工事の音がうるさい!騒音と振動の法的な規制はあるの?

 


藤井弁護士

この記事の監修者

藤井 寿(弁護士・公認会計士)

工事の音がうるさい!騒音と振動の法的な規制はあるの?
あなたも一度は、周囲で工事が始まった際に、「工事音がうるさい!」「この振動はなんとかならないのか!」「こんな時間に工事をするなんて法的にどうなのか?」と思われたことはないでしょうか?

今回は建設業者が行う「工事」の騒音と振動について採り上げます。

建設工事やリフォーム工事は、朝8時か9時頃になると、いきなりけたたましい音を響かせて始まり、晩まで続くことがあります。

また、工事によって振動が家まで伝わってくることもあります。

これらの騒音や振動は、日中、家で過ごすことが多い方にストレスを与えたり、夜間に仕事をしている方や乳幼児の睡眠を妨げたりする原因になります。

工事はいつか終わるから「しばらく我慢しよう」と思うものの、知らない間に工期が延長されたりして、我慢が限界に達したりもします。

では、こうした工事の騒音や振動は、法律でどれほど規制されているものなのでしょうか。

まず「騒音規制法」を見てみましょう

日本で定められている大半の法律には、最初に「目的」が書かれています。

騒音規制法1条には「この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なう・・・ことを目的とする」と定められています。

建物の建設、修繕、解体などの工事は、たしかに社会活動や生活のために欠かせない営みです。

それに伴って、ハンマーを叩く音やドリルが回る音などが出てしまうことはやむを得ないことでしょう。

しかし、その工事音を「出し放題」にされては、工事現場周辺の住人にとって迷惑極まりありません。

騒音規制法は、建設工事が出す騒音を際限のないものとすることを防ぎ、適正なレベルの音にまで抑えることで、人々の暮らしを保護するための法律なのです。

まず、著しい騒音が出がちな機械や道具を使う現場作業について、騒音規制法は一定のパターン化をして『特定建設作業』として特定して規制しています。

特定建設作業を含む建設工事を行う業者は、その工事を実施する自治体(市町村)の首長(市町村長)に対して、詳細な届出をしなければなりません。

また、特定建設作業の場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、市町村長が業者に対して「改善勧告」や「改善命令」を出すことができます。

届出を怠ったり、虚偽の事項を記載して届け出たり、改善命令に従わなかったりした業者には、罰金刑が科されることもあります。

騒音や振動を出しやすく、厳しく規制される「特定建設作業」とは?

著しい騒音を発生するものとして騒音規制法施行令で指定されている『特定建設作業』は、以下の通りです。

・くい打機(もんけんを除く。)、くい抜機又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く。)を使用する作業(くい打機をアースオーガーと併用する作業を除く。)
※もんけんは、手動式のくい打ち道具です。大きな音は発生しますが『特定建設作業』には含まれません。アースオーガーは、杭が地面に入る穴を掘る機械で、くい打ちの準備に使えば、くい打ちに伴う騒音を抑えることができます。

・びょう打機を使用する作業

・さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあつては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50メートルを超えない作業に限る。)

・空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであつて、その原動機の定格出力が15キロワット以上のものに限る。)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く。)

※空気圧縮機は「コンプレッサー」ともいい、削岩やドリル、地盤改良などに使う機械の動力源として用いられます。

・コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45立方メートル以上のものに限る。)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が200キログラム以上のものに限る。)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く。)

・バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が80キロワット以上のものに限る。)を使用する作業
※バックホウは、いわゆる油圧ショベルカー、ユンボと呼ばれる建設機械です。

・トラクターショベル(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が70キロワット以上のものに限る。)を使用する作業

・ブルドーザー(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が40キロワット以上のものに限る。)を使用する作業

「特定建設作業」について、どんなことを役所に届け出るのか?

特定建設作業に該当する工事については、その工事を行う自治体(市町村)の首長(市町村長)に対して、詳細な届出をしなければなりません。

そうして、現場周辺の生活環境に配慮しない工事を行わないように牽制しているものと考えられます。

自治体によって若干異なる場合がありますが、特定建設作業を行う建設工事業者は、作業開始から7日以上前に、おおむね以下の事項を届け出なければなりません。

・届出者⇒工事の元請業者の会社名、住所、代表者名を記入します。発注者や下請業者を届出者とすることはできません。
・建設工事の名称
・施設又は工作物の種類
・特定建設作業の種類
・機械の名称、型式及び仕様
・特定建設作業の場所 ⇒ 所在地を地番まで明確に記載します。
・実施の期間 ⇒ 作業をしない日曜や祭日を含めた総日数を記載します。
・開始及び終了時刻 ⇒ 日々の工事の開始・終了時刻を記載します。
・振動防止の方法 ⇒ 騒音や振動を防ぐ対策を具体的に記載します。

