少額訴訟の流れや費用・訴状の書き方について

 

藤井弁護士

この記事の執筆者

藤井 寿(弁護士・公認会計士)

少額訴訟の手続きから流れ・費用・訴状の書き方について「裁判」というと、とても大事といった感じがしますし、弁護士ではない一般の人が1人で手続を進めるのは、ほとんど不可能だと思われている方が多いのではないでしょうか?

ただ、「少額訴訟」という手続であれば、弁護士に依頼せず、一般の方が1人で手続を進めることも十分に可能です。

少額訴訟とは、どのような制度なのでしょうか?どのようなトラブルでよく利用されるのか、通常訴訟や支払督促との違い、手続の流れやリスクなども押さえて起きましょう。

今回は、知っておくと役立つ「少額訴訟」について、解説します。

少額訴訟とは

少額訴訟は、その名の通り「訴訟」の一種です。
ただ、一般的な通常の訴訟と比べると、手続が大きく簡略化されています。

通常の訴訟では1年くらいかかることも全く珍しくありませんが、少額訴訟は原則として1回ですべての審理を終えて、判決が言い渡されます。

少額訴訟は、比較的最近設けられた制度です。

もともと、訴訟には通常の裁判しかありませんでしたが、通常の裁判は、ご存知の通り、非常に長い時間がかかりますし、手間もかかります。

数万円、数十万円くらいの少額の請求の場合に、このように手間暇をかけることは、割に合わないと考える人が多いでしょう。

そこで、平成10年に少額訴訟の制度が設けられて、30万円以下の金銭請求の事件であれば、簡易裁判所において、1日で審理を終えて判決を出してもらうことが、可能になりました。

その後、平成16年からは、上限額が60万円に上がって、現在に至ります。

少額訴訟の特徴(通常訴訟との違い)

