近隣トラブルの対処法は?よくある事例と相談先、慰謝料についても解説

どれだけ平和に暮らしていても巻き込まれることがある近隣トラブル。遭遇しても何もできず、泣き寝入りするしかない状況になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、近隣トラブルに遭遇した際の対処法やよくある事例、具体的な相談先や慰謝料がとれるかどうかを解説します。

近隣トラブルで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

こんな疑問にお答えします

Q.近隣トラブルはどのように対処すべきですか?

A.まず、仕返しはしないようにしましょう。そのうえで、相手に非があるときは改善を求め、必要であればトラブルの証拠を残してください。証拠収集の方法や慰謝料請求が可能かどうかは、法的知識が必要となります。対応に不安な場合は専門家への相談をおすすめします。

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近隣トラブルのよくある事例

はじめに、近隣トラブルでよくある事例を紹介します。

生活音、騒音

近隣トラブルでもっとも多い事例が「生活音・騒音」です。

生活音には、子どもの声や足音、テレビやラジオ、掃除機や洗濯機の音などさまざまな「音」が含まれます。

音を発している当事者にとっては普通に生活しているだけであっても、周囲にとってはストレスになりかねません。

継続的に聞くことで、睡眠不足日常生活にも影響を及ぼすこともあるでしょう。

特に、人が集まってパーティーを開いたり夜遅くまで音楽をかけたりすることは、騒音トラブルの原因になり得ます。

ペットの鳴き声も騒音と感じることもあるでしょう。

時間帯を問わず、人によって静かに過ごしたい時間はあるものです。しかし、静かに過ごしたい時間に騒がしい音が聞こえてきては休まるものも休まりません。

ただ、こうした生活音や騒音に悩んでも「改善してほしい」と主張できるか悩むところです。

近隣の騒音トラブルの法的な基準については、こちらの記事を参考にしてみてください。

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ゴミ出しのマナー

ゴミの不法投棄やマナーも、近隣トラブルでよくある事例です。

たとえば「分別ルールを守らない」「収集の曜日を守らない」「自治体の指定袋を使っていない」などが挙げられます。

ルールが守られず出されたゴミは収集車に回収されず、そのままその場所に放置されることになります。

そうなると、自治会の担当者や周囲に住む人が他人のゴミを片付けることになってしまいます。

また、放置されたゴミは害虫発生のもととなるため衛生面の悪化が懸念されます。近隣トラブルに発展する要素となるでしょう。

タバコのにおい、悪臭

タバコのにおいや悪臭も近隣トラブルの一例です。

悪臭に関しては「生ゴミが入った袋をベランダや庭に放置する」「ペットの糞尿を処理しない」が原因となり得るでしょう。

タバコのにおいや悪臭は、生活面だけでなく健康面にも悪影響を与えかねません。

近年では、強すぎる柔軟剤のにおいもトラブルの原因になることもあります。

駐車や駐輪トラブル

駐車や駐輪トラブルも、近隣トラブルの火種になり得ます。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 向かいの家が路上駐車をしていて車の出入りがしづらい
  • マンションやアパートの駐輪スペースに、住人を訪ねてきた人が勝手に停めている
  • 廊下やエントランスに駐輪されていて迷惑

