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少額訴訟を起こされた!無視した場合のリスクや通常訴訟移行の判断基準

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この記事の執筆者:田中靖子(元弁護士)

少額訴訟を起こされた!無視した場合のリスクや通常訴訟移行の判断基準

こんな疑問にお答えします

・少額訴訟とは?
・少額訴訟を起こされたら知っておくべきことは?
・通常訴訟に移行すべきケースは?
・少額訴訟を無視したり欠席したらどうなる?
・少額訴訟で勝つためのポイントが知りたい

「裁判」と一言でいっても、いろいろな種類があります。比較的利用しやすい制度として、「少額訴訟」という制度があります。

利用しやすい制度であるため、平成27年度には年間11,542件もの少額訴訟が提起されています(法テラス白書平成27年度版)。

それでは、ある日突然少額訴訟を起こされた場合、どのように対応したらよいのでしょうか?

裁判を無視した場合は、デメリットがあるのでしょうか?

今回は、少額訴訟で訴えられた方のために、少額訴訟に向けて準備するべき内容を紹介し、訴訟を無視した場合のリスクについても解説します。

そもそも「少額訴訟」とは?

「少額訴訟」とは、規模の小さな事件を迅速に解決するために、平成10年に作られた制度です。

対象となるケースは、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えに限られます。

例えば、大家さん(貸主)が敷金10万円を返還してくれない場合や、知人に貸した20万円が返済されない場合のように、比較的金額が小さいケースでは、少額訴訟がよく利用されています。

通常の裁判との違い

通常の裁判を提起すると、審理をするための期間として、平均で8.7ヶ月もかかります。

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つまり、通常の裁判で争う場合には、半年以上もの期間を裁判に費やさなければいけません。

