民事裁判(民事訴訟)にかかる平均期間は?判決や和解までの流れも解説!

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この記事の執筆者

福谷 陽子(元弁護士)

「裁判」というと、「何となく大変なこと」というイメージがありますが、実際の裁判の流れや、和解に至るケース、平均審理期間など具体的なことについては、あまり知られていない場合が多いです。

そもそも民事裁判と刑事裁判の区別がついていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、民事裁判(民事訴訟)の平均審理期間について、判決までの流れとともにご紹介していきます。、その他、和解についてや、弁護士費用についても詳しく解説していきますので、民事裁判について詳しく知りたいという方は是非ご覧ください。

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こんな疑問にお答えします

Q: 民事裁判(民事訴訟)にかかる平均期間は?

A:福谷 陽子(元弁護士)
判決で終了した件に限ると12.9か月となり、1年以上かかっています。 簡易裁判所の件数を見ると、平均2.8か月となり、かなり期間が短くなります。 また、訴訟の内容によってもかかる期間は大きく異なります。

医療訴訟は25か月と非常に長く、行政訴訟は15か月、労働関係訴訟は14.7か月などとなっています。知的財産権訴訟も13か月と長いです。

一般的に民事訴訟を起こすときには、8か月以上はかかることを覚悟しておいた方が良いでしょう。

※弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用の負担をしてくれるので助かります。

そもそも民事裁判(民事訴訟)とは?

そもそも民事裁判とはどのようなものなのでしょうか?

民事裁判とは、民間人同士の法律トラブルを解決するための裁判のことです。

たとえば、貸したお金を返してほしい、賃料を支払ってほしい、契約が終了しているから物件を明け渡してほしい、残業代を支払ってほしい、などの問題が取り扱われます。

民事裁判では、原告が被告に対して法的な請求を行い、裁判所が原告の主張に理由があるかどうか判断します。

理由があれば裁判所は原告の主張を認め、被告に何らかの命令を下したり原告の権利を確認したりします。この場合、原告の勝訴です。

原告の請求に理由がない場合には、請求を棄却します。この場合、原告の敗訴(=被告の勝訴)となります。

民事裁判で決めること

民事裁判で決めることは、民間人である原告と被告の権利義務関係です。

原告に権利があるのか、原告と被告の契約関係や法律関係がどのようになっているのか、原告や被告の法的地位などが審理の対象です。

たとえば、貸金返還請求権の有無、損害賠償請求権の有無と金額、雇用関係の有無や賃料請求権の有無や金額、土地の境界や瑕疵担保責任の有無と内容などが決められます。

一方、法的な問題以外は審理の対象から外れます。

たとえば「被告が悪い人間かどうか」「被告はもっと原告に優しくすべき」「被告はもっと頻繁に原告に連絡してくるべき」「親子、兄弟だから仲良くすべき」などの問題は、法的な権利関係ではないので、裁判で争うことはできません。

また、民事裁判は相手に「罰」を与えるものではないので、「被告を処罰してほしい(罰金や懲役刑にしてほしい)」という訴えもできません。

民事裁判に参加する人

民事裁判に参加するのは、「民間人」です。ここには個人だけではなく法人や組合などの団体も含まれます。
個人同士のトラブルも解決できますし、原告や被告が有限会社や合資会社、株式会社や共済組合、社団法人や財団法人などであってもかまいません。
なお、国や自治体を相手に損害賠償請求をする場合には、「国家賠償請求」という種類の裁判となります。

刑事裁判との違い

裁判には「民事裁判」以外にも「刑事裁判」という種類があります。
刑事裁判と民事裁判の違いについては誤解が多いので、説明しておきます。

①目的

まず「目的」が全く異なります。

民事裁判の目的は、民間人同士の法律トラブルの解決です。

原告が被告を訴えることによって裁判が始まりますが、原告と被告のどちらが悪いというものでもありません。

原告が不当な請求をしていれば、原告の請求が棄却されますし、裁判手続きの中で、被告が原告を訴え返すこと(これを反訴と言います)も可能です。

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裁判所は、民間人の権利義務や法的な状態のみを確認するのであり、被告に処罰を与えることはありません。

