海外ツアー旅行中に置き去りに!慰謝料は請求できる?

 


安心・安全に海外旅行を楽しむため、旅行会社の企画した海外ツアーに参加する人は多いでしょう。

しかし、海外ツアーで置き去りにされてしまうというケースも、ごく稀にあるようです。

海外で置き去りにされてしまったら、とても不安ですよね。

そのような場合に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

今回は実際にあったAさんの事例(岐阜地裁、平成21年9月16日)を御紹介します。

Aさんの事例

Aさんは、旅行会社の企画する海外ツアーに申し込み、トルコ旅行に行きました。

この旅行は、旅行会社の従業員が添乗員としてすべての旅行行程に同行するもので、トルコではさらに現地ガイドも同行していました。

トルコに到着した翌日、Aさんたち一行はベルガマ遺跡の観光を行う予定でした。

ここではアスクレピオン、アクロポリスの順に観光することになっていましたが、そこで悲劇は起こりました。

なんと、ツアーで使用していた専用バスが、Aさんを乗せないままアスクレピオンを出発し、アクロポリスへと向かってしまったのです。

アスクレピオン観光は、現地ガイドが先頭に立ち、ツアー参加者はその説明を聞きながら付いて歩くという方法で行われ、添乗員は参加者の後方に付いて歩いていました。

アスクレピオン観光終了にあたり、ツアー参加者は現地ガイドの先導でバスに向かいましたが、なんとこのときAさんは、勝手に土産物屋で買い物をしていたのです。

そして、添乗員はAさんがいないことに気付かないまま、バスを発車させてしまいました。

外国語に通じておらず、わずかな通貨とクレジットカード、デジタルカメラしか所持していない状況で、異国の地に置き去りにされてしまったAさん。

バスが引き返してくることを期待して10分ほど待機しましたが、添乗員はAさんがいないことに気が付いていないため、迎えに来てはくれません。

結局、Aさんは近くにいた別の日本人旅行者の車に同乗し、アクロポリスに3分ほど遅れて到着しました。

帰国後Aさんは、添乗員が点呼や確認等を怠ったことは旅行契約に付随する義務の不履行にあたる等と主張して、旅行会社に対して使用者責任に基づく慰謝料20万円の支払いを求めて裁判を起こしました。

判決結果

裁判所は、添乗員について

「旅行者である参加者らの身体、生命の安全を確保するため、参加者ら全員がバスに乗り込んだか否かを点呼するなどして自ら確認するか、これらの作業を現地ガイドに行わせる場合には、その旨を確認すべき義務があった」

としたうえで、添乗員が漫然とこれらを行わなかったために置き去り事故が発生したことから、旅行会社には使用者責任に基づく損害賠償責任があると判断しました。

一方で、アスクレピオン観光では自由行動時間がなく、ツアー参加者にはバスに乗車するまで個人行動を慎む義務がありました。

それにも関わらずAさんは勝手に集団から離れてこの義務を怠ったという過失があることから、過失相殺は50%とされました。

これらのことを踏まえ、裁判所は、旅行会社に慰謝料1万5000円の支払いを命じました。

解説

今回の裁判結果について、以下で解説していきます。

添乗員の義務

旅行会社の添乗員は、社会通念上、旅行者の生命や身体、財産等の安全を確保するため、旅行日程中に遭遇する危険を排除すべく合理的な措置をとるべき義務を有しています。

今回の事例では、添乗員には、アスクレピオンを出発するにあたり参加者全員が専用バスに乗り込んだか否かを点呼するなどして確認すべき義務がありました。

しかし、添乗員はバスに乗り込んだ際に現地ガイドに「オーケー」と声をかけられたことを、現地ガイドが参加者の人数を確認して全員がそろっているという意味だと思い込み、点呼や確認をせずにバスを出発させてしまいました。

これにより置き去り事故が発生したことから、添乗員は旅行者が遭遇する危険排除のための合理的措置をとる義務に違反したとされました。

使用者責任

今回の事例では、前述のとおり添乗員に義務違反がありました。

しかし、添乗員本人ではなく、旅行会社に対して損害賠償責任が認められたのはなぜなのでしょうか?

これには、民法715条に定める使用者責任が関係しています。

第七百十五条  
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

民事的責任の追及は、基本的には直接的な加害者に対してなされます。

しかし、特殊な場合もあり、民法715条の使用者責任が認められた場合には、不法行為者(被用者)を使用している者(使用者)が損害賠償責任を負担することになります。

これは、使用者は被用者を使用することによって利益を得ている以上、被用者の使用によって生じた損害についても責任を負担すべきである、という考え方によるものです。

今回の事例では、旅行会社の従業員である添乗員(=被用者)が、業務遂行にあたって過失によりAさんに損害を与えてしまったため、添乗員を雇用している旅行会社(=使用者)に対して損害賠償責任が認められたのです。

標準旅行業約款について

旅行契約については、観光庁が定めた「標準旅行業約款」があり、ほとんどの旅行会社がこれと同様の約款を使用しています。

今回の事例のように、旅程や宿泊サービス、代金などがあらかじめ定められている旅行では、これらに変更が生じた場合に一定限度まで補償金が支払われます。

また、生命・身体・携帯品について損害があった場合にも約款の特別補償によって一定程度の補償金が支払われることになっており、今回の事例では約款で定められた補償金として、旅行会社はAさんに対して5000円分の商品券を交付していました。

一方、旅行会社に債務不履行等があった場合には、補償金の支払いだけでなく損害賠償請求も可能になります(ただし、補償金を受領していればその額は相殺されます)。

今回の事例では、旅行会社が5000円分の補償をしていることなどを踏まえ、慰謝料額は3万円とされました(50%の過失相殺により、実際の慰謝料額は1万5000円)。

まずは弁護士に相談を

今回の事例では旅行会社の責任が認められましたが、海外ツアーで旅行会社の責任を認めた判例は、あまり多くはありません。

海外ツアーでは実際にサービスを提供するのが旅行会社ではなく現地のサービス提供会社等であることが多く、旅行会社は間接的にしかツアーを支配できないことから、上で説明した使用者責任が認められにくいのです。

海外ツアーで置き去り被害にあってしまった場合、そもそも慰謝料を請求できるのかできないのか、判断が難しいといえるでしょう。

しかし、場合によっては慰謝料が請求できる可能性もあるので、まずは弁護士に相談してみるのがおすすめです。

まとめ

海外旅行はとても楽しいものですが、日本のように治安の良い国ばかりではありません。

海外ツアーで置き去りにされてしまったら大変危険ですので、添乗員の言うことをよく聞いて、勝手な行動は慎むようにしましょう。

それでも万が一、置き去りの被害にあってしまったら、まずは頼れる弁護士に相談してみましょう。

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弁保社長

弁保社長

慶應義塾大学卒業後、大手エネルギー関連企業、ベンチャー企業の取締役を経て、2014年に弁護士保険募集代理店として㈱マイクコーポレーションを創業。 幼少期をアメリカで過ごし、訴訟リスクについて親友の父(弁護士)より学ぶ。 自身の離婚経験、友人の相続トラブル、後輩の勤務先企業からの不当解雇など身の回りで弁護士に依頼をした事例が多数起こり、日本での訴訟リスクの高まりと弁護士費用保険の必要性を感じたことをきっかけに、「誰もが小さなトラブルでも気軽に弁護士に相談できる社会」を目指し、広く日本初の弁護士費用保険である「Mikata」の普及促進を図っています。(さらに詳しいプロフィールはこちら
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