さらに、特定建設作業を行う場所付近の「見取り図」や、特定建設作業の工程を明示した「工事工程表」などの添付をしなければなりません。

また、特定建設作業を行う事業者には、事前に周辺住民へ説明を行い、作業現場には特定建設作業の内容を掲示するよう、努力義務が課されます。

「特定建設作業」で規制される作業時間・騒音

建設作業でどの程度、騒音を出してはいけないか、具体的には、各都道府県、各市町村の判断に委ねられています。

とはいえ、全国各地で、かなりの部分は共通しています。

たとえば東京都を例に出しますと、一般的な住宅地にあたる「1号区域」において、「特定建設作業」の規制内容は次の通りです。

・工事の時間帯(のべ作業時間):午前7時から午後7時までのうち10時間以内
・連続作業日数:連続6日まで
・日曜・祝祭日:作業禁止
・騒音の上限:85デシベル

実際の建設工事を行うにあたっては、おおむね午前8~9時からの開始で、土曜日も作業を休むことが多く、周辺住民の立場に配慮して、規制内容で許された範囲よりも「自粛」する業者がほとんどです。

もし、早朝の時間帯(午前6時台や午後7時台)にも、機械を使った騒音を発する工事を行っているようなら、正式に工事を止めることを求めても問題ありません。

なお、85デシベルという騒音量についてですが、電車(地下鉄)内で聞こえる音や、掃除機が出す音が一般的に80~85デシベルだといわれています。

「騒音規制法」以外で、厳しく規制される現場作業

振動規制法という別の法律で、以下の作業は、さらに厳しく規制されており、東京都の場合は75デシベル以下に抑えなければなりません。

・振動ローラ、タイヤローラ、ロードローラ、振動プレート、振動ランマその他これらに類する締固め機械を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)
※締固めとは、液状の生コンクリートの内部から空気などを抜いて空洞をなくし、コンクリートの密度を高める作業のことです。

・原動機を使用するはつり作業及びコンクリート仕上作業(さく岩機を使用する作業を除く。)
※はつり作業とは、コンクリートでできた構造物を壊したり削ったりする作業のことです。

・動力、火薬又は鋼球を使用して建築物その他の工作物を解体し、又は破壊する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限り、さく岩機、コンクリートカッター又は掘削機械を使用する作業を除く。)

都道府県によって、独自の騒音規制がなされていることも


騒音規制法27条などは、法律の規制とは別に、地方自治体ごとに必要な規制を設けて構わないと定めています。

各都道府県でそれぞれ、建設作業の騒音に対して、より厳しい基準を設けることができるのです。

たとえば、東京都の環境確保条例では、次の通りに騒音レベルが規制されています。
※一部は、騒音規制法や振動規制法と重複していますが、地域でさらに厳しい規制を行っているわけです。

<80デシベル以下>
・穿孔機を使用する くい打作業
・インパクトレンチを使用する作業
・コンクリートカッターを使用する作業
・コンクリートミキサー車を使用するコンクリートの搬入作業 〔※なお、道路交通法に規定する交通規制が行われている場合、コンクリートミキサーを使用するコンクリートの搬入作業は、午後9時まで延長可能とされています〕
・原動機を使用するはつり作業及びコンクリート仕上げ作業(さく岩機を使用する作業を除く。)

<70デシベル以下>
・圧入式くい打機、油圧式くい抜機を使用する作業又は穿孔機を使用するくい打設作業
・ブレーカー以外のさく岩機を使用する作業
・ブルドーザー、パワーショベル、バックホーその他これらに類する掘削機械を使用する作業 (作業地点が連続的に移動する地点にあっては、1日における当該作業に係わる2点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)
・振動ローラ、タイヤローラ、ロードローラ、振動プレート、振動ランマその他これらに類する締固め機械を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)
・動力、火薬を使用して建築物その他の工作物を解体し、又は破壊する作業 作業地点が連続的に移動する地点にあっては、1日における当該作業に係わる2点間の最大距離が50mを超えない作業に限り、さく岩機、コンクリートカッター又は掘削機械を使用する作業を除く。

<65デシベル以下>
・空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるもので原動機の定格出力が15kw以上)を使用する作業(さく岩機として使用する場合を除く。)

