養育費の強制執行(差し押さえ)に必要な条件と手続きの流れ

 

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この記事の執筆者

福谷 陽子(元弁護士)


養育費の強制執行(差し押さえ)に必要な条件と手続きの流れ

離婚するときに養育費の取り決めをしても、支払いが止まってしまうことがあります。

相手に督促をしても無視されることがありますし、連絡がとれないこともあるでしょう。

少し古いデータになりますが、厚生労働省の「平成23年度全国母子世帯等調査」によると、6割の離婚母子世帯は、父親から養育費を一度も受け取ったことがないという実態も浮き彫りになっています。

養育費の未払い率

このようなとき、相手の資産を差し押さえることにより、養育費を取り立てることができます。

ただ、「差し押さえ」と言われても、「なんだか難しそう…」「自分にできるかな?」と不安になるかもしれません。

そこで今回は、養育費の強制執行(差し押さえ)に必要な条件と手続きの流れについて、解説します。

このページの目次

養育費の差し押さえとは

離婚の際に養育費の取り決めをしても、離婚後に不払いになってしまうことが多いです。

「支払ってくれないから、仕方がない」と思って諦めてしまう方もおられますが、養育費の請求は法律で認められた権利です。あきらめる必要はありません。

そこで、養育費を回収する方法を考えましょう。

相手が支払をしないときに、強制的に養育費を支払わせる方法があります。

それが、養育費の「差し押さえ」です。

差し押さえというのは、債務者(義務を負っている人)が任意で支払いをしないときに、債務者の財産や資産を差し押さえて、強制的に支払いをさせる方法です。

養育費支払を取り決めた場合、相手は養育費支払の義務を負います。

そこで、支払いをしないのであれば、相手の資産を差し押さえることができます。

差し押さえをしたら、差し押さえた財産を回収したり、差し押さえた財産を売却したりして、未払になってしまった養育費を回収することができます。

差し押さえの対象になるものは?

それでは、養育費の差し押さえをしようというとき、どのようなものを差し押さえることができるのでしょうか?

