客の無断キャンセルで損害賠償請求は可能?対応方法をわかりやすく解説

客の無断キャンセルで損害賠償請求は可能?対応方法をわかりやすく解説

予約後の無断キャンセルは、店側に大きな損失をもたらすことがあります。特にサービス業やイベント運営においては、予定していた収益が一方的なキャンセルによって失われるのは一大事でしょう。

店側がこのような損失を被った場合、無断キャンセルした相手に対して損害賠償請求は可能なのでしょうか。

本記事では、無断キャンセルによる損害への法的対応や効果的な予防策を解説します。

こんな疑問にお答えします

Q.飲食店経営者です。お客様に無断キャンセルされて損失を被ってしまいました。損害賠償請求は可能ですか?

A.店側は無断キャンセルした相手に対して民法上の責任として損害賠償請求を問える場合があります。オンライン予約だけでなく、電話予約であっても賠償請求の対象になり得ます。ただ、オンライン予約の場合は相手の連絡先が不明で請求できないというケースがあります。受けた損失を回復させるためにも、専門家の協力を得ることをおすすめします。

無断キャンセル被害の現状・実態

はじめに、客による無断キャンセル被害の現状を紹介します。

飲食業界の無断キャンセルは深刻化している

無断キャンセルは、飲食業界において深刻な問題となっています。

経済産業省が2018年11月に発表した「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」によれば、無断キャンセルによる損失額は約2,000億円にのぼるとされています。(※)

飲食業界では、特に繁忙期に無断キャンセルが増える傾向にあり、予定していた売上が大幅に減少するケースが頻発しています。

無断キャンセルは、店舗側が食材や人員を準備する上で大きな障害となり、無駄なコスト増加に直結しかねません。

(※)参照:【2020年版】第4回「飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査」

消費者が無断キャンセルする理由トップは「とりあえず予約する」

同調査によると、無断キャンセルする理由のトップに挙げられたのが「とりあえず予約しておく」という、軽い気持ちで予約していたことでした。

席を確保しておきながら忘れてしまい、最終的に訪問しないことが無断キャンセルに至っているのです。

ほかにも「いざ予約当日になって気分が変わってすっぽかした」「複数店をダブルブッキングしてキャンセルし忘れた」という理由が並びました。

このような行動は、特にインターネット予約の普及により容易になっており、予約の手軽さが裏目に出ている側面があるのかもしれません。

無断キャンセル被害が深刻化する5つの要因

無断キャンセル被害が深刻化する4つの要因

無断キャンセル被害は、なぜこれほどまでに深刻化しているのでしょうか。考えられる要因として、以下5つが挙げられます。

アプリやツールによって予約手段が容易になったため

アプリやオンライン予約ツールの普及によって、飲食店の予約手段が容易になったことは、無断キャンセル増加の一因となっています。

こうしたシステムは、非常に便利でアクセスが容易なため、ユーザーは何の制約もなく簡単に何軒もの店を予約できるようになりました。

その結果、予約の責任感が薄れ、予定が変わった場合や気分が変わった場合でもキャンセル手続きを怠り、結果として店側が無断キャンセルの損失を被るケースが増加しています。

予約に対する意識の低さ

予約に対する意識の低さも、無断キャンセルを増加させる大きな要因の一つです。

特に「とりあえず予約」という行動によって、予約した事実自体を忘れてしまうことがあります。「キャンセル連絡しなくても問題ないだろう」という意識がはたらいているかもしれません。

予約やキャンセル連絡を、他の日常的な行動と同じように軽視してしまう傾向が見られます。

予約が簡単になった反面、キャンセルする手間やその影響を軽んじる傾向が強くなり、結果として店舗側は予定していた売上を失ってしまいます。

ネット予約によって発生するポイント獲得サービス

予約システムのプラットフォームには、予約時にポイントが付与されることがあります。

このポイントを目当てに予約を重ね、訪問する意図がないにもかかわらずキャンセルを行わないケースも存在します。

キャンセル料の支払いを免れるため

キャンセル料の支払いを避けるために無断キャンセルを行う行為は、飲食店や他のサービス業において大きな問題となっています。

この行動は、予約した消費者が訪問する意思がなくなった場合にキャンセル手続きを怠り、キャンセル料の支払いを逃れようとするものです。

店舗によっては、キャンセル料が発生する期限や条件を定めているでしょう。

無断キャンセルの場合、店舗やサービス提供者は後からキャンセル料を請求する権利を持つ場合があります。これは、予約時に提供された連絡先情報や、場合によってはクレジットカード情報を通じて行われることがあります。