これに対して、少額訴訟の審理は、原則として1日で終了します。

通常の裁判に比べると、大幅な時間の節約となります。

通常の裁判にするかどうかを選ぶことができる

少額訴訟は、迅速で気軽に利用できる制度ですが、「時間をかけて丁寧に審理をしてもらうことができない」というデメリットがあります。

このようなデメリットがあるため、少額訴訟の手続きを行うためには、裁判の当事者の「双方の同意」が必要だとされています。

当事者のどちらかが通常の裁判を希望すると、自動的に通常の裁判に移行します。

もしもあなたが、「事件についてきちんと調べてもらいたい」と考える場合には、裁判所に対して「通常の裁判に移行してください」と求めることができます。

このような申立てのことを、「通常訴訟移行申述書(つうじょうそしょういこうしんじゅつしょ)」といいます。

「通常手続移行申述書」と呼ばれることもあります。

あなたが裁判所に申述書を提出すると、その時点で自動的に通常の裁判に移行します。

少額訴訟の手続きの流れ

少額訴訟の訴状を受け取った場合、その後はどのように進んでいくのでしょうか?
手続きの流れを見てみましょう。

訴状が届く

相手が少額訴訟を提起すると、およそ数日以内に、あなたの元に裁判所から手紙が届きます。

手紙の中には、相手が作成した訴状のコピーや、「口頭弁論期日呼出状(こうとうべんろんきじつよびだしじょう)」が入っています。

「口頭弁論期日呼出状」には、裁判が行われる日時が書かれています。

少額訴訟は、この1日の審理だけで終了しますので、この裁判の日時はしっかりと覚えておきましょう。

もしもどうしても都合が悪いという場合は、裁判所に連絡しましょう。

やむをえない事情があれば、裁判の日時は変更してもらうことができます。

答弁書を提出する

裁判所から届いた手紙の中には、「◯月◯日までに答弁書を提出してください」と書かれています。

「答弁書(とうべんしょ)」とは、訴えられた側の言い分や反論を伝えるための書類です。

答弁書の提出は、義務ではありません。

しかし、こちらの言い分を裁判官に伝えるための重要な手段ですので、期限までに必ず提出しておきましょう。

裁判所のホームページにて答弁書のダウンロードと書き方が確認できます。

通常の裁判を希望する場合:申述書を提出する

通常の裁判を希望する場合には、「通常訴訟移行申述書(通常手続移行申述書)」を提出します。

申述書には、提出の期限はありません。

裁判実務では、第1回の期日までに提出すればよいとされています。

通常は、答弁書と一緒に提出します。

決まったフォーマットはありませんが、下記のような情報が入っていれば問題ありません。


こちらでWordファイルをダウンロードできますので、必要であればご利用ください。

裁判所の書式によっては、答弁書の文面の中に、「通常の手続による審理及び裁判を求めます」という選択肢が含まれています。

この場合には、この文面の横の□にチェックを入れることによって、申述書の提出を省略することができます。

通常の裁判に移行する選択肢が含まれている答弁書は、裁判所のこちらのページからもダウンロードができます。

第1回の期日までに申述書を提出しなかった場合には、そのまま少額訴訟の手続きが進行します。

第1回の期日が終了すると、その後に通常訴訟に移行することはできなくなります。

期日に向けて準備をする

少額訴訟では、原則として1回の審理で終了します。

あなたが裁判官に伝えたいことがある場合には、第1回の期日で全て主張しなければいけません。

このため、第1回の期日までにきちんと準備をすることが重要となります。

裁判所に提出したい証拠がある場合には、第1回の期日までに全て揃えなければいけません。

証人として裁判所で証言をしてもらいたい人がいる場合には、事前にその人にお願いをして、裁判の日時に必ず裁判所に来るように、手配を整えておきましょう。

このように、少額訴訟においては、審理が開かれるまでの準備が重要となります。

期日までに準備が間に合わない場合には、裁判所に頼んで期日を変更してもらいましょう。

それでも準備が間に合わない場合は、通常の裁判に移行する手続きを行いましょう。

口頭弁論が開かれる

少額訴訟の審理は、簡易裁判所内の小さな部屋で行われます。

テレビドラマでよく見かける法廷では、裁判官が高い壇上に座り、厳粛に手続きが進められますが、少額訴訟ではこのようなことはありません。

少額訴訟の手続きでは、丸いテーブル(ラウンドテーブル)を囲んで、和やかに話し合いが行われます。

裁判官も同じテーブルにつき、当事者と同じ目線で話し合いを進行します。

裁判の期日では、裁判官が両者の言い分を聞き取ったうえで、争いのポイントを整理します。

必要な場合には、証拠の取調べが行われます。

通常は、およそ1時間ほどで審理が終了します。

判決が出される

裁判所での審理が終了すると、その日のうちに判決が言い渡されます。

事件が複雑な場合には、後日改めて判決が言い渡されます。

少額訴訟の判決では、相手の言い分を認めるかどうかが判断されるだけでなく、分割払いの支払いや支払猶予が命じられることがあります。

異議申し立てを行う

判決の内容に不満がある場合は、異議の申立てをすることができます。

異議の申立てを行った場合は、同じ簡易裁判所で改めて審理が行われます。

少額訴訟の手続きでは、地方裁判所に控訴(こうそ)をすることはできません。

強制執行が行われる

判決で相手の言い分が認められた場合には、そのとおりの金額を相手に支払わなければいけません。

認められたとおりの金銭を支払日までに払わなかった場合には、相手が強制執行を行うことができます。

強制執行とは、あなたの預貯金や不動産などの財産を相手が差し押さえることです。

あなたがサラリーマンや公務員である場合には、給与やボーナスが差し押さえられることもあります。

少額訴訟の訴状を無視するとどうなるか

少額訴訟の訴状を受け取ったにも関わらず、無視した場合はどうなるのでしょうか?

全く何もしないまま裁判を欠席した場合

あなたが訴状を無視した場合でも、裁判の手続きは進行します。

あなたが何もすることなく裁判の期日を迎えた場合は、あなたが不在の状態のままで、裁判所で審理が行われます。

この場合、「擬制自白(ぎせいじはく)」という制度によって、相手の請求をそのまま認める判決が出されます。

「擬制自白」とは、訴えられた人物が争う姿勢を見せない場合に、相手の主張をそのまま全て認めたものとみなす制度です。

つまり、あなたが裁判所からの書類を無視すると、裁判官が相手の主張をそのまま認めることになり、相手が希望するとおりの判決が出されます。

相手の言い分を認める判決が出た後にさらに無視し続けると、強制執行によってあなたの財産が差し押さえられるかもしれません。

答弁書を提出して裁判を欠席した場合

訴状を受け取った後に答弁書を提出したものの、裁判には出席しないという方もいらっしゃいます。

この場合はどうなるのでしょうか?

答弁書を提出した場合は、「陳述擬制(ちんじゅつぎせい)」という制度によって、一定の配慮をしてもらうことができます。

「陳述擬制」とは、答弁書に書いた内容を法廷で弁論したとみなしてもらう制度のことです。

例えば、答弁書に「私はお金を借りた覚えがない」と記載した場合には、裁判に出席して「お金を借りていない」と主張したと扱ってもらうことができます。

この場合には、訴えを起こした人物が、お金を貸したことを立証することが必要となります。

相手が十分な証拠を提出すれば、相手が勝訴する内容の判決が出ますが、相手の証拠が不十分であれば、あなたが勝訴する内容の判決が出されます。

つまり、答弁書をきちんと提出しておいた場合には、裁判を欠席しても、裁判に勝訴する可能性が残っています。

ただし、証拠を取り調べる場面に立ち会うことができないため、あなたにとって不利な状況となります。

たとえ相手が偽造した証拠を提出したとしても、あなたがそのことを指摘することはできません。

少額訴訟の審理はわずか1時間ほどで終了しますので、証拠が偽造されたものであっても、裁判官が見抜くことができない可能性は低くありません。

確実に相手と争いたいのであれば、裁判の期日には必ず出席しましょう。

少額訴訟で勝訴するためのポイント

少額訴訟で勝つためのポイント
少額訴訟は、通常の訴訟とは異なる特殊な制度です。

少額訴訟で争うためには、いくつかのポイントがあります。

通常訴訟に移行するべきか

少額訴訟で訴えられた場合に、最も大きなポイントとなるのは「通常訴訟に移行するべきかどうか」という問題です。

通常訴訟に移行するべきかどうかは、どのように決断したらよいのでしょうか?

