労働基準法違反とは?要件や罰則を事例を交えてわかりやすく解説

企業ではたらく労働者の中には「残業代が適切に支払われていない」「有給を取らせてもらえない」といった悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。

こうした状況は、労働基準法違反にあたる可能性があります。

本記事では、労働基準法の代表的な事例を解説し、具体的な相談窓口を紹介します。労働トラブルを抱えている場合は、ご自身の状況と照らし合わせて確認してみてください。

こんな疑問にお答えします

Q.労働基準法違反の代表的な事例を教えてください。

A.以下のようなケースは、労働基準法違反にあたる可能性が高いでしょう。

  • 意思に反した強制労働
  • 中間搾取
  • 違約金の支払い強制
  • 一方的な解雇
  • 法定労働時間を超える労働の強制
  • 有給休暇の取得を妨げる
  • 休憩時間の取得を妨げる
  • 妊娠・出産・育児を理由に不当な扱いを受ける
  • 残業代の未払い
  • 休業手当の未払い

労働基準法は細かく規定があり、その事例はさまざまです。安心して働くためにも、どういったケースが違反に該当するのか知っておくことが重要です。

労働基準法とは?

労働基準法とは、1947年に制定された日本の法律で、労働者を保護する目的で制定されたものです。

労働基準法では労働に関する最低基準が定められています。その項目は、労働契約や労働時間、休日休暇、労働環境、賃金、災害補償、解雇までさまざまです。

基準に違反すると、事業主は行政指導や罰則の対象となる可能性があります。

労働基準法の対象者

労働基準法の対象者は、原則として日本国内で働いている労働者です。正社員だけでなく、パートアルバイトといった雇用形態にも適用されます。

ここでいう「労働者」とは、労働基準法第9条において以下のように定義されています。

労働基準法第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
引用:労働基準法|e-Gov

つまり、会社や事業者と労働契約を結んで働き、かつ賃金の支払いを受けている人が対象です。

労働基準法の対象外となる労働者

ただし、労働基準法では「対象外」となる人もいます。

次に挙げる3つに該当する場合、労働基準法における労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。

【労働基準法における労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されない人】

  • 農業・畜産業・養蚕業・水産業
  • 管理監督者または機密事務の従事者
  • 監視または断続的業務の従事者

参考:労働基準法|e-Gov第41条 労働時間等に関する規定の適用除外

労働基準法では、労働者の過労防止を目的の一つとしています。

規定の労働時間は1日8時間以内1週間で40時間以内を原則とし、時間外労働に関しては割増賃金が支払われることになっています。

しかし、上記に挙げた職業に関しては、労働内容を時間単位で管理することが難しく、天候や時期にも左右されるため一般的な休日や休憩の制約が適用されません。

フリーランスの場合はどうなる?

では、フリーランスの場合はどうなるのか確認してみましょう。

業務請負契約や業務委託契約を結んでいるフリーランスの場合は、労働基準法における「労働者」には該当しません。

従って、労働基準法が適用されないと考えるのが基本です。

労基は対象外となりますが、フリーランスの働き方を守る法律も存在します。

【フリーランスの働く環境を守る法律】

  • 独占禁止法
  • 下請法
  • NEW!  フリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案)

なお、2023年4月28日に「フリーランス保護新法」は、2023年4月28日に成立された新しい法律です。フリーランスが安心して働ける環境を整えようという目的で、2024年10月頃の施行が予定されています。(2023年10月時点)

フリーランスに適用される独占禁止法や下請法については、こちらの記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

