過少申告加算税とは?納税者が納得できない場合の対応をわかりやすく解説

過少申告加算税とは?納税者が納得できない場合の対応をわかりやすく解説

「確定申告しているが、税務調査が来ないか不安…」

「確定申告したはずなのに、過少申告加算税を徴収されてしまった…」

確定申告に毎年頭を悩ませていませんか?

きちんと確定申告をしたつもりであっても、申告漏れや誤った申告で過少申告が発覚した場合、過少申告加算税が課される場合があります。

意図的な過少申告はもちろんNGですが、意図せずに過少申告が発生してしまうケースもあり、すべての納税者が過少申告加算税の内容に納得できるとは限りません。

そのような時は、不服申し立てをし、税務調査に対して反論をすることが可能です。

では、不服申し立てをする際、どのような手続きで申告の正当性を主張すればいいのでしょうか。

本記事では、過少申告加算税についての解説と、不服申し立てをする際の対応方法をわかりやすく解説します。

弁護士保険 事業者のミカタ

過少申告加算税とは?

過少申告加算税とは、納税者が税務署に提出した確定申告書に記載された金額が、実際に支払うべき金額よりも少ない場合に課される税金です。

これは、確定申告後に税務署が行う税務調査や、修正申告をした際に本来の納税額より低い税額を申告した際にペナルティとして課されます。

過少申告加算税の税額は申告した税額の不足分に基づいて決定されるのが一般的です。しかし、過少申告が故意または重大な過失によるものであれば、より重い加算税が課される可能性もあります。

税務調査の割合は1〜2%でも安心してはいけない

そもそも、税務調査はどれくらいの確率で行われるのでしょうか。

国税庁長官の講演「税務行政の現状と課題」によると、令和元年における税務調査の割合は以下のとおりです。

令和元年における税務調査の割合

法人:2.4%
個人:0.9%

参考:「税務行政の現状と課題

法人であれば約40社に1社、個人事業であれば100人に1人の確率です。こうしてみると税務調査が入る確率は低いように見えますが、この数字を見て安心してはいけません。

なぜなら、個人事業主に対する税務調査はランダムに行われているわけではなく、過少申告や無申告が疑われて税務調査が入るケースがほとんどだからです。

税務調査を受けやすい個人事業主や会社の特徴

税務調査を受けやすい事業主や会社には一定の傾向があり、以下のような特徴があります。

確定申告をしていない

当たり前ですが、そもそも確定申告を怠っている事業主や会社は、無申告と判断され税務調査の対象となります。

申告義務のあるにもかかわらず申告をしていない場合、違法行為となりますので必ず申告するようにしましょう。

確定申告が必要となる要件は国税庁HPに掲載されています。今一度確認してみてください。

確定申告が必要な方|国税庁

申告漏れが多い業種である

国税庁では、令和3年度における申告漏れの多い業種を以下のように発表しています。

1位:経営コンサルタント
2位:システムエンジニア
3位:ブリーダー

参考:国税庁 令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況​​​​

年度によって対象になりやすい業種は変わりますが、ランキングに入る業種は他業種より調査の対象になりやすいです。該当の業種で事業を行われている方は特に注意が必要になるでしょう。

