離婚時には、解決しなければならない問題が様々浮上しますが、その中の一つが財産分与です。
お互い正直に全財産を公表した上で財産分与を行えれば問題ありませんが、実際にはどちらか一方が財産を隠してしまうケースもあります。
ところで、このように離婚時に財産を隠匿する行為があった場合、果たして罪になるのでしょうか?
たとえば、夫が妻に対して財産を隠したまま離婚が成立してしまい、後から妻がそれに気付いた場合、妻は夫に対して財産の隠匿を理由に犯罪行為があったと訴え出ることができるのでしょうか?
また、再度の財産分与を求めることはできるのでしょうか?
今回は、離婚時の財産分与における財産隠しについて詳しくご説明していきます。
離婚時の財産分与の真実①夫婦間の財産・資産隠しは罪にならない?
結論から申し上げると、夫婦間での財産隠しは、原則として犯罪行為が成立することはありません。
なぜならば、夫婦間には「親族相盗例」といって、親族間で発生した一部の犯罪行為(または未遂行為)についての刑罰を免除するという刑法上の規定があるからです。
財産隠しは、本来、夫婦のものであるべき財産を断りなく持っていく行為であるため、一見すると窃盗罪が成立するようにも見受けられます。
財産隠しを騙して行ったのであれば、詐欺罪が成立するのでは?と考えるのもおかしなことではありません。
しかし、親族相盗例によっていずれの罪も免除されるため、原則として犯罪が成立することはありません。
夫婦間の財産隠しを刑事罰に問うことはできないのです。
離婚時の財産分与の真実②刑事罰には問えないが民事上の請求は可能?
とはいえ、いずれも不法行為には違いないため、民事上の損害賠償請求をすることは可能です。
また、適正な財産分与が行われていなかったと、再度の財産分与を求めることも可能となっています。
ただし、財産隠しがあったと第三者に示すだけの証拠がどうしても必要になってしまう点に注意です。
どこかの銀行に口座を持っているはずだけれど、どこの銀行の何支店か口座番号も不明という場合など、財産隠しの証拠を提示するのはなかなか難しいものです。
もし、この証拠が手に入るのであれば、損害賠償請求の訴えを起こすことは可能となっていますし、再度の財産分与を求めることも可能です。
また、たとえ離婚成立後であっても、財産隠しに気付けたのであれば、まだ泣き寝入りする段階ではないということです。
ただし、再度の財産分与を求める場合、時効の関係があり、離婚成立から2年以内に行わなければならない点に注意しましょう。
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離婚時の財産分与の真実③離婚成立前に財産・資産隠しが発覚したら?
それでは、次に離婚成立前に財産隠しに気付いた場合には、どのような対処方法があるのでしょうか?
この場合、離婚成立についてはともかく、財産分与に関しては適正になされるように話し合う必要があります。
離婚の成立と財産分与は別々に請求が可能となっているため、どうしても離婚を優先したいのであれば、先に離婚してしまって問題ありません。
ただし、先に離婚するのであれば、上記の場合と同様、財産分与の請求は離婚成立から2年以内に行わないと時効になってしまう点にも注意しましょう。
離婚時の財産分与の真実④財産・資産隠しの疑いがある場合の対応方法は?
では、確信はしていないまでも、財産隠しを疑っている場合はどのように対応すれば良いのでしょうか?
たとえ、相手に対して収入証明などの提示を求めたとしても、財産隠しをするような相手が素直に応じるはずがありません。
よって、こういった場合、協議・調停にて財産隠しを公にするのは難しい可能性が強いです。
たとえば、協議にて財産分与をする場合、たとえ相手が嘘をついていたとしても、上記で触れたように親族相盗例によって罪は免除されるばかりか、証拠もないため民事上の請求を起こすこともできません。
また、調停であったとしても、調停内で虚偽の発言があっても罪に問うことはできない(偽証罪にはならない)ため、財産隠しを疑うことはできても解決することはありません。
刑事裁判や民事裁判では、発言する際に虚偽の発言はしないと宣誓させられ(刑事裁判の場合は証人が宣誓させられる)、それにも関わらず虚偽の発言をした場合は罰金を支払わなければなりません。
しかし、調停にはこういった制度はありません。
つまり、嘘をついても問題はないということになります(もちろん嘘はないほうが良いですよ)。
よって、調停中に財産隠しをする相手に対しては、意図的に調停を不成立にすることでしか抵抗する手段はないと言えます。
離婚時の財産分与の真実⑤財産・資産隠しは弁護士に相談!
では、調停を不成立にさせる以外に抵抗する方法はないのでしょうか?
こういった場合の解決方法としては、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、「弁護士照会(23条照会)」にて、相手の勤務先や金融機関に対して、給与明細書や預金残高の照会をかけることが可能です。
また、離婚問題が調停ではなく裁判にまで発展すれば、民事裁判にて「文書送付嘱託(ぶんしょそうふしょくたく)」によって請求するのも良いでしょう。
文書送付嘱託が裁判所から認められれば、相手の勤務先や金融機関に対して、「文書提出命令」が出され、原則、この命令が出された相手は裁判所の請求に応じなければなりません。
弁護士に依頼したり民事裁判を利用すれば、こういった方法にて相手の財産隠しの調査が可能となっています。
裁判まで提起するのは簡単なことではありませんが、適正な財産分与を受けるためには、こういった方法を利用するしかありません。
弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用を負担してくれるので助かります。