子どものいる夫婦が離婚をする場合、離婚時に親権者を指定しないことには、離婚届が受理されることはありません。
親権者は子どもの身上監護・財産管理をし、法定代理人として法的な手続きを子どもの代わりに行うことになっています。
しかし、離婚後に親権者が親権を行使することができない場合、またはしていない場合、例外的に親権者を後からでも変更することが可能です。
これを「親権者変更調停」と言います。
今回は、親権者変更調停について、申し立て方法や決定までの期間、果たして手続きに弁護士は必要か?という点に着目してご説明をしていきます。
こんな疑問にお答えします
A.一度決めた親権については、よほどの事情がない限り認められることはありません。
正しく親権を行使できないと判断されたときに限り、変更は認められる可能性があるでしょう。また、親権者変更の申し立てがされると、裁判所は変更が本当に子どものためになっているのか調査をし、最終的な結論を出すことになっています。
親権者変更は子どもの成長に大きく影響するため、慎重に考えるようにしてください。
親権者変更調停とは
親権者変更調停とは、その名のとおり子どもの親権者を変更させるために、家庭裁判所にて行う調停手続きです。
親権者の変更というのは、戸籍簿上の手続きも必要になるため、当事者間で勝手に決められるものではなく、家庭裁判所からの決定が出ない限り、親権者の変更を戸籍簿上に反映させることができません。
とはいえ、家庭裁判所は一度決めた親権について、子どもの福祉のためには容易に変更すべきではないとの見解を示すことが多いため、よほどの事情がない限りは認められることはないのです。
親権者変更が認められやすいケースと認められにくいケース
親権者変更は、よほどの事情がない限り認められることはないとお伝えしました。
ここで、認められやすいケースと認められにくいケースを具体的に解説します。
親権者変更が認められやすいケース
親権者の変更が認められる可能性があるケースは、以下のとおりです。
- 親権者が暴力行為や育児放棄をしている
- 親権者が重い病気にかかっている
- 親権者が死亡した
- 養育環境の変化
上記のように、正しく親権を行使していないときに変更が認められることがあります。
特に、親権者による虐待や育児放棄は子どもの成長を妨げてるため、親権者としてふさわしくないと判断される可能性が高くなります。
親権者変更が認められにくいケース
一方で、親権者変更が認められにくいケースは次のようなときです。
- 再婚するために子どもを手放したいという理由
- 離婚の際に適当に親権者を決めてしまったから変更したいという理由
- 相手が親権者の場合、自分が子どもともっと会いたいから変更したいという理由
上記のような理由では、親権変更は認められる可能性が低いでしょう。
また、離婚を早急にしたいという理由で親権者をいい加減に決めてしまうというのもよくありません。
これから親権を決める方々は、安易な気持ちで決めることのないよう注意してください。
親権者変更調停を申し立てるには
親権者変更調停は、相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意して定めた家庭裁判所にて申し立てをすることになっています。
申し立てに必要な費用としては、子ども1人につき1,200円の収入印紙と連絡用の郵便切手です。
郵便切手については、家庭裁判所ごとに予納金額が違うため、管轄となった裁判所に確認する必要があります。
申し立てに必要な書類は、調停申立書と申立人・相手方の戸籍謄本、子どもの戸籍謄本です。
通常、子どもはどちらかの戸籍に入っているため、同じ戸籍謄本は1部で問題ありません。
その他、裁判官や調停委員が必要と判断した書類があれば、随時提出が依頼されることになっています。
家庭裁判所の調査官が調査すること
親権者変更調停の申し立てがされると、裁判官の判断で実態を知るために調査官を派遣し、調査を行います。
いくら当事者間で親権者変更の合意があったとしても、裁判所は変更が本当に子どものためになっているのか調査をし、最終的な結論を出すことになっています。
そのために、調査官は子どもの心情や現在の環境を確認し、実際に親や子どもに会うだけではなく、子どもの学校へ足を運び担任の先生から話を聞くというような調査も行い、それを調査報告書にまとめます。
裁判官や調停委員はこの調査報告書を参考にし、親権者が本当に変更されるべきかどうかを判断するというわけです。
親権者変更調停調停の成立・不成立までの流れ
調停の流れとしては、当事者間の合意を前提とした場合、裁判官が調査官や調停委員の意見を聞き、変更に問題がないと判断すれば調停成立になります。
しかし、当事者の合意がなかった場合は調停不成立となり、その後は裁判官が判断をし、親権者が変更されるべきであれば審判(裁判官が強制的に出す決定のこと)によって親権者変更についての決定が出されることになっています。
審判決定までの期間は、調停不成立から1週間程度です。
その後、親権者変更が認められた場合は、10日以内に市区町村役場に親権者変更の届け出をしなければならないことになっています。
子どもの年齢に影響されることも
なお、子どもが15歳以上であれば、原則として子どもの意見が全面的に反映されることが多くなっています。
子どもの意思については、家事事件手続法65条にも規定されています。
15歳以上ともなれば、自らのことを判断する能力は伴っていると考えられているため、このような配慮がなされていますが、たとえ15歳未満であっても、子どもの意見を聞くことはもちろんあります。
その場合は、あくまでも参考程度にとされていますが、最近では12歳以上の子どもの意見が反映されるように配慮がなされているようです。
とはいえ、最終的な判断をするのはあくまでも裁判官です。
子どもが18歳以上もしくは成人していたらどうなるのか?
