暴言でもアウト?教師の体罰の法律的な定義や基準/相談先は学校か教育委員会か

この記事の執筆者

岡 高志(行政書士・社会福祉士)

体罰教師

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こんな疑問にお答えします

Q.暴言や体罰は訴えることができますか?

A.報告される体罰件数は少ないのですが、表に出ない体罰事案が数多くあると思います。体罰を訴えても、体罰ではなくて必要な懲戒であると教師や学校に言い逃れされて、有耶無耶になっている事案が数多くあります。

学校や教師に抗議したら、PTAや学校の目の敵にされる恐れはあります。適切に準備をして体罰被害を訴えることをおススメいたします。

具体策については、弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。

保険が弁護士費用の負担をしてくれるので助かります。

2012年の大阪市立桜宮高校での体罰事案が発生してから、体罰禁止が求められ、体罰の発生件数は少なくなったといわれています。

たしかに、全国的に学校での体罰は減少傾向にあります。

東京都では、東京都教育委員会が2013年から体罰根絶に向けた総合的な対策に取り組んでいます。

その甲斐もあってか、東京都の公立学校での体罰や不適切な行為の報告件数は、少しずつですが減少傾向ににあります。
体罰の件数※東京都教育委員会「平成30年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握について(概要版)」を基に作成

しかし、公表されている件数の他にも、未だに見過ごされている体罰や泣き寝入りをしている生徒も存在するでしょう。

体罰問題で泣き寝入りしないためには、どうすれば良いのでしょうか?

大田区議会議員時代から学校トラブルの問題に力を入れてきた立場から、体罰の現状について詳しく解説してまいります。

体罰の定義から

本当に教師による体罰は法律で禁止されているのか

学校教育法第11条では、

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。但し、体罰を加えることはできない。

引用元:文部科学省「学校教育法(昭和二十二年三月二十九日法律第二十六号)」

と定めており、体罰は禁止されています。

一方で、生徒及び児童に懲戒を加えることができるとして、教師の懲戒権が法律により認めています。

体罰を訴えても、「体罰ではなくて必要な懲戒である」と教師や学校は言い逃れしていることも少なくないのでしょう。

法的に体罰になるケースを見てみよう

文部科学省では下記の行為を体罰の例として示しています。

  • 授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。
  • 立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につかせる。
  • 生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩(たた)く。
  • 部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該生徒の頬を殴打する。

暴力だけでなく、子どもに肉体的苦痛を与えるようなものとして、

  • 放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。
  • 別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない。
  • 宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。

具体的に示されると、自分の受けたのが体罰であったか否かが判定しやすいですね。

暴言でも生徒がひどく傷つけば処分になる可能性も

学校教育法読む限り、言葉の暴力と言われるような子どもに精神的苦痛を与えるものは体罰になるかは不明確です。

だからといって、教師による暴言が全て許されるわけではありません。

実際、東京都の「体罰の定義・体罰関連行為のガイドライン」では、

暴言や行き過ぎた指導は、体罰概念に含まれないが、体罰と同様に、教育上不適切な行為であり許されないものである。

と明記されております。

具体的には

「罵る、脅かす、威嚇する、人格(身体・能力・性格・風貌等を否定する、馬鹿にする、集中的に批判する、犯人扱いするなどの言動を行った場合 」

として

  • 授業中、解答を間違えた児童に、「 犬のほうがおりこうさん」と馬鹿にした。
  • 事情を聴取している最中答えない生徒に対し、棒で机をたたいりして威嚇した。

というケースでも暴言等に該当するのです。

また、詳細は後述しますが2018年に生徒が暴言により自殺した事件では、顧問が書類送検されています。

体罰と懲戒の境界線はどこか。体罰にあたらないケースとは

文部科学省によると、体罰に当たらないケースとして以下の3つを示しています。

①懲戒権の範囲内と判断されると考えられる行為

  • 放課後等に教室に残留させる。
  • 授業中、教室内に起立させる。
  • 学習課題や清掃活動を課す。
  • 学校当番を多く割り当てる。
  • 立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる。
  • 練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させる。

②正当防衛と考えられる行為

  • 児童が教員の指導に反抗して教員の足を蹴ったため、児童の背後に回り、体をきつく押さえる。

③正当行為と判断されると考えられる行為

  • 休み時間に廊下で、他の児童を押さえつけて殴るという行為に及んだ児童がいたため、この児童の両肩をつかんで引き離す。
  • 全校集会中に、大声を出して集会を妨げる行為があった生徒を冷静にさせ、別の場所で指導するため、別の場所に移るよう指導したが、なおも大声を出し続けて抵抗したため、生徒の腕を手で引っ張って移動させる。
  • 他の生徒をからかっていた生徒を指導しようとしたところ、当該生徒が教員に暴言を吐きつばを吐いて逃げ出そうとしたため、生徒が落ち着くまでの数分間、肩を両手でつかんで壁へ押しつけ、制止させる。
  • 試合中に相手チームの選手とトラブルになり、殴りかかろうとする生徒を、押さえつけて制止させる。