次に、少額訴訟の特徴(通常訴訟との違い)をご紹介します。

60万円以下の金銭請求でしか利用できない

少額訴訟は、利用できるケースが非常に限られています。

基本的に、60万円以下の金銭請求のケースでしか、利用することができません。

60万円を超える金銭請求であれば、少額訴訟を利用することはできませんし、金銭請求以外の場合にも、やはり少額訴訟を利用できません。

たとえば、建物明け渡し請求や物の引き渡し請求、登記請求などをするときには、少額訴訟では解決することができません。

通常訴訟であれば、このような制限はないので、何円の請求であっても利用することができます。

100億円でも1兆円でも、請求可能ですし、不動産の明け渡し請求や物の引き渡し請求など、金銭以外の請求もできます。

一回で審理が終わる

少額訴訟は、1回で審理が終わり、判決まで言い渡されます。

つまり、裁判のすべての手続が、1日で終わるということです。

そこで、申立から事件解決までの期間は非常に短いです。だいたい、1ヶ月もあれば、結論が出ます。

ただし、被告が訴訟を通常の手続に移行させることを求めた場合は、通常手続により審理が行われることとなります。

通常訴訟の場合、月1回程度のペースで何度も審理が開催されます。

途中で和解ができれば3ヶ月くらいで終わることもありますが、多くのケースでは、早くて半年、長くなると2~3年以上訴訟が継続することもあります。

異議申立ができる

少額訴訟のもう1つの特徴は、判決に対する異議の方法です。

一般の裁判であれば、一審の判決内容に納得できない場合には、二審に控訴できますし、二審の判決にも納得できない場合には、さらに上告できます。

これに対し、少額訴訟の場合には、判決が出ても「控訴」はできません。

できるのは、「異議申立て」です。

異議申立てをすると、手続は同じ簡易裁判所での通常訴訟に移行します。

その訴訟では、控訴が認められていないので、異議申立後の通常訴訟で判決が出ると、その判決が確定します。

つまり、少額訴訟の場合、一般的な控訴はできず、一回切りの異議申立しかできないというところが、通常訴訟と大きく違います。

このように、少額訴訟には、一般の通常訴訟とは異なる特徴が多くあります。

少額訴訟が向いているケース

少額訴訟による解決が向いているのは、以下のようなケースです。

請求金額が小さい

まず、当然のことながら、請求金額が小さいことが必要です。

60万円を超えると少額訴訟を利用することができないためです。

このときの60万円は、「元本」だけではなく、利息や遅延損害金、違約金などをすべて含めた金額ですから、注意が必要です。

たとえば貸金請求で、元本が60万円でも、遅延損害金等を足していくと60万円を超えるケースでは、少額訴訟を利用することができません。

反対に、60万円以下の少額の金銭請求をするなら、まずは少額訴訟を検討してみる価値があります。

そのような少額の請求であれば、早く簡単に解決できる少額訴訟の手続のメリットが大きくなるためです。

早く解決したい

早く事件を解決したい場合にも、少額訴訟が向いています。

ほんの数万円請求するだけでも、通常訴訟なら1年ほどかかってしまう可能性があるからです。

少額訴訟なら、1ヶ月程度ですべて解決できます。

相手が少額訴訟に反対しない

少額訴訟を利用するためには、相手が少額訴訟制度の利用に反対しないことが必要です。

もし、相手が少額訴訟制度での解決に同意しない場合には、手続は通常訴訟に移行してしまうためです。

相手方も少額訴訟で解決したいと考える場合などには少額訴訟が向いていますが、相手が弁護士を立てていて、通常裁判で決着をつけたいと考えているようなケースでは、少額訴訟は向きません。

証拠が揃っている、事件がシンプル

少額訴訟は、訴訟の一種ですから、しっかりと証拠をそろえて提訴する必要があります。

少額訴訟でも、和解ができない場合には判決となりますが、そのとき、証拠に基づかない主張は認められないからです。

基本的に、お金を請求する原告側が証明しなければならないことが多いです。

また、争点が複雑なケースよりも、シンプルなケースの方が、審理が簡略化されている少額訴訟に向いています。

たとえば、単純に「貸したお金を返してほしい」などのケースであれば、証拠も請求内容もシンプルなので、少額訴訟で適切な解決をしてもらいやすいです。

このように、きっちり証拠が揃っていて、事件の内容がシンプルな場合には、少額訴訟を利用すると良いでしょう。

和解できそう

今は対立しているけれども、裁判所が間に入れば、場合によっては和解できそうなケースでも、少額訴訟が向いています。

少額訴訟は一般的な訴訟とは異なり、大がかりな法廷ではなく、裁判官や司法委員がいる中で、テーブルが置いてあるような部屋で、比較的和やかな雰囲気で行われます。

その中で、裁判官や司法委員の勧めにより、和解が進められることも多いです。

そこで、当事者同士が対立してはいるものの、和解も視野に入れて検討できそうな場合、いったん少額訴訟を試してみる価値があります。

お互いに弁護士を雇わない

少額訴訟は、当事者が双方とも本人訴訟で、弁護士などの代理人を選任しない場合に向いている手続です。

通常訴訟を弁護士抜きで、1人で進めることは困難であるためです。

これに対し、少額訴訟であれば、本人が1人で進めることも十分可能です。

自分も相手も法律や裁判に詳しくないものの、お互いに弁護士抜きにして少額訴訟で解決しよう、と考えているなら、少額訴訟は有効な解決方法となります。

少額訴訟がよく利用されるトラブル

次に、少額訴訟がよく利用されているケースをご紹介します。

貸金返還請求

貸金返還請求とは、貸したお金の返還を請求する事件です。

たとえば、個人間で、知り合いに10万円を貸したけれども、期日を過ぎても全く返してもらえない場合があります。

たとえ、内容証明郵便を送って催促したとしても、内容証明自体に法的効力がないため、それだけでは解決に至らないことも多いです。

そのようなとき、少額訴訟であれば、自分にとっても相手にとってもさほど負担になりませんし、裁判官が1日で判決を出してくれるので、手っ取り早くお金を回収することができます。