売上が1,000万円に近い

日本の消費税制度では、基本的に年間売上が1,000万円を超える事業者が消費税の課税対象となります。

このため、売上が1,000万円付近の場合、税務当局はその事業が正確に売上を申告しているかどうかに特に注意を払うでしょう。

1,000万円を超えているのに意図的に過少申告を行った場合はもちろんですが、正しく申告した結果が1,000万円ギリギリの場合でも税務調査が入る可能性は高いです。

この水準の売上がたっている事業者・企業は早めに顧問税理士等をつけて備えておくことが重要です。

現金取引がメインである

現金取引が多い事業は、取引記録が不明瞭になりやすく申告漏れのリスクが高いため、税務調査の対象となりやすいです。

振り込みや手形といった形式を取らずに、現金のみで取引を行う事業者や、バーや飲食店、小売業などがこれにあたります。

新しいビジネス分野に参入している

新興市場や革新的なビジネスモデルを採用している事業者は、その新しさや独特の経済活動が税務当局の関心を引くことがあります。

たとえば令和3年度では、民泊やアフィリエイターを事業とする個人の多くが税務調査の対象になりました。

経費に不審な点が多い

経費の申告に不審なパターンが見られる場合、税務調査を受けるリスクが高まります。

特に、業種平均と比較して異常に高いあるいは低い経費が計上されている場合は注意が必要です。

例えば卸売業など接待・交際が少ないなずの業種で多額の交際費が計上されている場合や、仕入れ販売を行っているにも関わらず棚卸資産が確認できない場合などです。

明確な理由があり説明可能であれば問題ありませんが、税務調査のリスクを減らすためにも業種ごとの経費の内訳と平均は把握しておいて損はありません。

顧問税理士がついていない

専門的な税務のアドバイスを受けていない事業主や会社は、どうしても申告ミスや適切な税務対策不足となってしまいがちで、税務調査を受ける可能性が高くなります。

税理士に確定申告書の作成を依頼すれば、計上ミスなどの単純ミスがなくなるのはもちろんのこと、正しい税務知識に基づいた申告内容であると判断されやすく、税務調査が入る可能性は軽減できるでしょう。

税理士が作成する確定申告書には署名押印がなされますので、それが無い場合税務署側は、税理士に頼らず個人で行った申告であることがすぐにわかります。

過少申告加算税の税率

過少申告加算税の基本税率は「追加で徴収を受ける税額×10%」です。

ただし、増差税額の中で最初に申告した税金もしくは50万円のうち、大きい方の金額を超える部分についての税率は15%になります。

これに加え、延滞税も納める必要があります。

過少申告加算税の計算例

例1:期限内の申告税額が40万円、修正申告により追加で支払った税額が90万円の場合

期限内申告税額40万円で、50万円より少ないため50万円を適用する

 

50万円×基本税率10%+(90万円-50万円)×15%=11万円(過少申告加算税)

例2:期限内申告税額が90万円、修正申告により追加で支払った税額が130万円の場合

期限内申告税額90万円は50万円を超えているため、90万円を適用する

 

90万円×10%+(130万円-90万円)×15%=15万円(過少申告加算税)

過少申告が所得隠しや脱税を意図したものである場合、基本税率をはるかに超えたより重いペナルティが課されることになります。

過少申告加算税がかからないケース

たとえ過少申告があった場合でも、加算税が課されないケースがあります。

納税者が自ら修正申告を行う場合

納税者が税務署の調査を受ける前に修正申告を行えば、過少申告加算税が課されません。

自己申告により間違いを訂正することで、納税者が積極的に誤りを修正する姿勢を示しているとみなされるため、通常は加算税が免除されます。

正当な理由がある場合

正当な理由があり納税者に非がない場合は、加算税が課されないことがあります。

具体的な例としては以下が挙げられます。

  • 税務職員の誤指導に基づいて申告した場合
  • 申告当時には公表されていた税法が後に改変され、そのために修正が必要となった場合

これらの状況では、納税者が誤った情報に基づいて誤って申告したと判断されるため、過少申告の責任を問われない可能性があります。

微小な過少申告

非常に小規模な過少申告の場合は、加算税が免除される可能性があります。金額が非常に小さければ、税務署がかける労力とコストから追及する価値がないと判断されるケースもあります。

