相手の弁護士や落ち度があった弁護士を弁護過誤で訴えることは可能なのか

 

相手の弁護士や落ち度があった弁護士を弁護過誤で訴えることは可能なのか

お金を払って弁護士にお願いしたにも関わらず、満足のいく結果にならなかった場合、その弁護士を訴えることはできるのでしょうか?

また、裁判の相手方となった弁護士から嫌がらせや侮辱的な扱いを受けた場合、相手方の弁護士を訴えることはできるのでしょうか?

今回の記事では、「弁護士を訴えることができるのか?」について、実際に争われた裁判例を紹介しながら解説します。

「弁護過誤」とは?

弁護士が職務を行う上で不注意や落ち度によってクライアントや関係者に損害を与えることを、「弁護過誤(べんごかご)」と言います。

弁護過誤によって損害を受けた被害者は、その弁護士に責任追及をすることができます。

それでは、具体的にはどのような場合に弁護士の責任を追求することができるのでしょうか?

弁護士を訴えるケースとしては、大きく2種類に別れます。

A)自分が依頼した弁護士を訴える場合
B)相手方の弁護士を訴える場合

以下では、それぞれの場合ごとに解説していきます。

自分が依頼した弁護士を訴える場合

自分がお金を払って弁護士を雇ったにも関わらず、その弁護士の方針に不満がある場合、その弁護士を訴えることはできるのでしょうか?

委任契約書を確認する

弁護士の方針に不満がある場合は、まず「委任契約書」を確認しましょう。

通常、弁護士に依頼する際には、「委任契約書」という書類にサインをします。

委任契約書には、弁護士報酬や資料の預かりなどについて、細かく定められています。

弁護士がこの「委任契約書」に違反するような行為をしていれば、弁護士の責任を追求することができます。

もしもあなたがお金について弁護士と揉めているのであれば、委任契約書を見直してみましょう。

「弁護士報酬」という項目を読めば、弁護士報酬の計算方法が記載されています。

あなたがこの計算方法とは異なる金額を報酬として請求されているのであれば、その弁護士は契約に反する行為をしています。

委任契約書を元に、その弁護士の責任を追及することができます。

説明義務違反

弁護過誤のトラブルの多くは、「説明義務違反」を原因としています。

説明義務違反とは、「弁護士が方針についてきちんと説明してくれず、こちらからの質問にも丁寧に答えなかったために、この弁護士に任せて大丈夫なのかという不安が募った」という不満です。

弁護士の説明義務違反について、実際に最高裁判所で争われたケースがあります(最高裁判所平成25年4月16日判決)。

この裁判は、「弁護士が依頼者に対してリスクをきちんと説明しなかったので、弁護士が損害賠償金を支払うことになった」というケースです。

詳しく内容を見てみましょう。

Aさんは借金の返済に悩み、弁護士Xに借金の整理を依頼しました。

弁護士Xは、「この借金はもうすぐ消滅時効が成立するので、返済する必要はありません。時効が成立するまで、しばらく待ちましょう」と提案しました。

消滅時効とは、「弁済期又は最後の返済日から一定の期間が経過すると、借金を返済する責任が無くなる」という制度です。銀行や消費者金融から借りた借金は、5年で時効が完成します。

ただし、「銀行や消費者金融が時効が裁判を起こした場合は、5年が経過しても時効が完成しない」というリスクがあります。

弁護士Xは、このリスクをきちんと説明しませんでした。

結局、Aさんの借金は時効で消滅することはなく、Aさんは借金返済の義務から逃れられませんでした。

しかも、時効が完成するまで待っていたせいで、その期間の利息が膨らみ、Aさんが返済しなければいけない借金の総額は大きくなってしまいました。

Aさんは、借金が膨らむリスクを説明してくれなかったことを不満として、弁護士Xを弁護過誤で訴えました。

裁判官は、「消滅時効が成立するまで待つという方針を取るのであれば、法律の専門家として、そのリスクをきちんと説明しなければいけない」と判断して、弁護士Xの責任を認めました。

この裁判のポイントは、「弁護士の方針そのものが間違っていたというわけではない」という点です。

弁護士の落ち度は「きちんと説明をしなかった」という点です。

弁護士の方針そのものが正しくても、依頼者に分かりやすい説明をしていなければ弁護過誤になる、ということを明らかにした裁判でした。

「裁判に敗けた」という理由だけでは不十分

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弁護士を訴える場合には、注意すべきことが一つあります。

それは、「単に裁判で敗けたという理由だけでは、弁護士の責任を追求することはできない」ということです。

裁判には、必ず勝者と敗者がいます。裁判で敗けたからといって、必ずしも弁護士に全責任があるとは限りません。

証拠が足りないという理由で敗訴することもありますし、法律の不備というやむをえない理由で敗訴することもあります。

よって、単に「裁判に敗けた」という理由だけでは、弁護士の責任を追及することはできません。

弁護過誤として訴えるには、その弁護士が委任契約上の義務に違反したり、説明義務に違反した、という事実が必要となります。

相手方の弁護士を訴える場合

次に、「裁判の相手方となった弁護士を訴えることはできるか?」を考えてみましょう。

相手方の弁護士から嫌がらせを受けた場合

相手方の弁護士から嫌がらせを受けた場合、その弁護士を訴えることはできるのでしょうか?

