マンションの上の階がうるさい!騒音トラブルの法的な基準と相談先は?

 

マンションの上の階がうるさい!騒音トラブルの法的な基準と相談先は?マンションやアパートにお住まいの方で、

「上の階の子供の足音がドンドンうるさい!」

「隣の部屋の生活音がうるさい!」

など、隣人や上層階の騒音に悩まれていらっしゃる方も多いと思います。

この記事では、騒音トラブルについて、法的な角度から迫るとともに、過去の裁判例なども踏まながら、騒音の法的な基準について解説していきます。

なぜ「小さな騒音」は、人の心を逆なでするのか


じつは、交通基の離着陸音や、工場稼働や建設に伴う「大きな騒音」よりも、マンション近隣から聞こえてくる子どもの叫び声やペットの鳴き声などの「小さな騒音」こそ、トラブルの火種となりやすいのです。

加害者側は周囲に迷惑な音声を、迷惑だとの自覚がないままに発生させがちです。

しかも被害者側はその被害を他者と共有できず、じっと抱え込んでしまいがちで、ときに怒りを爆発させかねません。

1974年に、神奈川県平塚市で発生した、母子3人の殺害事件は、国内における騒音トラブル殺人の「第1号」とされています。

隣人のピアノの演奏音を騒音と受け止めた男によって、連続殺人にまで発展したことは当時、「些細な生活上の問題が、殺人の動機になりうる」と、驚きをもって受け止められました。

また「日本人の騒音に対する認識が変化した」ターニングポイントにあたる事件として、センセーショナルに報じられることもありました。

近年でも、騒音トラブルに起因するとみられる殺人や傷害事件は全国で散発していますし、そのような粗暴的犯罪行為に至らずとも、騒音をめぐって長期的に近隣同士で揉めているケースであれば、無数にあると考えられます。

市町村や都道府県は、地元住民からの相談や苦情などを受け付けています。

その中でも「家庭生活」に関する地元の地方公共団体への苦情相談は、1997年から2002年にかけての5年間で急増し、その苦情のほとんどが騒音問題だったといいます(2004年度 公害等調整委員会年次報告より)。

ちょうどその時期にあたる、1999年にNHKが行ったアンケート(全国県民意識調査)によれば、統計上、ご近所づきあいを心がけている回答の率が最も高かった島根県と、最も低かった東京都で比較すると、人口1万人あたりの騒音苦情件数は、東京都のほうが約8倍も多いことがわかっています。

どうやら、ご近所づきあいが不足した都市部の住人ほど、近隣同士の騒音問題で揉めやすいようです。

2015年に実施された「SUUMO 近隣トラブルに関する調査」によれば、近隣の住人が発する音について「かなり気になる」と回答があった上位5つは次の通りです。

1位 「子どもを叱りつける親の声」
2位 「子どもの騒がしい声」
3位 「子どもの泣き声」
4位 「ペットの鳴き声」
5位 「子どもの足音」
6位 「人の話し声」
7位 「楽器の音」
8位 「テレビ・音楽などの生活音」
9位 「洗濯機の音」
10位 「目覚まし時計の音、掃除機の音」

部屋ではしゃぎ、暴れまわっている子どもたちが発する声や足音を上回って、「かなり気になる」との回答が多かったのが、皮肉なことに、それを注意する親の声だというのです。

このほか、スプーンなど食器の落下音、浴室での洗面器の落下音や腰掛けの移動音、ドアや引き戸の開閉音なども、下層階への騒音につながります。

では、こうした「小さい騒音」は、なぜトラブルの元になってしまうのでしょうか。
その理由は、下記のように考えられます。

同じ音でも、伝わり方が違う

騒音に限らず、音には、振動して伝わる媒介物によって「空気伝播音」と「固体伝播音」とに分かれます。

マンションの上の階から下の階へ、特に直接的に伝わりうる騒音は、床面に対する固体伝播音です。

この固定伝播音にも大きく分けて2種類があります。

たとえば、硬い靴のソールやヒールが床にコツコツと当たる「軽量衝撃音」と、部屋の中ではしゃいで、跳んだり跳ねたりしている子どもが、床をドンドンと踏みつける「重量衝撃音」です。

