週刊誌が訴えられないのはなぜ?成立しやすい罪や情報提供者の責任を解説

有名人の不倫報道や私生活への介入など、連日のように個人のプライベートを暴露する週刊誌。騒動の渦中にいる当事者にとっては、今後の人生を左右する大問題に発展することもあるでしょう。

無断でプライバシーを公開された場合「週刊誌を権利侵害で訴えることはできるのか?」「情報提供者にも法的措置を取ることは可能なのか?」など、さまざまな疑問が浮かぶかもしれません。

そこで本記事では、権利侵害をした週刊誌を訴えられるかどうかや、成立しやすい罪や情報提供者の責任について解説します。

こんな疑問にお答えします

Q.週刊誌のスキャンダル記事は訴えられないの?

A.実際のところ、週刊誌は不法行為として訴えられています。週刊誌が訴えられるのは決して珍しいことではなく、週刊誌の記者や編集者、さらには発行元の企業に対して損害賠償まで請求されています。ご自身の記事が掲載されて被害を受け権利侵害に立ち向かうには、法的知識を持って対応する必要があるでしょう。

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週刊誌のスキャンダル記事は訴えられないの?

有名人や著名人のゴシップやスキャンダルが週刊誌で暴露されるのは日常茶飯事。自宅前で何時間も張り込まれ、盗撮された挙句に交際をスクープされるなど、一般的に考えると犯罪行為で訴えられてもおかしくありません。

しかし、こうした記事がなくならないのは「週刊誌が訴えられることがないからなのか?」という疑問が生じます。

結論からいうと、実際のところ週刊誌は不法行為として訴えられています。

週刊誌が訴えられるのは決して珍しいことではなく、週刊誌の記者や編集者、さらには発行元の企業に対して損害賠償まで請求されています。

週刊誌は実際に訴えられている

週刊誌が訴えられてきた事例は多くあります。

たとえば、2018年にプロ野球のトレーナーをしていた男性が、女性にわいせつ行為をしたという記事が掲載された件です。

記事が出回った当時、男性は書類送検されていましたが、裁判中の女性の言動に不明瞭な点があったことで記事の内容が事実ではなかったことが発覚。

実際のところ、記事は女性側の一方的な虚偽の主張で書かれていたことが分かり、男性は2019年3月に不起訴処分となっています。

この一件で、男性は精神的苦痛を受けたことにより出版社を訴え、裁判所は慰謝料150万円の支払い命令を下しています。

このほかにも、茨城県の市長が週刊誌に名誉を傷つけられたとし、出版社は慰謝料165万円の支払いを命じられた事例があります。

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情報提供者は罪に問われるの?

ここで一つ「実際に訴えられているのは週刊誌だけど、情報提供者がいる場合は罪にならないの?」と、さらなる疑問が生じます。

たとえば、渦中にいる有名人の手紙やLINEのスクショなどが公開され「そんなプライベートなものが一体どこから…」と、入手ルートが気になるところです。

一般人が週刊誌に有名人のプライベート情報を提供することは、法律上問題はないのでしょうか。

結論、情報提供者は罪にならない可能性が高いでしょう。

基本的に、外部から情報提供があっても実際に記事を公開するかどうかの判断は週刊誌側です。

従って、情報提供の行為自体が直接的に損害発生に結びつきにくいと判断されることが多いものです。

さらに、原則として週刊誌は情報提供者の情報を明かすことはありません。

情報提供者に責任が問われることは少ないといえます。

違法な手段で情報を取得した場合は別

基本的に情報提供の行為自体は罪に問われることはありません。

しかし、違法な手段で情報を取得した場合は、法定責任が発生することがあります。

たとえば、以下のような手段です。

  • 手紙や資料などを勝手に盗んで提供する(窃盗罪)
  • 勝手にスマホを開き、LINEやSNSメッセージを外部へ転送する(不正アクセス禁止法違反)
  • 相手の事務所や自宅に侵入し盗聴器を仕掛ける(住居侵入罪)

