養育費の未払いは許さない!支払わない夫への請求フロー

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養育費が支払われなくなったら

元夫と離婚する際、養育費についてきちんと取り決めをしたはずなのに、振り込まれるはずの養育費が振り込まれていないという事態に直面する人は、実は少なくありません。

離婚するに至った大人同士の事情はさておき、未成年の子どもに対する責任は、親としてきっちり果たさねばなりません。

私も離婚経験者であり、前妻との間に子供もいますが、養育費は給料日にすぐに振り込むようにしています。
これは親として最低限の責任だと思っています。

今回は、養育費が未払いになった場合は、どう対処したらいいのかを分かりやすくご説明いたします。

養育費の支払い率

まず、養育費の支払い状況について、データを見てみましょう。

厚生労働省の「平成23年度全国母子世帯等調査」によると、6割の離婚母子世帯は、父親から養育費を一度も受け取ったことがないという実態が浮き彫りになっています。

養育費 支払い率

更に信じられないことに、婚直後は養育費を受け取っていたものの、途中で支払いが途絶えたケースも多く、実際に養育費を受け取っている離婚母子世帯は、全体の2割程度でしかない現実があります。

これは離婚後に離れて暮らす父親の8割が、親としての責任を果たしていないことを表しており、とても悲しい事実です。
と同時に親権を持つ母親の方も、父親との面会をさせないまたはさせられない事情があることも、離婚後に父親との距離が大きく離れてしまう一因になっているように思います。

なぜこんなにも養育費の支払い率が低いのか

では、支払いが滞る原因は何でしょうか?

父親側の経済的困窮がまず想像されるのですが、実は、そうではないのです。

なぜなら、本当に養育費の支払いが困難とみられる年収200万円未満の父親は、全体の2割程度だからです。

ほとんどの父親が支払い能力を持っているのです。

したがって支払い能力を持っているにも関わらず、父親としての責任を放棄している実態がここから読み取れます。

一方、先の調査によると母子家庭の平均年収は、223万円となっています。

そしてこれは、児童扶養手当などの様々な手当を含んだ数字です。
全世帯の平均年収は430万〜450万円と言われていますので母子家庭の平均年収はその約半分です。

つまり母子世帯のほとんどが経済的に困難な状況に置かれているということを示しています。

この問題の解決には、社会全体で母子家庭に支援をするのと同時に、養育費支払いの責任を有する者にきちんと責任を果たさせることが大事であると言えます。

また、離婚後に子供と父親との定期的な面会の場を設けることで、父親の方も責任を実感し、養育費の支払い率が上がるようになるのではないでしょうか。

では、本題である、養育費が未払いになった際の請求フローについて、ご説明したいと思います。
離婚の仕方にはいくつかありますので、パターン別に見てきましょう。

協議離婚(離婚公正証書なし)で離婚した場合の回収フロー

協議離婚で別れる夫婦は、全離婚の90%を占めるといわれています。

離婚時の取り決めは離婚協議書という形で契約書にし、公証証書化をしておく方が、離婚後のトラブルを抑止する効果が働くので理想的です。

しかしながら、実態としては、契約書を作らず、公正証書にしていない夫婦が大半だと思われますので、多くの方がこのパターンに当てはまるでしょう。

このパターンの養育費回収フローは以下の通りとなります。

①相手と連絡を取り、養育費を支払うよう促す

最初は、電話やメールをする、直接会う、手紙を出すなどの穏当な方法で、相手との接触を図ります。
そうして、きちんと支払い期限を区切ったうえで、支払うよう促します。

②内容証明郵便を送る

内容証明郵便とは、手紙の内容について郵便局が証明をしてくれる郵便です。

そのため、証拠としての能力があり、差出人の本気度を伝えることになるので、相手へ心理的プレッシャーを与えることができる方法です。

内容証明郵便の作成方法ですが、もちろん自分で書くことができます。

作成の際のルールですが、用紙一枚当たりの文字数に決まりがあり、縦書きの場合は、1行あたり20字以内、1枚あたり26行以内で書くことになります。

さらに、同じものを3部用意することが求められています。これは、原本の他にコピーを2部取ればよいでしょう。

なお、用紙が2枚以上になる場合は、ホッチキス等でとめ、差出人の印鑑(認印で可)で各ページに割り印(契印)を押します。

作成したら郵便局へ持参し、内容証明郵便及び配達証明郵便での発送を依頼します。

1,2は当事者同士での話し合いです。
これがうまくいかなくなったら第三者(裁判所)の力を借りて話し合いを進めることになります。

③調停または審判の手続きをする

家庭裁判所に対して、養育費請求の調停または審判を申し立てます。

・調停の場合
相手方の住所地の家庭裁判所又は、当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てをします。