このうち、重量衝撃音は、上の階で発せられた生活音が下の階まで響きやすくなるのが特徴です。

子どもが部屋の床を飛び跳ねるような音は、畳敷きの和室やカーペットを敷いたフローリングでも、下の階へ響きやすくなります。

つまり、騒音トラブルになりやすいのは、重量衝撃音のほうなのです。

重量衝撃音は、おおむね48デシベル前後に達すると、下層階の住人にとって日常生活で気になり始める音量で聞こえるようになるといわれます。

もし、下の階へ重量衝撃音が届く影響を軽減するのであれば、上層階の専用部の床と、下層階の専用部の天井との間の厚みを増し、中に吸音材や振動絶縁装置を仕込むなど、重量衝撃音を遮断するための大がかりなリフォーム工事が必要となります。

もっとも、軽量衝撃音がまったく騒音として問題にならないわけではありません。たとえば、浴室やトイレの配水管が、壁面や天井裏ギリギリを通っていて、夜中などに流水音が隣室に響きわたれば、それも騒音となりえます。

同じ音量でも、受け止められ方が違う

近ごろでは、隣接した公園や学校で子どもたちが楽しく遊んでいる声ですら、「騒音」と感じて、クレームを付けるケースがみられます。

これは「煩音(はんおん)」と呼ばれる問題です。

たとえ客観的には騒音とはいえない音量の声が聞こえてきたとしても、聞く人のその時々の精神状態などによっては、迷惑だと受け止めれてしまう場合があるのです。

煩音は「○デシベル以下」などの客観的に測定可能な基準に沿うものでなく、主観的な嫌悪感に基づくクレームです。

騒音問題とはひとまず切り分けて考えるべきです。

たとえば、何かを調べていたり文章を書いたりするなど、論理的思考に基づく作業を行っている最中には、些細な物音も邪魔に感じられやすくなります。

なかなか子宝に恵まれず悩んでいる夫婦にとっては、近隣からの赤ん坊の泣き声や幼児の叫び声などが、イライラを呼び起こす「煩音」として受け止められる場合がありえます。

また、同じ声量レベルであっても、意味のある言葉(有意味音)をより迷惑だと感じることがあります。

赤ん坊の泣き声と、親が子どもを注意している怒鳴り声では、後者のほうが意味を含んでいるだけに、つい気になってしまうのです。

もちろん、その人が「迷惑だ」と感じている事実そのものは、正面から受け止めなければなりません。

煩音のクレームを、単に「変な人が意味不明なことを言っている」と、なおざりに片付けていては、かえって相手方の神経を逆なでし、こじれてしまうかもしれません。

当事者の双方が「被害者意識」を抱きうる

航空機や工事現場などが発する「大きな騒音」問題においては、騒音の発生源である加害者と、迷惑を受けている被害者との色分けが明確だといえます。

しかし、「小さな騒音」は、誰が見ても明らかな迷惑を被っているとまでは評価できない生活音を、迷惑だと感じる人が増えているために起きている問題です。

現代人の多くにとって、近所づきあいの必要性や価値が低下しており、それに伴い、日常生活における「わずらわしさ」への耐性も低下しています。

一方で、付き合いが希薄な相手ほど、様々な意味での優劣や上下関係、勝ち負けを気にしてしまう人もいます。

「うるさいですよ」とクレームを付けられても、自分の非を認めて謝るより先に「どうして、この人にそんなことを言われなければならないのか」と感じてしまいます。

自分が煩音の発生源でありながら、被害者意識を持つ場合もあるのです。

これらの要素が、他責的で攻撃的な個人的性格と結びつくとき、トラブル当事者の双方が被害者意識を抱き、一方が他方を責め立て、お互いにひたすら自己弁護に徹するような泥仕合になってしまうおそれがあります。

「騒音」に明確な法的基準はあるのか

六法全書いわゆる「大きな騒音」に関しては、昭和の時代から「公害」として社会的に捉えられていたことから、騒音規制法や振動規制法を初めとする様々な法整備がなされてきました。

