窃盗で盗まれたお金は戻ってくるの?

 

近年の日本社会においてもまだまだ無くならない、最も古典的な犯罪である窃盗。

一番イメージしやすいのは手ぬぐいや風呂敷を鼻の下で結んだ、ひげ面の泥棒でしょうか……もちろん、今どきそんなわかりやすい犯人はいません。

しかし、相変わらず窃盗事件はたくさん起きているという事実は残念ながら存在します。

なんと平成21年では、交通事故などを除いた刑法犯の76.3%を占めるのは窃盗なのです。

日ごろ犯罪なんてニュースの中のことだと思っている人も多いかもしれませんが、実は空き巣・万引きといった窃盗の被害は決して縁遠いものではありません。

では、いざそんな窃盗の被害にあった場合、犯人が捕まれば盗まれたお金は戻ってくるのでしょうか。

でも犯人が隠し口座に保管してしまっていたら? 

はたまた使い切ってしまっていたら? 受刑中の刑務所の中からも返済させられるの……? 

こんな色々な疑問について、今回はみていこうと思います。

そもそも窃盗とは、どんな犯罪なのか

窃盗罪とは、名前の通り何かを「盗む」という、とてもシンプルな犯罪です。

刑法235条においては、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪として10年以下の懲役または50万円以下の罰金」というように記されています。

そして、犯罪には構成要件と呼ばれる犯罪が成立する条件があり、それらが揃うことで初めて犯罪が成立します。

窃盗罪の場合は、「他人の所有する財物」を「不法領得の意思をもって」、「窃取」することではじめて窃盗罪が成立するということになります。

しかし、「他人の所有する財物」を「不法領得の意思をもって」、「窃取」する……と言われてもなかなか理解が難しいかと思いますのでそれぞれを詳しくみていきましょう。

他人の所有する財物

「他人の所有する財物」における他人の所有というのは、他人の財産であるということはそもそもの前提ですが、例えば貸したり預けたりしているというような、他人の所有する自己の財物という場合も窃盗罪の条件に当てはまるので注意したいところです。

これはあまり広く知られていないことではないでしょうか。

また、ここでの財物とは、基本的には形のある有体物のことです。

しかし、固体・液体・気体すらも空間の一部を占める有形的存在とみなされるため、財物ということになります。

不法領得の意思をもって

次に「不法領得の意思をもって」ですが、これは簡単に言えば「自分のものにしようとする意思」のことです。

利用処分や使用窃盗とは区別されるのはここの違いです。

窃取

最後に「窃取」とは、もともとは密かに盗み取ること、という意味です。

しかし、ひったくりや強盗のように、他人の前で強引に奪い取る行為も存在するため、この密かにとは、暴行・脅迫・欺罔を手段としないという広い意味合いがあります。

そしてこの手段の区別において、窃盗罪(235条)・強盗罪(236条)・詐欺罪(246条)というように分けられます。

なんと、刑法上においては……

窃盗罪がどんな犯罪化が分かったところで、次は窃盗の罪を犯した犯人が捕まった場合どうなるかをみていきましょう。

刑法上の窃盗罪には前述のように、窃盗の罪として10年以下の懲役または50万円以下の罰金という記述はあるものの、そこに窃盗した財物に関する返却の義務というものは特には記されてもいないので、実はあくまでも刑事上の責任のみですが、返す必要はないということになっているのです。

民事訴訟で勝てば戻ってくるのか

たしかに犯人は民法709条に基づき、被害者へ損害賠償する義務があります。

むしろ逮捕されたタイミングで犯人に現金・預貯金といったお金がある場合は、犯人側が罪を軽くしてもらいたいがために犯人、またはその親族などからあくまで任意ながら、返済してもらえる可能性も高くなります。

そして、任意では返してもらえないながら、犯人がお金や財産を所有している場合は、民事の裁判を起こして返してもらうことになるでしょう。

こうなると、民事上の請求権に基づいて被害者が、犯人に対して損害賠償請求訴訟を起こすことになります。

この場合、通常は当然犯人側に非があるため犯人側が負けるので、これに従い犯人は被害者に対し損害賠償義務を負うこととなります。

しかしここが重要なポイントで、あくまで裁判所の判決は、損害を賠償する義務があるのでしっかりと賠償するように、という命令だけなのです。

この時、窃盗された財物そのものがあれば、もちろん持ち主である被害者に返却され、そのものが無くなっていても、相応の金品で賠償することになるはずです。

多くのケースで、銀行口座や高級品といったようなものの場合は、事件の捜査の過程で見つかっていれば証拠として警察に押収されているので、その場合は比較的返ってきやすくなります。

