根も葉もない悪口を言いふらされた!名誉毀損で慰謝料をとれるかも?

嘘に悩まされる主婦

私たちが日々生活していくうえで、切っても切れないご近所付き合い。

ご近所さんが集まると、ついつい噂話や悪口……なんてこともあるでしょう。

もしかしたら、ご近所さんからのいわれない陰口に悩まされている、なんて人もいるかもしれませんね。

そんな方は、必見です。

ご近所に根も葉もない悪口を言いふらされた場合、慰謝料をとれるかもしれないのです。

今回は、実際にあったAさんの裁判事例(昭和59年8月29日 仙台地裁)を見てみましょう。

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こんな疑問にお答えします

Q: ご近所に根も葉もない悪口を言いふらされた場合、慰謝料をとれるか?

ご近所さんたちからの根も葉もない噂も、度が過ぎれば名誉毀損です。あまりにも悪質な場合は、精神的苦痛に対する損害賠償請求ができるのです。泣き寝入りをする前に、まずは頼れる弁護士に相談をしてみましょう。弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用の負担をしてくれるので助かります。

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Aさんの事例

ある地方都市に住む主婦Aさんは、町内会の班長をしているBさんに勧誘されて、化粧品会社の訪問販売員として勤務するようになりました。

そして、その頃から、近隣に住む主婦でこれまで交際のあったCさん、Dさん、Eさんと次第に疎遠になっていきました。するとCさんたち三人は、Aさんに対する悪口をその後半年間にわたり他人に告げるようになったのです。

Cさんたちの陰口は、Aさんに対する誹謗中傷ともいえるような、とても悪質なものでした。

Cさんたちは、Bさんに対して「Aさんは手癖が悪い」「Aさんは警察から盗みの疑いをかけられている」というような事実無根のことを吹き込み、Aさんを泥棒扱いしたのです。

さらに、Aさんの勤務先やBさんの自宅にまで、女性の声で「Aさんは警察から目をつけられているから注意しろ」「なぜAさんを化粧品会社に誘ったのか」などの電話がかかってくるようになりました。

そして、ついには、Aさん本人の自宅にまで、Aさんが泥棒であることを具体的事実で指摘して非難する匿名の手紙が届くまでになったのです。

Aさんは、いたたまれなくなって、化粧品会社を退職することになりました。

そして、他所の街に引っ越すことを考えるほど思いつめました。

弁護士に相談し提訴

Aさんは、弁護士に相談をしてみました。

弁護士からは、「刑事事件としての名誉毀損にあたるかどうかは少し問題があるが、民事的には問題にできる」という回答を得ました。

そこでAさんは、Cさんたち三人を相手取り、Cさんたちの陰口等が名誉毀損として不法行為にあたるとして、各人100万円(計300万円)の慰謝料を請求する訴訟を起こしました。

判決


裁判所は、Cさんたち三人がAさんを誹謗中傷したという事実を認めたうえで

被告ら(Cさんたち)の行為は町内の単なるお茶飲み話の域を超え、原告(Aさん)に対する悪意を持った誹謗中傷というべきものであって不法行為を構成する

と判断しました。

そして、Aさんの精神的苦痛に対する慰謝料として、Cさんたちに各人20万円(計60万円)の支払いを命じたのです。

刑法上の名誉毀損と民法上の名誉毀損の違い

Aさんの裁判で認められた名誉毀損とは、何なのでしょうか。

まず、名誉とは名声や信用等の、人に対する社会的評価のことをいいます。

そして、これを低下させる行為が名誉毀損にあたります。

名誉毀損は刑法上のものと民法上のものがあり、性質が少し異なります。

刑法上の名誉毀損

刑法上では、具体的事実を公然と摘示することにより、ある人の社会的評価を低下させた場合、その事実の有無に関わらず、名誉毀損罪が成立します。

法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金となっています。

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

事実を「公然と」摘示するというのは、不特定または多数の人に対して事実を指摘することを指します。

これは、人に直接話をする以外にも、街頭で拡声器を用いた場合や、インターネットの掲示板に書き込んだ場合などにも該当します。

また、例えごく少数の人に事実を伝えただけであっても、そこから多数の人々に広まっていく可能性(伝播性)が予見されれば、名誉毀損罪にあたります。

そして、名誉毀損罪では摘示した事実が真実であるか否かは問われないため、仮に指摘した事実が本当のことであっても、その人の社会的評価を低下させた場合には名誉毀損罪が成立します(後述の例外を除く)。

民法上の名誉毀損

民法上、名誉毀損は不法行為の一類型として規定されています。

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

第七百二十三条  他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

民法第709条では、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと規定されています。

この「権利又は法律上保護される利益」に、名誉が含まれると解されます。

民法第710条では、不法行為により賠償されるべき損害には財産以外の損害も含まれるということが規定されています。

これにより、他人からの名誉毀損行為により生じた精神的苦痛に対する慰謝料請求権が発生します。

また、民法第723条では、他人の名誉を毀損した者に対して、裁判所は被害者の請求により名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができると規定されています。

「名誉を回復するのに適当な処分」としては、新聞紙面上の謝罪広告などがあたります。

民法上の名誉毀損は、刑法のように公然性を条件としていないので、適用の範囲がやや広いといえます。

刑法上の例外

なお、前述のように、名誉毀損罪では摘示した事実が真実か虚偽かは問われません。

しかし、刑法では下記のとおり例外が規定されています。

第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない

この規定により、①摘示した事実が公共の利害に関するものであること、②摘示した動機が公益を図る目的であること、③摘示した事実が真実であると証明されること、のすべてを満たした場合は違法性が阻却され、名誉毀損罪は成立しません。