しかし、近隣住人同士が衝突する「小さな騒音」問題は、ごく私的な揉め事として扱われがちな時代が長く続いてきました。

そのために、全国共通ルールとしての法整備はなされていません。

そこで、「小さな騒音」問題については、民法の一般原則で処理されることになります(詳しくは後述します)。

ただし、一部の地方自治体では「小さな騒音」に関して、議会で制定した条例をもって規制しているところもあります。

騒音に関する条例①奈良県平群町

奈良県平群町「安全で安心な町づくりに関する条例」では、2条1項で

騒音とは、すべての楽器・ラジオ等の音響機器又は人声その他の音とし、町民に迷惑を及ぼすことをいう

と定義し、昼間(午前8時から午後8時まで)で65デシベル、夜間(午後8時から翌日の午前8時まで)で60デシベルを超える騒音(日常生活によるものを除く)を発した者に対し、町長が警告を出したり、職員が立ち入り調査を行ったりできると定められています。

騒音に関する条例②東京都国分寺市

東京都は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(環境確保条例)を定めています。

ただ、この条例は公害などの「大きな騒音」に関する取り決めです。

この都条例を受けて、国分寺市は独自に「小さな騒音」解消の統一ルールとして「生活音等に関わる隣人トラブルの防止および調整に関する条例」を定めています。

生活騒音の防止とは別に、隣人による騒音被害を訴えている人が、その隣人に対してつきまといや迷惑メールなどの嫌がらせを行わないよう規制する点に主眼が置かれているのが特徴です。

さらに、各マンションで独自に定めている規約類に、騒音などの近隣トラブルの解決に関して、一定の指針が盛り込まれていることがあります。

国土交通省が策定している「マンション標準管理規約」ですと、たとえば66条に『義務違反者に対する措置』、67条に『理事長の勧告及び指示等』が定められています(いずれも「単棟型」の場合)。

ただし、標準管理規約はあくまでも、国交省が例示した雛形ですので、実際にどのような規約を定めるかは、各マンション管理者の裁量に委ねられています。

刑罰法規としては、軽犯罪法1条14号が「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」に、拘留刑または科料刑を科すと定めています。ここでいう「公務員」は、一般に警察官を指します。

ただし、軽犯罪法は故意犯(わざと騒音を出している人)に適用されますので、単に生活音のせいで近隣トラブルになっている事例では処罰の対象にならないでしょう。

隣人間の生活騒音問題をめぐり、考えられる法律構成

上層階の住人が下層階の住人に迷惑をかける「小さな騒音」問題は、その責任の所在に着目したとき、大きく2つのパターンが考えられます。

ひとつは、上の階の住人が、明らかな騒音の発生源として責任を負わなければならない場合です。

もうひとつは、上層階の住人は問題なく平穏に暮らしているにもかかわらず、マンションの建物自体に構造的な問題が隠れている(各階の間にある仕切りが薄い、工事に手抜きがある……など)ために、一般的な生活振動(固体伝播音)が騒音として下の階に伝わってしまっている場合です。

上の階の住人に対して法的責任を問う

上の階の住人に対して法的責任を問う場合、具体的には、騒音被害を訴える側が、民法709条や710条に基づき、不法行為を理由とする損害賠償(慰謝料)を請求します。

騒音被害に対して金銭で賠償すべきなのは、一般的には精神的苦痛ですが、騒音を避けるために調達した遮音カーテンなどの購入費や、うつ病などにかかって通院した費用なども、相手方に損害として請求できます。

場合によっては、騒音の差し止め(防音措置請求)などを、相手方へ正式に請求することもできます。占有保持の訴え(民法198条)、物権的妨害排除請求権(民法206条など)、あるいは人格権(憲法)などが請求根拠になりえます。

上層階に対して法的責任を問えるかどうかの判断基準としては、判例としてほぼ確立された「受忍限度論」というものが採用されています。

請求が認められるかどうかを決する「受忍限度論」

誰も、まったく生活音を出さずに暮らすことはできません。

時には生活音が外に漏れ聞こえることもあるでしょう。

では、その生活音が、どの程度の大きさや程度まで漏れ聞こえることが社会的に許されるかは、周辺住民が通常受け入れて日常生活を送れる程度の音かどうかで判断されます。この一般的な基準を「受忍限度論」といいます。

