もし、クレジットカードを勝手に利用されているのに気づいて、その犯人が自分の子どもだったらどうしますか?
子どもが親に無断でクレジットカードを利用した場合、親に支払義務は生じるのでしょうか。
ここでは実際にあったケースを紹介しながら、どのように対処していけばいいかを紹介していきます。
子どもにクレジットカードを勝手に利用されたケース
子どもが勝手にクレジットカードを利用することなんてありえない、と思われている方もいるかと思います。
ここでは実際に起きたケースをご紹介します。
Aさんに、カード会社から100万円を超す請求がきました。
買った覚えのないバッグやスーツなどの請求であったため、Aさんはカード会社に連絡をし、これらの買い物をしていないこと、カードは自宅にあるので外で誰かに使われたこともないことを伝えました。
カード会社は事実関係を調べる旨をAさんと約束し、もしも第三者の不正利用によるもので、Aさんに重大な落ち度がなければ、カード保険が適用されると回答しました。
しかし、実際には、これらはAさんの18歳になる息子がインターネットで購入したものだったのです。
息子に確認をしてみると、カードを盗み見てカード番号と有効期限を知り、ネット決済したということでした。
カード会社は、約款に記載してあるとおり、親族が使用した場合には保険は適用されないため、期日までに請求額を支払うようAさんに求めました。
支払いを拒否する方法とは?
納得が行かないAさんは、支払いを拒絶しました。
インターネットの買い物の場合、カードが手元になくても、カード番号と有効期限がわかれば決済ができてしまいます。
Aさんは、カード番号の入力だけで決済できるとの説明が事前になかったことや、カード番号は郵便物などからでも類推が可能なため盗み見されやすいことなどをあげ、不正利用されやすい決済方法に問題があり、たとえ親族の無断使用は支払いを拒絶できないとの約款があっても、名義人に支払義務はないと主張したのです。
カード会社はAさんを相手取り、カード代金の支払いを求める裁判を起こしました。
裁判所は、カード番号と有効期限さえわかれば決済できるネット決済の仕組みは、暗証番号などによる本人認証を使う場合と比べ、第三者の不正利用を妨げにくいと指摘し、カード利用者の本人確認に不備があると判断しました。
そして、Aさんに対するカード会社の支払請求を退け、Aさんは支払いを免れたのです。
なお、民法では「未成年者契約の取消し」という規定があります。
しかし、子どもが親のクレジットカードを勝手に利用したというだけで支払いを拒否することはできません。
この場合、親がクレジットカードを正しく管理していたかどうかがポイントになります。
クレジットカードを安易に盗まれる場所に放置していた場合などは、親の監督責任を問われ、利用料金の支払義務が生じます。
上記のケースの中で、カード会社は、未成年の息子の親であるAさんは監督義務者として責任を負うとも主張しましたが、裁判所は満12歳から13歳になれば自分の行為の善悪を見定める判断能力(責任能力)があるとして、Aさんには息子の不法行為に対する民法714条の監督責任はないと、カード会社の主張を退けました。
子どもが勝手に利用したクレジットカードの決済を取り消すためには、自らに重過失がないことを証明しないといけません。
自分だけで対処することは難しいため、弁護士や消費者生活センターに相談することが望ましいでしょう。
子どもによるクレジットカードの不正利用を未然に防ぐには?
子どもによるクレジットカードの不正利用を未然に防ぐためには、クレジットカードとはどんなものかということについて、子どもの判断力、年齢に合った説明をすることが必要になってきます。
クレジットカードとはお金と一緒だということ、お財布からクレジットカードを抜いたらお金を取ったのと同じ、クレジットカードを利用したらお金を使ったのと同じと教えてあげることが大事なのです。
また、クレジットカードを安易な場所に置かずにきちんと保管することや、クレジットカードを作成したら管理責任が生じることを忘れないでください。
そして、自分の大事な子どもを犯罪者にしないためにも、自分が傷つかないためにも、クレジットカードは契約者本人以外は利用しないということを守っていくようにしましょう。
まとめ
クレジットカードを発行する際、利用者は、カードの管理を厳重に行うことを約束しています。
子どもが勝手に利用したという理由で支払拒否をすると、カードが利用停止となったり、ローンが通らなくなったり、ブラックリスト入りしてしまうなど、自分に不利な問題が起きてしまいます。
クレジットカードを発行する際は、契約事項をしっかり読み、厳重に管理することが必要です。
また、自分の子どもに限って勝手に利用することはないなどと目を背けず、子どもを守っていくためにも、子どもと一緒にクレジットカードの怖さなど勉強するようにしましょう。
近年の日本社会においても未だ無くならない、最も古典的な犯罪である窃盗。
一番イメージしやすいのは手ぬぐいや風呂敷を鼻の下で結んだ、ひげ面の泥棒でしょうか……もちろん、今どきそんなわかりやすい犯人はいません。
しかし、残念ながら、相変わらず窃盗事件はたくさん起きているという事実は存在します。
最近では防犯カメラなどの普及により減少傾向ではあるものの、平成30年の窃盗の認知件数は約58万件にも上ります(令和元年版 犯罪白書)。
これは、交通事故(過失運転致傷)などを除いた一般刑法犯の認知件数のうち71.2%を占めることになります(平成30年)。
日頃、犯罪なんてニュースの中のことだと思っている人も多いかもしれませんが、実は空き巣・万引きといった窃盗の被害は、決して縁遠いものではありません。
では、いざそんな窃盗の被害にあったとき、犯人が捕まれば盗まれた物やお金は戻ってくるのでしょうか。
犯人が盗んだものを売ってしまっていたり、隠し口座に保管してしまっていたら?
はたまた使い切ってしまっていたら?
受刑中の刑務所の中からも返済させられるのか……?
このような様々な疑問について、今回は見ていこうと思います。
「弁護士費用保険の教科書」編集部

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