また、当日、相手と話し合うことにより、和解ができる可能性もあります。

敷金返還請求

敷金返還請求とは、不動産の賃貸借契約を終了するとき、貸主が敷金を返還してくれない場合の請求です。

法律上、敷金は、契約上原状回復費用に充てることが認められるもの以外は基本的に貸主から借主に返還しなければならないお金であるとされているので、貸主(大家)が借主に対して返還すべき敷金を返さない場合、借主は貸主に対し、敷金返還を求めることができます。

敷金の額も、60万円を超えないことが多いです。

また、敷金返還請求をしたとき、大家としても、わざわざ弁護士を立てて通常訴訟で争いたいと考えないことが多いですし、和解ができることもよくあるので、少額訴訟で解決できる可能性が高いものと考えられます。

売掛金請求

売掛金請求のケースでも、少額訴訟を利用することができます。

たとえば、取引先に商品を納入したのにその月の売掛金が入金されないとか、これまで数ヶ月分の売掛金が未納になっているなどのケースです。

この場合、証拠関係も事実関係も単純であることが多いため、少額訴訟で解決するのに向いています。

商品が不良品であるなどといった事情がなければ、相手方もわざわざ通常訴訟にしたいとは考えないことが多いでしょう。

未払給与の請求

未払給与や未払残業代、未払退職金などが発生したら、従業員は会社に未払賃金などの請求訴訟を起こすことができます。このときも、金額によっては少額訴訟が役に立ちます。

未払給与などが発生している場合、請求者は、転職活動などを並行して行っていることも多いです。

そのように忙しい中で、60万円以下の未払賃金のために、わざわざ裁判をして大がかりな請求をするのは、時間と労力の負担が重いと考えることが多いでしょう。

また、会社の方も、未払給与などの支払義務の存在を争うことが難しい事案で、少額の未払賃金のために、わざわざ弁護士費用を払って通常訴訟をしたいとは考えないのが普通です。

このように、少額訴訟によって、未払賃金の請求をすることによって解決が期待されることがあります。

不法行為にもとづく損害賠償金の請求

不法行為にはいろいろな類型がありますが、小さな事件であれば、少額訴訟で解決できることも多いです。

たとえば、時価は低いものの大切にしていたものを壊されたとか、名誉を毀損されたので慰謝料を請求したいなどのケースです。

このようなときにも、双方が時間、費用、労力を要する通常訴訟を望まないことがよくありますし、弁護士に依頼すると、足が出てしまう可能性が高くなります。

少額訴訟と支払督促との違い

支払督促も、金銭請求するときによく利用される手続です。

そこで、少額訴訟と支払督促の違いについても、説明をしておきましょう。

実質的な審理がある

一番大きな違いは、実質的な審理があるかどうかという点です。

少額訴訟は、訴訟の一種ですから、実質的な審理が行われます。

当事者がお互いに法的な主張をしますし、その主張内容を証明するための証拠も提出します。

そして、必要に応じて証人尋問や当事者尋問の手続も行われます。

これに対し、支払督促では、このような審理は一切行われません。

申立人は、支払督促申立書を提出しますが、審理がなく、証拠を提出する必要はありません。

ただし、相手方は、支払督促に異議を申し立てることができ、異議を申し立てた場合は通常訴訟に移行します。

このように、支払督促では、審理を行う期日も開催されませんし、証拠調べも証人尋問も行われないのです。実質的な審理が行われないのが支払督促の特徴です。

そこで、請求に対して相手が争わないことが見込まれるのであれば、支払督促の方が役に立つ可能性が高いです。

金額に上限がある

少額訴訟では、60万円という上限の金額が設定されています。

これに対し、支払督促には金額の上限はありません。

そこで、多額の金銭請求をしたい場合には、支払督促の方が向いていることがあります。

以上のように、支払督促と少額訴訟は、似ているようで全く異なる制度です。

相手が支払に応じない場合には、ケースによって使い分けることが重要です。

少額訴訟にかかる費用

少額訴訟にかかる費用最後に、少額訴訟にかかる費用を確認しておきましょう。

少額訴訟をするときにかかる費用は、主に訴状に貼り付ける印紙代と予納郵便切手代です。

収入印紙代

収入印紙代は、相手に請求する金額によって異なります。

具体的には、以下の通りです。

請求金額印紙代
10万まで1000円
10万円から20万まで 2000円
20万円から30万円まで 3000円
30万円から40万円まで 4000円
40万円から50万円まで5000円
50万円から60万円まで6000円