体罰を受けたらどこに相談するのがベストか

体罰を受けたら真っ先に教師や学校に相談に行ってしまうかもしれませんが、体罰ではなくて必要な懲戒であると教師や学校は言い逃れする可能性があります。

そんなやるせなさを感じる前に、弁護士、行政書士など法律の専門家にご相談ください。

地元の議員に相談するのもいいのですが、教員組合や行政側に立つ議員も多いので、よく見極めてご相談なさってください。

いずれにしても、証拠を集めていただいたほうが、具体的な解決に繋がります。

証拠とは、ケガをした際の診断書、ケガの写真、体罰時の動画や音声、同級生たちの証言(LINEのスクショも有効です。)などです。

体罰教師を罰することはできるのか。

体罰教師は刑事罰をうけるのか?警察に相談すれば逮捕されるのか

体罰教師は刑事罰をうけるのでしょうか。

しっかりした証拠があって事件が重大であれば、警察も対応してくれることがあります。重大事案であれば、教師に有罪判決も出ています。

とはいえ、警察は学校の中に入ることに消極的ですから、警察の捜査の対象になることはあまりないでしょう。

そのような理由から警察への相談はあまりオススメできません。

体罰教師から慰謝料はとれるのか?民事裁判で訴えれば慰謝料をとれるか

体罰教師に損害賠償を請求することはできるでしょうか。

生徒がケガ等の被害を受けた場合、教師個人は民法709条(不法行為)に基いて損害賠償を負う可能性があります。

つまり、被害を受けた生徒に対して、治療費や慰謝料などの損害賠償を支払う責任です。

六法全書
不法行為責任とは?要件や時効について事例を交えてわかりやすく解説

「不法行為」とは、事件や事故によって損害が生じることです。 実は、私たちの日常生活には、交通事故やケンカや不倫など、不法行為に巻き込まれる危険が潜んでいます。 被害者となる可能性だけでなく、不法行為の「加害者」となるリス …

しかし、裁判で確実に治療費や慰謝料を勝ち取るには、やはり十分な証拠が必要になります。

また、公立の学校で教師が公務員であれば、国家賠償法第1条により、教師は原則として責任を負わないことになっており、国や自治体が賠償責任を負います。

もちろん、教師の故意や重大な過失がある場合はこの限りではありません。

体罰教師はクビになる?

2012年の大阪市立桜宮高校での体罰事案を受けて、2013年「体罰根絶に向けた取組の徹底について」の文部科学省通知が発せられました。

体罰等の報告・相談があった場合、学校の管理職は、直ちに関係する児童生徒や教員等から状況を聴取し、その結果を教育委員会へ報告するとともに、被害児童生徒の受けた心身の苦痛等を踏まえ、その回復のため真摯に対応すること。

また、教育委員会は、学校からの体罰等の発生の報告を受け、事実関係の正確な把握など必要な対応を迅速に行うこと。

加えて、県費負担教職員の服務監督権者である市町村教育委員会においては、都道府県教育委員会に事案及び対応措置を報告する。

以上のような取り組みの徹底が示されています。

徹底されてるとは感じませんが、ご自分の周りで体罰で苦しんでいる子どもがいるのならば、適切に申し出て調査や処分を迫ることもできます。

そのためには、学校や教育委員会に対して、体罰の報告・相談があったことを認知させなければいけません。

教師や学校の言い逃れでうやむやにならないように物事を進めなければなりません。

教育委員会には調査結果が報告されることとなってますから、調査結果を踏まえて、体罰教師に処分が下るようにフォローすることができます。

方法論については、弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。

東京都の教職員の主な非行に対する標準的な処分量定が定められています。
ご参考になさってください。

行為の種類
処分の量定
・体罰により児童・生徒を死亡させ、又は児童・生徒に重篤な後遺症を負わせた場合
・極めて悪質又は危険な体罰を繰り返した場合で、児童・生徒の苦痛の程度が重いとき(欠席・不登校等)
・免職
・常習的に体罰を行った場合
・悪質又は危険な体罰を行った場合
・体罰により傷害を負わせた場合
・体罰の隠ぺい行為をした場合
・停職
・減給
・体罰を行った場合
・戒告(言葉による注意)
・暴言又は威嚇を行った場合で、児童・生徒の苦痛の程度が重いとき(欠席・不登校等)
・常習的に暴言又は威嚇を繰り返した場合
・暴言又は威嚇の内容が悪質である場合
・暴言又は威嚇の隠ぺい行為を行った場合
・停職
・減給
・戒告(言葉による注意)