無断キャンセルを行うことで、キャンセル料の支払いを一時的に避けられるかもしれません。しかし、多くの消費者はこの行為にリスクと責任が伴う意識が低い可能性があるでしょう。

明確なキャンセルポリシーがない

明確なキャンセルポリシーがないと、無断キャンセルを助長しかねません。

キャンセルポリシーが不明瞭であると、消費者が予約を軽視しやすくなり、結果として無断キャンセルが増えることがあります。

予約プロセスの初期段階で、キャンセルポリシーを予約者に明確に説明し理解してもらうよう徹底しましょう。ウェブサイト、予約確認メール、店舗の表示など、複数のチャネルを通じて情報を提供するとよいです。

無断キャンセルは民法に違反する可能性あり!損害賠償請求は可能

無断キャンセルは、店側は予約者に対して民法上の責任として損害賠償請求を問える場合があります。

予約者の無断キャンセルは債務不履行になる可能性が高い

無断キャンセルに対して店側が民法上の責任を問える理由として、債務不履行が挙げられます。

債務不履行とは、契約に基づく債務(義務や約束)を履行しないこと。契約当事者の一方が、約束した義務を果たさなかったり契約の条件を満たさなかったりする場合に生じるものです。

民法第415条(※)によれば、契約に基づく債務の不履行があった場合、債権者(この場合はサービス提供者)は損害賠償請求が可能だと示しています。

(※)参考:e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

基本的に、飲食店を含むお店の予約が完了した時点で、予約者とサービス提供者の間に契約関係が成立します。

予約は一種の契約と見なされるため、予約を行った時点で予約者は履行する義務を負わなくてはなりません。予約後に計画を変更または解除する場合、その旨を適切に通知することで契約の条件を調整し、双方の合意のもとで解除または変更できるでしょう。

無断キャンセルの場合は、予約者は契約どおりに義務を果たさなかったことになるため、債務不履行として賠償責任に問える可能性があります。

電話予約や口頭でも損害賠償請求の対象になる

無断キャンセルに対する損害賠償請求は、電話予約や口頭でも対象になり得ます。

予約が電話や口頭で行われた場合でも、予約時に成立した契約は有効であり、無断キャンセルが発生すれば債務不履行として損害賠償請求ができます。

口頭により損害賠償を請求する際は、予約の証拠として通話記録や証人の証言などが役立つ可能性があるでしょう。

無断キャンセルで請求できる損害賠償の種類

無断キャンセルに対して、具体的にどの損害に対して賠償請求ができるのか解説します。

無断キャンセルで請求できる損害賠償の種類

逸失利益

一つ目は、逸失利益(いっしつりえき)に対してです。

逸失利益とは、予約が確定した際にその予約から得られるはずだった利益のこと。飲食店であれば予約されたテーブルでの食事代全額、ホテルであれば宿泊料金などが該当します。

逸失利益の計算は、具体的な予約内容とその期間、通常得られるべきであった利益を基に行われます。

準備費用

無断キャンセルによって発生する損害には、準備費用も含まれます。

準備費用には、予約内容やイベントに向けて発生した実際の支出が含まれます。具体的には、仕入れた食材費、特別な設備や追加スタッフの配置に必要な費用、場所のレンタル代などが該当します。

これらの費用はすでに支出している場合が多く、無断キャンセルによりそのまま損失となります。そのため、損害賠償請求として考慮できる可能性があるでしょう。

キャンセル料

多くの予約条件にはキャンセルポリシーが含まれており、そのポリシーに基づいたキャンセル料を請求できます。

このキャンセル料は、契約時に予約者が同意した条項に基づいて発生します。たとえば、予定日の3日前までは料金の30%、当日キャンセルの場合は料金の50%、無断キャンセルの場合は100%といったものです。

この内容に基づいて、予約者に対し損害賠償として請求に含められるでしょう。

無断キャンセルで請求できる損害賠償額の算定方法

無断キャンセルによる損害賠償額の算定は、具体的な予約の内容によって異なります。一般的に、逸失利益や準備費用など、損害の具体的な計算は適切に算定しなければなりません。

具体的に、内容が決まっているコース予約と席のみの予約の場合の算定方法を解説します。

すでに内容が決まっているコース予約の場合

飲食店におけるコース予約の場合、逸失利益は比較的計算しやすいでしょう。

通常、予約されたコース料金全額を基準にします。

算定基準として、以下のことを考慮してみてください。

  • コース料金の確認:予約されたコースの料金を確認する
  • 追加オプションの考慮:予約時に追加されたドリンクや特別メニューなどのオプション料金を加算する
  • 総額の計算:コース料金とオプション料金を合計し、逸失利益の基本的な計算とする

