ウア゙ア゙ア゙ー!!
スタートアップ企業に入社したら超ブラック企業だった!
ムカつく上司の奴隷なんて、これ以上やってられるか!!!
残業代込みと言うけど、給料安すぎるだろー!
俺は何のために生きているんだ!?
そうだ、
バックレよう!!
さて、今日は退職の話です。
以前、こちらの記事で、「退職願」と「退職届」の違いについてお話をしましたが、今度はそれすらも出さないでバックレ!退職した場合の問題点について考えてみます。
こんな疑問にお答えします
Q: 仕事を退職届も出さずにバックレ!これって損害賠償請求されるの?
A:平賀 律男(パラリーガル)
労働者にことさら責められるべき事情があるのでなければ、会社の労働者に対する損害賠償請求は認められないのが通常です。 また、労働者の退職に際し、どのような損害が発生したのかを会社がちゃんと証明できない場合が多いです。
ただし、専門的な知識を持つ労働者と3年間の労働契約を結んだにもかかわらず、1年ちょっとでその労働者が突然退職してしまい、プロジェクトが頓挫して違約金が発生した、というような場合には、その労働者が発生させた損害額は算出しやすく、実際に損害賠償請求が認められる可能性も十分に考えられます。
バックレ!による会社の損害、ダメージ
労働者が突然会社を辞めた場合、会社が大変な迷惑を被ることは想像できます。
例えアルバイトであったとしても、その本人に任されている仕事があるのですから、引継ぎもなく穴埋めもできないとなれば、会社の運営に影響が出ることは間違いありません。
そして、労働者を雇って一人前に育てるまでには、それなりにお金も時間も掛かるものです。
会社としては、一生懸命いろいろな研修などに参加させていたのだからそのお金を返せ、と言いたくなるのも無理はありません。
それに、「俺はプロブロガーになる!」ってなんなんだよ!
会社の損害賠償請求が認められる可能性は?
では、会社はそのような損害を労働者に請求することができるのでしょうか。
結論から言いますと、非常に困難だと考えられています。
まず、単純な事例を考えます。
労働者が、事務所を掃除していて2万円の花瓶を割ったとか、お盆をひっくり返して茶碗10個を割ったとかいう場合(いずれも私が実際にやりました)、会社としては備品を壊されたのだから、その分の損害が発生します。
そして、その損害は労働者の不注意(過失)によって発生したものですので、通常であれば労働者に損害賠償義務が発生しそうなところです。
しかし、このような場合、労働者が高そうな花瓶だから割ってやろうと思って割ったとか(故意)、茶碗10個を片手に乗せて運ぼうとして落としてしまったとか(重大な過失)というように、労働者にことさら責められるべき事情があるのでなければ、会社の労働者に対する損害賠償請求は認められないのが通常です。
なぜなら、過失による小さな損害は、労働者がふつうに仕事をしていれば、どこかで必ず起こりうるものですので、仕事に内在するリスクは会社が負うべきだと考えられているからです。
また、労働者は会社に比べて資力に乏しいという理由もあります。
判例でも、重過失があった労働者に対する損害賠償請求の事案でさえ、会社は損害額のうちだいたい4分の1くらいしか労働者に請求できない、という判断がされています(故意の場合は、わざとやっているわけですから、損害の全額かそれに近い請求が認められるのが一般的です)。
退職による具体的な損害とは?
