著作権とは?著作権侵害の対処法や未然に防ぐ対策を解説

インターネットが普及し、誰もが自分の作ったコンテンツを発信しやすい世の中となりました。しかしその分、自作したコンテンツが既存のものと似ていたり、表現内容が一致していたりした場合は著作権侵害として訴えられる可能性もあります。

本記事では、著作権の基礎知識から著作物として当てはまるもの、著作権侵害をした場合に問われる責任とトラブルに巻き込まれないための対策を解説します。

こんな疑問にお答えします

Q.著作権侵害となる判断基準と、著作権侵害をしてしまった場合に問われる責任を教えてください。

A.著作権侵害の判断基準は、既存の著作物に対し「依拠性」「類似性」「無断利用」の3つの要件を満たした場合となります。

著作権侵害をしてしまうと「民事・刑事・行政」において責任が問われる可能性があります。

著作物の取り扱いに関しては専門知識を要するため一般の人では判断しづらい部分でもあります。

もし、著作権に関するトラブルが起きてしまった場合は、法律のプロである弁護士への相談をおすすめします。

著作権とはどんな権利?

著作権とは、音楽やアート、小説や漫画などの著作物を作ったことにより著作者に法律的に与えられる権利のこと。個人の知的創造力によって生み出されるため、知的財産権の一つとなります。

著作権が与えられることで、創作した著作物を他者が無断転載したり、許可のないままネット上で利用したりすることを制限する効果があります。

また、著作権で保護されているものを他者が利用する際は、著作者が求める条件で利用することが可能です。

著作権の目的と著作権法

著作権は、著作者の権利を守り、著作物の公正な利用を確保することで文化を発展させることを目的とします。

日本では、著作権法という法律で定められています。

私たちは、映画や小説、音楽や美術など様々なものに触れながら日々の生活を楽しみます。

これらは全て、著作者の努力によって実現しているものです。

日本の文化が発展し続けるためには、著作物を保護し正しく利用されることが必要となります。

著作物に当てはまるもの

では、著作物とはどのようなものが当てはまるのでしょうか。

著作権法では次のように定義しています。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
引用:著作権法

つまり、個人の思想や感情を言葉や文字、アートや音楽という形で表現したものを指し、大きく「文芸、学術、美術、音楽」に分けられます。

著作物は、以下の4つを要件に成り立ちます。

  • 思想または感情を含むもの
  • 創作したもの
  • 表現したもの
  • 文芸、学術、美術、音楽の範囲であるもの

具体的には、以下のようなものが著作物に当たります。

  • 言語(書籍、小説、脚本、論文、講演などの口頭も含まれる)
  • 音楽(歌詞・楽曲)
  • 無言劇(バレエ、ダンス、日本舞踊、振り付けも含まれる)
  • 美術(鑑賞目的の絵画、彫刻)
  • 建築(芸術的で独創的かつ奇抜なもの)
  • 図面・図表・模型・図形(地図、図形、設計図、地球儀も含まれる)
  • 写真(人・風景)
  • 映画(動画コンテンツ、ドラマ、ゲームソフト、テレビ番組)
  • プログラム(ソースプログラムやコンピュータを作動させて結果が生じるもの)