生活騒音トラブルにおいての受忍限度は、おもに「騒音そのものの音量や性質」と「騒音の発生者が、被害防止や軽減のために行った措置」という2つの方向性で、当事者間の諸事情を総合的に判断しながら決められます。

たとえ、騒音レベルが大きくても、その音の発生源となっている行為に一定の公共性が認められたり、下層階の被害が収まるよう、様々な防音措置を誠実に講じているのに、どうしても漏れ聞こえてしまう場合は、損害賠償などが認められないかもしれません。

逆に騒音レベルが比較的小さくても、下層階の被害者に不誠実な対応を取っていたり、故意に騒音を発生させていたりすれば、損害賠償責任が認められやすい方向へ作用します。

なお、騒音の差し止めまで相手方に強制するには、被害者の受忍限度を超えているだけでは足りません。

加害者側の高度な違法性も条件として必要とされています。

マンションの管理会社等に対して法的責任を問う

マンションの構造上の理由で、上層階の住人による通常の生活音が、下層階の住人にとって騒音として受け取られるレベルで聞こえてくる場合、マンションのオーナーや管理会社、施工業者などが、いつまで経っても誠実な騒音防止措置を講じようとしなければ、正式に法的責任を問うことになります。

特に賃貸物件の場合、マンション管理者側は住人と賃貸借契約を結んでいるわけですから、住人に対し、信義に基づいて誠実に、平穏な住環境を提供する義務が課されていると考えられます(民法1条2項)。

故意または過失によってその義務を果たしていなければ、債務不履行に基づいて、住人は管理者に損害賠償や契約解除を求めることができます(民法415条、541条、543条)。

マンション管理組合が、住人と、平穏な住環境を提供する契約を結んでいる場合も同様です。

仮に、マンションの構造上、通常よりも大きな音が別室へ伝わりやすく、騒音被害が発生しやすい欠陥が存在することを、買い主が過失なく知らずに購入したなら、たとえマンションの管理者や売り主がその欠陥を過失なく知らなかった場合でも、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)を問える可能性があります(民法570条・566条)。

売り主に過失がなく、不法行為責任を問えなくても、契約解除や損害賠償(慰謝料)を請求できるのが特徴です。

さらに、マンションの所有者(オーナー)に対しても、無過失の土地工作物責任(民法717条)を問うて、損害賠償(慰謝料)を求めることができます。

また、欠陥のあるマンションを建てた建設会社に対しては、その欠陥ができてしまった点にたとえ過失がないとしても、製造物責任を問うことができます。

騒音トラブルはどこに相談すべきか

騒音トラブルの相手方は隣人ですので、できれば解決後も平穏な関係を築いておきたいものです。

よって、いきなり裁判などの強攻策には出ず、まずは穏当な方法を採って、解決できる道筋を探るのが基本となります。

相手方の態度に誠意が見られなかったり、無茶な要求をされたり、話し合いが長びき始めた場合には、徐々に厳しい方法を採っていくといいでしょう。

当事者同士の話し合い

基本は、騒音の発生源となっている相手と直接交渉することです。

ただ、トラブルの当事者だけで話し合うと、感情のぶつけ合いになりやすいですし、後に「言った言わない」の水掛け論にもなりかねず、ほとんどの場合、話し合いがこじれてしまいます。

最初は管理組合の人や不動産会社にお願いをして、ご自分の名前は伏せる形で「こういうクレームが出ています」と代わりに報告してもらい、相手方の反応をうかがいましょう。

もっとも、事前に弁護士に相談をして、そのアドバイスに基づいて、自らが交渉に臨むことも可能です。

弁護士が介入しての話し合い

交渉のプロである弁護士に依頼し、代理人として前に出て相手方と交渉してもらうこともできます。

代理人交渉には、ご自分にとって有利な条件をうまく引き出せるメリットがあります。

ただ、相手方は個人です。

弁護士が出てきたことで、不安や恐怖を抱き、感情的になって心を閉ざしてしまい、かえって話し合いがこじれるおそれも否定できません。

できるだけ、交渉に慣れている弁護士に依頼することをお奨めします。

ADR(裁判外紛争処理)を利用する

各都道府県の弁護士会に設置されている紛争処理センター(地域によっては「仲裁センター」「示談あっせんセンター」などと呼ばれています)では、トラブルの当事者の話を聞いて、間に入って仲裁を行い、一定の判断を示してもらえます。

