隣の飲食店や工場からの臭いがキツイ!悪臭防止法でなんとかならないのか?

 

お菓子などの甘いにおいをかぐと、幸せな気分になりますよね。

しかし、そのにおいを毎日毎日かぐことになってしまったら……それは辛く、悪臭ともとれるかもしれません。

家の隣や近隣に飲食店や工場があり、そこからの悪臭に悩んだとしたら、「悪臭防止法」を盾に営業の制限や慰謝料を請求できるのでしょうか?

今回は、実際にあったAさんの事例(京都地裁、平成22年9月15日)を紹介します。

「甘いにおい」に苦しめれたAさんの事例

臭いとある住宅地に住んでいたAさん。

ある日、Aさんの家のすぐ近くに、菓子工場ができることになりました。

菓子工場が稼働を始めて以降、Aさんは「甘いにおい」に苦しめられるようになりました。

焦げたバターのにおいやベビーカステラ、キャラメルコーン、あめ、あんこ等の甘いにおいが、毎日毎日Aさんの家まで漂ってくるようになったのです。

Aさんは、ベランダに洗濯物や寝具を干したり、窓を開けて新鮮な空気を取り込んだりすることができなくなってしまいました。

また、頭痛やいらだち等の症状が出てくるなど、健康被害まで出るようになりました。

さらに、工場から出る騒音によって、不眠などにも悩まされるようになったのです。

Aさんや近所の住民たちは、市に対してたびたび陳情を行い、菓子工場に対して是正指導を行うことを要望しました。

市も菓子工場に対して違法状態を解消するよう何度も指導を行い、違法状態の是正を命じる使用制限命令も発令しましたが、菓子工場は言い訳を重ねるばかりで、一向に状況は改善されませんでした。

裁判を起こした結果

菓子工場の違法操業は、3年4ヶ月もの間に及びました。

その後、工場が移転して違法状態は解消されましたが、Aさんや近所の住民たちは、菓子工場の悪臭や騒音によって精神的損害や肉体的損害等を受けたと主張して、1人あたり110万円の慰謝料等を求めて裁判を起こしました。

裁判所は、菓子工場の操業に基づく臭気や騒音によって近隣住民であるAさんたちが受けた被害は受忍限度を超えていたとして、Aさんたちの損害賠償請求を一部認め、菓子工場に対して原告住民1人あたり16万5000円の支払いを命じました。

判決の解説

臭いを規制する法律としては、「悪臭防止法」が存在します。

悪臭防止法は、規制地域内の工場や事業場の活動に伴って発生する悪臭を規制することで、生活環境を保全することを目的としています。

しかし、悪臭防止法で排出規制の対象となっているのは、アンモニアや硫化水素など不快な臭いの原因となり生活環境を損なうおそれのある「特定悪質物質」や、人間の嗅覚によってにおいの程度を数値化した「臭気指数」に限定されています。

今回の事例のようなお菓子の甘いにおいは、悪臭防止法における規制対象とされていないため、悪臭防止法では制限することができないのです。

また、飲食店から発するような臭いにも特定悪臭物質が含まれることはほとんどないため、そういった場合は、臭気指数を測定し、争うことが多いです。

建築基準法による制限

土地の用途の混在を防ぎ、生活環境の保全や利便性の向上を図るため、市街地では「用途地域」を定めることになっています。

用途地域が指定されると、住居系・商業系・工業系など土地利用の大枠が決まることとなり、建築基準法では、それぞれの用途地域について建築できる建物の制限を設けています。

今回の事例の場合、菓子工場の敷地の大半は「第二種住宅地域」として指定されており、原動機を使用する床面積50㎡超の工場の建築は禁止されていました。

その一方で、菓子工場の建築確認申請書には主要用途が「事務所兼倉庫(自家用)」と記載されており、その後の計画変更においても、主要用途を事務所兼倉庫(自家用)としたまま、工場の床面積を大幅に拡大していました。

これらの経緯から、菓子工場は、その土地には床面積50㎡を超える工場を建築できないことを熟知したうえで、当初から工場に転用する意図で建築確認申請書の内容を偽装したと認められ、こうした菓子工場の行為は故意による計画的で悪質な建築基準法違反であると判断されました。

受忍限度の判断

工場からの臭気や騒音が違法であるとして工場の損害賠償責任を認めるためには、その臭気や騒音によって近隣住民らが受ける不利益が、社会生活上一般に受忍すべき限度(受忍限度)を超えると判断される必要があります。

今回の事例では、裁判所は

本件工場が発する臭気は、菓子特有の甘いにおいであり、これを不快と感ずるかについては個人差が大きいものと考えられるから、一般人をして不快にさせるものとは直ちにいえない

としながらも、

音や臭いによる不快感は、短時間であればともかく、長期間にわたり、日中、継続的なものである場合には、かなりの苦痛となるものと認めるのが相当である

と言及しました。

そして、菓子工場の建築基準法違反や是正指導の軽視の態様が極めて悪質だったことや、地域住民が長期間にわたり被害を訴え続けていたこと等の事情を総合的に勘案し、裁判所は、菓子工場の発した臭気や騒音が地域住民たちの受忍限度を超えていたと判断しました。

これにより、菓子工場の発する臭気や騒音は違法なものであるとされ、慰謝料等の損害賠償が命じられたのです。

弁護士に相談しましょう


今回のような「臭いトラブル」の場合、単に臭いが発生しているというだけでなく、その臭気が受忍限度を超えているかどうかが非常に重要なポイントとなります。

そして、受忍限度の判断は、様々な事情を勘案しながら個別具体的に判断されます。受忍限度の判断には極めて高度で専門的な知識が必要となりますので、トラブルに巻き込まれた際は、弁護士等の専門家に相談することが望ましいでしょう。

また、今回の臭いトラブルと似たような近隣トラブルとして、「騒音トラブル」も存在します。

騒音トラブルの場合も、臭いトラブルと同様に、その騒音が受忍限度を超えるかどうかで違法性が判断されることになります。

臭いや騒音などの近隣トラブルは、いつ襲いかかってくるか分かりません。万が一のときのために、信頼できる弁護士にすぐに相談できる体制を整えておくと安心です。

まとめ

お菓子の「甘いにおい」でも、毎日毎日かぐとストレスになってしまいます。

そして、そのような「においトラブル」は、場合によっては慰謝料が請求できるかもしれないのです。「におい」に悩まされていたら、ぜひ弁護士に相談してみましょう。

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弁保社長

弁保社長

慶應義塾大学卒業後、大手エネルギー関連企業、ベンチャー企業の取締役を経て、2014年に弁護士保険募集代理店として㈱マイクコーポレーションを創業。 幼少期をアメリカで過ごし、訴訟リスクについて親友の父(弁護士)より学ぶ。 自身の離婚経験、友人の相続トラブル、後輩の勤務先企業からの不当解雇など身の回りで弁護士に依頼をした事例が多数起こり、日本での訴訟リスクの高まりと弁護士費用保険の必要性を感じたことをきっかけに、「誰もが小さなトラブルでも気軽に弁護士に相談できる社会」を目指し、広く日本初の弁護士費用保険である「Mikata」の普及促進を図っています。(さらに詳しいプロフィールはこちら
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