駐輪・駐車の問題は、マナーを守ることが第一です。

「一時的だからマナーを守らなくても問題ないだろう」と安易な気持ちで駐輪・駐車することで、近隣トラブルに発展することがあるでしょう。

共用スペースの使い方

マンションやアパートの場合、共用スペースの使い方がトラブルになることもあります。

一般的に、共用スペースというのはそこで暮らす全員の区分所有者が共有しているところを指します。廊下やエントランス、エレベーターなどが挙げられるでしょう。

基本的に、共用スペースには私物を置けません。

しかし、廊下に自転車やベビーカーを置いたり捨てるつもりの家具を置いたりと、スペースの私物化によるトラブルが起きやすくなっているのが現状です。

敷地の境界線

戸建ての場合、敷地の境界線による近隣トラブルもよくある事例のひとつです。

敷地の境界線とは、建築物の敷地の外周のことを指します。

しかし、実際に具体的な境界が示されているわけではないため、敷地の境界線が曖昧になりがちです。

そのため、以下の問題がトラブルに発展することがあります。

  • 隣家との境にフェンスを勝手に作られたが、自分の敷地ではないかと疑問を感じている
  • 隣人の土地の植木の枝が自宅の庭まで伸びてきている

すべての敷地の境界に目標があって明確になっていれば問題はないのですが、お互いの土地の境についての認識が違うことでトラブルに発展することがあります。

人間関係

人が感じる悩みの9割は「人間関係」だといわれています。ご近所付き合いに悩む方も少なくないでしょう。

ご近所づきあいの中で起きやすい人間関係のトラブルには、以下のようなものがあります。

  • すれ違っても挨拶してくれない
  • 難癖つけられた
  • 悪口を広められた

特に、悪口の拡散は誹謗中傷に発展するリスクが高まります。

悪口を言われた側にとっては、名誉毀損として相手を訴えられるレベルに発展することもあるでしょう。

実際のところ、ご近所に根も葉もない悪口を言いふらされたら慰謝料をとれるかもしれません。

名誉毀損で慰謝料をとれる例については、こちらの記事を参考にしてみてください。

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近隣トラブルで慰謝料はとれる?基準はあるの?

度の過ぎた近隣トラブルにおいては、訴訟や慰謝料を含めて法的な対応を検討する方もいらっしゃるでしょう。

近隣住民の騒音やマナーの悪さによって自身の生活が妨害される場合は、民法709条によって不法行為による慰謝料請求が可能とされています。

第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:e-Gov 法令検索

しかし、生活環境に関する慰謝料請求においては、近隣による妨害行為が「受忍限度」を超えるものかどうかをもって判断されることになります。

近隣トラブルを不法行為かどうか決定づける「受忍限度」とは

受忍限度とは、騒音や悪臭による被害を受けた側が「社会共同生活を営むうえで我慢すべきといわれる範囲」のことです。

つまり「受忍限度」を超えた行為のみが、他人の権利を侵害したとして不法行為と評価されます。

従って「近所のマナーが悪く迷惑になっている」「隣人の騒音をやめさせたい」というだけでは慰謝料請求が認められにくいでしょう。

受忍限度を超えたと認められるには何で判断される?

では、受忍限度を超えるかどうかは何で決まるのでしょうか。

その判断基準として、以下のような事情が総合的に考慮されることになります。

  • 侵害行為の態様や程度
  • 被害の程度
  • 侵害行為の開始とその後の継続性
  • 侵害行為に対する交渉の経緯
  • 侵害行為の防止に関する対応の有無
  • その他の事情(建物の構造、被害者側の特殊事情等)

たとえば、騒音によるトラブルの場合は、騒音を発生させていている内容や性質、頻度や時間帯、継続期間が判断基準となります。

また、被害者がストレスで難聴を発症したり不眠になってしまったりと身体的変調が発生することで「受忍限度を超えた」と判断される傾向にあります。

ほかにも、被害者が苦情を申し立てられたにもかかわらず、加害者が真摯に対応しなかったり改善する姿勢を見せなかった場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。

受忍限度を超えるかどうかは被害者が立証しなければないため、その判断は非常に難しいものです。

判断に迷ったら、専門家に相談することをおすすめします。

近隣トラブルに悩まされたときの対処法と注意点

今後も同じ地域や集合住宅で過ごしていくとなれば、近隣トラブルは円満に解決したいもの。ここからは、受忍限度を超える近隣トラブルに悩まされた際に「自分でできる対処方法と注意点」を解説します。

仕返しは厳禁

大前提として、近隣トラブルに巻き込まれたときにやってはいけないのが「仕返し」です。

「騒音に対してこちらも対抗して大きな音を立てる」「相手の敷地内にゴミを投げ入れる」と、被害を加害行為で返してしまうと解決できないどころか裁判になった際に不利になる可能性があるでしょう。