郵便局などで「収入印紙」を購入し、訴状の正本に貼り付けて、裁判所に提出しましょう。

郵便切手代

また、訴え提起の際に郵便切手が必要です。

郵便切手は、裁判所によって必要な金額と内訳が異なるので、事前に裁判所に連絡をして、書記官に確認しておく必要があります。

金額的には、3000円~5000円くらいの範囲になることが多いです。

未使用の切手があれば、手続終了後に返してもらうことができます。

交通費

他にかかる費用としては、裁判所に行くときの交通費くらいです。

弁護士費用

少額訴訟について弁護士に相談したり依頼したりすると、その分の弁護士費用がかかります。

法律相談料は、30分5000円程度かかることが一般的で、訴状のチェックや作成をしてもらったら数万円程度かかることもあります。

代理人として手続そのものを依頼すると、10万円以上の費用がかかる可能性があります。

このようなことから、費用面から考えると、少額訴訟をするのであれば、弁護士は法律相談だけの利用にとどめて、手続は自力で進めることが合理的であることが多いです。

ただし、裁判である以上訴状の書き方や証拠の提出の方法などのルールが定められていますので、法テラスや市役所などの無料相談を利用してもよいので、実際に少額訴訟の申立をするまでに、一度弁護士に相談しておくと良いでしょう。

関連記事①→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由
関連記事②→「弁護士に無料法律相談ができる4つの手段

少額訴訟を起こすための書類や情報

少額訴訟を起こすときには、どのような準備が必要なのでしょうか?