まず、相手の所有物であることが必要です。

相手以外の家族名義の預貯金などは、差し押さえることができません。

反対に、相手名義であれば、たいていのものは差し押さえることができます。
差し押さえの対象となる資産にどのようなものがあるのか、確認しましょう。

・預貯金
・積立金
・生命保険
・株券、投資信託
・給料
・売掛金
・ゴルフ会員権
・出資金
・不動産
・車、バイク
・現金
・貴金属、骨董品、絵画など

相手が養育費を滞納したときに、上記のような資産を持っていたら、差し押さえによって回収することができます。

財産分与の対象にならないものも、差し押さえができる

離婚するときには、財産分与をすることが多いです。

財産分与の対象になるものは、夫婦の共有の財産です。

ただ、この場合、相手の特有財産は対象になりません。

たとえば、相手が独身時代から持っていた預貯金や独身時代から加入していた生命保険、相手が親からもらった資産や相続した遺産などは、財産分与から外れます。

相手が高額な資産を持っていても、それが特有財産だったらもらうことができません。

これに対し、養育費滞納にもとづく差し押さえの場合には、特有財産かどうかは関係ありません。

そこで、相手が独身時代から持っていた預貯金や生命保険、親から引き継いだ不動産などを所有していたら、それらを差し押さえることも可能です。

差し押さえができるケースとできないケース

○と☓差し押さえをすると、相手が養育費の支払をしない場合にも回収ができるので、とても効果が高いのですが、差し押さえができないケースもあります。

差し押さえを行うには「債務名義」が必要になります。

差し押さえは強制執行の1種ですが、強制執行をするためには、「債務名義」が必要となります。

債務名義というのは、「強制執行をしても良いですよ」というお墨付きのようなものです。

具体的には、以下のような書類が債務名義となります。

・履行(強制執行認諾条項付)
・離婚調停の調停調書
・養育費調停の調停調書
・離婚審判の審判書
・養育費審判の審判書
・離婚訴訟の和解調書
・離婚訴訟の判決書

手元に上記のような書類があったら、それを債務名義として、相手の資産を差し押さえることができます。

逆に、債務名義がないなら、差し押さえはできません。

たとえば、離婚時に相手と養育費の取り決めをしたけれど、それを単なる合意書にして自分たちで署名押印しただけの場合(公正証書にしなかった場合)です。

単なる合意書は債務名義ではないので、強制執行力が認められません。

また、離婚時に口頭で養育費の取り決めをしただけで、合意書を作成していないケースでも、もちろん差し押さえはできません。

そこで、協議離婚をするときには、後に相手が支払いを滞納する可能性を考慮して、離婚公正証書を作成しておくべきなのです。

差し押さえができない場合の対処方法

協議離婚をする時に、離婚公正証書を作成しなかったために差し押さえができない場合、もはや支払ってもらうのを諦めるしかないのでしょうか?

そのようなことはありません。

この場合、「養育費調停」をすることにより、差し押さえに必要な債務名義を得ることができます。

※関連ページ→「養育費調停の流れと養育費請求権の時効について

離婚の際に、当事者間の合意書しか作成しなかった場合だけではなく、合意書を作成しなかった場合、そもそも養育費の話合いをしなかった場合でも、養育費調停を利用することができます。

養育費調停をすると、調停内で相手と話し合い、養育費の金額について取り決めることができます。

決まった内容については、調停調書になるため、債務名義として認められます。

相手が調停に来ない場合や話合いがまとまらない場合も大丈夫です。

このような場合、手続きが当然に「養育費審判」に移行して、裁判所が相手に対し、審判で支払い命令を出してくれるからです。

審判がでると「審判書」が発行されますが、審判書も債務名義となり、差し押さえの基礎とすることができます。

ただ、離婚時に公正証書等の債務名義を手に入れていない場合、いったん養育費調停をしなければならず、大変面倒です。

協議離婚をするなら、必ず強制執行認諾条項付の離婚公正証書を作成しておきましょう。

差し押さえの種類

公正証書や調停調書、審判書、判決書などの債務名義を手に入れたら、差し押さえをすることができますが、差し押さえには、いくつかの種類があります。債権執行と不動産執行、動産執行の3つです。

以下で、それぞれについて説明します。

債権執行

債権執行とは、相手の債権を差し押さえることです。

債権というのは、何かを求める権利のことです。

債権執行は、相手が第三者に対して有している権利を差し押さえることを意味します。

具体的に差し押さえの対象になる債権は、以下のようなものです。

・預貯金払い戻し請求権
・生命保険の解約返戻金請求権
・敷金返還請求権
・給料支払い請求権
・売掛金請求権

このように、「預貯金」や「給料」は、債権執行の1種です。

養育費の滞納があったときには、債権執行を行うことが非常に有効です。

債権執行をするときには、相手が債権を持っている宛先に連絡を入れて、そこから直接支払をしてもらいます。

たとえば、銀行預金を差し押さえる場合を考えてみます。

銀行は、本来預金者である相手に対し、預金の払い戻しをしなければなりません。

預金を差し押さえると、差し押さえた権利者は銀行から直接払い戻しを受けることができます。

本来相手が銀行に対して支払い請求できた権利を、差し押さえによって債権者が取得したことになります。

給料などでも同じで、銀行が相手の勤務先に変わるだけです。

債権執行をするときには、必ず支払いに応じるべき「第三者」がいます。

このような支払いに応じるべき第三者のことを「第三債務者」と言います。

そこで、債権執行には、債権者と債務者(養育費不払いの相手)、第三債務者(銀行や勤務先、生命保険会社など)の3者が登場します。

不動産執行

不動産執行とは、相手の不動産を差し押さえて競売にかけて、売却したお金で債権回収する方法です。

競売をしなければならないので、債権執行よりも時間も手間も費用もかかります。

ただ、不動産は高額で売れることが多いので、多額の債権の回収をするときに向いています。

たとえば、財産分与や慰謝料などのまとまったお金を払ってくれないときには、不動産執行が有効ですし、養育費でも、滞納額が大きかったら、不動産執行によってまとめて回収することができます。

