【裁判例あり】欠陥住宅で損害賠償請求をする前に知っておきたいこと

 

以前、横浜市の大型マンションが傾いたという事件がニュースで取り上げられ、大きな話題となっています。

住民からの指摘を受けて三井不動産レジデンシャルと三井住友建設が調査を行ったところ、約50本のくいのうち、8本が強固な地盤まで到達していないということが明らかになりました。

さらに、杭打ち工事を担当した旭化成建材によるデータの改ざんが明らかになり、住民たちが販売業者である三井不動産レジデンシャルの責任を追及するという事態に至っています。

こうした社会的な信頼度の高かった大手企業による不正が明らかになったことで、こうしたニュースを目にして「自分の住んでいるところは大丈夫なのか?」「欠陥が見つかったら一体どうすればいいのか?」と不安に感じる方も少なくないのではないでしょうか。

実際、建物の欠陥や工事の手抜きといった部分は住む前に直接確かめる訳にもいかない部分であり、どんなに注意していても欠陥住宅に出くわすリスクがゼロではありません。

今回、そうした「欠陥住宅」に関係するトラブルに対して法律的にどう対処するのかをご紹介します。

欠陥住宅って法律的にはどう扱うの?

一般的に建物に欠陥がある場合、「瑕疵(かし)担保責任」というものが問題になります。

瑕疵担保責任とは、売買の目的物(建物)に瑕疵(要求されている品質に欠ける、などの欠陥のこと)があり、それが普通に注意をしていても買い主が気づかないような場合に、売り主が買い主に対して負う責任のことです。

この瑕疵担保責任は民法に規定されています。

民法 第570条(売主の瑕疵担保責任)

売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

民法 第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)

1.売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

2.前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。

3.前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

建物に欠陥が見つかった場合、売り主に対して欠陥を発見してから1年以内に請求を行えば、損害賠償を請求できるし、その欠陥が修復不可能なほど深刻な場合などでは契約を解除することもできます。

例えば、新しく買った家で雨漏りが起きた場合、瑕疵担保責任を追求することで雨漏りによって生じた損害(修理費用など)について損害賠償を求めることができ、天井全体から雨漏りしていてもう住むことができない、という場合には、家を買った契約自体を解除してなかったことにすることができるのです。

今回の傾きマンションの問題についても、住民はマンションの区分所有権を三井から購入し、その建物に欠陥があったことになるので、民法570条に基づき瑕疵担保責任を追及することができると考えられます。

瑕疵担保責任の弱点

しかし、この瑕疵担保責任も万能ではなく、問題点があります。

瑕疵を知ってから、1年以内に請求しなければならない

ひとつは「瑕疵を知ってから、1年以内に請求しなければならない」という期間制限。

もし1年を過ぎてしまうと、基本的には責任を追求できないことになります。

傾きマンションについては、一見「瑕疵があることを知ってから一年以内」の条件はクリアしているように思えますが、売り手である三井側が宅建業法40条に基づき「引渡しのときから2年以上の期間」を定めて責任追及される期間についての特約を結んでいる場合には、その期間を過ぎてしまうと責任は追求できません。(ただし、「アフターサービス基準」について特約がある場合、責任期間が異なる場合がある他、住宅品確法に基づく責任追及の道もあります)。

売り手を相手にしか責任が追求できない

二つめは、「損害賠償を請求する相手」に関する制限。

瑕疵担保責任は、売り手と買い手の間の契約関係に適用される規定なので、欠陥住宅の場合、売り手を相手にしか責任が追求できません。

つまり、中古で家を購入した場合、瑕疵の原因を作ったのが工事を担当した建設会社だとしても、建設会社が直接の売り手でない以上、建設会社に瑕疵担保責任を追求することはできないのです。

設計者・施行者への損害賠償命令が下った画期的判例


今問題となっている傾きマンションの事件では、最も責任が重いのはデータの改ざんまで行った施工業者の旭化成建材であるように思えますが、施工業者と販売会社(三井不動産レジデンシャル)が異なっている場合に、施工業者に責任を求めることはできないのでしょうか。

この問題に対する画期的な判例が2007年7月に出されました。

事件の概要を見てみましょう。

2007年欠陥マンション訴訟

Aさんは、9階建てと3階建ての2棟の店舗付きマンションを完成後間もなくして建設主から購入。しかし、すぐにバルコニーや部屋の床、壁にヒビが入り、バルコニーの手すりもぶらついたため、Aさんは、設計を担当した設計事務所と工事をした建設会社を被告としておよそ6億円を求める損害賠償請求を提起した。