裁判所ほど敷居が高くないですが、ここで示された判断には、裁判所の判決と同じ強制力があります。

裁判所を利用する

裁判所でも、いきなり正式裁判に訴えるのは決して得策ではありません。

プライベートの争い事について、公開の法廷で裁かれるのは心理的なプレッシャーも大きくなります。

まずは、簡易裁判所での調停手続きを経て、それでも調停が成立しなかったときに初めて裁判に訴えても遅くはありません。

調停の場では、専門の調停員がしっかりとお互いの話を聞き、金銭的解決や差し止めだけでない、柔軟な対応をしてくれます。

騒音トラブルから身を守るためには

物件選びの段階の場合

マンションの部屋選びの段階から、上の階からの騒音に強い物件かどうかをチェックするようにします。

フローリング床材の遮音性能を示す目安として、「L値」という基準があります。

おおむね、L-35~L-60まで、数値が5刻みで設定されており、数値が少ないほど、上層階からの騒音を掻き消す性能が高くなっています。

平穏に日常生活を送るには「L-45」以下であれば十分で、寝室として使う部屋ならば「L-40」以下が望ましいとされています。

「L-45」は、歩行音などの軽量衝撃音を「サンダルで歩く音が聞こえる」程度まで減らし、食器を落とす音やスリッパでの歩行音などは下層階へ届かせない性能があります。人が跳びはねるときの重量衝撃音であれば、「聞こえるが気にならない」程度にまで低減させることができます。

既に被害を受けている場合

騒音の被害を受けてしまったとき、いきなり相手方へ直接クレームを付けることは、トラブルがこじれる基ですので、避けたほうが賢明です。

すでに述べましたとおり、隣人間の言い争いは、さらなる深刻な衝突の火種になることがあるからです。

お互いに後に引けなくなることがあり、感情的になりやすいのです。

一般的な交渉なら、交渉が不成立となったとき、いったん距離を置くこともできますが、隣人同士では気まずさを隠しながらも日常的に顔を合わせなければなりません。

心理的距離や冷却期間を置くという選択肢を採ることが難しいのです。

よって、関係修復が難しくなった場合に備えて、一時的な転居など、自らがいったん引いて相手方と距離を置くという可能性も、オプションとして準備しておきましょう。

その心理的余裕が、良い結果に結びつくこともあります。

また、個人間のトラブルだからと決して油断せず、早いうちに客観的な証拠をしっかりと集めておくことも重要です

まずは簡易的に、スマートフォンアプリなどを使って騒音レベルを測定することができます。

後に本格的に専門業者に依頼して、騒音の内容・発生時刻・継続時間なども含めて、現地調査をしてもらい、第三者の立場で記録してもらうようにしましょう。

「隣人騒音トラブル」の代表的な裁判例

<ペットの鳴き声>鎌倉簡易裁判所 1982年10月25日判決

昼間は留守がちな隣の一軒家の庭に放し飼いにされていた、スピッツなど数匹の犬が延々と吠え続け、原告は仕事も手に付かず、精神的ストレスで食欲減退、ひいては精神疾患にもかかったという事案です。苦情を入れても、被告は話を聞き入れるどころか、むしろ反抗的な態度を取りました。

原告はピアノ演奏や作曲の仕事をしており、部屋には防音設備が施されていた上での騒音被害でした。

<判決>
30万円の損害賠償命令
⇒被告は飼い犬の異常な鳴き声を防止すべきであり、「愛情を持って、できる限り犬と接する時間を持ち、決まった時間に食事を与え、定刻に運動する習慣を付けるなど」飼育上の注意義務を怠ったと認定しています。