動産執行

動産執行は、相手が所有している動産を差し押さえる手続きです。

動産というのは、不動産以外の「物」の資産です。

たとえば現金や貴金属、骨董品や絵画、パソコンや家具家電などが動産です。

車も動産扱いとなります。

動産を差し押さえた場合にも競売にかけるのですが、動産を売ってもあまり高額にならないことが多く、保管費用もかかり、回収までに時間もかかるので、あまり大きな効果を上げることは難しいです。

ただ、動産執行をすること自体が相手に対するプレッシャーとなり、相手が任意の支払いに応じるきっかけになることはあります。

養育費にもとづく差し押さえは、給与差し押さえが効果的

給与明細と札束養育費を滞納されたとき、差し押さえの対象として最もお勧めなのは、相手の給料です。

養育費は、月々支払いを受けるお金で、1回の金額はそう大きくはありません。

そこで、給料から継続的に支払いを受けることにより、確実に回収しやすいです。

将来分の差し押さえができる

養育費にもとづいて給料を差し押さえる場合には、将来分の差し押さえができます。

本来、差し押さえを行うとき、差し押さえることができるのは、既に支払期限が到来している分だけです。

まだ支払わなくても良い部分についてまで、差し押さえてしまうことはできません。

将来分については、その支払期限が来たときに、あらためて差し押さえの申立をしなければなりません。

これに対し、養育費では例外的に将来分の差し押さえができるので、一度給料の差し押さえをしたら、その後はいちいち差し押さえの申立をしなくても、毎月自動的に給料から養育費の支払いを受けられるようになります。

相手の手取り額の2分の1まで差し押さえができる

養育費を原因とする場合、相手の給料の多くの部分を差し押さえることができる点も、メリットです。

給料は、労働者が生活するために重要なお金なので、差し押さえができる範囲が限られています。

相手の給料から税金や健康保険料、通勤手当を差し引いた手取金額が33万円以下の場合、その4分の1までしか差し押さえることができません。

手取り額が33万円を超える場合には、33万円を超える部分を全額差し押さえることができます。

これに対し、養育費にもとづいて給料を差し押さえる場合には、相手の手取り額が33万円以下の場合でも、手取り額の2分の1まで差し押さえることができます。

たとえば、相手の手取り額が20万円の場合、一般的な債権なら4分の1の5万円しか差し押さえることができませんが、養育費場合には、2分の1である10万円まで差し押さえることができるのです。

そこで、養育費不払いの場合に給料を差し押さえると、非常に効率的に未払分を回収することができます。

ボーナス分も差し押さえ対象となる

相手が給与所得者の場合、年に2回程度、ボーナスが出ることが多いですが、ボーナスも、差し押さえの対象になります。

ボーナス月には、通常の給料とボーナスを足した金額の手取り額をもとに、差し押さえる部分を計算します。

給料額とボーナス分の手取り額が33万円以下ならその2分の1の金額を差し押さえることができますし、33万円を超えていたら、その全額を差し押さえることができます。

たとえば、6月分の給料が20万円、ボーナスが30万円で、手取り50万円になったときには、33万円を超える17万円を差し押さえることができるのです。

何度かボーナス月を迎えたら、養育費がある程度滞納されていても、十分に回収できます。

相手が任意で支払ってくることも多い

相手がサラリーマンや公務員の場合には、給料差し押さえを受けていることを、勤務先に知られたくないことが普通です。

また、毎月給料を差し押さえられて手取額が減るのも、うんざりするものです。

そこで、養育費不払いにもとづいて給料を差し押さえると、相手の方から「任意で支払いをするから、給与差し押さえを取り下げてほしい」と頼んでくることが結構多いです。

中には、取り下げだけをさせて支払をしなかったり仕事を辞めてしまったりする悪質な人もいますが、上場企業のサラリーマンや公務員ならば、そう簡単に辞めることはできません。

