カスハラって?企業のカスハラ対策を法的に解説します。

近年になり大きな注目を集めるようになった『ハラスメント問題』。

 

その中でも、商品やサービスを提供する従業員に対して、消費者であるお客さんから悪質ないやがらせを受ける『カスハラ(カスタマーハラスメント)』が増加しています。

 

カスハラの内容は、商品やサービスの内容に関するもの、欠品や品薄などに対するものなどが見られます。

 

そのカスハラによって評判が落ちてしまうことや、対応によって従業員の精神がすり減ってしまい、退職を余儀なくされてしまうことが起きているのです。

 

そのような状況に対して、企業は適切に対処することが大切で、さらに従業員が安全に健康的に働けるように配慮しなければならない義務を要しています(安全配慮義務)。

 

安全配慮義務を怠った場合には、労働者に対して損害賠償義務を負うリスクがありますので注意が必要です。

 

そこでここでは、悪質なカスハラに対する対策を考えている企業や店舗のために、適切な対策ついて、詳しく解説していきます。

 

カスハラとは?

 

『カスハラ』とは、消費者が従業員に、商品やサービスに対する嫌がらせを行う行為のことを指しています。

 

さまざまな業界でカスハラ被害は拡大していることが報じられており、深刻な問題として注目されるようになりました、

 

しかし、その反面で「お客さんからの単なるクレームでは?」という声が聞かれることもあります。

 

そこでここでは、カスハラの定義について、また具体的な行為を挙げてご説明いたしましょう。

 

カスハラとは?

カスハラとは『カスタマーハラスメント』を略した言葉で、『カスタマー(customer:顧客)』による『ハラスメント(harassment:嫌がらせ、困らせること)』を組み合わせた造語です。

 

一般的にみられる顧客からのクレームではなく、店舗や企業の従業員に対して理不尽な要求や度を超えた謝罪を強要するような行為のことを指しています。

 

SNSなどの発達に伴い、商品やサービスの評価がすぐに伝達するようになったことによって、店舗や企業は細心の注意を払う必要性が高まり、さらに消費者の権利意識が高まったことも相まってカスハラが増加したのではないかと考えられます。

 

そのため、状況に応じた適切な対応が必要であり、また従業員に対して安全に働くことができる環境を提供するよう配慮が求められます。

 

具体的なカスハラ行為

厚生労働省が公表している、企業などに対するカスハラ行為として考えられるものには、次のような行為があります。

 

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫中傷名誉毀損侮辱暴言)
  • 威圧的な言動
  • 土下座の要求
  • 継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動
  • 拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃や要求
  • その他、不相当な商品交換や金銭補償、謝罪の要求など

 

具体的には、

 

  • 大声を出して従業員を責める
  • 長時間の居座りによって業務に支障を及ぼす
  • 言いがかりによる金銭要求や返金要求
  • 揚げ足を取って責める
  • SNSなどへ会社や従業員の信用を毀損させる投稿

 

などがこれに当たります。

 

ただし、一般的にカスハラ行為は、店舗や企業の顧客に対する対応方法が異なるために、明確に定義することが難しいとされています。

 

ただ、厚生労働省が行った調査の中で、顧客などからのクレームや要求に対する手段が、社会通念上で明らかに不相当なものであり、従業員の労働環境が害されるものがカスハラ行為だと考えられる、としています。

 

参考『厚生労働省(カスタマーハラスメント対策企業マニュアル)

 

顧客に対するカスハラ対策とは?

 

顧客からのクレームのすべてがカスハラ行為であると言うことはできないため、店舗や企業は適切な対応を取ることが必要であると考えられています。

 

そもそも、店舗や企業に多大な迷惑をかけようとしているようなケースは稀で、商品やサービスに対する期待の高さから生じるものであると言えます。

 

ただ、そのクレームが過度な場合には、店舗や企業の経済活動、また従業員の精神状態にも支障を及ぼすことになりますので、適切に判断して対処することが大切であると言えます。

 

クレームなのか、カスハラなのか

顧客は商品やサービスに対して期待度を高くもっているために、自身の満足が得られない、不満があるといった状況においてはクレームが発生することになります。

 

ただ、一般的なクレームの場合、何度も言うように、それは商品やサービスの期待の高さの現れであって、店舗や企業もそのクレームから学ぶこともたくさんあるはずです。

 

実際、クレームを真摯に受け止め、顧客満足度を高めている店舗や企業は少なくありません。

 