民事裁判で負けたとき、命令されるのは「金銭の支払い」や「不動産の明け渡し」などであり「懲役(刑務所に行くべき)」や「罰金(国にお金を払うべき)」「死刑」などの刑罰を科されることはありません。

一方、刑事裁判の目的は、被告人(訴えられた人)の罪の内容を確認し、有罪であれば刑罰を与えることです。

たとえば、被告人が窃盗や詐欺、横領や暴行、傷害、わいせつ行為や盗撮、覚せい剤所持や使用などの犯罪行為をしたのか、したとすればどのくらいの刑罰が相当かを裁判所が判断します。

刑罰の適用が必要な場合、裁判所は被告人に対し、刑罰を下します。刑罰の内容は、罰金支払いや懲役刑、禁固刑や死刑などです。

②被害者にお金が支払われるかどうか

民事裁判と刑事裁判の大きな違い2つ目は、「被害者にお金が支払われるかどうか」です。

犯罪被害者が加害者に損害賠償請求訴訟を起こすことがありますが、これは民事裁判です。

この場合、被害者が勝訴すれば、裁判所は加害者に賠償金の支払命令を下すので、被害者は加害者から賠償金を支払ってもらえます。

これに対し、刑事事件では被告人が被害者に損害賠償金を支払うことはありません。

罰金は国に対して被告人が「刑罰」として支払うものであり、被害者への弁償金ではないからです。

被害者が慰謝料などを受け取りたい場合には、刑事裁判を起こすための刑事告訴をするのではなく、証拠を集めて民事裁判を起こす必要があります。

③当事者

民事裁判と刑事裁判では、当事者も異なります。

民事裁判の場合には、原告も被告も民間人で、同じ立場です。被告が反訴すれば、原告も責められる立場になります。

これに対し刑事裁判の場合、訴えるのは「検察官」という国家機関です。

検察官は一方的に被告人の責任追及をする立場であり、被告人が検察官を訴え返すことはできません。

検察官は、被告人の犯罪事実をとことん追及して、重い刑罰を適用するように裁判所にアピールするので、被告人は一方的に防御する立場となります。このときの被告人を助けるのが、刑事弁護人です。

一般人が刑事事件を起こすことはできません。被害者が加害者に罪を与えてほしい場合には、刑事告訴などをして、検察官に加害者を起訴するように要求する必要があります。

以上のように、民事裁判と刑事裁判は全く異なる裁判です。民間人同士のお金などに関するトラブルはすべて民事裁判によって解決する必要があるので、まずは理解しておきましょう。

民事裁判の種類

ここで、民事裁判の種類も確認しておきましょう。

民事裁判は、大きく以下の5種類に分類されます。

  • 通常訴訟
  • 手形・小切手訴訟
  • 少額訴訟
  • 人事訴訟
  • 行政訴訟

通常訴訟

通常訴訟は、個人間で起きる争いを解決するための訴訟のこと。具体的には金銭の返還や不動産の明け渡しなど、財産権に関する内容が挙げられます。一般的に損害賠償を求める裁判は、通常訴訟となります。

手形・小切手訴訟

手形小切手訴訟は、通常訴訟と比べて簡易的に財産トラブルを解決するための訴訟のこと。主に、債務名義(手形・小切手)を取得することを目的とした手続きです。

訴訟を起こすことで、債務名義のある債権者は、振出人が支払いに応じないときでも強制力を持って回収することが可能になります。

少額訴訟

少額訴訟は、60万円以下の金銭トラブルに限って利用できる特別な訴訟手続きのこと。少額訴訟を選択することで、1回の裁判で解決を目指せます。当事者の負担の軽減につながることがメリットです。