通常訴訟に移行するかどうかの判断のポイントは、「相手の言い分を認めるかどうか」です。

訴状に書かれている内容が、おおむね正しいのであれば、時間をかけて争う必要はありません。

争う必要が無いのであれば、少額訴訟によって時間を節約することができますので、あなたにとってもメリットがあります。

具体例として、知人から借金の返済を催促されているケースを考えてみましょう。

もしあなたが「確かに10万円を借りたが、最近リストラされて生活が苦しいので、2万円ずつの分割にしてゆっくり返済したい」と考えている場合は、通常の裁判に移行する必要はありません。

このような場合は、「借金をした」という相手の言い分を全面的に認めていることになります。

そのまま少額訴訟を続ければ、迅速に裁判を終結させることができるため、あなたにとってもメリットがあります。

一方で、もしあなたが「そもそもお金を借りた覚えがない」と考えている場合や、「借金はきちんと返済した」と考えている場合には、相手の言い分を全面的に争うことになります。

このような場合には、証拠の取調べに時間がかかりますので、通常の裁判手続きに移行した方が良いでしょう。

通常の裁判に移行すると、審理に時間がかかりますが、丁寧に事実関係を調査してもらうことができるというメリットがあります。

弁護士に依頼するべきか

少額訴訟は、通常の訴訟と比較すると、簡易な手続きです。

このため、弁護士に依頼することなくご自分で手続きを行う方もいらっしゃいます。

日本弁護士連合会の統計によると、少額訴訟の当事者の約87パーセントの方が、弁護士を付けずにご本人が手続きを行っています。

しかし、裁判に不慣れな方にとっては、ご自身で答弁書を書いたり、通常訴訟に移行するかどうかをお一人で決めることは、難しいかもしれません。

このような場合、まずは弁護士による法律相談をご利用することをお勧めいたします。

弁護士に訴訟の代理人を依頼すると、ケースによっては10万円以上の費用がかかりますが、法律相談であれば比較的安価な金額で弁護士からアドバイスを受けることができます。

法律相談の一般的な相場は、30分5,000円です。

お近くの市役所や法テラスに問い合わせると、無料の法律相談を実施しているかもしれません。

少額訴訟の手続きは、ご自身で行うことは不可能ではありません。

しかし、どうしてよいか分からないとお悩みの場合には、一度弁護士による法律相談を受けておくと安心です。

この記事の最後で紹介している弁護士保険Mikataでは、弁護士に法律相談をした場合の費用をカバーしています。

弁護士保険に加入している方は、少額訴訟で訴えられた場合にも、安心して弁護士に相談することができます。

まとめ

今回は、少額訴訟を起こされた場合の対策について紹介しました。

少額訴訟の手続きは、たった1回の期日で終了するため、審理にかかる期間を大幅に短縮できるというメリットがあります。

その日のうちに判決が出るため、迅速に争いを終結させることができます。

一方で、証拠の取調べに時間をかけることができないというデメリットがあります。

判決内容に不満があっても、地方裁判所に控訴をすることはできません。

このようなメリットとデメリットがあることから、少額訴訟を起こされた場合は、通常の裁判に移行するかどうかを慎重に見極めることが重要です。

お一人で判断することが難しい場合には、一度法律の専門家である弁護士にご相談してみましょう。

弁護士保険Mikataでは、弁護士に法律相談をした場合の費用をカバーしています。

ある日突然少額訴訟を起こされた場合にも、費用を心配することなく安心して弁護士に相談することができます。

少額訴訟に巻き込まれたときに慌てないためにも、今回の記事をきっかけに弁護士保険の加入をご検討されてみてはいかがでしょうか。

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田中靖子(元弁護士)

田中靖子(元弁護士)

東京大学経済学部卒業。2009年司法試験合格。2011年弁護士登録、2012年弁理士登録。離婚事件や相続トラブルなどの個人の案件から、会社設立・知的財産紛争・パワハラやセクハラを始めとする労使トラブルなどの会社法関連の業務まで幅広く取り扱う。現在は海外に在住し、法改正のニュース記事や法律解説記事を執筆する傍ら、グローバル企業や国際離婚に関する講演を行うなど、法律に関する情報を世界に向けて発進している。
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