商品やサービスを提供する側と提供を受ける顧客側は対等な立場であることから、どんなクレームでもカスハラであると受け取ることなく、見極めるスキルや経験も重要であると考えられます。

 

カスハラへの適切な対応

上記でもお伝えした具体的なカスハラ行為に該当するような、根拠のない不当な要求や脅しともとれる悪質なクレームがあった場合には、適切な対応が求められます。

 

例えば、実例において従業員の対応に不満があるとして、土下座による謝罪を要求するような行為が報じられていました。

 

仮に本当に従業員の対応に問題があった場合には、適切な謝罪と共に、お客様に満足いただけるよう改善する必要があります。

 

しかし、『土下座による謝罪』は明らかに行き過ぎた要求であり、従業員の対応に問題がなかった場合には悪質なクレームであると言えるでしょう。

 

このような要求に対しては従う必要はなく、断固拒否する姿勢が大切です。

 

また、その姿勢が、クレームを受けている従業員を守る行為にもなるからです。

 

カスハラだと証明できる証拠を

行き過ぎたカスハラ行為よって従業員だけで解決が困難な場合には、警察に相談することや

弁護士に相談することが必要になります。

 

多くのケースの場合には、そのように法的手段の活用を伝えることによってカスハラ行為が止まることがほとんどです。

 

しかし、警察・弁護士のいずれに相談する場合においても、状況に対する証拠を残しておくことが大切です。

 

状況の証拠としてなりうるものには、

 

  • カスハラ行為の経緯、日時などを記した記録
  • 店内の防犯カメラの映像や音声

 

などといったものが考えられます。

 

あからさまに撮影するようなことは難しいために、店内に設置されている防犯カメラをうまく活用できるようにしておくといいでしょう。

 

警察に相談する

店内で大声を出す、店員を脅迫している、店のものを壊している、などといった緊急性の高い状況である場合には、警察に相談する姿勢が大切になります。

 

速やかに被害を食い止めることができますし、刑事責任を追求できる可能性もあるからです。

 

「警察に相談する」と伝えた時点でカスハラ行為を止めたとしても、相談することを検討しておいた方がいいでしょう。

 

以前、そのような相談があったと警察に記録が残りますし、次回、同じようなことがあった場合にすぐに対応してもらえます。

 

弁護士に相談する

カスハラ行為に対しては、従業員が対応しなければならず、事業経営に大きな影響を与えるのはもちろんのこと、従業員の心理的な負担も大きなものになります。

 

そのため、カスハラ問題に精通した弁護士に相談することによって、すぐにアドバイスや対処してもらうことができます。

 

相談体制を整えておけば、「弁護士に相談する」と告げた時点でおさまることも多く、相談体制を整えておくだけでも抑止力となります。

 

従業員の安全対策として、何を実施すべきか?

 

冒頭からお伝えしている通り、カスハラ行為は経営に大きな影響を与え、従業員も安心して働くことが困難になります。

 

そのため、企業においてカスハラ対策に対する意識を高め、従業員の安全と健康を守り、カスハラ対策を徹底させることが重要です。

 

カスハラに対する企業側の意識を高める

店舗や企業によって顧客への対応方法は異なるために、それぞれでカスハラ行為に対する意識を高めておくことが重要です。

 

多くのケースでは、「クレームなのか、カスハラなのか」という議論は必ず起こるために、店舗や企業独自の判断基準を設けておくことが適切でしょう。

 

厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』においては、

 

  • 顧客などの要求内容に妥当性はあるか
  • 要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か

 

などの尺度を持っておくことを勧めています。

 

また、そのような行為があったとしても、顧客がすぐに要求を取り下げるような場合には、カスハラ行為とは言えないこともあるため、従業員の対応方法も定めておくことが大事です。

 

従業員が安全で健康に働くことができるように

カスハラ行為は、店舗や企業そのものだけではなく、従業員に対しても大きな影響を及ぼすことになりかねません。

 

そもそも企業は、従業員が安全で健康に働くことができるように、『安全配慮義務』を果たさなくてはなりません。

 

例えば、従業員は顧客から悪質なクレームを受けている、危害を加えられそうになっているという状況においてはカスハラ対策を講じ、従業員が納得して働けるような体制を整えておかねばならないのです。

 

そのようなカスハラ対策をしっかりと講じている場合には、従業員からの信頼を得て、プラスに働くことも少なくありません。

 