このように、給与差し押さえをすると、相手の方から支払いをしてくる可能性があることも、大きなメリットとなります。

次に検討すべき財産は「預貯金」「生命保険」

養育費を滞納されたとき、相手がサラリーマンであれば、まずは給料差し押さえが効果的ですが、相手が自営業者の場合や、相手の勤務先がわからない場合などもあります。

そのような場合には、相手の預貯金を差し押さえることが効果的です。

預貯金は、比較的簡単に差し押さえができますし、費用もあまりかからず、回収も早いからです。

同じように、相手が積立型の生命保険に加入している場合にも、解約返戻金を差し押さえることが効果的です。

生命保険を差し押さえると、生命保険を強制解約して、解約返戻金相当額を受けとることができます。

預貯金や生命保険を差し押さえると、相手に与えるインパクトが大きく、差し押さえ後は相手が改心して支払いをしてくることもあります。

そこで、養育費を滞納されたときには、まずは相手の給料か預貯金、もしくは生命保険を差し押さえる(これらはすべて債権差し押さえです)ことを、検討すると良いでしょう。

債権差し押さえの注意点

以下では、養育費を滞納されたときに債権差押を行うときの注意点を説明します。

どこまでの特定が必要?

差し押さえをするためには、相手の資産を特定することが必要です。

裁判所の方から、「この人にはこのような資産があるから、差し押さえると良いですよ」と教えてくれることはないためです。

そこで、預貯金や給料、生命保険などを差し押さえるときには、債権者が対象の資産を探さなければなりません。このとき、どこまでの特定が必要なのでしょうか?

預貯金については、金融機関名と支店名までの特定が必要です。

預金の種類や口座の種類、口座番号までの特定は不要です。

「〇〇銀行の〇〇支店の口座」であれば、定期預金でも定額貯金でも普通預金でも当座預金でも、すべての口座を差し押さえることができます。

給料差し押さえの場合なら、勤務先の会社名と所在地を特定する必要があります。

生命保険の場合には、加入している生命保険会社の特定が必要です。

保険の種類や証書番号までの特定は不要とされることが多いですが、必要だという説もあります。

東京地方裁判所では、証券番号の特定は不要だという運用をしています。

そこで、できれば詳しく特定している方が望ましいですが、無理なら生命保険会社の特定だけでも差し押さえができる可能性が高いです。

相手の口座にお金がないときはどうなる?

預貯金を差し押さえたとき、口座内にお金がないときがあります。

この場合、差し押さえの効果はどうなるのでしょうか?

預貯金口座に該当がないケースや預貯金口座内に残高がない場合には、差し押さえをしても回収ができません。

銀行から「口座がありません」「残高がありません」という回答が返ってくるだけで、現実の回収はできないことになります。

差し押さえの効力が及ぶのは差し押さえの通知が送達されたときですから、そのときの残高が0円なら、一切支払いを受けることができません。

ただ、毎月決まった頃に給料が入金されるので、決まったタイミングで差し押さえをすると、効果的に回収ができるケースもあります。

このような場合には、狙ったタイミングで差し押さえの効果を発生させることができます。

そのためには「執行官送達」という方法を利用します。

執行官送達をすると、予め決まった日に銀行に裁判所の書類を送達し、そのときに効果を発生させることができます。

給料が入金される日に送達をすると、確実に多くの金額を差し押さえることができるので、効果的です。

相手が仕事を辞めたらどうなる?

給料を差し押さえるときには、相手が退職する可能性が問題となります。

いったん給与差し押さえをすると、相手が退職するまでの間は給与もボーナスも差し押さえることができますが、退職されると、その後は支払いを受けられなくなります。

ただし、相手が退職金を受けとるときには、退職金も差し押さえ対象となります。

退職金については、税金などを差し引いた手取り額の2分の1まで差し押さえることが可能です。

この場合には、手取り額の33万円を超える部分ではなくなるので、注意が必要です。

それでも、慰謝料などの一般的な債権の場合には、手取りの4分の1までしか取り立てできないので、養育費の場合には有利になります。

相手が再就職した場合には、新しい勤務先までには給与差し押さえの効果が及ばないので、改めて給与差し押さえの手続きをしなければなりません。

そのためには、新しい勤務先を突き止めて、裁判所に申立をする必要があります。

相手が逃げることはあるのか?