ただ、判決が不利な結果になってしまっても上級の裁判所で審理を求めることができないという特徴があります。

人事訴訟

人事訴訟は、主に離婚や婚姻の取り消し、子どもの認知といった身分関係上の争いを解決するための訴訟のこと。手続きは通常訴訟と変わりませんが、人事訴訟トラブルにおいては家庭裁判所に調停の申し立てを行う必要があります。

行政訴訟

行政訴訟とは、行政事件に関するトラブルを解決するための訴訟手続きのこと。主に、公権力の行使に不服がある場合に、その違法性を訴える裁判です。

原告側は、国や地方公共団体を相手に取って行われます。

民事裁判(民事訴訟)の期間は?①流れ

民事裁判の流れ次に民事裁判の流れをご説明します。

民事裁判(民事訴訟)の流れ1)提訴

民事裁判は、原告が被告を訴えるところから始まります。訴えることを「提訴」(ていそ)と言います。

提訴の際には「訴状」と証拠を裁判所に提出する必要があります。

訴状とは、原告による主張内容が書かれている書面で、原告の主張の根幹となるものです。法的に内容を整理して、きっちりと作成する必要があります。

提訴の際には、請求内容に応じて裁判所の手数料がかかります。手数料は収入印紙で支払い、送達用の郵便切手も納付します。

請求金額が140万円以下の金銭請求なら簡易裁判所、それ以外の訴訟(140万円を超える金銭請求や不動産明け渡しなど)は地方裁判所に提訴します。

請求内容によって異なる提訴先の裁判所
・請求金額が140万円以下の金銭請求
→簡易裁判所
・それ以外の訴訟(140万円を超える金銭請求や不動産明け渡しなど)
→地方裁判所

民事裁判(民事訴訟)の流れ2)被告への送達

原告が訴状を提出すると裁判所が第1回目の期日を決めて、被告に対し、訴状と証拠の写しが送られます。このことを「送達」(そうたつ)と言います。

同時に「第一回口頭弁論期日への呼出状」と「答弁書催告状」も送られます。答弁書とは、訴状に対する反論書面です。

被告は、訴状等を受け取ったら、答弁書を作成しなければなりません。反論しなければ、原告の主張をすべて認めたことになり、原告の請求通りの判決が出てしまうからです。

答弁書には提出期限が定められているので、基本的には期限までに提出すべきですが、通常は遅れて提出しても受け付けてもらえます。

民事裁判(民事訴訟)の流れ3)第一回期日

第一回期日には、基本的に原告と被告が裁判所に出頭します。ただ、被告は事前に答弁書を提出していれば、1回目の期日には出席しなくてもかまいません。

また弁護士に民事訴訟を任せた場合、原告も被告も本人が裁判に来る必要はありません。

第一回期日では、原告が提出した訴状の内容と被告が提出した答弁書の内容、双方から提出された証拠を確認し、次回の予定を決めます。

民事裁判(民事訴訟)の流れ4)続行期日(弁論準備)

2回目以降の期日では、原告と被告の主張の整理を行います。

それぞれの法的主張の根拠がどのようなことで、どのような点がかみ合っていないのか、裁判所が判断すべきポイントはどこかなどを明らかにしていきます。

原告と被告が、交互に主張と反論、証拠提出をしながら、裁判所が交通整理をしていくイメージです。

弁論準備は法廷ではなく、普通の部屋で裁判官や弁護士、書記官などがテーブルを囲んで進めます。弁論準備期日にも、弁護士に依頼していたら当事者は出席する必要がありません。

民事裁判(民事訴訟)の流れ5)尋問

弁論準備によって原告と被告の主張内容の整理ができたら「尋問」を行います。

尋問はいわゆる「証人尋問」のイメージです。ただし、原告本人や被告本人の場合、「証人」ではなく「当事者(本人)」なので、「本人尋問」と言います。原告被告以外の第三者を尋問する場合が「証人尋問」です。