この請求に対して、第二審は「Aさんの直接の契約者でない設計者、施工者は瑕疵担保責任を負わない」という理由で賠償請求を退けます。責任が追求できるのは売り手だけ、という当時の常識的な判断をしたわけです。

しかし、最高裁はこの考え方を退け、審理を高裁に差し戻します。

その判決の要旨は以下です。

以下の理由で、審理を尽くすよう高裁に差し戻す。

1.建物はそこに住む者、働く者、訪問する者、隣人、通行人の生命、身体又は財産を危険にさらすことのないような安全性を備えていなければならない。

2.建物の建築に関わる設計者、工事監理者、施工者は、契約関係にない者に対してもその建物の基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を有する。

3.建物の基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合は、違法性が強度であるかを問わず、不法行為責任が成立する。

4.基本的な安全性を損なう瑕疵とは、生命や身体を危険にさらすようなものをいい、建物の基礎や建物の構造に瑕疵がある場合に限られない。(バルコニーの手すりのぐらつきなども瑕疵に入る。)

5.不法行為責任である以上、直接の契約関係にない者でも、設計者や施工者に対して損害賠償請求が出来る

不法行為とは、簡単にいうと、法律に違反した行為をすることで、建物の場合は違法な設計や違法な工事を指します。

民法 第709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

最高裁の判決では、契約関係にない設計者や施行者も、建物に住む人や訪問者、通行者を危険にさらさないように安全性に配慮する義務があるとした上で、その義務に違反し、安全性を損なうような瑕疵がある場合には不法行為が成立するとして、損賠賠償請求への道を開いています。

不法行為は時効も長い

不法行為責任は、瑕疵担保責任と請求可能期間が異なり、被害者が被害や加害者を知ってから3年、または被害が生じてから20年請求と長い点も魅力です。

もともと建築業者の間には「法律の中で一番守らなくてもよいのは建築基準法」という意識があったと聞きますが、この判決を機に住宅の欠陥については、設計者、工事管理者、施工者の責任を重く追求する時代へと変わってきました。

今回の傾きマンション問題でも、故意にデータの改ざんを行った旭化成建材に対して、住民側から契約関係に関係なく不法行為の責任を追及できる可能性はあると考えられます。

不法行為責任か?瑕疵担保責任か?


上で見たように瑕疵担保責任よりも不法行為責任の方が有利な点が多いといえます。

ただし、建物に欠陥があったからといって常に不法行為責任が追求できるわけではもちろんありません。

不法行為責任では以下の要件にいずれも該当する必要があります。

①建物に安全性を損なう瑕疵があること
居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいう。
現実的な危険をもたらしている場合に限らない。

②被害が発生しているか、将来的に危険が現実化する可能性があること
瑕疵により居住者などの生命・身体・財産が侵害された場合、もしくは、瑕疵を放置するといずれは『生命・身体・財産に対する危険』が現実化する場合

典型例としては、建物の基礎部分に手抜き工事があり、実際に建物が傾いているような場合が該当します。

瑕疵担保責任と不法行為責任は独立したものなので、どちらにも当てはまる場合にはどちらも請求することができます。

ただし、それによって倍の金額が請求できるということはありません。

上で説明したとおり、それぞれ期間も要件も異なるので、ケースに応じて適切なものを請求していくことになります。

もちろん、こうした請求をせずに済むことが何よりなのですが、万が一、自分の建物に欠陥が見つかった場合には、慌てず適切に対処できるように知識を持っておくことは重要だといえます。

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弁保社長

弁保社長

慶應義塾大学卒業後、大手エネルギー関連企業、ベンチャー企業の取締役を経て、2014年に弁護士保険募集代理店として㈱マイクコーポレーションを創業。 幼少期をアメリカで過ごし、訴訟リスクについて親友の父(弁護士)より学ぶ。 自身の離婚経験、友人の相続トラブル、後輩の勤務先企業からの不当解雇など身の回りで弁護士に依頼をした事例が多数起こり、日本での訴訟リスクの高まりと弁護士費用保険の必要性を感じたことをきっかけに、「誰もが小さなトラブルでも気軽に弁護士に相談できる社会」を目指し、広く日本初の弁護士費用保険である「Mikata」の普及促進を図っています。(さらに詳しいプロフィールはこちら
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