この他にも、著作物を原作に翻訳・編曲・脚色・実写化するなどして加工された「二次的著作物」も、著作物の保護対象となります。

二次的著作物は、もととなる著作物を創作した著作者の許可のもとに創作されます。

従って、二次的著作物を利用する際は、原作の著作者と二次的著作の著作者の両方の許可を得る必要があります。

また、著作物であっても著作権がないものは著作物に当てはまりません。

次に挙げるものは著作権がないため、自由に利用可能です。

  • 憲法や法令、条例や規則
  • 国や公共団体の告示等
  • 裁判所の判決

著作権が発生するタイミング

著作権が発生するタイミングは、文化庁で次のように定めています。

著作権,著作者人格権,著作隣接権は,著作物を創作した時点で発生します。
引用元:文化庁 著作者の権利の発生及び保護期間について

例えば、歌であれば「歌った時点」、絵画であれば「描かれた時点」が著作物の発生するタイミングです。

ただ、周りに誰もいない環境で歌ったりダンスを踊ったりなど、著作物によっては発生したタイミングの提示が難しいものもあります。

そうした場合は、表現したタイミングで写真や動画として日時を示せるよう記録しておくといいでしょう。

著作権の保護期間

文化庁によると、著作権の保護期間は次のように定められています。

著作権の保護期間は,原則として著作者の生存年間及びその死後70年間です。
引用元:文化庁 著作者の権利の発生及び保護期間について

また例外として、著作物の種類によって次のように保護期間が定められています。

  • 無名・変名の場合は、公表後70年(死後70年経過が明らかであれば,その時点まで)
  • 団体名義・法人名義の場合は、公表後70年(公表されない場合は創作後70年)
  • 映画の場合は、公表後70年(公表されない場合は創作後70年)

参考:文化庁 著作者の権利の発生及び保護期間について

保護期間を過ぎると権利は消滅し、共有財産として自由に利用できます。

著作権法で認められる具体的な権利

著作者には「著作者人格権」「著作権(財産権)」の2つの権利が与えられます。

著作者人格権

著作者人格権とは、著作者が持つ人格や精神的利益を保護する権利のこと。原則として、著作物を創作した著作者に与えられる感情的な部分に対する権利です。

著作者人格権があることで第三者の不正利用を禁じ、著作物を創作した人の名誉や思い入れが守られます。

著作者人格権には以下の3つの権利があります。

権利名 概要
公表権 著作者が著作物を公表するかどうか、公表する場合は時期や方法を決められる権利。
公表したくない場合は、他者に無断で公表されないよう要求できる。
氏名表示権 著作物に著作者の名前を表示するかどうかを決められる。表示方法は実名かペンネームを選べる。
同一性保持権 作品名や楽曲名など、著作物を無断で修正されないよう保護する権利。

著作権(財産権)

先述の通り、著作権(財産権)とは、著作物の財産的利益を確保するものです。

著作権法では、以下のように著作物の利用方法を細かく定めています。

権利名 概要
複製権 印刷、複写、録音・録画といった方法で著作物を複製する権利。
上演権/演奏権 著作物を上演または演奏する権利。
上映権 映画や写真、アートなどの著作物を上映する権利。
公衆送信権/伝達件 インターネットやテレビ、ラジオなどを通して著作権を公衆の場に送信・伝達する権利。
口述権 詩の朗読など著作物を口頭で伝える権利。
展示権 著作物を展示する権利。
頒布権 映画の著作物特有の権利。映画を多くの人に見せるために複製又は販売ができる。
譲渡権 映画を除く著作物を複製し、販売や提供を行える権利。
貸与権 映画を除く著作物を貸す権利。
翻訳権/翻案権 著作物の翻訳、脚色、映画化といった二次的著作物を作成する権利。
二次的著作物の利用権 二次的著作物の著作者と同等の権利。

著作権侵害とは?

それでは、著作権侵害について解説します。

著作権侵害とは、著作権法における「著作権」「著作者人格権」を侵害する行為を指します。

著作者の許可を得ずに著作物を使用した場合、訴えられたり損害賠償請求をされたりと罰せられる可能性があります。

一例として、以下のような行為が著作権侵害として認められます。

  • 写真や絵画などの著作物を無断コピーしてネット上で配信
  • 音楽や動画を営利目的で無断使用
  • 小説や漫画に書かれている言語を無断使用
  • 有償提供の映像の違法ダウンロード
  • 著作物を無断で売却したり貸与する行為