ただし、行政への影響については自己判断が難しく、それぞれの事例において具体的な事情が考慮されるため、専門家へ相談し適切な申告を行うことが望ましいです。

過少申告加算税に納得できない場合に納税者が取れる対応策

過少申告加算税が課された場合、その決定に不服がある場合に利用できるのが「不服申立て」という制度です。

税務調査の結果、税務署が指摘した内容に対して納税者が修正申告を行わなかった場合、税務署側が申告内容の修正を行います。これを「更正」と言います。

この更生の通知を受けて、加算税に対して不服がある場合は、以下の順番で不服申し立てを行いましょう。

①再調査請求

はじめに、更正通知を受けた税務署長に対して再調査の請求をします。

請求期限は、更正通知を受けた翌日から3ヶ月以内です。

税務署長は、処分内容が正しかったかどうか見直し「再調査決定書」により納税者に通知します。

ここで、当初の内容に不備がないと判断されれば申立ては棄却され、再調査によって変更があれば一部もしくは全部の取り消し・変更を認めてくれたことになります。

②審査請求

再調査結果においても不服がある場合は、国税不服審判所長に対して審査請求をします。

請求期限は、再調査結果を受け取った翌日から1ヶ月以内です。

このとき、最初の更生通知を受けた日の翌日から3ヵ月以内であれば、再調査請求をスキップして国税不服審判所長へ「審査請求」することも可能です。

審査請求後、国税不服審判所で税務署長の判断が正しかったかどうかを審理し「裁決書」が納税者と税務署長に通知されます。

③裁判所への訴訟提起

審査請求の結果、不服が残る場合は地方裁判所へ訴訟を提起します。

訴訟期限は、国税不服審判所長の裁決を知った日から6ヶ月以内です。

また、訴訟のタイミングとして、審査請求した日から3ヶ月を過ぎても裁決がなされない場合は、裁決結果を待つことなく訴訟提起が可能です。

④専門家への相談

過少申告加算税への不服申し立てに関しては、複雑な法的知識を要します。

特に裁判に進む場合は、税理士に加えて弁護士のサポートも欠かせません。

早期に弁護士へ相談することで、税務署からの請求が適切かどうか判断し、不服申し立ての妥当性を客観的に見極めてくれるでしょう。

税務調査に対する反論における注意点

税務調査において、納税者が調査官の主張に反論する際に注意すべきなのは以下のポイントです。

事実関係の確認と証拠の収集

まずは事実関係を正確に把握した上で、証拠を収集することが重要です。

帳簿や領収書、契約書など自分の主張を裏付ける証拠を十分に用意し、提出できる状態にしましょう。

論点を明確にする

税務署からの指摘に対して、何が論点となっていて自分は何を主張したいのか、後から論点がずれることのないよう明確にしておく必要があります。

法令解釈の問題なのか、事実認定の問題なのか整理する

税務調査で否認される原因は大きく二つに分かれます。納税者側と税務署側の法令解釈の相違によるものと、税務署側が事実認定できていないことによるものです。この二つのうち問題になっているのはどちらなのか、税務署に反論するにあたりはっきりさせることが重要です。

調査官がどのような根拠で主張しているか明示させる

税務官の主張がどのような根拠に基づいたものなのか、はっきりさせることで議論を明確にすることができます。税務官にしっかり説明してもらうことが大事です。

以上のポイント踏まえて調査官の主張に対して自力で反論していくのは至難の技です。法令や事例に詳しい専門家に相談した上で、有効に反論することが重要となります。

過少申告加算税に関する判例

実際に税務調査に不服申し立てを行った事例として、どのようなものがあるでしょうか。

以下に、税務調査における結果が裁判に至った判例を紹介します。

消費税の更正処分に関する裁判例(平成7年11月6日裁決)

不動産貸付業を営む会社が、平成3年10月1日から平成4年9月30日の間の消費税について確定申告を行い、更生処分を受けたことによる判例です。

申告では、課税標準額が20,363,000円とされ、納付すべき税額は0円とされましたが、その後、平成6年10月31日に原処分庁が更正処分を行い、納付すべき税額が-2,502,433円(還付金に相当する金額)と更正されました。

この更正処分の結果として、納付すべき税額が増加することはなかったため、更正処分が不利益処分に当たるかどうかの判断は税額が増加したかどうかに依存するとされました。

更正処分は納付すべき税額を増加させなかったため、この更正は請求人の権利や利益を侵害していないと判断され、審査請求は不適と判断されました。

大阪高等裁判所による税務訴訟の判決(平成25年8月28日判決)

FX取引の担保として用いた証拠金が雑所得に該当するとの税務署長の指摘に基づき、無申告加算税の賦課と延滞税の支払いを求められたことによる裁判です。

控訴人は、証拠金が雑所得に該当しないと認識しており、意図的な無申告ではないと主張。さらに、適切な税務調査が行われていれば所得税の支払いが可能だったとして、無申告加算税の課税と延滞税の発生は不当であると訴えました。

しかし、裁判所は、控訴人が申告義務の認識があったにもかかわらず申告を怠ったことを理由に、税務署長の対応を支持しました。

判決では、控訴人の訴えに対して法的根拠が不足していると判断し、無申告加算税の取消しや延滞税の無効を求める控訴は棄却されました。

税務調査の対象にならないための4つの対策

過少申告を指摘され不服申し立てをするような事態となる前に、税務調査の対象とならないよう適正な申告をすることが大事です。

税務調査の対象にならないためには、以下のような対策が有効です。

1. 不正な過少申告や無申告はしない

正しく確定申告を行うことが税務調査を回避する一番の近道です。税金を減らしたいからといって、不正に過少申告を行ったり、無申告の状態にすることは絶対に避けましょう。

先にも述べた通り、税務調査は税務署が納税者の申告内容に疑いを持った場合に行われるものであり、ランダムに行われるものではありません。

2. 経費の範囲を正しく理解しておく

経費の範囲を正しく理解しておくことも重要です。

経費として認められるものは、事業に必要な費用です。経費に関する正しい理解があれば、誤った経費の申告や不正な経費計上を避けられ、税務当局の疑念を招く要因を減らせるでしょう。