席のみの予約の場合

席のみの予約では、逸失利益の算出がやや複雑になります。

一般的な消費傾向や過去のデータを基に算定することが多いでしょう。

具体的には、以下の方法で算定してみてください。

  • 平均チェック額の推定:過去の同時期や同曜日のデータから、その席で通常発生するであろう平均的なチェック額(顧客一人当たりの平均消費額)を推定する
  • 席数と予約時間:予約された席数とその席が予約されていた時間(例えば、2時間のディナータイム)を考慮する
  • 総予想収入の計算:平均チェック額に席数を掛け、さらに予約時間に応じた消費の可能性を考慮して総額を算出する

準備費用の算定には、予約に応じて実際に発生したコスト(食材の仕入れ、特別な装飾や追加スタッフの配置など)を全て考慮に入れる必要があります。これらの費用は、支出時の領収書や契約書に基づき、具体的に算出してください。

ただし、無断キャンセルに直接影響しない固定費や人件費については、損害賠償請求として認められない可能性があるので注意しましょう。

無断キャンセルの損害賠償額を算定する際は、これらの計算方法を適切に用いることで、サービス提供者が公正な請求を求められます。

無断キャンセルで損害賠償請求する手順

無断キャンセルは、お店にとって大きな損失となります。無断キャンセルが発生した場合に、損害賠償請求を行う手順を詳しく解説します。

無断キャンセルで損害賠償請求する手順

無断キャンセルの証拠を集める

損害賠償請求を行うためには、無断キャンセルがあったことを証明する必要があります。以下のような証拠を集めましょう。

  • 予約台帳:予約日時、氏名、連絡先などを記録したもの、オンライン予約システムのログ
  • キャンセル連絡がなかった事実:電話、メール、SNSなどによる記録
  • 売上台帳:無断キャンセルがあった日時の売上実績
  • 仕入先への支払記録:無断キャンセルにより発生した仕入先への支払記録
  • その他:店内カメラの映像

証拠はできるだけ多く集め、客観性のあるものを選んでください。

証拠をもとに予約者へ支払い請求を求める

証拠をもとに、無断キャンセルした相手へキャンセル料の支払い請求や損害賠償を求めるよう通達しましょう。

キャンセル料や損害賠償を請求する際は、以下の内容を明確に記載した請求メールを送付します。

  • 請求相手と自社の名前:両者の正式な名称を記載する
  • 請求内容:損害賠償の理由として無断キャンセルを明記し、関連する法的根拠を示す
  • 予約内容や請求金額:具体的な予約詳細と請求する金額を明記する
  • 支払い方法・振込先:希望する支払い方法と振込先の情報を提供する
  • 支払い期限:支払いを求める期限日を設定する

請求内容は具体的に記載し、根拠となる証拠を必ず明記してください。

また、丁寧な言葉遣いを心がけ、脅迫的な表現は避けるよう意識しましょう。

内容証明郵便で支払い請求

予約者から支払いがない場合は、内容証明郵便で支払いを督促します。

内容証明郵便とは、郵便物の内容を証明することができる郵便サービスのこと。いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に差し出したかを、郵便局が証明します。

内容証明郵便は、主に以下の場面で利用されることが一般的です。

  • 契約上の義務を履行していない相手に、催告や警告を行う
  • 金銭の支払いを督促する
  • 損害賠償請求を行う
  • 解雇や退去の意思を通知する
  • 証拠を残しておく必要がある書類を送付する

これにより、請求が行われた日時と内容が公式に記録され、後の法的手続きでの証拠として利用できます。

無断キャンセルにより損害が発生した場合の内容証明郵便には、以下の内容を記載してください。

書面名:「損害賠償請求書」
日付
送付者:氏名または会社名・住所
電話番号
宛先:氏名または会社名・住所
本文:請求の趣旨、予約内容、キャンセル日時、発生損害、請求金額、支払い方法、支払わない場合の措置
署名
添付資料があれば同封する(予約台帳の写、キャンセル連絡の記録、仕入先への支払記録

内容証明郵便は、書き方に関して規定があります。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。

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訴訟を提起し賠償金を回収する

内容証明郵便を送付しても支払いがなされない場合には、訴訟を提起することが可能です。訴訟は地方裁判所や小額訴訟の場で行い、裁判所を通じて賠償金の回収を図ります。

訴訟は、あくまで最終手段と捉えてください。裁判所とのやりとりや書類の準備など、専門的な知識と経験が必要になるため、弁護士に相談することをおすすめします。

無断キャンセルで損害賠償請求が認められた判例

無断キャンセルによって損害賠償請求が認められた事例を紹介します。

無断キャンセルされた8つの宿泊施設が損害賠償を求めた事案

2023年1月、栃木県那須塩原市や日光市など8つの宿泊施設が、無断キャンセルを繰り返した男女3人に対して合計約280万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。