カスハラ対策を整備する

  • 店舗や企業の基本方針
  • 基本姿勢の明確化
  • 従業員への周知・啓発
  • 従業員のための相談体制の整備
  • カスハラ行為への対応方法や手順の策定
  • 対応ルールなどへの教育や研修
  • 再発防止のための取り組み

 

カスハラ対策の整備として、上記のような内容を踏まえておくことが大切です。

 

まず、方針や取組姿勢を明確にしておき、それらを従業員にしっかりと周知しておくことが重要です。

 

それが従業員を守り、従業員からの信頼感や安心感に繋がるからです。

 

また、従業員が実際にカスハラ行為の被害にあった場合、どのように対処すればいいのか、どのように相談すればいいのか、体制を整備しておく必要があります。

 

さらに、それらが現実的に運用できるように、従業員に対して定期的な研修なども必要になるでしょう。

 

弁護士に相談ができるようにしておこう

 

新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、カスハラ行為は増えている印象があります。

 

蔓延による不安、生活の不自由さ、経済の不安定、あるいはリストラや倒産などによって、さまざまなハラスメントとして現れるのではないかと実感しています。

 

そのようなことから、弁護士への相談体制を構築しておくことはとても重要です。

 

弁護士の活用というと大企業のイメージがあるかもしれませんが、中小企業や個人事業、フリーランスであっても必要な対策です。

 

例えば、地域の店舗でカスハラ行為があった場合、行為に対処するために他のお客様の対応が滞ってしまう可能性があります。

 

仮に弁護士への相談体制を持っておくだけで、カスハラ行為への抑止力になりますし、実際に行為を受けた場合でもすぐに対処してもらうことができます。

 

事業への悪影響を考えれば、メリットは大きいと言えるのではないでしょうか。

 

弁護士保険という選択肢も

カスハラ対策として弁護士への相談体制を構築する場合、

 

  • 費用が高くなってしまう
  • どの弁護士に相談していいか分からない

 

といった問題が生じます。

 

そのような心配をせずに、弁護士の相談体制を構築できる『弁護士保険』についてご紹介します。

 

弁護士保険とは

『弁護士保険』とは、安価な費用でいつでも弁護士に相談ができるといった保険サービスのことを指しています。

 

弁護士をビジネスで利用するのは大企業のようなイメージがありますが、冒頭からお伝えしている通り、地域にある店舗でもカスハラ行為のリスクは少なくありません。

 

実際、立場の弱い個人事業やフリーランスに弁護士の力が必要な場面は多いものなのです。

 

弁護士保険では、

 

  • 気軽に相談できる体制
  • 安価な月額費用
  • 安心の補償内容

 

を実現し、弁護士保険『事業者のミカタ』に加入すれば、

 

  • 弁護士への直通ダイヤルで気軽に相談
  • 月額費用は5,160円~
  • 対処や訴訟が必要になっても安価に弁護士を活用できる

 

といったメリットがあります。

 

弁護士保険へ加入している旨を告知できますから、カスハラ行為の抑止力にもなるでしょう。

 

弁護士保険『事業者のミカタ』がおすすめ

弁護士保険への加入を検討するなら、まずは『事業者のミカタ』の資料請求をおすすめします。

 

弁護士への直通ダイヤルはもちろん、税務相談や労務相談も可能です。

 

日弁連(日本弁護士連合会)と提携しているために、どの弁護士に依頼すれば良いのか分からないような場合でも、紹介サービスを受けることができます。

 

また、弁護士保険に加入していることを告知でき、弁護士保険ステッカーを目立つ場所に貼っておくことができます。

 

これだけでも相当な抑止力になるでしょう。

 

さらには、カスハラに対する対処を弁護士に依頼するような場合や、訴訟が必要になった場合でも、通常の弁護士費用よりも格安に利用することができるのです。

 

ぜひうまくカスハラ対策として弁護士保険『事業者のミカタ』を活用して、会社と従業員を守っていきましょう。

【おまけ】個人事業主の弁護士保険が販売されています

個人事業主向けの弁護士保険として、ミカタ少額短期保険(旧社名:プリベント少額短期保険)より「事業者のミカタ」(個人事業主・フリーランスの方の詳細はこちら、法人の方の詳細はこちら)、エール少額短期保険より「コモンBiz+」(詳細はこちら)が販売されておりますのでご参照下さい。