日常生活等に適用する騒音規制基準値

工事音の発生源において、たとえ基準が守られていても、家の中で日常生活を送るには、耐えがたい騒音として感じられることがあります。

たとえば、東京都環境確保条例136条は「何人も、…中略… 別表第13に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては、人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超えるばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の発生をさせてはならない」と定めています。

たとえば「第一種・第二種低層住居専用地域」や「東京都が定めた第一種文教地区」などでは、生活環境に支障がない騒音レベルを40~45デシベル、「第一種・第二種中高層住居専用地域」「第一種・第二種住居地域」では、45~50デシベルなどと定めています。

「工事の騒音」「工事の振動」をめぐる裁判例

もし、工事の騒音や振動が法律や条例の限度に違反するなど著しく、社会生活上受け入れるべき受忍限度を超えており、身体的・精神的・財産的な被害が生じていれば、それを不法行為として、建設業者などに対して裁判などで損害賠償請求をすることができます。

この受忍限度を超えているかどうかは、騒音や振動の客観的な程度がメルクマールとされることが多いです。

住民の居住する自宅の室内で騒音や振動を計測したときに、騒音規制法・振動規制法・条例等で定められている限度の数値を継続的に超えていれば、受忍限度を超えていると認定される可能性が高いと考えられます。

なお、スマートフォンで騒音レベルを手軽に測ることができるアプリもいくつかあります。
Decibel X – dBA デシベルテスター(iOS向けアプリ)
騒音測定器:Sound Meter(Android向けアプリ)

ただし、これらはあくまでも騒音レベルの目安を知るための簡易的なツールです。

裁判の証拠資料などとするには、測定の日時・場所・方法・結果などをきちんと記録化しておく必要がありますし、専門の測定業者への依頼が必要となることもあります。

損害額として、財産的被害は比較的算定しやすいですが、精神的苦痛は算定が難しく、慰謝料が認められるかどうかやその金額は、様々な事情を総合的に考慮して決められます。

あなたが実際に受けている騒音被害が、もし仮に、これらの例に近い状況であれば、損害賠償請求が認められる可能性があります。

東京地方裁判所 1997年10月15日判決

マンションの一室のリフォーム工事で、受け入れがたいほどの騒音が発生し、その下の階に住む人が耐えられず、精神的な疾患にかかったり、給湯管が破裂したという事例です。

工事の施工業者と、設計監理した一級建築士に損害賠償の支払いが命じられました。
ただし、注文主には責任がないとされました。

この件では、騒音や振動がより少なく済む工法が当時存在したとは認められなかったのですが、過失(注意義務違反)があると判断されています。

東京地方裁判所 2005年11月28日判決

遊技場などの解体工事で発生した騒音や振動に伴って、近隣住宅の外壁に亀裂が走り、窓サッシやドア枠が歪むなどした財産的被害が生じたほか、その住宅の居住者のうつ病が悪化し、不安や不眠の症状が出たと訴えた件です。

いずれの被害も、解体工事との因果関係があり、業者は近隣に被害が及ぶことを防ぐ措置を講じなかった過失があったものと認めて、建物修繕費約74万8千円、慰謝料50万円のほか、弁護士費用に相当する額を住人に支払うよう命じました。

「工事の騒音」「工事の振動」について、どこに相談すればいいのか?

「工事音がうるさい!」「振動がひどい!」と悩まれたとしても、いきなり裁判を起こすことは考えにくいでしょう。

ただ、「相談窓口がわからない」という方もいらっしゃいます。

工事の騒音や振動についての相談窓口は、市役所や町村役場に用意されています。

たとえば、東京都では区役所・市役所などに区市町村の公害苦情相談窓口があります。

まず最初はそちらで相談することをお奨めします。必要に応じて、業者に「改善勧告」や「改善命令」を出してもらえることがあります。

しかし、役所・役場で納得のいく対応をしてもらえないようなら、弁護士にご相談ください。

まとめ

工事の騒音や振動を規制するルールには、法律で定められた一律のものと、条例で定められた地域独自のものがあり、騒音や振動の具体的な管理や取り締まりは、おもに市町村の仕事となります。

ただ、騒音や振動によって実際に財産的・精神的な被害を受けていれば、弁護士に依頼して、建設業者を相手に示談の交渉や裁判を行うことができます。

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長嶺 超輝(司法ジャーナリスト)
九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)など、著書12冊。NPO法人 企画のたまご屋さんの出版プロデューサーとして、全国の著者志望者の支援活動も続ける。
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