この事案では、被告らは宿泊予約サイトを通じて複数の宿泊施設を予約し、無断キャンセルを繰り返していました。宿泊施設側はキャンセル料を請求しましたが、被告らは支払いを拒否していたのです。

裁判所は、原告側の主張を認め、被告らに対して約280万円の支払いを命じる判決を下しました。判決理由では、被告らの行為は悪質であり宿泊施設側に重大な損害を与えたと指摘されました。

宴会の無断キャンセルで支払い命令

2022年3月、東京簡易裁判所は、新宿の歌舞伎町にあるバーで無断キャンセルした客に対して、13万9,200円の支払いを命じる判決を下しました。

この事案では、客はバーを貸し切って40人分の宴会を予約していましたが、当日になっても来店せず、連絡もありませんでした。バー側は、予約していた料理や飲み物を準備していたためキャンセル料を請求しましたが、客は支払いを拒否していました。

東京簡易裁判所は、客の行為は契約違反であり、バー側に損害を与えたと指摘しました。そして、バー側が請求していたキャンセル料相当額の支払いを命じました。

無断キャンセル対応における課題

悪質な無断キャンセルは、損害賠償請求に値します。しかし実際のところ、損害賠償請求は店側にとって容易ではなく、対応にはいくつかの課題が残されたままなのです。

キャンセル料回収に使える時間がなく泣き寝入りせざるを得ない

多くの場合、無断キャンセルが発覚するのは当日もしくは当日以降であり、限られた時間の中でキャンセル料の請求手続きを進めなければなりません。

しかし、人手不足や業務の煩雑さから迅速な対応が難しいケースが多く、泣き寝入りせざるを得ない状況が発生しています。

無断キャンセルした相手の連絡先が分からず請求できない

予約時に偽名や虚偽の連絡先を使用されるケースがあり、無断キャンセルした相手の連絡先が分からず、損害賠償請求できない状況が発生することがあります。損害賠償請求するには相手の氏名や住所、連絡先が必要になるためです。