・審判の場合
子どもの住所地の家庭裁判所に申し立てをします。

いずれの場合にも、自分一人で進めていくことが難しければ、早めに弁護士等の専門家のアドバイスを受けながら進めていくことが大切です。

ちなみに、 最高裁判所事務総局家庭局によると、養育費を求める審判や調停は2009年以降では年間約2万件台で推移しているそうです。

協議離婚(離婚公正証書あり)で離婚した場合の回収フロー

協議離婚のうち、きちんと離婚公正証書を作成して別れた場合は、以下の方法をとるのがよいでしょう。

①相手と連絡を取り、養育費を支払うよう促す

最初は、電話やメールをする、直接会う、手紙を出すなどの穏当な方法で、相手との接触を図ります。
そうして、きちんと期限を区切ったうえで、支払うよう促します。

②内容証明郵便を送る

内容証明郵便とは、発送の日時、差出人と受取人、手紙の内容について、郵便局が証明をしてくれる郵便です。
そのため、証拠としての能力があり、差出人の本気度を伝えることになるので、相手へ心理的プレッシャーを与えることができます。

離婚公正証書を作成していても、まずは穏当な方法で進めていきましょう。

③強制執行を行う

強制執行を行うためには、まず、それができる権利を証明する公的な文書が必要となります。

そして、離婚公正証書を作る最大の目的は、この強制執行を可能とする文書を事前に作っておくということなのです。

そのため文章内には、強制執行認諾文言という一文を入れておかなければなりません。

これは、強制執行をされても文句は言いませんよという意味の文です。まずこれが入っているか確認しましょう。
これが入っていれば、離婚公正証書による強制執行が可能です。

その他、準備するべきものは、相手方の財産の情報です。

裁判所はそこまでは調査してくれませんので、相手方の勤務先や、口座の情報などを把握する必要があります。
(ここが少しハードルが高いかもしれません。)
そして、裁判所に対し強制執行の申し立てを行います。

離婚調停で離婚した場合の回収フロー

離婚調停で離婚した場合は以下の手順で進めていくのがいいでしょう。

①相手と連絡を取り、養育費を支払うよう促す

最初は、電話やメールをする、直接会う、手紙を出すなどの穏当な方法で、相手との接触を図ります。
そうして、きちんと期限を区切ったうえで、支払いを促します。
まずは、穏当な方法から始めるのは基本です。

②履行命令、履行勧告制度を利用する

これは、調停を行った裁判所に申し立てることができ、裁判所から相手方に対し勧告・命令をする制度です。

利用する際は、裁判所に対し手数料の納付はいりませんし、口頭による申立ても認められています。

そして裁判所からの公的な催告なので自分でする方法より強いプレッシャーを相手にかけることができます。

相手が従わなかった時の強制力はありませんが、まず試してみる価値はあるでしょう。

③強制執行を行う

最後の方法は、強制執行になります。

先に述べたようにこれを行う場合は、公的な文書が必要となりますが、離婚調停で離婚した場合に作成する調停調書も、強制執行を可能とする文書の一つなのです。

したがって、これを使って強制執行の手続きを進めていくことになります。

相手が経済的に払うことができない場合

養育費 支払えない場合

まず、経済的に支払えないという状況でも、養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。

また、経済的に支払うことができないといってきた場合、いろいろなパターンが考えられます。

再婚相手との生活を優先するため、養育費の支払いが困難といってきた場合

実は、結構多いパターンです。ある程度の年収がある父親は、離婚後再婚することが多く、新しい家庭を優先し、結果として、養育費を未払いにしてしまうことが多くあります。

年収200万以下等の低収入の場合

この場合でも、平均年収223万円といわれる母子家庭と比べたら余裕はあるとみることもできますし、同じような収入で母と子で暮らしている方としては、1万円でも収入がある方が助かります。

上記1,2の場合は、まずは粘り強く話し合いをしましょう。

相手が自己破産等の経済的に切迫した状況の場合

この場合でも、養育費の支払い義務はなくなりませんが、相手からの減額請求に応じざるを得なくなることはあり得ます。

相手の親に養育費の支払いを請求できる?

