みなさんは「パラリーガル」という職業を聞いたことがあるでしょうか?
まだまだ世間に浸透しているとは言えませんが、パラリーガルとは、弁護士が日々の業務を行う上で欠かせない存在なんです。
簡単に言ってしまえば弁護士事務所の事務職員のことなのですが、パラリーガルは一般的な事務職とは違い、弁護士業務をより効率的に遂行するため、弁護士による指示と監督のもと、限定的な法律に関わる専門的な業務を取り扱う職業です。
今回は、そんなパラリーガルについて、簡単にご紹介していこうと思います。
パラリーガルの認知度
パラリーガルという職業は、実はアメリカが生誕地となっています。
そして現在のアメリカでは、大学や専門学校などでパラリーガルの養成を行うほど広く認知され、世間からも弁護士からも必要とされている存在です。
また、その取り扱う業務の専門性の高さから、アメリカではすでに法律の専門家としての地位を確立していると言えます。
一方、日本では、まだまだパラリーガルという職業は広く認知されていません。
その理由としては、いまだ公的な資格として認められていないということがあげられます。
しかし、数年前より日本弁護士連合会にて「法律事務職員能力認定試験」が実施されるなど、法律事務職としての能力を認定する制度もでき、いずれは日本でもパラリーガルという存在が公的に認知される日がくるかもしれません。
今後、ますます活躍が注目される職業です。
パラリーガルになるには?
では、パラリーガルになるにはどうすればよいのでしょうか?
その答えとして、まずは法律事務所に勤務をすることです。
ただ、パラリーガルとしての募集をしている法律事務所もあるにはありますが、多くの弁護士はパラリーガルが取り扱うような専門的な分野以外についても手助けをしてほしいと考えているため、パラリーガルという限定的な募集をしている法律事務所は少ないです。
パラリーガル募集と掲げているのは、専門的な分野以外の事務員がすでに揃っていたり、大規模な法律事務所であったりといった場合に限られてきます。よって、中小規模の法律事務所であれば、単に事務職員募集としているところがほとんどです。
とは言え、中小規模の法律事務所であっても、その能力が評価されれば専門的な法律業務に携わることは可能ですので、まずはパラリーガルという言葉だけにこだわらず、法律事務所での業務に携わることが将来的にパラリーガルと呼ばれるために重要です。
法律に詳しくないとパラリーガルになれない?
パラリーガルになるためには、法律の知識も当然必要ですが、なにも大学や専門学校で法律について学んでいなければならないわけではありません。
よく、将来的に司法書士や弁護士を志している方が、実務の勉強のためにパラリーガルとして法律事務所にて業務を行っているという例はあります。
しかし、法律についてまったくの無知であっても、法律事務所で事務職員として日々の業務をこなしながら、少しずつ法律の知識を深めていくことはもちろん可能です。
つまり、今まで全くといっていいほど法律に触れたことがなかった方であっても、日々、弁護士の近くで法律に携わることによって、パラリーガルと呼ばれる存在になることも可能というわけです。
とは言え、そんなパラリーガルにも向き不向きはあります。パラリーガルに向いている方というのは、「法律について学ぶことが好き」であり、「法律問題に困っている方を助けたいという思い」を持っている方です。
また、これらはパラリーガルになるために、とても重要な志であると言い換えることもできます。
パラリーガルを目指す上で知っておくべきこと
パラリーガルになるということは、弁護士と同じ情報を共有するということです。
弁護士は様々な依頼者から、様々な内容の依頼を受け、その法的問題を解決するべく、日々の業務に勤しんでいます。
そして、弁護士はそのすべての依頼について「守秘義務」を負っているため、弁護士と同じ情報を共有するパラリーガルも守秘義務について厳守しなければなりません。
ただ、あくまでもパラリーガルというのは、弁護士の指示と監督のもと法律に関わる業務を行うことになるため、何かあった際の最終的な責任というのは、弁護士が被ることになります。
しかしながら、安直な気持ちで法律業務に携わることはあってはなりません。
法律相談に来られる方というのは、これ以上自分ではどうしたらいいのか分からず、藁にもすがる思いで相談に来られる方がほとんどです。
そういった方に手を差し伸べるためには、しっかりと守秘義務についても責任を持ち、解決へと導く手助けをするのだという意識を常に持っていなければなりません。
パラリーガルになるとは、こうした責任の一端を弁護士と共に自らも背負うということです。
パラリーガルは資格も必要なく、誰にでもなることができる職業ではありますが、誰にでも務まる職業ではありません。
パラリーガルの年収
パラリーガルについて色々とご説明してきましたが、パラリーガルを目指す方にとっては、どれくらいの年収なのかというのは気になるところですよね。
パラリーガルは法律に関わる仕事ではありますが、その年収は、世間一般のサラリーマンと同等程度、もしくはそれ以下であることが多いようです。
やはり、パラリーガルが資格化されていないという点が、年収にも影響しているようです。
パラリーガルの年収事情についてもう少し詳しく知りたいという方は、是非こちらの記事もご覧になってみてください。
・パラリーガルの仕事内容・やりがいや年収。実際のところどうなの?
今、パラリーガルが必要とされる理由とは?
現在、司法制度改革によって弁護士の数が飛躍的に増大し、まさに弁護士市場は飽和状態にあると言えます。
中にはやっとの思いで司法試験に合格し、弁護士資格を得たにも関わらず、まったく就職先が見つからないという弁護士もいるほどです。
その結果、即独弁護士といって司法修習終了後、即座に独立経営をし、自らの事務所をかまえるという弁護士も増えてきました。
また、弁護士会による報酬規定の撤廃、広告や宣伝の自由化がされたことによって、より弁護士同士の顧客争いは激化し、社会からは今まで以上にリーズナブルで質の高いリーガルサービスが求められています。
こうした背景もあり、即独弁護士や小規模な法律事務所にとって、様々な業務を手助けしてくれる事務職員の存在は欠かすことができません。
そして、より質の高いリーガルサービスを提供するためにも、事務職員の質の向上、つまりは、高度な専門知識を有しているパラリーガルの存在が求められているのです。
このような時代の流れによって、今まさに多くの弁護士からパラリーガルが必要とされています。
永瀬 優(パラリーガル)

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