上記はあくまで参考例ですが、具体的にどのような要件が揃うと著作権侵害に当たるのか見ていきましょう。

著作権侵害の判断基準は「依拠性」「類似性」「著作物の無断利用」の3つの要件をすべて満たした場合となります。

著作権侵害に当てはまる要件①依拠性がある

まず、依拠性(いきょせい)があることです。

依拠性とは、既存の著作物を参考にして創作することを指します。分かりやすくいうと「パクり」です。

基本的に著作物は、個人の思想や表現によって創作されるオリジナル作品である必要があります。

しかし、既にある他者のアイデアを利用して創作したものは依拠性があると判断され、著作権侵害として認められます。

ただし、既存の著作物があると知らなかったり、内容が偶然に一致したりする場合においては著作権侵害になりません。

著作権侵害に当てはまる要件②類似性がある

続いて、類似性があることです。

著作権侵害における類似性とは、既存の著作物との表現が似ていることを指します。

具体的には、著作物の本質とする表現内容が新しい著作物からも感じられるかどうかが判断基準になります。

著作権侵害に当てはまる要件③著作物の無断利用

著作物の無断利用も著作権侵害です。

基本的に、著作権は著作物を創作した人に与えられるものなので、著作者以外の人が許可なく利用する権利はありません。

著作権侵害に当てはまらないケース

利用する状況や目的・利用者によっては、著作権侵害に当たらないケースもあります。

具体的には以下のようなケースです。

  • 著作物ではないもの:思想・表現にあたらない事実やデータ
  • 著作物に含まれていても著作権のないもの:国や自治体の通達や裁判所の判決等
  • 著作者の利用許可を得た場合:口約束よりも、ライセンス契約を締結するとよい
  • 利用権利を譲り受けた場合:著作者が著作権を手放し、譲渡した場合を指す
  • 私的利用の場合:レンタルCDを個人のオーディオプレイヤーに複製する等
  • 教育目的:図書館や学校での著作物の複製及び引用
  • 福祉目的:視覚や聴覚に障がいのある人のために翻訳や字幕作成をすること。ただし、著作物が未公開のものに限定される。

上記はあくまで参考事例です。著作物にあたるものかどうかの判断がつかないものもあります。

安易な利用はトラブルになりかねないため、著作物は慎重に取り扱いましょう。

著作権侵害をした場合の責任と罰則

では、自身のコンテンツが著作権侵害してしまった場合にどのような責任が発生するのでしょうか。

「民事・刑事・行政」の3点で解説します。

民事上での責任と罰則

民事上では、以下の対応方法が発生します。

  • 著作権を侵害する人に対する差止請求
  • 損害賠償請求
  • 著作者が著作物を自分のものと立証するための「名誉回復措置請求」
  • 著作権侵害を行った人に不正に得た利益を返還する「不当利得返還請求」

刑事上での責任と罰則

著作権侵害をしてしまった場合は、刑事上の罰則を問われる可能性があります。

刑事上では、以下の罰則が定められています。

  • 著作権侵害:10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金(もしくはその両方)
  • 著作人格侵害:5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(もしくはその両方)

行政上での責任と罰則

著作権侵害の責任として、行政上の措置もあります。

もし、著作権侵害に該当する物品を輸出入した場合は、関税法上の手続きが取られます。

通常、著作物は知的財産のひとつであるため、関税法上輸出入をしてはいけないとされています。

知的財産侵害に係る罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科されます。

参考文献:侵害物品の取締りの概要 : 知的財産ホームページ – 税関

著作権侵害を未然に防ぐ4つの対策

著作権侵害のトラブルは、専門知識を有していないとなかなか判断しづらいものです。

インターネットが普及する中で、自分のコンテンツが著作権侵害に該当してしまう可能性もあり、訴訟を受ける事態にもなりかねません。

トラブルを未然に防ぐために、以下の4つの対策を意識しましょう。

  • 著作権フリーのコンテンツを利用する
  • 著作物を利用する際は許可を取る
  • 著作物を扱う場合は引用ルールを守る
  • コンテンツ制作を外部委託をする際も注意する