突然自主退職した労働者に対し、会社が損害賠償請求をするにあたり、もうひとつハードルがあります。
それは、労働者の退職に際し、どのような損害が発生したのかを会社がちゃんと証明できない場合が多い、という点です。
例えば、居酒屋のアルバイトが突然バックレた場合、その日の営業は少ない人数で回したり応援を頼んだりと大変なことになるわけですが、だからといって会社に何か具体的な金銭の損害が発生したかというと、そんなことはないですよね。
また、会社のために資格を取らせたりしていた労働者が突然辞めた場合、一見、研修費用は損害額として計算しやすいように見えます。
しかし、その労働者にとっては、そのような研修を受けたり、資格を取得したりすること自体が仕事であったため、会社が費用を負担して当然であり、そこに損害は発生しないわけです。
これを、「退職したら研修費用を請求するぞ」と会社が言うことは、会社が労働者を金銭面で脅して会社に足止めをしていることになり、労基法上問題があると言えるのです。(労基法16条)
労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
これに対して、労働者が自分の利益のために研修や留学等に参加して、その費用を会社が負担していた(立て替えていた)場合には、その費用(立替金)を返せという請求も認められることがあります。
契約期間中の退職は損害賠償請求の対象になる
話は変わりますが、労働契約を期間を区切って締結していた場合(例えば、平成27年4月1日から9月30日までというように)、会社と労働者のどちらも、やむを得ない事情がなければ労働契約を解除することはできません。
そして、正当な理由なく労働契約を解除した場合には、相手方に生じた損害賠償をしなければいけないことになっています(民法628条)。
労働者側からすると、自分の病気や家族の介護で働き続けられなくなったり、給料が全然支払われない、会社に入った途端ひどい虐めに遭ったなどの事情があれば、期間途中で労働契約を解除することができます。
しかし、働くのがめんどくさくなった、おみくじで仕事運が最悪だったなどの理由では期間途中で自主退職することはできないことになっているのです。
ただし、この条文を用いてもなお、会社としては労働者に損害賠償請求をすることは困難だと考えられます。
しかし、例えば3年間のプロジェクト実施のために、専門的な知識を持つ労働者と3年間の労働契約を結んだにもかかわらず、1年ちょっとでその労働者が突然退職してしまい、プロジェクトが頓挫して違約金が発生した、というような場合には、その労働者が発生させた損害額は算出しやすく、実際に損害賠償請求が認められる可能性も十分に考えられるでしょう。
実際に、上記のようなケースで200万円の損害賠償を請求された事件がありました。(ケイズインターナショナル事件 平成4年9月30日東京地判)
※判決は70万円の支払命令でした。
つまり、先ほどのように居酒屋のアルバイトが労働契約の期間途中で退職しても、会社は他のアルバイトを投入するなどして何とかやりくりできるのですから、具体的にいくらの損害が発生したがを証明するのは非常に困難なのです。
だからといって勝手に辞めない
ちがうのー?
ブラック企業の中で悶々と「辞めたいけど言い出せない」と思いながらも、我慢して働き続けている人は大勢いるそうです。
なかには、会社の許可がないと退職できないと勘違いしている人も多いとか。
そのような人には、「会社に行くのをやめなさい」と伝えたいところですが、だからといって会社をいきなり辞めるのはいいことではありません。
社会人として道徳的に許されない、ということもありますが、それよりも、会社が悪質なケースだと「○○円の損害を受けたから払え」などと異常な損害額を書いた文書を送ってきたり、本当に訴えてきたりすることもあります。
そのような無用な争いに巻き込まれることを避けるため、可能な限り円満に退職するよう努めるのがベストです。
とはいえ、会社が特に悪質な場合には、退職に向けた話し合いさえままならないこともあるでしょう。
会社との交渉力の差を埋めるためにも、専門家の助力を受けることは本当に大切なことです。
弁護士に相談をする際には、弁護士の費用がかかるケースに備えて、弁護士保険に加入しておくこともおすすめです。
実際に訴訟などになった際の弁護士費用を軽減することが可能です。
弁護士保険なら11年連続No.1、『弁護士保険ミカタ』
弁護士保険なら、ミカタ少額保険株式会社が提供している『弁護士保険ミカタ』がおすすめです。1日98円〜の保険料で、通算1000万円までの弁護士費用を補償。幅広い法律トラブルに対応してくれます。
経営者・個人事業主の方は、事業者のための弁護士保険『事業者のミカタ』をご覧ください。顧問弁護士がいなくても、1日155円〜の保険料で弁護士をミカタにできます。
記事を振り返ってのQ&A
A:非常に困難だと考えられています。労働者の退職に際し、どのような損害が発生したのかを会社がちゃんと証明できない場合が多いことが背景です。
Q:契約期間中の退職は損害賠償請求の対象になりますか?
A:基本的には、会社としては労働者に損害賠償請求をすることは困難だと考えられます。ただし、例えば専門的な知識を持つ労働者と3年間の労働契約を結んだにもかかわらず、1年ちょっとでその労働者が突然退職してしまい、プロジェクトが頓挫して違約金が発生した、というような場合には、その労働者が発生させた損害額は算出しやすく、実際に損害賠償請求が認められる可能性も十分に考えられるでしょう。