以下で、必要な書類や情報を、紹介していきます。

訴状

まずは、訴状が必要です。訴状とは、裁判を起こすときに裁判所に提出する書類です。

原告の主張内容を、法的な視点からまとめて記載する必要があります。

訴状の作り方については、次の項目で詳しくご説明します。

証拠書類

次のような証拠書類を集めることも必要です。

●貸金返還請求
金銭消費貸借契約書や借用書、相手から差し入れられた念書

●敷金返還請求
不動産賃貸借契約書や解約通知書

●未払賃金の請求
給与明細書、就業規則、給与規程、銀行の給与振込記録

●売掛金請求
納品書や請求書、売掛金入金先の通帳の写し

ケースに応じて、こうした証拠を集めましょう。

少額訴訟では、1日ですべての審理を終えてしまいますから、事前にすべての証拠を集めておく必要があります。

商業登記簿謄本

少額訴訟に限らず、自分や相手が会社などの法人の場合には、「資格証明書」といって、法人の現在事項証明書または履歴事項全部証明書が必要です。

相手の氏名、住所

少額訴訟を起こすには、相手の氏名や住所(法人の場合は本店所在地)を把握していることが必要です。

通常訴訟でも同様です。

※関連記事→「裁判で訴えたいが相手の名前や住所がわからない時はどうすればよいのか

たとえば、ネットトラブルなどでは、相手の素性がわからない、ということもありますが、その状態では訴訟を起こすことができません。

相手の氏名がわかっているけれど、居場所がわからないというケースでも、少額訴訟はできません。

少額訴訟の訴状の作成方法

訴状の書き方

訴状の作り方

少額訴訟を起こすときには、「訴状」の作成が必要です。

訴状を作成するときには、以下の手順で進めましょう。

使用する用紙はA4の紙です。普通にパソコンなどで作成してかまいません。

縦置きで横書きで内容を書いていきます。複数ページに及ぶことが普通なので、ホッチキスで左綴じにします。

訴状は、同じものを合計3通作成します(被告が1名の場合)。

裁判所提出用の正本が1通と、被告の分の副本、それと自分の控えです。

被告が複数いる場合には、被告の人数分、副本を増やします。

控えは提出する必要がなく、提出するのは正本と副本のみです。

正本には、収入印紙を貼ります。印紙の額は、請求金額によって異なります。

請求金額が上がるほど、印紙代は高額になります。

訴状の書き方

訴状を書くときには、一から作成しても良いのですが、裁判所が公表している訴状のひな形を使うと便利です。

ひな形を使った訴状の書き方は、以下の通りです。

●1ページ目
まず、表題を「訴状」とします。

そして、原告と被告の名称、住所を書きます。

日付を入れて、原告の署名(記名)押印をします。

ここまでは、すべてのケースで共通です。

●2ページ目
ケースごとに異なる記載が必要です。

まず「請求の趣旨」には、相手に請求したい内容の結論部分を書きます。

たとえば「金〇〇円と、これに対する訴状送達の翌日から支払済みまでの遅延損害金〇〇%を支払え」などの内容です。

「請求の原因」には、請求ができる理由を記載します。たとえば、貸金返還請求なら、いつどのような条件でお金を貸して、いつ返還を受けられるはずだったのに、返還されていないのか、などをわかりやすく記載します。

証拠を見ながら、矛盾のないように説明を書きましょう。

詳しくは、以下の最高裁判所のリンクを見て、確認されると良いでしょう。
貸金請求
売買代金請求
給料支払請求
敷金返還請求
損害賠償請求

少額訴訟の全体的な流れ

少額訴訟の全体的な流れ

提訴する

まずは、裁判所に訴状と証拠書類を提出して、提訴をします。

このとき、必要な収入印紙を貼り、予納郵便切手も一緒に納める必要があります。

提訴先の裁判所は、基本的に相手の住所のある場所を管轄する簡易裁判所です。

ただし、場合によっては、原告の住所地の簡易裁判所で訴訟を起こすことができるケースもあります。

全国の簡易裁判所一覧(裁判所のHPに飛びます)

訴状の提出となると、とても難しいイメージがあるかもしれませんが、簡易裁判所の窓口の係の人から説明を受けながら作成・提出することもできますので、安心してください。

口頭弁論期日の連絡がある

訴状を提出し問題がなければ、裁判所で訴状が受け付けられて、事件番号や担当の裁判官などが決まります。

そして、原告と裁判所で協議して口頭弁論期日を決定し、被告に対し、口頭弁論期日の連絡があります。

このとき、定められた期日に簡易裁判所に行き、手続を進めなければならないので、必ず前もって予定を空けておきましょう。

被告に対しては、訴状と証拠とともに、訴状に対する反論書面である答弁書の催告状が一緒に送られます。

期日に向けた事前準備

少額訴訟では、期日前に裁判所の書記官とやり取りをして、準備を進めることがあります。

主張内容が不明確なときには、書記官からその内容の説明を求められますし、証拠が不十分なときには追完を求められることもあります。

1回で判決まで進めなければならないので、事前に万全の準備を整えておく必要があるためです。

また、証人についても、事前に用意して、裁判所に伝えておく必要があります。

当然、証人自身にも裁判所に来てもらう必要がありますから、証人になってもらいたい人がいるなら、少額訴訟の期日を伝えて、その日裁判所に来てくれるようにお願いしておきましょう。

答弁書の提出と送達

被告が答弁書やそれを補強する証拠を提出した場合には、裁判所から原告に対し、または被告から直接、その写し(副本)が送られてきます。

当日は、相手(被告)は答弁書に沿った内容の主張をすると考えられます。

事前に答弁書と証拠をしっかり読み込んで、反論を考えておきましょう。答弁書に反証するための証拠があれば、集めておくと良いでしょう。

口頭弁論期日の開催

裁判期日には、原告と被告、裁判官と書記官、さらには多くの場合に「司法委員」という人が出席します。司法委員とは、少額訴訟を円滑に進めるために手続に関与する裁判所の職員です。