仕返しを受けた相手が逆上し、さらなる嫌がらせや暴行に発展する恐れもあります。

自分の身を守るためにも、仕返しだけは絶対にやってはいけません。

相手に非があるときは改善を求める

相手に非があるときは、改善を求めましょう。

改善を求める際に重要なのは、相手の言い分に理解を示しながらも「自分の日常生活に支障が出ている」と伝えることです。

この際、相手を脅すような態度はせず冷静な口調で伝えてください。

相手に直接伝えづらいときは、書面で通知してもいいでしょう。

ただ、自分か相手かどちらに非があるのか判断しづらいこともあります。

たとえば、近所の人に子どもを短時間みてもらったときに、子どもがケガをしたというケースです。

預かった相手にとっては、ケガをさせるつもりはなかったでしょう。しかし親からしてみれば、我が子が負った傷を見過ごすことはできないものです。大きなケガの場合、慰謝料請求を考えることもあると思います。

実は、子どもを預けたときのケガについて法的責任が発生するかどうかの基準があります。

以下の記事で詳しく解説しているので、参考としてご覧ください。

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トラブルの証拠を残しておく

近隣トラブルに巻き込まれた際は、トラブルの証拠を残しておくようにしましょう。

トラブルの内容によっては、当事者同士で解決しそうにないケースもあります。

そうなると、裁判や慰謝料請求を検討することになるでしょう。

証拠を集めておくことで、法的措置をする際に有利にはたらく可能性があります。

有効な証拠については、以下のようなものが挙げられます。

  • 騒音や臭気を測定した記録
  • 騒音を録音したもの
  • ゴミ放置の写真
  • 迷惑駐車や駐輪マナーの悪さを示した写真
  • 医師による診断書(健康被害を被っている場合)