最後に、父親に支払い能力がない場合、その親に請求できないかについてみていきます。

祖父母から孫への扶養義務

祖父母であっても、孫に対する扶養義務は存在します。
但し、優先順位としては、父母が有する扶養義務が上です。

さらに、祖父母もない袖は振れません。祖父母の孫への扶養義務というのは、祖父母の生活に余裕があるならば、果たしなさいという程度の義務なのです。

ですので、そこのところを考慮したうえでなら、祖父母に請求することも可能となります。

連帯保証人にしておく

一つの方法として、養育費の取決めをする際に、祖父母を連帯保証人としておけば、父親本人の支払いが滞った時に、連帯保証人である祖父母への請求が可能となります。

離婚前の結婚生活において、どれだけ孫を祖父母に会わせていたかにもよると思いますが、孫への愛情が深い祖父母であれば支払いに応じる可能性はあるかもしれません。

母親側も面会の場をしっかり設けることが重要

今回は離婚後トラブルの1つである養育費未払い問題について整理しました。

既に離婚をしている人だけでなく、将来の離婚を考えている人にとっても、離婚後トラブルとその対処法について考えるきっかけとなりましたら幸いです。

離婚後トラブルに関しては、慰謝料・養育費の未払い問題と、子供との面会が約束どおりに成されないという問題が頻繁に報告されています。

実はこの2つの問題には密接な関係があり、母親側は「養育費を払わないような父親には子供を会わせない」と考えがちであり、父親側は「子供に会えないから、(父親である実感がどんどん無くなっていき)養育費を払う意味を感じられない。だから払わない」と考えがちです。

これはどちらにも非があり、母親側はたとえ養育費が支払われていなくても、まず子供と父親との面会を実現する父親側はたとえ子供との面会が実現していなくても、まず養育費を払うという行動が大切になります。

離婚後も子供のために元夫婦双方が歩み寄ることが、大切なのではないでしょうか。

今回は離婚後のトラブルについて考えてみました。

このテーマは相談件数が多いので、また別の機会にもクローズアップしたいと思います。

追記:将来養育費の強制執行のハードルが下がるかもしれない

2016年6月4日付読売新聞朝刊によると慰謝料、養育費などの不払い対策として法務省が新たな制度を導入する方針を固めたそうです。

現行の「強制執行」制度では不払い者(債務者)の財産を裁判所が差し押さえられると定められていますが、支払いを受ける側(債権者)が相手方の財産の所在(口座)を特定しないと差し押さえができないようになっています。具体的には金融機関の支店名まで突き止める必要があります。

離婚して別居している相手の銀行に関する情報を特定するのは現実的でなく、差し押さえができないケースも多いことから、2016年6月に法務省は「不払い者(債務者)の預貯金口座を裁判所を通じて特定できる新たな制度」を導入する方針を固めました。ただし、2018年に通常国会への改正案提出を目指すということで、施行となるともう少し先になるでしょう。

養育費の未払い時の強制執行

将来、強制執行が実施しやすくなることと、抑止効果が働いて、慰謝料、養育費の不払い自体が減り、泣き寝入りする方が減ることを願ってやみません。ちなみにフランスやドイツ、韓国などでは今回のよう制度がすでに導入されているそうです。

離婚後のトラブルの備えに弁護士費用保険

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弁保社長

弁保社長

弁保社長。慶應義塾大学卒業後、大手エネルギー関連企業、ベンチャー企業の取締役を経て、2014年に弁護士保険募集代理店として㈱マイクコーポレーションを創業。 幼少期をアメリカで過ごし、訴訟リスクについて親友の父(弁護士)より学ぶ。 自身の離婚経験、友人の相続トラブル、後輩の勤務先企業からの不当解雇など身の回りで弁護士に依頼をした事例が多数起こり、日本での訴訟リスクの高まりと弁護士費用保険の必要性を感じたことをきっかけに、「誰もが小さなトラブルでも気軽に弁護士に相談できる社会」を目指し、広く日本初の弁護士費用保険である「Mikata」の普及促進を図っています。(さらに詳しいプロフィールはこちら
弁保社長
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