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労働基準法違反の代表的な事例と罰則

ここからは、労働基準法に違反した場合、どのような罰則が科されるのか典型的な事例と共にみていきましょう。

意思に反した強制労働

労働者の意思に反した強制労働は、労働基準法違反の典型例です。

労働基準法第5条 (強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
引用:e-Gov法令検索 

わかりやすくいうと、労働者を身体的・精神的に拘束して無理やり働かせてはならないというものです。

違反すると「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金刑」に処されます。

ここでいう「無理やり」というのは、脅迫・暴行・監禁という手段を使って意思がない状態で働かせることを指します。

たとえば、「この作業が終わるまで帰宅させない!応じなかったらクビだぞ」と迫る行為です。

意思に反した強制労働は被害者の精神面にも影響しやすいため、労働基準法の中ではもっとも重い罰則が適用されます。

中間搾取

会社と労働者の間に入って利益を得る「中間搾取」は、違反行為に該当する可能性があります。いわゆる、ピンハネです。

労働基準法第6条 (中間搾取の排除)
何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
引用:e-Gov法令検索 

たとえば、仕事を紹介すると労働者に仕事を斡旋し、給料の一部を回収するといったものです。 違反すると「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。

なお、派遣会社のように労働契約が派遣元と交わされている場合は、法律違反にはなりません。

違約金の支払い強制

労働者に対する違約金の支払い強制も、労働基準法違反に該当する可能性があります。

労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
引用:e-Gov法令検索 

たとえば、以下のケースが挙げられます。

  • 退職を希望する社員に対して違約金を支払わせる
  • 備品を壊した場合に賠償金を支払わせる
  • 資格に合格しなかったら研修費用を要求する

また、雇用契約時に上記のような内容を示すことも違法行為とみなされます。

違反した際の罰則は「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」です。

一方的かつ突然の解雇

企業が労働者に対して一方的かつ突然解雇をすることを禁止しています。

基本的に、企業が労働者を解雇する際は最低でも1ヶ月前に予告をしなければなりません。

もし、何らかの事情により1ヶ月未満で解雇を伝える場合は不足日数分の手当を支払うことになります。

これに違反すると「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」に処されます。

労働基準法第20条件(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
○2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
○3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
引用:e-Gov法令検索

ただ、ここで注意したいことが「退職推奨」というものです。

退職勧奨とは、会社が従業員に辞めてほしいときに自主退職を促す行為です。会社は強制解雇という方法を取らずに済むため、会社にとっては都合の良い手段でしょう。

自主退職については法的な規制がありません。そのため、強制解雇なのか自分の意思で辞めると決めたものなのか曖昧になりがちです。

もし「退職勧奨の仕方が違法なのではないか?」「本当に自分の意思で退職するのか?」など不明な場合は、冷静になって判断すべきです。

退職推奨については、以下の記事を参考にしてみてください。

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法定労働時間を超える労働の強制

法定労働時間を超えた労働を強制する行為は、違反とみなされます。

法定労働時間は、1日8時間、週40時間を原則としています。この時間を超えて労働をさせるには、労働者との間で時間外労働や休日出勤などを取り決める「36(サブロク)協定」を締結する必要があります。

参考:厚生労働省 確かめよう労働条件 36(サブロク)協定とは

労働基準法第32条(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用:e-Gov法令検索 

36協定を交わさず法廷労働時間を超えて働かせた場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」に処されます。

有給休暇の取得を妨げる

有給休暇の取得を妨げる行為も違反行為に該当します。

労働基準法では、働き始めて半年を経過した労働者に対して有給休暇を与えなければならないと定めています。これに反した場合の罰則は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」に処されます。

労働基準法第39条(年次有給休暇)
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用:e-Gov法令検索 

有給休暇をいつ取るかや取得理由は労働者の都合に合わせられるため、基本的に会社との話し合いは不要とされています。

「うちには有給制度がない」「そんな理由では取らせない」と、権利が認められない場合は違反となるでしょう。

また、有給休暇は半日や1時間単位でもらうことも可能です。こちらの記事もあわせてご覧ください。

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休憩時間の取得を妨げる

休憩時間を取らせないことも違反行為のひとつです。

労働基準法第34条では、企業は労働者に対して適切な休憩時間を付与することを定めています。

適切な休憩時間とは、労働時間が6時間を超えたときに45分8時間を超えたときに少なくとも1時間とされています。

合理的な理由なしにこれに反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」です。

“労働基準法第34条(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
○2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
○3 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
引用:e-Gov法令検索 