しかし、捜査の過程では見つかっておらず、さらに他に判明している犯人の財産ではとうてい賠償仕切れない場合、これはかなり厳しい状態です。

被害者自らが、探偵などを雇って犯人やその周囲の人間から回収できる金品や隠し口座などを、高い費用を投じて探さなくてはいけないケースも多々存在するようです。

また、そうして調べたあげた結果、犯人に浪費されていたり、外国へ送金されたせいで追跡が困難となってしまっていたりと、犯人に返済能力が無いとなってしまった場合は本当にどうしようもなく、無いところからは取れないということで、泣き寝入りするしかないのです。

こうなると、裁判を起こすなどの法的な手段をとるための弁護士費用や、金品を探すための探偵費用などだけがかさみ、結果的に盗まれた金額以上の出費となってしまう可能性が高くなります。

かといって弁護士をつけずに本人訴訟という手もありますが、やはりそこは確実なプロの力を借りることに間違いはないかと思います。

泣き寝入りしないためにはまず警戒を!

これまでの内容をまとめれば、刑事責任は法律的に追及が可能で懲役に服させることはできても、お金に関しては民事上で請求権に基づいて損害賠償請求訴訟を起こし勝訴しても、もしも犯人に支払能力や資産が無いとなってしまうと、取り立てようと思ってもなかなか難しく、結果泣き寝入りとなってしまう場合が多そうです。

そして、以下のような高額の事例もあるため、日ごろから注意が必要です。

一人暮らしの高齢女性を狙って、被告人が警察官の犯罪捜査を装うなどの巧妙な手口でキャッシュカードを窃取した上、共犯者が現金自動預払機から現金を引き出すという窃盗の事案。
職業的かつ計画的犯行であって、犯行態様はかなり悪質であること、現金の被害も合計624万円と大きいこと、被告人は同種を含む累犯前科を有することを考えると、被告人の刑責は重いとして、被告人を懲役3年6月に処した事例。

引用元:刑事事件弁護士中村国際刑事法律事務所

こうした事例をみて、もしも自分が624万円もの大金を窃盗されたとして、どこかに隠されるなりもう使われて金はないと言われ、もしこの被害額が1円も返ってこないと考えたら、いったいどんな気持ちになるでしょうか。

現在の日本の制度では犯人に強制労働をさせることで賃金を回収したりすることはできません。

全く支払いがなされないまま、賠償命令を勝ち取った判決から10年間待っているだけでは、いつしかそれは紙屑となってしまい、民事裁判を行ったこと自体の意味すらもなくなってしまうでしょう。

刑事と民事の両方を駆使したとしても限界があるというのは、法の限界を感じざる負えないところでしょう。

泥棒・空き巣は普段我々があまり意図しない発想で、色んなポイントを逃さずチェックしているといいます。

例えば狙われやすい家の特徴として、

・公園やコンビニが近くにある家(誰が何をしていても不審でないため、下見に最適)

・線路近くにある家(住宅への侵入時の破壊音を電車の通過音がかき消すため、また駅近くの場合逃走しやすいため)

・警備会社とセキュリティー契約している家(セキュリティー契約するということはそれなりの資産がある証拠)

・観光名所近くの家(不特定多数の人が集まるので、フラフラしていても目立たないため)

・二世帯住宅の家(物音に無頓着になりがちなため)

などが挙げられるようです。
こうした内容を目にするだけでも日ごろから防犯意識が高まるのではないでしょうか。

やはり、被害額が返ってくることを期待するのでなく、まずは被害に合わないことが大事です。

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弁保社長

弁保社長

慶應義塾大学卒業後、大手エネルギー関連企業、ベンチャー企業の取締役を経て、2014年に弁護士保険募集代理店として㈱マイクコーポレーションを創業。 幼少期をアメリカで過ごし、訴訟リスクについて親友の父(弁護士)より学ぶ。 自身の離婚経験、友人の相続トラブル、後輩の勤務先企業からの不当解雇など身の回りで弁護士に依頼をした事例が多数起こり、日本での訴訟リスクの高まりと弁護士費用保険の必要性を感じたことをきっかけに、「誰もが小さなトラブルでも気軽に弁護士に相談できる社会」を目指し、広く日本初の弁護士費用保険である「Mikata」の普及促進を図っています。(さらに詳しいプロフィールはこちら
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