親権というのは、子どもが成人年齢に達するまでに必要な取り決めです。
成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることが決まり、2022年4月1日以降は「子どもが18歳未満の場合に親権を定めないといけない」と変更になりました。
よって、18歳以上の子どもがいる場合は、親権者を決める必要はなく親権者変更もありません。
親権者変更調停に弁護士は必要か?
続いて、親権者変更調停に弁護士は必要か?についてお話します。
当事者の合意がすでにまとまっているのであれば、弁護士は必要はないでしょう。
裁判所による調査が行われる可能性はありますが、当事者が合意しているのであればそこまで困難な調停ではありません。
しかし、相手が変更に反対しているのであれば、やはり法律のプロである弁護士の助けが必要になるでしょう。
特に、相手がしっかりと調停に足を運び、自らの意見を述べている場合、親権者の変更は容易ではありません。
裁判所に対しては親権者の変更が妥当であるという、より具体的な根拠を提示しなければなりませんので、弁護士の助けがあったほうが認められる可能性も高くなると言えるでしょう。
親権者は容易に変更されるべきではない
上記でも触れていますが、親権者は容易に変更されるべきものではありません。
そもそも親権というのは、放棄や辞任ができるものではないのです。
離婚時に親権者として指定されたものは、自覚を持って親権を行使しなければなりません。
よって、病気などといったやむを得ない事情がない限り、親権者の変更は好ましいことではありません。
親権者は容易に変更されるべきではないこと、安易に変更して良いものではないことを忘れず、子どもの親として責任ある行動を心掛けるようにしてください。
親権者変更が認められるかどうか判断に迷ったら弁護士へ相談しよう
とはいえ、やむを得ない事情といっても「自分の状況が該当するのか分からない」という方もいるでしょう。
親権者変更が認められるかどうか不安な場合は、まずは弁護士への相談をおすすめします。
先ほどお伝えしたように、親権者の変更が認められるには裁判所の判断が必要になります。
裁判所には、具体的な根拠を提示しなければならないため、離婚問題や親権問題に詳しい弁護士の力を借りることで認められる可能性が高くなるでしょう。
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親権変更に関する問題をスムーズに解決するためにも、弁護士保険の利用も視野に入れておきましょう。
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記事を振り返ってのQ&A
Q.親権者変更は一般的にできるものですか?
A.一度決めた親権については、よほどの事情がない限りは認められることはありません。よほどの事情とは、自身が重い病気に罹患してしまい親権を行うことができなくなってしまったとき、または現在の親権者が暴力行為などを行っており、正しく親権を行使していないときなどです。
Q.親権者変更をするには、まず何をしたらいいですか?
A.家庭裁判所に親権者変更調停の申し立てを行います。
Q.親権者変更調停にかかる費用はいくらですか?
A.申し立てに必要な費用としては、子ども1人につき1,200円の収入印紙と連絡用の郵便切手です。
Q.家庭裁判所の調査官は変更前にどのような調査をしますか?
A.調査官は子どもの心情や現在の環境を確認し、実際に親や子どもに会うだけではなく、子どもの学校へ足を運び担任の先生から話を聞くというような調査も行い、それを調査報告書にまとめます。
Q.親権者変更に関して、子どもの年齢は影響しますか?
A.子どもが15歳以上であれば、原則として子どもの意見が全面的に反映されることが多くなっています。