なお、休憩中は労働免除時間となります。そのため、休憩中に来客対応を指示されたり電話対応を依頼された場合は、労働時間とみなされます。

ただ、仕事を早く終わらせたいという理由で休憩を返上して自主的に働いた場合においては、企業側の違反にはならないので注意しましょう。

妊娠・出産・育児に関する休暇の申し出を拒否する

妊娠・出産・育児に関わる休暇取得を妨げる行為は、労働基準法違反に該当する可能性があります。

違反すると「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」に処されます。

労働基準法では、次のように定めています。

労働基準法第65条・66条・67条(産前産後)
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
○2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。
○2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
○3 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。
(育児時間)
第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
○2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

引用:e-Gov法令検索 

基本的に、従業員から産休や育休の申し出があった場合は、企業側は拒否することはできません。

特に、育休の申出を拒否した企業に関しては行政指導の対象となり、企業名公表がされることもあります。

妊娠や出産を理由に休暇取得妨害、解雇などを行うことは「マタハラ」に該当する可能性があります。

マタハラとは、マタニティハラスメントの略です。雇用形態に関係なく、働く女性が妊娠・出産・育児に関して職場の同僚や上司から嫌がらせを受け、就業環境が害されることを指します。

マタハラの具体例や法律については、こちらの記事をご覧ください。

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残業代の未払い

残業代の未払いも、労働基準法違反になる可能性が高いでしょう。

労働基準法では、次のように定めています。

“労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
○3 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
○4 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○5 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

引用:e-Gov法令検索 

残業代は時間外労働に含まれるため、割増賃金が支払われることになります。

賃金の割増率は以下のとおりです。

  • 一般の時間外労働の場合は1.25倍
  • 深夜労働(午後10時〜午前5時)の場合は0.25倍
  • 休日労働の場合は1.35倍
  • 休日労働かつ深夜労働は1.6倍

たとえば、休日に時給1,500円で午前9時から夜23時(休憩1時間とする)まで働いたとします。

この場合、以下の計算になります。

【休日に時給1,500円で午前9時から夜23時(休憩1時間とする)の計算例】

  • 9時〜22時:時給1,500円×休日手当1.35×12時間=24,300円
  • 22時〜23時:時給1,500円×深夜手当1.6×1時間=2,400円

従業員が残業代を請求したにも関わらず支払わなかった場合「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処される可能性があります。

ただし、残業代を請求できるケースもあれば難しいケースもあります。残業代を請求する方法や注意点については、こちらの記事をご覧ください。

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休業手当の未払い

休業手当の未払いも、労働基準法違反として認められる可能性があります。

休業手当とは、企業の責任で従業員を休ませた際に支給する手当のこと。 労働基準法では、次のように示しています。

労働基準法第26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。”
引用:e-Gov法令検索 

ここでいう「使用者の責に帰すべき事由」とは、以下のようなケースです。

  • 企業の経営不振によって従業員を休ませる
  • 設備や工場の機械不備によって休ませる
  • 夏期の節電対策を理由に休ませる
  • 企業側の過失によって休業しなければならない場合