そして、期日の進行自体は、テレビで見るような通常の法廷ではなく、丸いテーブル(ラウンドテーブル)が置いてある法廷などで、審理が進められます。

比較的和やかな雰囲気であることが多いです。

審理を進めるときには、原告と被告双方が提出した書類や証拠を確認し、必要に応じて証人尋問も行います。

全体として、30分~2時間程度で口頭弁論期日が終了します。

また、状況を見て、裁判官や司法委員の関与により、和解が進められることもよくあります。

原告と被告の双方が話し合いによる解決に納得したら、和解が成立します。

判決

すべての審理が終結したら、特別な事情がない限り裁判当日中に裁判官が判決をします。

少額訴訟では、原告の勝訴率がかなり高いと言われています。

ただ、後に説明する通り、判決で勝訴したとしても、必ずしも取り立てができるとは限らないので、注意が必要です。

取り立てのリスクを考えると、和解しておいた方が得ということもあるので、少額訴訟手続きの途中で和解の話が出たときには、真剣に検討することをお勧めします。

異議申し立て

少額訴訟では、控訴は認められていません。

しかし、当事者は、判決に異議申立てをすることができます。異議申立てがあると、同じ簡易裁判所において、通常裁判による審理が行われることになります。

この裁判では、反訴(被告が原告を訴え返すこと)や控訴ができないなど、いろいろな制限があります。

どちらにしても、少額訴訟をしたからといって、最終解決になるとは限らないことには注意しておく必要があります。

判決後の流れ

少額訴訟で判決が出たら、その後どのような流れで債権回収することができるのでしょうか?

以下で、判決後の流れをご説明します。

相手から任意で支払いを受ける

少額訴訟で判決が出たら、当然相手にも通知されます。

そこで、まずは相手から任意で支払を受けるよう、請求します。

相手が支払に応じるということであれば、振込送金など支払方法を決めて、相手に支払ってもらいます。

相手の資産に強制執行する

少額訴訟の判決には、「強制執行力」が認められます。

強制執行力とは、相手方の財産に対して差押えができる効力のことです。

そこで、相手が任意に支払をしない場合には、相手の財産を差し押さえることができます。

たとえば、預貯金や生命保険の解約返戻金、不動産や車などの資産があったら、差し押さえることができます。

相手が会社員や公務員などの場合には、給料の一部や賞与、退職金等を差し押さえることも可能です。

ただし、差押えをするためには、債権者が相手の財産を探さなければなりません。

相手に資産がない場合や、資産があっても見つけることができない場合には、強制執行はできないので、債権回収ができない可能性があります。

このように、少額訴訟では、判決で支払い命令が出ても、取り立てができないリスクがあることには注意が必要です。なお、通常の裁判においても同様のリスクがあります。

和解調書の効果

少額訴訟では、途中で和解が成立することも多いです。

和解した場合、判決のケースよりも相手が任意で支払うことが多いですが、稀に、和解ができても約束を守らない人がいます。

そのような場合、和解調書によって、相手の資産に強制執行することができます。

和解調書にも、判決書と同じ強制執行力が認められるからです。

この意味でも、少額訴訟における和解には大きな意義があります。

少額訴訟におけるリスク

少額訴訟をするときには、いくつかリスクもあるので、注意が必要です。

同意されなければ通常訴訟に移行する

1つ目は、相手が少額訴訟に同意しない可能性があることです。

被告に答弁書催告状が送達されたとき、被告は少額訴訟に同意せず、通常訴訟に移行させる申出をすることができます。

すると、手続は当然に通常訴訟に移行します。

少額訴訟は、原告が一方的に選択するものなので、被告の防御の利益が害される可能性が発生します。

そこで、民事訴訟法により、被告の利益を保護する目的で、被告には通常の訴訟手続に移行するよう求める権利が与えられているのです。

通常訴訟になると、審理が複数回にわたって行われることとなり、紛争解決までの期間が長期化することや、原告としても弁護士を立てざるを得なくなることが多く、予定が狂ってしまいます。

判決が出ても、通常訴訟になる

少額訴訟の手続を進めて判決が出たとしても、その後通常訴訟になってしまう可能性があります。

判決内容が不服である場合、原告も被告も異議を出すことができるからです。

すると、やはり数ヶ月に及ぶ裁判を続けなければなりませんから、この点はリスクとなります。

判決が出ても、取り立てができない

少額訴訟のリスクの3つ目は、取り立ての問題です。

和解ができたら取り立てができる可能性が高いですが、和解できなかった場合には、取り立ては不可能になることがよくあります。

相手の資産内容や勤務先を把握していれば強気で判決をもらっても良いですが、資産調査できる自信がないなら、なるべく和解を狙った方がよいケースもあります。

相手が欠席した場合どうなるのか

相手(被告)が欠席した場合、裁判はどうなるのでしょうか?