原告が、犬の鳴き声の時間帯や聞こえ方など、詳細な被害状況を長期間にわたって記録し続けてきた日記も、有力な証拠となりました。

<子供の足音>東京簡易裁判所 2002年12月6日判決

マンションの真上の部屋に引っ越してきた家族の生活騒音がうるさく、特に小さい子どもが暴れ回る音が騒がしいため、もはや通常の生活を送れず、退去せざるをえなくなったと訴え、30万円の慰謝料を請求した裁判です。

<判決>
請求棄却
⇒隣家から響いてくる生活音、あるいは子どもたちの足音や叫び声を原告が聞かされるのは、昼間の短い時間のみに限られていました。

長時間にわたるものではないし、音の大きさもそれほど異常ともいえないとして、「受忍限度内にある」との判断です。

<子供の足音>東京地方裁判所 2007年10月3日判決

上層階に住んでいる家族について、子どもが室内を走り回ったり跳びはねたりする足音に耐えられないとして、下層階の住人が訴えた事例です。

事前に、マンションの管理者が間に入って、最初は文書を通じて間接的に、やがて直接的に被告に注意を呼びかけていました。

しかし、被告は「これ以上静かにできない」と突っぱねたといいます。そこで原告は被告を相手取り、240万円の賠償を求めて提訴しました。

<判決>
30万円の損害賠償命令
⇒このマンションは、3LDKのファミリー向けで、子どもが住むことも最初から予定して建てられ、住人もそのことを受け入れた上で居住しているとはいえ、ほぼ毎日、ときには深夜にも子どもの足音(50~65デシベル)が下層階に聞こえる状況がしばしばであり、被告は子どもをしつけて誠意ある対応を取るのが通常だと認定。

態度の不誠実さも含めて、原告の受忍限度を超えているものと、裁判所は判断しました。

<子供の足音>東京地方裁判所 2012年3月15日判決
上の階に引っ越してきた家庭の小さな子どもが、昼夜を問わず走り回っているため、下層階の住人は頭痛の症状を訴えて通院するようになった事例です。

マンションの管理人は、2度にわたって「騒音を生じさせないよう」注意を呼びかける書面を全戸に配布していました。

<判決>
126万円の損害賠償命令 さらに騒音を午前7時から午後9時までは53デシベル以下、それ以外の深夜早朝の時間帯を40デシベル以下に抑えるよう原告一家に命じました。
⇒ より平穏で快適な日常生活を求める時代の流れもあり、比較的高額の賠償が認められています。

また、原告が業者に依頼して、床から1.2メートルの高さに騒音計マイクを設置し、精密に被害状況を計測したことも、有利に働いたと考えられます。

最後に

「隣近所には迷惑をかけない」との心がけも、かつては、マナーであり道徳の問題だったはずです。

しかし、よほどのことがない限り、近所とは関わらずに暮らせる都市生活の中で、他者の存在を忘れて自己本位に振る舞う一部の人々がいるために、騒音トラブルを法的に規律せざるをえなくなっています。

様々な要素が複雑に絡み、慰謝料などが認められるかどうかの判断基準も難しくなっていますので、日常トラブルに精通する弁護士に、一度相談してみてはいかがでしょうか。

尚、弁護士費用保険に加入することにより、騒音トラブルやその他身近な法的トラブルに対して備えることが可能になります。弁護士保険で騒音トラブルが解決

※上記の事例は実話に基づいておりますが、全ての方にその効果を保証するものではありません。

実際に弁護士保険の加入者から、弁護士保険証を提示することで、騒音トラブルを解決することができたとのご報告を頂いております。

まだ弁護士費用が心配ですか?
離婚・男女トラブル、労働トラブル、
近隣トラブル、相続トラブル、詐欺被害など、
トラブル時の弁護士費用を通算1000万円まで補償。
The following two tabs change content below.
長嶺 超輝(司法ジャーナリスト)
九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)など、著書12冊。NPO法人 企画のたまご屋さんの出版プロデューサーとして、全国の著者志望者の支援活動も続ける。
この記事のURLとタイトルをコピーする

いいね!を押して更新情報を受け取る

ページ上部へ戻る