法人が被告の場合の代表取締役への尋問は「証人尋問」ですが、代表者も被告にしていたら、代表者への尋問は「本人尋問」になります。

尋問は、1人1~2時間くらいかかるので、尋問期日は1日仕事となります。また、尋問される人は必ず裁判所に出頭しなければならないので、この日は弁護士任せにすることができません。

民事裁判(民事訴訟)の流れ6)最終弁論期日

尋問期日が終了すると、その後に原告と被告の最終意見をまとめるための「最終弁論期日」が入れられます。

最終弁論期日前には、原告被告それぞれが自分の最終的な意見をまとめた「準備書面」を用意して裁判所に提出します。

弁護士に依頼していれば、弁護士が書面を作成して提出しますし、当日も弁護士のみが出廷するので、本人が時間をとって裁判所に行く必要はありません。

民事裁判(民事訴訟)の流れ7)判決

こうしてすべての手続きが終了すると、最終弁論期日の1か月程度後に、裁判所が判決を下します。

民事裁判の判決日には当事者は出頭する必要がありません。

出頭しても、簡単に「被告は原告に対し,金〇〇円とそれに対する支払い済みまで遅延損害金5%を付加して支払え」などの結論だけがさっと読み上げられるだけで、詳細な説明などはありません。一瞬で終わってしまいます。

判決日に行かなくても弁護士が詳しい判決文を取り寄せて連絡を入れてくれるので、よほど急ぐ場合でもなければ、わざわざ判決日に裁判所に行く必要はありません。判決書を受けとったら弁護士が本人に連絡を入れて、一度弁護士事務所で打ち合わせを行います。判決内容に不服がある場合には、判決書の受け取り後2週間以内に「控訴」できます。

控訴すると、高等裁判所(1審が簡易裁判所の場合には地方裁判所)で控訴審の審理が開かれます。

原告も被告も控訴しなかった場合には、判決内容が確定して事件が終結します。

民事裁判(民事訴訟)の期間は?②裁判上の和解とは?

裁判上の和解とは民事裁判では、「裁判上の和解」が1つのポイントとなります。

裁判上の和解とは

裁判上の和解とは、原告と被告が裁判手続きの中で話合い、裁判を終わらせることです。

たとえば原告が被告にお金を請求しているとき、被告が原告に対して任意で請求金額を半額支払うことにより、トラブルを解決する場合などです。

裁判上で和解するときには双方が譲り合うことが必要です。被告がすべての原告の主張を受け入れる場合には和解ではなく「請求の認諾」になりますし、原告がすべての主張を撤回するときには「請求放棄」となります。

ただ、請求金額を全額支払い、遅延損害金のみをカットすることなども「譲ること」と評価されるので、和解が認められる範囲はとても広いです。

なお、原告が「取り下げ」をした場合、裁判が始めからなかったことになるので、同じ裁判を繰り返すことが可能ですが、和解した場合、「裁判を行って解決した」という実績が残るため、同じ裁判を繰り返すことはできなくなります。このように、取り下げと和解が異なる点は、覚えておきましょう。

和解するタイミング

和解は、訴訟手続きの進行中「いつでも」可能です。実際に裁判を起こすと、裁判官はことあるごとに熱心に和解を勧めてきます。

まずは第一回期日において「本件で和解は難しいですか?」と聞かれますし、弁論準備を進めている最中も「そろそろ和解の話し合いをしてみては?」と言ってきます。

尋問前には「尋問をする前に一回話合いをしてみては?」と聞かれますし、尋問が終結したら「判決前に、最後のチャンスと捉えて、和解の話し合いをしませんか?」と言ってきます。

当事者が話し合いをする気持ちになったら、裁判官が間に入って和解条件を決めていきます。

裁判上の和解では、裁判官がある程度心証を明かし、「もし判決になったらこのような結論になることが予想されるので、和解するならこの程度の条件が良いのではないか」などと説得するので、当事者としても気持ちを固めやすいです。