相手方の弁護士を訴えることができるかどうかは、「弁護士の職務として必要な行為」なのか「単なる嫌がらせ」なのかによって決まります。

もしもあなたが「嫌がらせ」だと感じたとしても、弁護士の職務として当然に必要な行為であれば、その弁護士を訴えることはできません。

例えば、離婚した元妻に養育費を支払っていない場合、給与が差し押さえられることがあります。

このような場合、自分の勤務先に養育費の未払いが知られてしまうため、「弁護士による嫌がらせだ」と感じる方がいらっしゃいます。

しかし、給与の差押えは法律に基づく権利行使ですので、そのことだけを理由として相手方の弁護士を訴えることはできません。

もしも、給与を差し押えされただけでなく、勤務先に離婚調停の詳細を漏らされたというようなことがあれば、弁護士の職務行為として必要な範囲を超えていますので、その弁護士の責任を追及することができます。

相手方の弁護士の行為が、「弁護士の職務として必要な行為」なのか「単なる嫌がらせ」なのかは、判断が難しい問題です。

ご自身で判断するのではなく、あなたが信頼している弁護士に相談してみましょう。

あなたの弁護士が不当な嫌がらせであると判断すれば、相手方の弁護士に対して警告書を送付するなど、適切な対策を取ってくれます。

相手方弁護士から侮辱的な表現をされた場合

裁判というのは、何らかのトラブルを抱えた人物同士が争うわけですから、誹謗中傷となるような過激な表現が飛び交うことがあります。

裁判の性質上、ある程度攻撃的な表現となることはやむをえないとされています。

しかし、裁判の名を借りて不当に個人を攻撃するような表現は、場合によっては名誉毀損やプライバシー侵害として損害賠償の対象となります。

※関連ページ→「名誉毀損と侮辱罪の要件の違いと慰謝料の相場

この点について、実際に争われた裁判例を紹介します(東京地方裁判所平成18年3月20日判決)。

AさんとBさんは、退職金の支払いを巡って裁判所で争っていました。

この裁判に関する書面の中で、AさんはBさんについて、「狂乱する激しい気性で凶暴な性格である」「Bさんは不倫女である」「恋をすると狂乱状態になる」など、様々な侮辱的な表現を用いました。

この裁判は退職金を巡る争いなので、Bさんが不倫をしているかどうかは裁判の本筋には関係がありません。

それにも関わらず、Aさんは何度も侮辱的な表現を行いました。

そこでBさんは、AさんとAさんの弁護士に対して、名誉毀損及びプライバシーの侵害を理由として、不法行為に基づく損害賠償を請求しました。

裁判官は、「主要な動機が訴訟とは別の相手方に対する個人攻撃とみられ、相手方当事者からの中止の警告を受けてもなお訴訟における主張立証に名を借りて個人攻撃を続ける場合には、訴訟上の主張立証であることを理由とする違法性阻却は認められない」と述べて、Aさんの責任を認めました。

Aさんの弁護士についても、「Aさんの意思を知りながら、少なくとも幇助者(民法719条2項参照)となって、民法719条の共同不法行為を行ってしまったものと推認される」と判断して、弁護士の責任も認めました。

この裁判から言えることは、「裁判の場ではある程度攻撃的な表現を用いることはやむをえないが、個人を攻撃することを目的として執拗に誹謗中傷をすると不法行為となる」ということです。

弁護士を訴える場合の費用

弁護士を訴えるためには、やはり弁護士を雇わなくてはいけません。

一度弁護士から嫌な思いをされているので、「もう二度と弁護士に依頼したくない」と考える方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、弁護過誤の事案は複雑な場合が多いので、お一人で戦うには非常に大変な作業となります。

裁判が終わるまでには長い時間がかかりますし、複雑な法的手続きもご自身でこなさなければいけません。

弁護士に依頼することなくお一人で戦おうとすると、精神的に疲弊してしまうおそれがあります。

一度弁護士に失望しているので、また弁護士事務所を訪れることには勇気がいるかもしれません。

けれども、弁護士を訴えるためには法的な武装が必要です。弁護士によって嫌な思いをしているので大変お辛いことだとは思いますが、その弁護士の責任を追及するためにも、新たに信頼できる弁護士を味方に付けることが必要です。

まとめ

ご自身が依頼した弁護士の方針に不満がある場合は、委任契約違反や説明義務違反を理由として弁護士を訴えることができます。

弁護士の方針そのものが正しくても、依頼者に分かりやすい説明をしていなければ、説明義務違反として責任追及をすることができます。

相手方の弁護士から侮辱的な表現を受けた場合にも、名誉毀損やプライバシー侵害を理由として責任追求をすることができます。

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山根浩

山根浩

フリーライター。東京都生まれ。2008年よりインターネットメディアを中心に法律、スポーツ、健康といった幅広いジャンルで執筆活動を開始。2010年以降は法律ジャンルに特化し、離婚、相続、交通事故、近隣トラブル、職場トラブルといった身近な法律トラブルに関する執筆を多く担当している。
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