上記のような手段で情報を取得した場合は、罪に問われる可能性があるでしょう。

週刊誌側が裁判にかけられた場合は、情報提供者の秘密が守られるという保証もありません。

また、不正アクセス禁止法違反については、配偶者や恋人のスマホやSNSに勝手にログインして盗み見する行為も、慰謝料請求の対象となり得ます。

もし、ご自身が過去に関わった相手にスマホを見られたかどうかの疑念がある方は、こちらの記事をご覧ください。

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週刊誌が訴えられた際に成立しやすい法的責任

では、週刊誌が訴えられるときは、具体的にどのような責任に問われるのでしょうか。

ご自身が週刊誌を訴える際に、どのような罪が認められやすいか参考にしてみてください。

名誉毀損罪

代表的なものが、名誉毀損罪です。

名誉毀損罪とは、人前で具体的な事実を述べて、相手の名誉を傷つける犯罪行為のことです。名誉毀損は「公然」と「事実を摘示」して「人の名誉を下げたこと」が成立要件となります。

週刊誌は、公に出回る出版物です。さらに、記事に具体的な内容が含まれていて被害者の社会的評価を下げるものであれば、取材担当者や出版社を名誉毀損として訴えられる可能性があります。

たとえば、以下のような内容です。

  • 〇〇(芸能人)が薬物依存に陥っている!
  • 〇〇は半年に渡って女優にセクハラ行為をしている
  • 〇〇が抱える借金で離婚寸前!

上記のような内容は、真実かどうかに関係なく被害者の社会的評価を落としかねません。

つまり、週刊誌が虚偽の内容を掲載しても正しい事実を述べても法的処罰の対象になり得るのです。

「嘘の内容だから反論することで余計に怪しまれそう…」「記事の内容が本当のことだから訴えられないかも…」

そう思う必要はなく、名誉が傷ついたという事実に目を向けてみましょう。

名誉毀損で慰謝料請求が認められた事例や、事実を述べても違法行為が成立する理由については、以下の記事で解説しています。

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ただし、首相や議員の場合は名誉毀損が成立しない

ただし、名誉毀損には例外的に処罰されない場合があります。

刑法230条の2第3項では、首相や議員といった公務員は、週刊誌や報道機関によって摘示された事実が「真実」であると証明された場合は処罰されないと定められているのです。

(公共の利害に関する場合の特例)
第230条の2
1 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない。
2 前項の規定の適用については,公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は,公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない。
引用:e-Gov法令検索

政治家が週刊誌に掲載される典型的なものは、汚職事件でしょう。

汚職に関わっていたと記事に掲載されれば、当然のことながら社会的評価が低下します。

しかし、それ以上に違法性阻却事由に該当する可能性が高く、週刊誌は名誉毀損罪には問われる可能性は低くなるでしょう。

違法性阻却事由とは

違法性阻却事由とは、名誉毀損の成立要件「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」を満たしていても罰しないとされる特別な事由のことです。

たとえば、次のような事情が該当します。

  • 公共の利害に関する事実に係るものであること
  • その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
  • 真実であることの証明があったこと

上記のことをすべて満たした場合、名誉毀損を訴えても成立しにくくなるでしょう。

政治家をはじめ、公務員は公人として存在しているので、公人そのものの名誉よりも「公共の利益」が尊重されているのです。

一方で、芸能人の場合は公務員ではなく民間人になるので、誹謗中傷や名誉毀損が成立する可能性が十分にあるといえます。

プライバシーの侵害

プライバシーの侵害も、週刊誌が問われやすい罪です。

ここでいうプライバシーとは、個人の私生活の事実や公開されたくない事柄、未公開の情報を指します。

プライバシー侵害として訴えるには、被害者が「週刊誌に公開されて不愉快だった」というだけでは成立しません。

プライバシー侵害と判断してもらうには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 私生活上の事実または事実と受け取られるおそれがある事柄を公表されたこと
  • 一般の人にこれまで公開されていなかったこと
  • 一般人の感覚を基準として、公開されたことで心理的負担や不安をおぼえる内容であること

週刊誌に無断で公表された画像や内容に、知られたくない個人情報が含まれ、かつ精神的負担をおぼえる内容であれば、プライバシーの侵害として成立する可能性が高くなるでしょう。

著作権侵害

著作権侵害もまた、週刊誌が罪に問われることがあります。

著作権とは、音楽やアート、小説や漫画などの著作物を作ったことにより著作者に法律的に与えられる権利のこと。個人の知的想像力によって生み出された著作物を、著作者の許可を得ずに使用した場合に、侵害行為として損害賠償請求が認められる可能性が高くなります。