また、相手が支払いをおそれて意図的に連絡を絶ってしまうケースは珍しくありません。

このような状況では、相手に接触する手段が絶たれてしまうでしょう。いずれにしても、電話口やオンライン予約は、こうしたリスクが伴うのです。

SNSやインターネットによる誹謗中傷を恐れて連絡しづらい

SNSやインターネットによる誹謗中傷を恐れて連絡しづらい点も、課題の一つでしょう。

近年、悪質な口コミやレビューが頻発しており、社会問題となっています。

飲食店側としては、無断キャンセルに対する賠償請求の連絡を躊躇してしまうケースは少なくありません。

しかし、無断キャンセルはお店にとって大きな損失となります。食材や人件費などのコストが無駄になるだけでなく、予約を希望する他の顧客への影響も甚大です。

店側としては、毅然とした態度で証拠に基づいて対応することです。

また、誹謗中傷が発生した際の初動対応を理解しておくのも予防策の一つでしょう。企業が誹謗中傷を受けた際の対応策や予防法は、こちらの記事で解説しています。

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無断キャンセルによる被害を最小限に抑える対策

無断キャンセルによる損失は企業運営にも大きく関わってきます。

被害を最小限に抑えるためには、以下の対策が有効です。

無断キャンセルによる被害を最小限に抑える対策

メールやシステムで予約日のリマインドをする

予約が確定した顧客に対して、メールやSMS、アプリの通知機能を活用して予約日の数日前や前日にリマインドを送信するといいでしょう。

このアプローチにより、顧客が予約を忘れるリスクを減らせるため、無断キャンセルの発生率を低下させます。

また、リマインドメッセージに予約の変更やキャンセル方法も併記すれば、予定の変更が生じた際にキャンセル連絡がしやすくなるでしょう。

キャンセルポリシーを厳格化する

キャンセルポリシーを明確にし、それを事前に顧客に伝えることで無断キャンセルを抑制できます。

たとえば、キャンセル料を設定することで、顧客はキャンセル連絡の必要性を慎重に考えるようになるでしょう。

キャンセルポリシーは、ウェブサイトや予約確認メール、店舗の見える場所に掲示すると効果的です。

事前決済サービスで予約金制度を設ける

予約時に、全額または一部を決済するシステムを導入することも有効です。

この方法は、特に需要が高い日やイベント時に顧客のコミットメントを確保し、無断キャンセル防止に役立つでしょう。

事前決済を導入することで、顧客の予約に対する意識が高まり、万が一キャンセルが発生した場合でも、事前に設定されたポリシーに基づいて返金処理を行えます。

予約時にクレジットカード内容の入力システムを導入する

予約時に顧客のクレジットカード情報を要求するシステムは、無断キャンセルやキャンセルに伴う損害を最小限に抑えるのに有効です。

クレジットカード内容の入力は、キャンセル料の徴収に利用されることが多く、顧客にとってはより責任を持って予約する動機となります。

ただし、このシステムを導入する際は、顧客の個人情報保護に最大限の注意を払う必要があるでしょう。個人情報の取り扱いについても、顧客に分かるよう明記しておいてください。

キャンセル手続きしやすい仕組みを設ける

キャンセル手続きを簡単にすることで、顧客が無断キャンセルすることを避けやすくなります。

顧客の中には「キャンセル連絡を直接伝えづらいな」と感じる場合もあるでしょう。

オンラインで簡単にキャンセルできるシステムを提供することで、顧客は予定が変更になった際に迅速に対応でき、企業は空席を穴埋めする機会を確保できます。

無断キャンセルを適切に対処するなら弁護士への相談がおすすめ

無断キャンセルは、契約放棄と同じ扱いです。場合によっては損害賠償請求も可能です。しかし、適切な対応を取らなければ泣き寝入りするリスクもあるでしょう。

無断キャンセルへの対応に少しでも不安があれば、弁護士へ相談することをおすすめします。

無断キャンセルの対処を弁護士に依頼するメリット

無断キャンセルの対処を弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 相手との交渉から損害賠償請求まですべて一任できる
  • 迅速かつ確実にキャンセル料を回収できる可能性が高い
  • 法的に有効な証拠収集をサポートしてくれる
  • 時間的・精神的な負担を軽減できる

弁護士は、法的な知識と経験に基づいて、依頼人に代わり迅速かつ確実にキャンセル料を回収してくれます。損害賠償請求を自力で進めるには、内容証明郵便の作成や裁判所とのやりとりなど、専門知識を要する場面が多々あります。

特に内容証明郵便は、送付された事実や内容を郵便局が証明するものであり、法的な効力が高い文書です。そのため、自ら請求を行うよりも、弁護士から送達すれば圧力をかけられるため、スムーズな回収につなげられるでしょう。

また、無断キャンセルによる損害は、経済的な損失だけでなく精神的な負担も伴います。弁護士に依頼することで、依頼人はキャンセル料の回収や法的な手続きに関する一切を任せられます。店舗経営者は、精神的な負担を軽減できるでしょう。

弁護士費用を抑えるなら弁護士保険の利用がおすすめ

弁護士費用を抑える方法として、弁護士保険の利用が挙げられます。

弁護士保険とは、加入者が法律上のトラブルに巻き込まれた際に、弁護士費用を補償する保険のことです。訴訟費用や弁護士費用の一部または全額を保険がカバーしてくれ、自己負担金を大幅に減らせます。個人の利用にとどまらず、法人・事業者向けの弁護士保険も登場しています。

弁護士費用が心配で、問題が深刻化するまで弁護士に相談を先延ばしにしていると、状況が悪化しかねません。

あらかじめ弁護士保険に加入しておけば、経済的な負担を気にせずに早期に弁護士に相談でき解決を目指せるでしょう。

法人・個人事業主が弁護士保険を利用しトラブルを解決した事例はこちらから

記事を振り返ってのQ&A

Q.客の無断キャンセルに損害賠償請求は可能ですか?
A.無断キャンセルは、店側は予約者に対して民法上の責任として損害賠償請求を問える場合があります。電話予約や口頭でも賠償請求の対象になり得ます。

Q.無断キャンセルで請求できる損害賠償額の算定方法を知りたいです。
A.飲食店におけるコース予約の場合、予約されたコース料金全額を基準にします。
席のみの予約では、逸失利益の算出がやや複雑になります。一般的な消費傾向や過去のデータを基に算定することが多いでしょう。

Q.無断キャンセルで損害賠償請求する手順を教えてください。
A.損害賠償請求を行うためには、無断キャンセルがあったことを証明する必要があります。その証拠を基に、相手へ支払い請求を求めます。それでも支払われない場合は内容証明郵便を利用し、法的措置を検討します。

Q.店側が無断キャンセルのリスクを最小限に抑えられる対策はありますか?
A.メールやシステムで予約日のリマインドをする、事前決済サービスを導入する、キャンセルポリシーを提示する、予約時にクレジットカード内容の入力システムを活用するなど、さまざまな対策が講じられます。