ここは、単なる話の橋渡し役である調停委員による仲介などとは、全く異なるところです。

和解したらその日に裁判が終了し、後に当事者のもとには和解調書が送られてきます。和解に対する不服申立はできません。

和解の効果

話合いをして和解で解決した場合、「その後に相手が約束を守らなくても強制執行ができないのでは?」と心配される方がいらっしゃいます

しかし、そのような心配は要りません。

裁判上で和解した場合の和解調書にも、判決と同じ強制執行力が認められるからです。

相手が和解内容に従わなかったら、相手の給料や預貯金、不動産などを差し押さえたり、強制退去させたりすることが可能です。

和解のメリット

せっかく裁判を起こしたのに和解すると、一定程度譲らないといけないので裁判を起こしたメリットが小さくなるとも思えます。あえて和解することにどのようなメリットがあるのでしょうか?

●敗訴リスクを避けられる

1つは、敗訴リスクを避けられることです。

裁判を起こしても「必ず勝てる」とは限りません。全部の請求が棄却されることもありますし、一部しか請求が認められないこともあります。

これは被告にとっても同じことで、判決で請求棄却してもらえる可能性もありますが、多額の支払い命令が出る可能性もあるのです。

判決をすると、こうした「いちかばちか」の勝負となってしまい、リスクが高まりますが、和解をすれば、お互いに納得した上で中間的な解決ができるので、原告被告双方にとってメリットがあります。

●柔軟な解決ができる

和解をすると、柔軟な解決ができるのもメリットとなります。

たとえば、金銭の支払い請求の場合、判決であれば必ず一括払いとなりますし、遅延損害金も加算されます。被告にしてみると「一括だと手元にお金がないから分割払いにしてほしい」と考えることも多いです。

和解であれば、原告と被告が話し合って分割払いにすることもできます。

また、不動産の明け渡し請求の場合、判決であれば即時の引き渡しが必要ですが、和解であれば、引き渡しまでに一定の猶予期間を設けることが可能です。

●確実に履行してもらいやすい

原告が被告に何らかの請求をしたとき、判決が出ても従わない人が多いです。

話し合いによって解決すると、相手も納得して解決しているので、任意で約束を守ってもらいやすいです。

たとえば金銭請求の場合、判決が出ても支払いを受けられず差押えをしなければならないケースが多いですが、和解なら任意で払ってもらえるので、楽に回収することができます。

●早く裁判を終わらせられる

和解すると、その日に裁判が終わります。第一回期日で和解ができたら、裁判は1か月で終了します。

判決まで裁判を続けると1年以上かかることもあるので、早く裁判を終わらせられる点で、和解にメリットがあります。

民事裁判で和解する割合

日本の裁判は、和解で解決できる事例がとても多いです。

平成29年度の司法統計によると、地方裁判所の事件の全体件数が145,971件、判決で終了した件数が58,640件、和解で終了した件数が53,632件、その他(取り下げなど)が34,299件となっています。

つまり、全体の37%弱の件数が、和解によって解決されているということです。判決で終了している割合が40%強なので、和解と判決の割合があまり変わらないということが分かります。

裁判のうち、判決・和解・その他の割合

 

一般的に裁判を起こすときには「これでもう完全に決裂だ。裁判所によって白黒つけてもらうしかない」という気持ちになるものですが、実際に裁判を起こした場合、高い割合で話し合いによって解決できる、ということは頭に入れておきましょう。

民事裁判(民事訴訟)の期間は?③平均期間

次に民事裁判の平均審理期間をみてみましょう。

平均審理期間についても、最高裁判所が発表しているデータがあり、それによると平成29年度の地方裁判所における民事訴訟の平均審理期間は8.7か月でした。

裁判の平均審理期間の推移

 

ただし判決で終了した件に限ると12.9か月となり、1年以上かかっています。

簡易裁判所の件数を見ると、平均2.8か月となり、かなり期間が短くなります。

また、訴訟の内容によってもかかる期間は大きく異なります。

医療訴訟は25か月と非常に長く、行政訴訟は15か月、労働関係訴訟は14.7か月などとなっています。知的財産権訴訟も13か月と長いです。

一般的に民事訴訟を起こすときには、8か月以上はかかることを覚悟しておいた方が良いでしょう。詳細はケースによって異なるので、依頼する弁護士に聞いて確認することをお勧めします。

民事裁判(民事訴訟)の期間は?④裁判が長引くケース・早く終わるケース

民事裁判が長くかかるケースと早く終わるケースは、それぞれどのような場合があるのでしょうか?