これは、憲法第21条で保障されている表現の自由との調和を図るために定められた規定です。

起訴されるに至っていない犯罪報道などは、これに該当するといえるでしょう。

なお、上記の例外規定の趣旨は民事責任にも推し及ぼされますが、純然たる私事・私行に関する場合は、事実が真実であっても社会的評価を低下させた場合には名誉毀損として不法行為になると解されています。

Aさんの事例では、Cさんたちの行為はAさんの犯罪行為を糾弾するというような公益目的をもったものとは認められず、また勤務先にまで電話をし、その期間も約半年間に及ぶという陰湿で執拗なものであることから、名誉毀損行為と認められたのです。

悪口を言いふらされても名誉毀損に問えないケース

今回ご紹介した事例では、悪口が悪質なものとして名誉毀損が認められました。

しかし、悪口を言いふらされても名誉毀損として認められにくいケースがあることも知っておきましょう。

たとえば、次のようなケースです。

名誉毀損の成立要件を満たさない

名誉毀損の成立要件を満たさない悪口の場合は、加害者を罪に問えない可能性があります。

名誉毀損の成立要件は、以下の3つです。

  • 公然と
  • 事実を摘示し
  • 人の名誉を下げる

上記の3つをすべて満たさないと、名誉毀損として成立しません。

ここで、具体的な事実を述べず、公然と被害者の名誉を下げる行為をした場合は、名誉毀損ではなく侮辱罪が成立する可能性もあります。

侮辱罪の成立要件については、こちらの記事をご覧ください。

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誰の悪口なのか被害者を特定できない場合

誰の悪口を言っているのか特定できない場合も、名誉毀損が成立しにくいケースといえます。

名誉毀損の成立要件のひとつに、「被害者の名誉を傷つけること」という項目があります。

誰のことなのか特定できない悪口は、誰の名誉も傷つけていないと判断される可能性があります。

たとえば「この前会った人は会社をクビになったみたい」「あの人は過去に逮捕歴がある」といった悪口は、名誉毀損に該当する可能性が低いといえるでしょう。

悪口を言いふらした加害者を名誉毀損で訴えるには?

言いふらされた悪口が、名誉毀損の成立要件を満たしているのであれば、名誉毀損に問える可能性があります。

名誉毀損で訴えるには、次の方法があります。

警察に告訴状を提出する

加害者に刑事罰を与えるために、警察に告訴状を提出します。

名誉毀損罪は親告罪なので、被害者による刑事告訴がない限り加害者は処罰されません。

告訴状の提出後に警察が受理すると、捜査が始まります。

捜査が始まり名誉毀損と判断されれば加害者は起訴され、刑事罰が与えられます。

ここで注意したいのは、名誉毀損罪で法的措置をとるには「時効」を意識しましょう。

名誉毀損で加害者を処罰するには民事と刑事でそれぞれ時効が存在します。

時効を過ぎてしまうと被害を申告できないどころか、慰謝料も請求できません。

名誉毀損の時効については、こちらの記事で確認してみてください。

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慰謝料請求を行う

悪口によって損害を被った場合は、民事上で慰謝料請求を行う方法もあります。

慰謝料請求は、加害者と示談交渉で決めていくことも可能ですが、トラブルの相手と直接話し合うのはストレスになる方もいるでしょう。

そうした場合は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

弁護士に依頼することで、直接相手と顔を合わせずに済み、被った損害に対する妥当な慰謝料を請求できるでしょう。

慰謝料請求を考えている場合は、弁護士への相談を視野に入れてみてくださいね。

弁護士への相談窓口は、こちらの記事で紹介しています。

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まとめ:悪口による名誉毀損で悩んだらまずは弁護士に相談を

ここまで刑法上・民法上の名誉毀損について見てきましたが、名誉の侵害がどのような場合に違法性を持つかについては微妙な問題があります。

その人の社会的地位や侵害行為の伝播性、動機などの種々の具体的事情により違法性の有無や程度が判断されるからです。

個々のケースが名誉毀損にあたるかどうかは個別具体的に判断されるため、一概に判断することはできません。

まずは弁護士に相談し、アドバイスを受けるとよいでしょう。

また、実際に訴訟を起こすのは大変なことですし、訴訟を起こさずに問題を解決するに越したことはありません。

訴訟を起こす前に、相手方に対して抗議の意思を述べるとともに、今後も行為が続くようであれば法的手続きをとるという警告文を送ることで、問題が解決する場合もあります。

泣き寝入りをする前に、まずは頼れる弁護士に相談をしてみましょう。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.悪口を言いふらされました。名誉毀損で訴えられますか?
A.名誉毀損の成立要件をすべて満たせば、法的措置に問える可能性があります。

Q.悪口を言いふらされても名誉毀損にならないこともあるのですか?
A.名誉毀損の成立要件を満たしていないと、違法行為として認められない可能性があります。ただし、内容によっては侮辱罪に問えることがあるので、法律の専門家に相談してみましょう。

Q.悪口の内容が名誉毀損になる場合、法的措置をどのように進めたらいいですか?
A.刑事告訴と民事上の慰謝料請求という方法があります。法的措置を進めるには裁判所とのやりとりや法律の専門知識を要するでしょう。スムーズに行うには弁護士のサポートがあると安心です。

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