それは相手が答弁書を提出しているか否かで大きく変わってきます。

相手側が答弁書を提出している場合

訴訟には陳述擬制という「実際にはしゃべっていないけれども、しゃべったこととみなす」制度が存在します。

この制度によって、被告が欠席しても、答弁書を提出していれば、出席して答弁書の内容を法廷で弁論したのと同じ扱いになります。

ですので、被告が「私は40万円を借りていない」と答弁書で主張しているのであれば、原告は、被告に貸したことを立証しないといけません。

相手側が答弁書を提出していない場合

原告が答弁書を提出していない場合には、擬制自白といって、被告は原告の請求を争う気がなく、原告側の主張を事実として認めたものとされ、原告の請求をそのまま認める判決が下されることになります。

事故や重病などの止むを得ない事情での欠席の場合には、被告側から事前に期日延期の申し入れを行えば、口頭弁論の期日を伸ばすことが可能になります。

弁護士への相談・依頼は必要か

少額訴訟は、比較的簡単な手続ですから、弁護士に依頼せずに自分1人で進めることも可能です。

それでは、弁護士に相談をしたり依頼したりすることに、全く意味がないのでしょうか?

実際には、そのようなことは、ありません。

少額訴訟でも、どのように進めたら良いかわからないことはありますし、訴状の作成方法や証拠の揃え方がわからないこともあります。

そのようなとき、弁護士に相談に行ってアドバイスを受けると、非常に役立ちます。

弁護士費用を支払ったら足が出るケースでは、代理人としては依頼せずに、分からないところに関してだけ法律相談だけを受けて、訴訟自体は自分で進めることも可能です。

無料相談を活用すると、無料で弁護士にアドバイスをもらうことができるので、大きなメリットがあります。

もちろん代理人として手続自体を依頼することもできます。弁護士に手続を任せてしまったら、訴状作成も証拠の収集や整理、裁判所とのやり取りなどすべてしてくれるので、負担が大きく軽減されますし、安心です。

他の活用方法として、自分で訴状を作成して、弁護士に内容をチェックしてもらうこともできますし、訴状の作成だけをしてもらって、手続は自分で進めるということもできます。

弁護士の利用方法は、意外とバラエティー豊かです。

利用方法によって費用も変わってくるので、ケースによって上手に使い分けましょう。

どのようなサポートを受けられるのかは、事務所によって対応が異なるので、まずは法律事務所に問合せをするところから始めると良いでしょう。

まとめ

今回は、少額訴訟について、詳しく解説をしました。

当事者同士の少額の金銭的な争いの場合、少額訴訟は非常に有効な解決方法になりえます。

ただ、向いている場合と向いていない場合の差が大きいので、見極めが大切です。

向いていないケースで少額訴訟を起こしても、徒労に終わる可能性が高いので、注意が必要です。

また、実際に少額訴訟を起こすときにも、弁護士に相談をしておくと役に立ちます。

少額訴訟の利用を検討しているのであれば、一度弁護士に相談をすることをお勧めします。

今回の記事を参考にして、賢くトラブル解決を目指しましょう。

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藤井 寿(弁護士・公認会計士)

藤井 寿(弁護士・公認会計士)

東京大学教養学部卒。リンクパートナーズ法律事務所所属。弁護士と公認会計士の両資格を保有する数少ない「ハイブリッド法曹」として活躍中。企業法務から個人の相続問題、交通事故等幅広い案件を扱う。桐蔭横浜大学法科大学院客員教授。防衛省再就職等監察官(非常勤)。
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