債権差し押さえをするとき、相手が逃げたらどうなるのかも心配かもしれません。

基本的に、債権の差し押さえをするとき、相手が逃げても関係ありません。

相手の住所と財産内容がわかっていたら、相手がいなくても差し押さえができるからです。

ただ、相手が財産隠しをしてしまった場合には、そうはいかなくなります。

そこで、相手が預貯金を出金したり生命保険を解約したり、会社を辞めたりする前に、早めに差し押さえを成功させることが必要です。

養育費を差し押さえをするときの流れ

判決以下では、実際に差し押さえをするときの手続きの流れを順に確認していきます。

相手の資産や勤務先を調べる

差し押さえを行うときには、まずは相手の資産内容や勤務先を調べる必要があります。

たとえば、預貯金を差し押さえるにしても、金融機関名と支店名が必要になります。

ただし、ゆうちょ銀行(郵便局)なら、支店を特定する必要がありません。

相手が利用している金融機関がわからない場合には、やみくもに差し押さえの申立をすることも可能ですが、差し押さえをすると、費用も手間もかかります。

勤務先については、相手の後をつけたり、共通の知り合いに聞いたり、探偵社に依頼したりして、突き止める方法が考えられます。

送達証明書と執行文を取得する

強制執行を行うときには、「送達証明書」と「執行文」いう書類が必要です。

送達証明書は、債務名義が相手に届けられたことを証明する書類です。

執行文は「この債務名義によって強制執行をしても良いですよ」という意味合いの書類です。

これらの書類は、債務名義を発行した機関に申請して、発行してもらう必要があります。

公正証書なら公証人役場に、その他のケースなら家庭裁判所に「送達証明書申請書」「執行文付与申請書」を提出して、交付してもらいましょう。

地方裁判所に申立をする

債務名義、送達証明書、執行文の3種類の書類が揃ったら、裁判所で「差し押さえの申立」をします。

申立をする裁判所は、相手の住所地を管轄する地方裁判所です。

家庭裁判所ではないので、注意が必要です。

また、以下の書類が必要となります。

・申立書と当事者目録
当事者目録には、債権者(申立人)と債務者(不払いを起こしている相手)、第三債務者(銀行や生命保険会社、勤務先など)を記載します。

・請求債権目録
請求債権目録には、不払いになっている養育費とその金額を記載します。

・差し押さえ債権目録
差し押さえ債権目録は、相手が第三債務者に対して有している債権の内容を記載します。
たとえば預貯金や給与債権、生命保険の解約返戻金請求権などです。

・第三債務者の商業登記簿謄本(資格証明書)
第三債務者が銀行や生命保険会社、相手の勤務先の会社などの法人である場合には、その法人の商業登記簿謄本(全部事項証明書、履歴事項証明書等)が必要です。

また、債権差し押さえを申し立てるときには、以下の費用が必要です。

・申立手数料
申立には手数料が必要です。4000円を、収入印紙の形で支払います。申立書に貼付して提出すると良いでしょう。

・郵券切手代
相手や第三債務者に書類を送達するための郵便切手代が必要です。内訳と金額は裁判所によりますが、2000~3000円くらいです。

陳述催告の申立について

債権差し押さえをするときには、「陳述催告の申立」を行います。

これは、第三債務者に対し、「債権があるかどうか、あるとしたらどのような内容か、また、支払いに応じる意思があるか」を回答するよう求めるものです。

陳述催告申立をしておくと、第三債務者に差し押さえの決定書が送達された後「〇〇の預貯金が〇〇円分あります。支払う用意があります。」などと回答してもらえるので、差し押さえがスムーズに進みます。