長引くケース

裁判が長くなりがちなケースは、以下のような場合です。

●事案が複雑

複雑な事件の場合、裁判はどうしても長くかかります。

たとえば先に紹介したように、医療過誤訴訟や建築瑕疵訴訟などでは、専門的な知識が必要になり、主張内容や証拠の内容も複雑になりますし、鑑定などが必要になると、さらに期間が延びます。

当事者や関係者がたくさんいる場合にも、それぞれの権利関係を整理するのに時間がかかり、長くなりやすいです。

●和解の失敗

いったん和解の話をして、原告と被告が話合いをしたけれども結局和解できなかった、という場合、裁判が長くなります。
和解の話を進める間は、いったん裁判の進行をストップしてしまうため、和解の話を進めている時間が無駄になってしまいます。

何度も和解の話を入れて、その都度決裂していると、判決が出るまでに1年や2年以上かかってしまうケースもあります。
和解を受け入れるかどうかや和解するタイミングについては、依頼している弁護士と相談して慎重に検討しましょう。

●当事者が裁判の進行に協力しない

裁判をスムーズに進めるには、当事者が裁判の進行に協力することが大切です。
たとえば裁判所から次回までに用意するように言われていた主張書面や証拠を用意しなかったら1回分期日が延びてしまいますし、次回期日を入れようとしたときに「忙しいからその日は無理です」と断り続けていたら、どんどん手続きが延びてしまいます。

裁判を早く終わらせるには、自分の予定をおしてでも裁判所に協力しましょう。

●弁護士がついていない

弁護士がついていない事件も長くかかることが多いです。
弁護士がついていれば、弁護士主導のもと、スムーズに書面や証拠の提出ができますし、お互いに法律的な内容に絞って主張立証活動ができるので、裁判所も話を整理しやすいです。

一方当事者(本人)はそもそも裁判の基本的な進行方法を理解していないことが多いですし、法律とは無関係な主張や関係のない証拠を大量に提出してくることなどもあり、交通整理しにくくなってしまいます。

裁判を早く終わらせたければ、弁護士に依頼すべきです。

●裁判所の夏休みなどが挟まった

裁判所にも夏休みや年末年始の休みなどがあります。そのようなタイミングと重なると、期日がなかなか入らず裁判が1か月程度、延びてしまうケースがあります。

早く終わるケース

反対に、早く終わるケースは以下のような場合です。

●事案簡明

上記とは反対に、事件の内容が簡単で争点も少ない場合などにはすぐに裁判が終わります。

●被告が認めている、原告が取り下げた

被告が全面的に原告の主張を認めた場合や、原告が途中で裁判を取り下げた場合、請求を放棄した場合などには、そのタイミングで裁判が終了します。

●すぐに和解が成立した

提訴後、早期の段階で裁判上の和解が成立すると、そのタイミングで裁判が終わるので、判決を末よりも早く裁判が終了します。

●当事者が事件進行に協力的、双方に弁護士がついている

当事者がきちんと裁判所による指示に従って裁判進行に協力的な場合や、当事者が両方とも弁護士に依頼している場合には、裁判がスムーズに進むため、比較的早く終わります。

民事裁判(民事訴訟)にかかる費用

民事裁判(訴訟)にかかる費用ここまで、民事裁判にかかる期間や流れについて解説してきましたが、実際に民事裁判を起こすとなった場合、どのくらい費用がかかるのでしょうか。

印紙代(手数料)