写真や録音は個人で集めやすい証拠でしょう。しかし、騒音や臭気の測定記録は専門業者のサポートを受けた方がいいといえます。

また、近所に悪口を広められたり誹謗中傷を受けたりと、具体的な証拠がつかみづらいトラブルもあるでしょう。

そうした場合は、名誉毀損に詳しい弁護士に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。

近隣トラブルで悩んだときの相談先

近隣トラブルで悩んだときの相談先を紹介します。悩みをひとりで抱えず、まずは助けを借りることから始めてみてください。

自治会、管理会社

気軽に相談できるところで最初に挙げられるのは、自治会や管理会社です。

集合住宅で発生した近隣トラブルは、管理会社もしくは大家へ相談してみましょう。

相談することで、掲示板や張り紙で注意喚起してもらえるかもしれません。加害者からの逆恨みを避けるためにも、相談者を匿名にしてもらうよう伝えるといいでしょう。

戸建てに住んでいる場合は、自治会や町内会へ相談してみてください。

回覧板で注意喚起を行ってもらいやすく、自治会長や役職者が代表になって注意してくれるかもしれません。

このときも、角を立てないように相談者の名前は伏せてもらうよう伝えておくといいでしょう。

役所の生活課

役所(市役所・区役所・町役場・村役場)の生活課への相談も有効です。

ほとんどの役所では、日常生活での悩みごとや心配ごとなどを無料で相談できる窓口を設置しています。

近隣トラブルに関しては、役所で取り扱える案件と扱えない案件がはっきりしています。

役所が相談を受け付けるのは、被害者が1人ではなく多くの住民が困っているような案件がほとんどです。

たとえば、騒音や悪臭問題、ごみ問題などは地域環境に関わってくるため積極的に対応してくれる可能性があります。

警察

最寄りの警察の生活安全課に問い合わせる方法もあります。

近隣トラブルを加害者に改善を求めたことで身の危険を感じたり、事件に巻き込まれそうになっている場合は迷わず連絡してください。

刑事事件に当てはまりそうなトラブルは、その旨をはっきり伝えることで動いてもらえやすくなります。

ただ、警察に相談しても必ずしも対応してもらえるとは限りません。

警察が動くには、緊急性があり事件性がある場合です。

たとえば「隣人がうるさくて眠れない」「ベランダに放置されたゴミのにおいがきつい」などは、緊急性が低く事件性が薄いと判断され、解決してもらえないかもしれません。

とはいえ、警察に解決してもらえないからと諦める必要はなく、警察以外に相談できる専門家を頼ることも一つの手です。

弁護士

警察が動いてくれず、かつ役所や自治体に相談しても解決できない場合は弁護士に相談してみてください。

弁護士の役目は、社会で生活する私たちの事件や困りごとに対して法的な観点から適切な対処をし解決することです。

とはいえ、弁護士と聞くと「すぐに裁判沙汰になるのではないか?」と心配になるかもしれません。

もちろん、事案によっては訴訟を起こして解決することもあります。

その場合も、初めから訴訟を起こすのではなく、まずは加害者と交渉し改善を図るのが一般的な流れです。

弁護士によっては初回相談を無料で行っているところもあります。

弁護士に話すだけでも解決策が見つかることもあるので、一人で抱えず相談してみることをおすすめします。

弁護士への相談先は、以下の記事にまとめています。

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その他法律の相談窓口

その他法律の相談窓口も活用してみましょう。

私たちの周りには、法律事務所以外にも法律相談ができる窓口がいくつかあります。

中でも「法テラス」では無料相談ができ、弁護士や司法書士の費用を立て替えてもらえる「民事法律扶助」のサービスがあります。もちろん、近隣トラブルのお悩み相談も受け付けてくれます。

身近で起きた近隣トラブルを法テラスに相談して解決した事例については、こちらの記事を参考にしてみてください。

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ご自身の状況が当てはまるかどうか、どれくらいの費用で利用できるかはこちらの記事で解説しています。

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近隣トラブルの対応を一任するなら弁護士への相談がおすすめ

近隣トラブルに巻き込まれたら、悩みを抱えたまま放置せずに相談するようにしましょう。

ただ、自治体や管理会社、役所や警察に伝えてもなかなか解決が見込めない場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。

近隣トラブルを弁護士に相談するメリット

近隣トラブルを弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • トラブルの内容がどのような権利侵害や違法行為にあたるのか教えてくれる
  • 具体的な解決策を、法的な観点からアドバイスしてくれる
  • 交渉の代理人となってくれる
  • 裁判に有効な証拠の集め方を教えてくれる

トラブルの内容によっては、苦痛を受けた際の慰謝料を請求できるかもしれません。

弁護士を通じてご自身の被害を主張することで、加害者も事態の深刻さを受け止めるでしょう。

弁護士費用が気になる場合は弁護士保険の利用も視野に

弁護士へ相談するにあたり、気になるのは弁護士費用の負担でしょう。そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。

弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。

通常、弁護士を通してトラブルを解決しようとすると、数十万から数百万単位の弁護士費用がかかる場合があります。

弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に弁護士に支払う費用を抑えられます。

近隣トラブルを早期解決するためには、弁護士保険を視野に入れましょう。

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弁護士保険の特徴について詳しくは、こちらの記事で解説しています。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.近隣トラブルはどのように対処すべきですか?
A.まず、仕返しはしないようにしましょう。そのうえで、相手に非があるときは改善を求め、必要であればトラブルの証拠を残してください。

Q.近隣トラブルの相談先を教えてください。
A.近隣トラブルで悩んだときの相談先は、以下のとおり。

  • 自治会・管理会社
  • 役所
  • 警察
  • 弁護士

Q.近隣トラブルで被害を受けたら慰謝料はとれますか?
A.生活環境に関する慰謝料請求においては、近隣による妨害行為が「受忍限度」を超えるものかどうかをもって判断されることになります。

Q.受忍限度を超えるかどうかは何で決まるのでしょうか。
A.以下のような事情が総合的に考慮されることになります。

  • 侵害行為の態様や程度
  • 被害の程度
  • 侵害行為の開始とその後の継続性
  • 侵害行為に対する交渉の経緯
  • 侵害行為の防止に関する対応の有無
  • その他の事情(建物の構造、被害者側の特殊事情等)