著作権フリーのコンテンツを利用する

ウェブサイト上で画像やイラスト、音楽を使用したい場合は、著作権フリーのコンテンツを利用しましょう。

著作権フリーコンテンツの探し方は、検索画面で「著作権 フリー 画像」「著作権 フリー 素材」などで見つけられます。

著作権フリーコンテンツは、無料と有料の2種類があります。

無料サイトで必要なコンテンツが見つからない場合は、有料サイトも活用してみましょう。

いずれも、サイトに記載される利用規約を確認してからダウンロードするようにしてください。

著作物を利用する際は許可を取る

著作物を利用する際は、著作者の許諾を取りましょう。

著作物の許諾を得る場合は、口頭であっても問題ありません。

しかし、許諾を得たことを明確に証明するためにも文書で残すようにしましょう。

文書で記録する際は、以下を記載しましょう。

  • 著作物の利用方法
  • 許諾範囲
  • 使用料と支払い方法

著作物を扱う場合は引用ルールを守る

著作物を扱う場合は、引用ルールも守りましょう。

著作物の引用は、著作権法第32条第1項に記載されており、画像や文章の引用利用が認められています。

著作物の引用には5つの条件があるため、以下のルールに従って利用しましょう

  • 引用されるコンテンツとの主従関係を明確にすること(自分の著作物を主体とする)
  • 引用の必要性があること
  • 引用するコンテンツと引用者のコンテンツを明確に区別すること
  • 引用元を明記すること
  • 引用するコンテンツを修正しないこと

参考:文化庁 著作物が自由に使える場合

コンテンツ制作を外部委託をする際も注意する

コンテンツ制作を外部委託するのであれば、委託先で制作されたコンテンツが著作権侵害に該当しないか注意を払いましょう。

委託先のコンテンツが著作権侵害に該当してしまった場合、発注者も責任を問われる可能性があります。

トラブルを避けるためには、信頼できる委託先を選び、業務締結の際に著作権に関する項目を記載しておくなど事前対策をしておきましょう。

著作権に関するトラブルは弁護士への相談がおすすめ

著作権とは、著作権法によって守られる権利で、著作物を作ったことにより著作者に法律的に与えられるものです。

著作権者の許可を得ずに著作物を使用した場合、訴えられたり損害賠償請求をされたりと罰せられる可能性があるため注意が必要です。

しかし、どういったものが著作物の対象となるのか、著作物を正しく利用しているかは、専門知識を要するため一般の人では判断しづらい部分でもあります。

もし、著作権に関するトラブルが起きてしまった場合は、法律のプロである弁護士への相談をおすすめします。

弁護士へ相談するにあたり、気になるのは費用の負担でしょう。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.著作物に当てはまるものと当てはまらないものの違いは何ですか?
A.著作物に当てはまるものは、以下の4つを要件に成り立ちます。

  • 思想または感情を含むもの
  • 創作したもの
  • 表現したもの
  • 文芸、学術、美術、音楽の範囲であるもの

著作物に当てはまらないものは、憲法や条例、国や地方公共団体の告示や裁判所の判決といったものです。

Q.著作権はどのタイミングで発生しますか?また権利はいつまで続きますか?
A.著作権は、著作物を創作したタイミングで発生します。著作物によっては発生したタイミングの提示が難しいものもあります。そうした場合は、表現したタイミングで写真や動画として日時を示せるよう記録しておくといいでしょう。
権利も一定期間決められており、原則として著作者の生存年間と死後70年間とされています。また、著作物の種類によって次のように保護期間が定められています。

Q.著作権侵害はどのような基準で判断されますか?
A.著作権侵害の判断基準は「依拠性」「類似性」「著作物の無断利用」の3つの要件をすべて満たした場合となります。

Q.自分のコンテンツが著作権侵害に該当してしまった場合、どのような責任が発生しますか?
A.「民事・刑事・行政」において責任が問われる可能性があります。
それぞれ責任と罰則が規定で定められています。

Q.著作権侵害に該当しないよう気をつけるべき点はありますか?
A.著作権侵害のトラブルを未然に防ぐために、以下の4つの対策を意識しましょう。

  • 著作権フリーのコンテンツを利用する
  • 著作物を利用する際は許可を取る
  • 著作物を扱う場合は引用ルールを守る
  • コンテンツ制作を外部委託をする際も注意する