尚、私立学校の場合は、学校法人の就業規則に基づき懲戒処分の対象になりますが、概ね上記と同じような基準となると考えてよいでしょう。

保育園の体罰について

学校、特に公立学校の体罰事例について説明してきました。

保育園定員の増大とともに、保育園の体罰も発生しています。

被害者である子どもが幼くて被害を訴えられないということもあってか、あまり表面化しません。

学校と違って、保育園の先生には、学校教育法でいう懲戒権は与えられていません。

体罰が広い範囲で認定されるはずなのです。

証拠の点では、保育園では室内に防犯カメラが設置されていることもあります。

防犯カメラを設置している保育園であれば、疑わしい時は、行政とも相談の上、防犯カメラの開示を求めるのも有効です。

体罰事件(暴言含む)の事例

大分県立竹田高校剣道部死亡事案(2009年)

大分県立竹田高校剣道部の男子生徒が練習中に熱中症になり意識混濁を起こし、ふらつきながら竹刀を持たずに構えるなどの行動をとったのに対し、顧問が「演技じゃろうが」と言って倒れた生徒の上に跨って平手で顔を殴打する暴行を加えた。生徒は昏倒後、錯乱と痙攣を起こし、搬送先病院で死亡した。
大分県などに合わせて4,600万円余りの損害賠償を認めた。

大阪市立桜宮高校体罰 男子バスケットボール部主将自殺事案(2012年)

大阪市立桜宮高校体罰 男子バスケットボール部の顧問が平手打ちなど日常的に選手に暴力を行なった。生徒は自殺。
顧問が傷害と暴行の罪で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決
顧問に4361万円の損害賠償命令。
大阪市に計約7,500万円の損害賠償命令。

岩手県立不来方高校 男子バレーボール部3年生の自殺(2018年)

岩手県立不来方高校 男子バレーボール部3年生が顧問から「おまえのせいで負けた」「だから部活やめろって言ってんだよ」「もうバレーするな」「頭に脳みそ入っているのか」といった強い言葉を浴びせられて自殺。
両親が刑事告訴し書類送検。

大田区立徳持小学校 体罰傷害事案(2015年)

大田区立徳持小学校で教師が授業中に、竹製の物差しで消しごむを飛ばして遊んでいた3名の児童を指導した際、3名の頭頂部を同物差しでそれぞれ1回ずつたたき、1名の児童に外傷性頭部帽状腱膜下血腫の障害を負わせた。

大田区立南六郷中学校 体罰傷害事案(2015年)

大田区立南六郷中学校で教師が授業中に教師に対する発言について生徒を指導した際、左手で同生徒の右耳を引っ張り右耳垂発赤腫脹の障害を負わせた。
ちなみに大田区立南六郷中学校では過去5年に3回もの体罰傷害事案が発生している。

私立普連土学園高校 部活の合宿中の体罰(2011年)

剣道部の合宿中、顧問が当時2年生だった女子生徒の腹を2回蹴って転倒させ、コーチは竹刀でのどを突いたり、体当たりして転ばせたりした。女性は頸部挫傷を負い、一時登校できなくなった。
裁判では学校法人と顧問とコーチに計90万円の支払いが命じられた。
学校側の処分では、顧問は減給処分、コーチは解雇された。

体罰被害にあったら泣き寝入りしないで訴えましょう。

報告される体罰件数は少ないのですが、表に出ない体罰事案が数多くあると思います。

体罰を訴えても、体罰ではなくて必要な懲戒であると教師や学校に言い逃れされて、有耶無耶になっている事案が数多くあります。

敬意を払う対象である教師から不当な暴力を受けて泣き寝入りすることが子どもたちにとってよいことなのでしょうか。

不正に対して果敢に立ち向かう勇気を子どもたちには培ってもらいたいです。

そうはいっても、学校や教師に抗議したら、PTAや学校の目の敵にされる恐れはあります。適切に準備をして体罰被害を訴えることをおススメいたします。

具体策については、弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。

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学校の中の部活動というコミュニティは社会全体からみればとても小さな単位ですが、生活の大部分を占める学生にとっては、そこで継続的にハラスメントを受けるという状態は心身の大きな負担となります。学生という弱い立場であるために反抗することもできず、不登校や自殺に追い込まれているという学生もいます。学校での部活動におけるパワハラは、社会全体で考えるべき問題といえるでしょう。