ここで「著作権侵害と週刊誌の記事には何のつながりがあるの?」と思われるかもしれません。

週刊誌の記事が著作権侵害に当たるケースの具体例として「不倫関係にある女優が相手に書いたラブレターをそのまま週刊誌に掲載した場合」が挙げられます。

手紙やラブレターは、個人の思想や感情が表現される著作物にあたります。感情のこもった著作物を無断で掲載する行為は、違法行為となります。

もし、手紙やラブレターが週刊誌で公開された場合は、損害賠償を請求できる可能性があるでしょう。

著作権については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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週刊誌が訴えられてもスキャンダル記事がなくならない理由

週刊誌の記事が違法行為に発展することは少なくありません。しかし、訴えられても週刊誌がなくならない点も気になるところです。

その理由と考えられることを2つ紹介します。

週刊誌は賠償金額以上の収益があるから

まず、週刊誌が訴えられたとしても、賠償金額以上の収益があるという点です。

週刊誌は、大きなスクープ記事が掲載できれば数千万の収益が得られるといわれています。

もちろん、発行部数や内容によって売上高は左右されますが、記事の内容が過激であればあるほど購読者が増え、収益化につながることになるでしょう。

一方で賠償金額の相場は低く、先ほど紹介した事例から見ても、週刊誌が裁判所から下された賠償金額は150万円前後でした。

賠償金を支払ったとしても、週刊誌の存続が危機になることは少ないといえます。

週刊誌側も記事を載せることで、権利侵害になることは承知の上でしょう。しかし、それを上回る利益があることも残念ながら事実なのです。

報道機関には「報道の自由」を持っているから

また、週刊誌を含むマスコミや新聞といった報道機関には「事実を報道する自由」があることも関係しています。

事実を報道する自由とは、報道機関が印刷物やネットのメディアを通じて、国民に「事実」を伝達する自由のことを指します。

しかし、いくら事実を伝える自由があるとはいえ、合法か違法かどうかは事例の内容によって変わってきます。

週刊誌が興味本位や営利目的で情報を流す傾向が強まり、個人の名誉や権利を侵害されていることも事実です。

内容によっては、職を失うだけでなく差別や犯罪を助長する恐れもあるでしょう。

記事によって不利益を被って精神的苦痛を受けたのであれば、それは立派な不法行為で許されるものではありません。

精神的苦痛を受けた場合は、慰謝料請求の対象となり得ます。

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週刊誌の過激な報道に悩んだら、まずは名誉毀損や権利侵害に詳しい弁護士へ相談してみてもいいでしょう。

弁護士の相談窓口は、こちらの記事で紹介しています。参考にしてみてください。

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週刊誌による報道被害に迅速な対応をするなら弁護士へ相談しよう

週刊誌による報道被害は、名誉毀損やプライバシーの侵害、著作権侵害などがあります。

こうした権利侵害に立ち向かうには、法的知識を持って対応する必要があるでしょう。

そこで頼りになるのが、弁護士の存在です。

報道被害を弁護士に相談するメリット

週刊誌による報道被害の対応を弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 報道被害から相談者を守り、真実を伝えてくれる
  • 週刊誌に代理で交渉してくれる
  • 報道後の風評被害を抑止してくれる
  • 慰謝料請求のサポートをしてくれる
  • その他メディアの取材から自身や家族を守ってくれる

火種となっている週刊誌との対応は、とにかく迅速な対応が求められます。ご自身の将来や家族を守るためにも、弁護士のサポートを受けて解決する必要があるでしょう。

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週刊誌による権利侵害を早期解決するためには、弁護士保険を視野に入れましょう。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.週刊誌のスキャンダル記事は訴えられないの?
A.週刊誌は不法行為として訴えられています。週刊誌が訴えられるのは決して珍しいことではなく、週刊誌の記者や編集者、さらには発行元の企業に対して損害賠償まで請求されています。

Q.情報提供者は罪に問われるの?
A.基本的に情報提供の行為自体は罪に問われることはありません。しかし、違法な手段で情報を取得した場合は、法定責任が発生することがあります。

Q.週刊誌が訴えられるときは、具体的にどのような責任に問われるのでしょうか。
A.代表的なものとして「名誉毀損罪」「プライバシーの侵害」「著作権侵害」が挙げられます。

Q.週刊誌が訴えられてもスキャンダル記事がなくならないのはなぜですか?
A.支払う賠償金額以上の収益があるからという点と、報道機関には「報道の自由」を持っているからという点が関係するでしょう。