特に個人事業主の経費計上では家事按分といって、事業とプライベートでの使用割合を決め、それらを合理的に説明できる必要があります。例えば自宅を作業場とする場合家賃を経費に計上できますが、全額計上できるわけではなく実際に事業に利用している割合を計算して計上する必要があるのです。

3.会計ソフトを活用し日頃から丁寧に記帳を行う

確定申告期間に入ってから期限ギリギリに記帳を行っていては、当然ミスが起こりやすくなります。

日頃から売上や経費が発生した段階で都度記帳を行っていくのが確実です。

記帳には無料・低額で利用できる会計ソフトが多数ありますので、利用をおすすめします。

4. 顧問税理士・顧問弁護士をつけて予防法務に取り組む

顧問税理士や顧問弁護士をつけて予防法務に取り組むことも、税務調査に向けての対策の一つです。

予防法務とは、将来発生するかもしれない法的なトラブルを未然に防ぐための取り組みのこと。

顧問税理士に依頼することで、確定申告書の作成や経費の計上など、日常の税務に関する相談をいつでもできます。不明な点があってもすぐに解消できるので、申告漏れや過少申告を防ぎ、税務調査のリスクを低減できます。

顧問税理士を雇っておけば、万が一税務トラブルで裁判になった際の対応を一任できるほか、取引先とのトラブルなど税務以外の法的トラブルにも対応してもらえます。

法的トラブルを未然に防ぎ事業を円滑に進めたい方は、顧問税理士・顧問弁護士の活用を検討するといいでしょう。

過少申告の対応で不安があれば弁護士保険の活用がおすすめ

過少申告に関する問題に直面した場合、頼りになるのが弁護士保険の存在です。

過少申告の対応を専門家に相談するメリット

納税者が税務調査を受け、過少申告を指摘されたことに対して納得がいかないのであれば、税務署に対して異議申立てや審査請求をすることができます。

しかし、税務署は根拠を持って指摘しているため、税務調査に反論し、不当な課税を証明するのは容易ではありません。

そこで、税理士や弁護士などの専門家の協力を得ることで、納税者の代わりに反論をし、適切な申告であることを立証してくれます。

税務署の誤解を解消し不当な課税から保護される可能性が高まるでしょう。

専門家を雇う余裕がない事業主は弁護士保険を活用しよう

とはいえ、顧問税理士や顧問弁護士を雇う余裕がないという個人事業主や中小企業経営者の方も多いことと思います。

特に税務トラブルで裁判になった場合、弁護士のサポートは必須ですが、弁護士費用は一般的に高額になります。

そんな時には弁護士保険を利用することで費用負担の軽減を図ることができます。

弁護士保険は、法的トラブルに備えて事前に加入しておくことで、法的支援が必要な際に弁護士費用をカバーしてくれる保険です。

過少申告加算税に関するトラブルを弁護士保険を用いて解決した事例をご紹介していますので、こちらからぜひチェックしてみてください。

事業に関する弁護士保険は、法人・事業者向けの弁護士保険がおすすめです。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.税務調査に入られやすい業種はありますか?
A.無申告や申告漏れが多い業種、売上が1,000万弱、経費に不審な点が多い、顧問弁護士や税理士がついていない事業主等が挙げられます。あくまで傾向なので、ここに当てはまらないから安心とは言えません。

Q.過少申告加算税の税率を教えてください。
A.過少申告加算税の税率は、増差額×10%が基本です。ただし、増差税額の中で最初に申告した税金もしくは50万円のうち、大きい方の金額を超える部分については、税率が15%になります。

Q.過少申告加算税が免除されるケースはありますか?
A.あります。税務調査が入る前に、納税者が修正申告をする場合や、正当な理由が認められる場合です。

Q.税務調査の指摘に納得いかない場合は反論が可能ですか?
A.不服申立てという制度で、主張が可能です。不服申立てができるタイミングは、税務調査官からの指摘通り修正を行わなかった際に「更生」という強制処分がなされたときです。

Q.税務調査の対象にならないための対策はありますか?
A.正しく確定申告を実施することに限ります。また、事前リスクを抑えるためにも顧問弁護士に依頼して予防法務を担当してもらうのも有効でしょう。