債権差し押さえ決定を受ける

申立後、誤字脱字や表記の訂正などをすると、裁判所が債権差し押さえの決定をします。

すると、裁判所から、すぐに裁判所から第三債務者に「債権差押命令書」が送られます。

この時点で、銀行の預金口座などの取引は止められて、相手は出金できなくなってしまいます。

その1週間後、裁判所から債務者に対し、「債権差押命令書」が送られます。

そして、銀行等の第三債務者から裁判所に対し、「陳述書」が送られてきます。

これは、陳述催告の申立をしたことに対する回答です。

送達通知書、陳述書を受けとり、取り立てを行う

債務者が債権差し押さえ命令書を受けとると、裁判所から債権者宛に、「送達通知書」と「陳述書」が送られてきます。

債務者に送達してから1週間が経過したら、債権者は取り立てをしても良いことになっています。

そこで、送達通知書に書いてある日付から1週間を経過したら、銀行や生命保険会社、相手の勤務先などに連絡を入れます。

銀行などであれば必要書類に記入をして払い戻しを受けられますし、生命保険会社なら、保険を解約して解約返戻金を受けとることができます。

給料を差し押さえた場合には、その後、相手の勤務先から、月々給料や賞与の一部(差し押さえた部分)を支払ってもらうことができるようになります。

取立届を提出する

差し押さえによって、未払分を全額支払ってもらえたら、裁判所に「取立届」を提出します。

預貯金残高が足りないなどの事情で、一部の回収しかできなかった場合には、裁判所に「取立届」と「取下書」「債務名義還付申請書」を提出します。

差し押さえにかかる期間の目安

債権差し押さえにかかる期間の目安は、だいたい2週間程度です。

申立から1~3日後に債権差し押さえ命令が出て、その1週間~10日後くらいに債務者に債権差し押さえ命令書が送達されます。

その後、第三債務者と話し合って、支払いを受けるイメージです。債権差し押さえは、不動産差し押さえや動産差し押さえと異なり、あまり時間がかからない強制執行の方法です。

自分でできるのか、弁護士に依頼すべきか

弁護士債権差し押さえをするとき、自分でできるのかが不安になることが多いでしょう。

債権差し押さえは、強制執行の中でも最も簡単ですし、自分でやろうと思えばできます。

実際に弁護士に依頼せず、自分で申し立てている人もおられます。

ただ、自分ですると、書類の不備などが多く発生するため、何度も訂正を求められたりしてなかなか決定が下りないことが多いです。

すると、相手がその間に財産隠しをしてしまうかもしれません。

そうなったら、差し押さえをする意味が完全に無くなってしまいます。

また、事前に送達証明書や執行文を集めないといけないのも手間です。

弁護士に依頼したら、自分では何もしなくても、スムーズにかつ確実に相手の資産や給料を差し押さえることができるので、非常にメリットが大きいです。

そこで、差し押さえをするなら、弁護士に依頼することをお勧めします。

弁護士費用の相場

弁護士に債権差し押さえを依頼するときの弁護士費用は、事務所によってかなり異なります。

着手金と報酬金がかかるケースが多いです。

着手金5万円、成功報酬が回収した金額の10%という事務所、着手金は請求金額の4%、報酬金は回収金額の4%という事務所などがあります。

具体的な金額は、相談の際に弁護士に確認しましょう。

※関連ページ→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由

少額訴訟という手も

未払養育費の回収をするためには、少額訴訟という手続きも役立ちます。

少額訴訟とは、60万円以下の金銭支払いを請求するための裁判手続きで、通常裁判を非常に簡単にしたものです。

少額訴訟をすると、1日で判決までしてもらうことができます。

また、相手が裁判所に出頭してくるので、裁判官が間に入って和解を進めて話合いが成立し、相手から任意で支払ってもらえることもあります。

また、少額訴訟は、弁護士に依頼せず、自分で行うことができますし、むしろその方がお勧めです。

そこで、養育費の滞納額がある程度多くなっているときには、まずは少額訴訟をして、未払分を支払ってもらうことも視野に入れて検討すると良いでしょう。

まとめ

今回は、養育費の不払いが起こったときの差し押さえ手続について解説しました。

養育費を支払ってもらえなくなったからと言って、あきらめる必要はありません。今回の記事を参考にして、確実に養育費の不払いを防ぎましょう。

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福谷 陽子(元弁護士)

福谷 陽子(元弁護士)

京都大学法学部卒。在学中に司法試験に合格し、2004年に弁護士登録。その後、弁護士として勤務し、2007年、陽花法律事務所を設立。女性の視点から丁寧で柔軟なきめ細かい対応を得意とし、離婚トラブル・交通事故・遺産相続・借金問題など様々な案件を経験。2013年、体調の関係で事務所を一旦閉鎖。現在は10年間の弁護士の経験を活かしライターとして活動。猫が大好きで、猫に関する記事の執筆も行っている。
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