの確実性を主張し、離婚を承諾してもらえる可能性が出てきます。

離婚したいのに相手が拒否していて離婚できないといった場合は、連帯保証人を探すのも1つの手です。

また、養育費を下げてほしいといった交渉をしたい場合にも有効といえ、自身の負担を軽減できる可能性も出てきます。

養育費に対して連帯保証人をつけるために必要なこと

では、養育費に対して連帯保証人を快く引き受けてくれる第三者が見つかったのであれば、連帯保証人付きの契約書にするためにはどういった手続きが必要になるのでしょうか?

こちらは、基本的に書面にして残すことが重要です。

離婚協議書を作成するのであれば、そこに連帯保証人がついていると記載し、連帯保証人に署名捺印をしてもらいましょう。

また、公証役場にて公正証書にするのも有効です。

この際は、強制執行認諾付き(支払が滞った場合、強制執行しても良いと初めから相手の承認を得ること)の離婚協議書にすることで、後に支払いトラブルがあった場合に、裁判所での手続きを抜きに、相手の財産を差し押さえることも可能です。

※関連ページ→「養育費の強制執行(差し押さえ)に必要な条件と手続きの流れ

ただし、前述しているように公証人によっては、養育費に連帯保証人をつけること自体に消極的な場合もあります。

さらにそれが強制執行認諾付きの公正証書となれば、より法的効力の強い書面となるため、公証人から連帯保証の項目はつけられないと言われてしまうこともあるため注意が必要です。

関連記事

解説!養育費用の強制執行(差し押さえ)に必要な条件と手続きは?

離婚するときに養育費の取り決めをしても、支払いが止まってしまうことがあります。 相手に督促をしても無視をされたり、連絡さえもとれないこともあるでしょう。 厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると …

無理に連帯保証人をつけることはない

上記のような理由から、養育費の連帯保証人をつけることを拒否されるケースも多く存在します。

そういった場合は、無理に連帯保証人をつけることに拘らず、確実に強制執行認諾付きの離婚公正証書の作成を依頼したほうが安心感は増すと言えます。

というのも、この公正証書さえあれば、相手の支払いが滞れば即座に給料の差し押さえといった強制執行手続きに移行できるため、どちらを優先するかは目に見えて明らかです。

もし、無理に連帯保証人をつけた結果、公正証書の作成ができなかった場合、相手の養育費の支払いが滞り、さらに連帯保証人も養育費の支払いをしてくれないとなれば、裁判所に請求を認めてもらうためにわざわざ調停や裁判といった手続きをしなければなりません。

こういった手続きはすぐに結論が出るわけではなく、何か月も期間が空いてしまう危険がありますし、また弁護士に相談する費用などがかかるため、拘るのであれば連帯保証人ではなく、強制執行認諾付きの公正証書に拘ったほうが良い結果を招いてくれるはずです。

とはいえ、養育費の支払い問題はケースバイケースとなるため、離婚問題に強い専門家に相談しながら、もっとも確実性の高い手続きを取ってもらうのが賢明と言えます。