上記のような事由で休業手当を支払わなかった場合は「30万円以下の罰金刑」に処されます。

ただし、地震や台風といった自然災害の場合は不可抗力にあたるため、休業手当の対象にならないので注意が必要です。

労働基準法違反で悩んだ際の相談先

労働基準法違反となる例はさまざまあり、雇用される労働者側も自身の状況が問題ないかどうか確認するため知識を身につけておく必要があるでしょう。

とはいえ「違反に値するけれどどこに相談したらいいのか分からない」「不当な扱いを受けているけれど相談する勇気がない」といった悩みを抱えている方もいるはずです。

ここからは、労働基準法違反で悩んだ際の相談先を紹介します。

労働基準監督署

一つ目に、労働基準監督署への相談です。

労働基準監督署とは、管轄内の企業が労働基準法に沿って運営しているか監督する機関のこと。管轄内の企業に違反行為が発覚した際は、立ち入り調査を行い指導勧告をします。

それでも改善されないときは、刑事罰が与えられるようはたらきかけることもあります。

労基署への相談方法は、「電話」「窓口への訪問」「メールで匿名による情報提供」があります。電話に関しては「総合労働相談コーナー」に問い合わせる方法もあります。

直接窓口に出向く場合は、確実に動いてもらうために状況をまとめた資料を用意しておくといいでしょう。

全国の労働基準監督署の所在一覧と総合労働相談コーナーの問い合わせ先は、以下のリンクより確認してみてください。

厚生労働省 全国労働基準監督署の所在案内

厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内

雇用環境・均等部(室)

雇用環境・均等部(室)では、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、パートタイム労働法に関する相談ができます。

具体的に、以下のようなケースで利用されることがあります。

  • セクハラ
  • マタハラ(妊娠・出産・育児を理由とした不当な扱い)
  • 性別による差別(女性だからという理由で重要な任務につかせてもらえない)
  • 雇用形態による差別(パートだからという理由で賞与の金額が大幅にカットされている)

相談内容に応じて、行政指導も行ってもらえます。

都道府県別の雇用環境・均等部(室)所在地一覧はこちらから確認してみてください。

雇用環境・均等部(室)所在地一覧

厚生労働省|労働条件相談ほっとライン

労働条件相談ほっとラインでは、労働基準関係法令に関するトラブルについて相談できる場所です。

相談方法は電話のみで、全国どこからでも無料で利用できます。土日の相談も受け付けているため、平日仕事で忙しい方も利用しやすいでしょう。

相談できるトラブル事例は、以下のようなものがあります。

  • 違法な労働条件
  • 長時間労働の強制
  • パワハラ・セクハラ
  • 強制解雇
  • 休暇の取得関連

労働条件相談ほっとラインへの問い合わせは、こちらを確認してください。

厚生労働省|労働条件相談ほっとライン

労働問題に詳しい弁護士

労働問題に詳しい弁護士への相談もおすすめです。

弁護士の役目は、相談者の個人的な問題を解決することです。たとえば、残業代未払いや不当解雇を相談することで、会社との交渉や訴訟、慰謝料請求まで行ってくれます。

労働基準監督署やその他相談できる機関との違いは、その役目です。

お伝えしたように、労働基準監督署の役目は管轄内の企業が労働基準を守っているか監督すること。違反していれば指導勧告を行い、必要であれば刑罰を与えるよう促しますが、訴訟や労働審判を行う権限は持っていません。

弁護士であれば、法律に則って対処ができるため、強制力を持って労働者の権利を守ることができます。

「トラブルを早期に解決したい」「慰謝料請求も考えている」という方は、労働問題に詳しい弁護士へ相談を検討してみましょう。

労働基準法違反の早期解決には弁護士への相談がおすすめ

労働基準法違反に悩んでいる場合は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士であれば、労働基準監督署で解決できなかった問題も対処してくれます。

弁護士はどこで見つけられる?具体的な相談窓口

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弁護士の相談ができる窓口は、以下の5つがおすすめです。

【弁護士の相談ができる窓口】

  • 弁護士会による法律相談センター
  • 法テラス
  • 自治体の法律相談
  • 弁護士保険
  • 各法律事務所

それぞれの詳細について詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

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記事を振り返ってのQ&A

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  • 労働基準監督署
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  • 厚生労働省|労働条件相談ほっとライン
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Q.労働基準監督署と弁護士では、どちらに相談するといいですか?

A.どちらでも構いませんが、それぞれ役割が異なることを覚えておきましょう。
弁護士においては、個人的なトラブルの解決を目指してくれます。
初回無料で相談できる法律事務所もあるので、確認してみてください。