まずは裁判を起こすときの手数料がかかります。

裁判の手数料は、収入印紙によって支払います。

金額は請求内容によって変わり、高額な請求になるほど手数料も上がります。

たとえば500万円の請求なら3万円、1,000万円の請求なら5万円の印紙が必要です。

金銭的な評価ができない事件の場合には、160万円の請求金額であると評価され、13,000円分の印紙が必要になります。

郵便切手代

裁判を起こすときには、送達用の郵便切手が必要です。

裁判所にもよりますが、だいたい5,000~8,000円程度です。被告が増えるとその分高額になります。

交通費

裁判所が遠方の場合、往復の交通費がかかります。

謄写費用

調査や鑑定が行われた場合、証人尋問や本人尋問が行われた場合などには、裁判所の書類のコピーをもらう必要があります。その場合謄写費用というコピー代金が発生します。

1枚20~40円くらいするので、謄写費用は数千円~2、3万円程度になることが多いです。

弁護士費用

民事裁判を弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかります。弁護士費用については、次の項目で詳しくご説明します。

※関連ページ→「弁護士費用や裁判費用を相手に請求できる(負担させる)ケースとは?

民事裁判では、必ず弁護士をつけるべき

民事裁判をするとき、弁護士をつけるかどうか迷われる方がいますが、結論的には、「必ず弁護士をつけるべき」です。理由は以下の通りです。

裁判を有利に進められる

まず弁護士に依頼している方が圧倒的に裁判を有利に進められます。相手に弁護士がついておらずこちらのみについていたら、勝訴の可能性が飛躍的に高まります。

反対に相手に弁護士がついていてこちらが本人だと、極めて不利な状況になってしまいますから、一刻も早く弁護士に依頼すべきです。

裁判所に行かなくていい

弁護士に依頼していると、依頼者はほとんど裁判所に行かなくても良いことが大きなメリットとなります。

本人が出頭するのは、尋問のときと重要な和解期日くらいです。和解の場合、どうしても行けなければ弁護士に任せ、当日いつでも電話に出られるように待機する方法などによって対応することもできます。

裁判を早く進められる

弁護士がついていると、民事裁判は早く進み、解決も早まります。

気持ちが楽になる

裁判は当事者の方には大きな精神的負担となりますが、弁護士に依頼していると「プロが守ってくれている」「自分で裁判に対応しなくて良い」という安心感を得られます。

※関連ページ→「【弁護士なしで裁判】本人訴訟のやり方とメリット・デメリット

裁判を依頼した場合の弁護士費用について

民事裁判を弁護士に依頼すると、以下のような弁護士費用がかかります。

法律相談料

まずは法律相談をする必要があります。相場は30分5,000円程度ですが、最近では無料相談を実施している弁護士も多いので、そういった弁護士を利用すると費用を支払わずに済みます。

着手金

実際に裁判を弁護士に依頼するときには「着手金」がかかります。

金額はケースによって異なりますが、「経済的利益」によってはかることが多いです。

経済的利益とは、請求金額や請求された金額などです。

一般的な弁護士事務所では、以下のような算定方法が採用されていることが多いです。

・経済的利益が300万円以下の場合-8%

・300万円を超え3,000万円以下の場合-5%+9万円

・3,000万円を超え3億円以下の場合-3%0+169万円

・3億円を超える場合-2%+369万円

着手金の金額は、最低10万円とされることが多いです。

事件内容や事務所によっては着手金が無料になることもありますし、一律10万円や20万円などの定額になるケースもあります。

報酬金

酬金は事件が解決されたときにかかる費用です。これについても着手金と同様、経済的利益によって算定し、以下のような算定基準になっている事務所が多いです。

・300万円以下の場合-16%

・300万円を超え3,000万円以下の場合-10%+18万円

・3,000万円を超え3億円以下の場合-6%+138万円

・3億円を超える場合-4%+738万円

※関連ページ①→「法テラスで弁護士費用が安くなる!気になる利用条件とメリット・デメリットとは
※関連ページ②→「弁護士費用の相場と着手金が高額になる理由

まとめ

民事裁判をすると、解決までに平均して半年以上かかりますし、対応するには専門知識とスキルが必要です。1人で臨むと不利になるので弁護士に相談をして、有利にかつスピーディに民事裁判を進めましょう。

弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用の負担をしてくれるので助かります。

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記事をる振り返ってのQ&A

Q:そもそも民事裁判(民事訴訟)とは?
A:民事裁判とは、民間人同士の法律トラブルを解決するための裁判です。

Q:刑事裁判との違いは何か?
A:民事裁判の目的は、民間人同士の法律トラブルの解決です。原告が被告を訴えることによって裁判が始まりますが、原告と被告のどちらが悪いというものでもありません。民事裁判で負けたとき、命令されるのは「金銭の支払い」や「不動産の明け渡し」などであり「懲役(刑務所に行くべき)」や「罰金(国にお金を払うべき)」「死刑」などの刑罰を科されることはありません。一方、刑事裁判の目的は、被告人(訴えられた人)の罪の内容を確認し、有罪であれば刑罰を与えることです。

Q:民事裁判で和解する割合はどのくらいですか?
A:平成29年度の司法統計によると、地方裁判所の事件の全体件数が145,971件、判決で終了した件数が58,640件、和解で終了した件数が53,632件、その他(取り下げなど)が34,299件となっています。つまり、全体の37%弱の件数が、和解によって解決されているということです。判決で終了している割合が40%強なので、和解と判決の割合があまり変わらないということが分かります。

Q:民事裁判(民事訴訟)にかかる平均期間は?
A:判決で終了した件に限ると12.9か月となり、1年以上かかっています。 簡易裁判所の件数を見ると、平均2.8か月となり、かなり期間が短くなります。 また、訴訟の内容によってもかかる期間は大きく異なります。
医療訴訟は25か月と非常に長く、行政訴訟は15か月、労働関係訴訟は14.7か月などとなっています。知的財産権訴訟も13か月と長いです。

一般的に民事訴訟を起こすときには、8か月以上はかかることを覚悟しておいた方が良いでしょう。

Q:裁判が長引くケースは?
A:「事案が複雑」「和解の失敗」「当事者が裁判の進行に協力しない」「弁護士がついていない」「裁判所の夏休みなどが挟まった」などがあります。

Q:裁判が早く終わるケースは?
A:「事案簡明」「被告が認めている、原告が取り下げた」「すぐに和解が成立した」「当事者が事件進行に協力的、双方に弁護士がついている」などがあります。

Q:民事裁判(民事訴訟)にかかる費用は?
A:①印紙代②郵便切手代③交通費④謄写費用⑤弁護士費用

Q:民事裁判(民事訴訟)に弁護士は必要ですか?
A:必ず弁護士をつけるべきです。「裁判を有利に進められる」「裁判所に行かなくていい」「裁判を早く進められる」「気持ちが楽になる」がその背景です。

 

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民事訴訟費用(弁護士費用)や裁判費用を相手に請求できるケースとは?

普通に日常生活を送っていても、法的なトラブルに巻き込まれることは多いです。たとえば貸したお金を返してもらえない場合、賃貸住宅を人に貸している場合に賃借人が家賃を払ってくれない場合、離婚トラブル、交通事故など、さまざまな問題が発生します。このような法的なトラブルが発生した場合には、示談交渉や裁判などを弁護士に依頼することが多いです。そうすると、当然民事訴訟費用(裁判費用)や弁護士費用などの費用がかかりますが、かかった費用を事件の相手方に請求することは出来ないのでしょうか。出来るとすればどのような場合に、どのくらい請求出来るのかも知っておきたいところです。今回は、民事事件の相手方に弁護士費用や民事訴訟費用を請求出来るのかについて、解説します。なお、民事裁判の流れや期間について気になる方は下記の記事を参考にしてください。

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