恐喝罪とは?成立要件や被害に遭った際の対処法を解説

恐喝罪とは、脅迫や暴力を手段として相手を怖がらせ、金銭や財産を脅し取る悪質な犯罪です。

被害を受けた方は非常に大きな精神的苦痛を受けるため、加害者を訴えて慰謝料を請求したいという気持ちがあるでしょう。

本記事では、恐喝罪の成立要件や被害に遭った際の対処法を解説します。

被害を訴える際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

こんな疑問にお答えします

Q.恐喝罪とはどのような犯罪ですか?

A.恐喝罪とは、脅迫や暴行を振るうなどで相手を恐がらせ、お金を巻き上げたり財産や財物を交付させたりする犯罪のことです。恐喝行為の典型例として、カツアゲやゆすり、タカリが挙げられます。被害に遭った場合は、適切な対処をする必要があります。不利な結果にならないよう、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

恐喝罪とはどのような犯罪?

恐喝罪とは、脅迫や暴行を振るうなどで相手を恐がらせ、お金を巻き上げたり財産や財物を交付させたりする犯罪のことです。

恐喝行為の典型例として、カツアゲゆすりタカリが挙げられます。

恐喝罪は、刑法で次のように定められています。

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
引用:法令検索e-Gov

恐喝行為は、加害者本人が直接利益を得るだけでなく、第三者に利益が渡ったかも含まれます。

たとえば、「交際しているパートナーの借金をなかったことにしないと痛い目に遭わせるぞ」と、債権者を威嚇するケースも恐喝罪に該当する可能性があります。

恐喝罪の罰則

恐喝罪の刑罰は、10年以下の懲役のみで、罰金刑がありません。

言い換えると、懲役刑しかない重い犯罪なのです。

起訴されると有罪になる確率が高く、その後は実刑判決か執行猶予かの問題となるでしょう。

また、恐喝罪は未遂であっても処罰の対象です。

第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。
引用:法令検索e-Gov 

たとえば、被害者がお金を巻き上げられる前に警察署へ駆け込んだとします。

この場合は、加害者が直接的な利益を得てなくても恐喝未遂と判断されて、処罰の対象となるでしょう。

恐喝罪の時効は2つ

恐喝罪の時効は2つあり、刑事と民事で異なります。

  • 刑事上の時効:恐喝行為があったときから7年
  • 民事上の時効:事件から20年以内、被害者が損害及び加害者を知ってから3年

刑事上では、時効7年を過ぎると加害者の逮捕や刑罰を科すことができなくなります。

民事上では、事件から20年が経過して、被害者が加害者を知って3年が経過すると損害賠償請求ができなくなってしまいます。

恐喝行為の時効がスタートするタイミングは、犯罪が終わったときです。

複数回にわたって被害を受けた際は、最後の恐喝行為が起算点となります。

脅迫罪との違い

ここで、脅迫罪との違いも確認しておきましょう。

脅迫罪とは、人の生命や身体に害を与えることを告げる犯罪です。

未遂の処罰はなく、被害者を怖がらせて害悪を告知した時点で既遂となり成立します。

害悪の告知のみで成立する脅迫罪に対して、恐喝罪は財物や財産を交付させる内容であれば成立する点が異なります。

また、被害者の対象範囲にも違いがあります。

脅迫罪で被害の対象になるのは、本人または親族に限定されます。一方で、恐喝罪の被害対象は無制限です。

どちらも立派な犯罪行為で、許されるものではありません。

脅迫罪について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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強要罪との違い

続いて、強要罪との違いも見てみましょう。

強要罪とは、暴行または脅迫行為をして被害者に対して、義務のないことを無理に行わせたり権利を妨害をしたりしたときに成立する犯罪です。

両者の違いは、目的にあります。他者に義務のないことをさせる強要罪に対し、恐喝罪は被害者からお金を巻き上げ不法利益を得ることが目的となります。

強要罪も、恐喝罪と同様に非常に重い犯罪です。

強要罪については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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恐喝罪の成立要件

では、恐喝罪の成立要件を詳しく見ていきましょう。

恐喝罪の成立要件は2つ。「恐喝行為をする」「恐喝によって交付行為をはたらくこと」です。

暴行・脅迫を手段にして恐喝行為をする

恐喝罪が成立するには、暴行・脅迫を手段にして恐喝行為をすることが挙げられます。

暴行・脅迫によって相手を怖がらせた結果、被害者からお金や財物を脅し取る、あるいは利益を移転させたことが恐喝行為とみなされます。

冒頭でも紹介したように、カツアゲやゆすり、タカリなどが典型例です。

また、近年問題となっている「ぼったくりバー」も恐喝罪に該当することがあります。

ぼったくりバーとは、適正な料金をはるかに超えた請求をする悪質なバーのこと。明らかに違法な料金であっても、「支払うまで帰さない。言うことを聞かないと殴るぞ」といった脅しをほのめかされてお金を取ろうとするケースもあります。

被害者を怖がらせて金銭を渡すよう要求することは、恐喝罪に該当する可能性があります。

ぼったくりバーの特徴や対策については、こちらの記事で解説しています。

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恐喝によって被害者が交付・処分行為をしたか

もうひとつは、恐喝によって怖い思いをした被害者が、お金や財産の交付・処分行為をすることです。

お金を交付するという点では、詐欺罪と混同することがあるでしょう。しかし、詐欺罪は騙された被害者自らがお金を渡してしまう傾向があり、恐喝罪とは異なります。

恐喝罪は、被害者が加害者に従わないといけないほどの恐怖心があり、交付・処分をしてしまうことが要件となります。

また、恐喝によって恐怖を抱いた被害者が加害者にお金や財物を渡し、第三者の手に渡ることも恐喝罪の成立要件です。

恐喝罪の被害を刑事手続きで訴える方法

恐喝被害に遭われた方は、これまでにないほどの恐怖を感じたことでしょう。

ここからは、被害内容を訴える方法を解説します。参考にしてみてください。

まずは被害の証拠を集めておく

恐喝被害に遭ったら、まずは被害の証拠を集めてみましょう。

恐喝罪で証拠となるものは、以下のものが挙げられます。

  • 恐喝の状況が分かる動画やボイスレコーダー
  • 恐喝行為が分かるLINEやメール、ネットの書き込みや掲示板のスクリーンショット
  • 恐喝被害を受けた直後に被害者が綴ったメモや日記(日時や場所を明記するといいでしょう)
  • 被害者が第三者に相談した旨(LINEやメールの履歴)

証拠があることで、警察が捜査を開始しやすくなり、加害者逮捕の可能性が高まります。

被害届を提出し刑事告訴を行う

続いて、警察に被害届を提出し、刑事告訴を行いましょう。

このとき、確実に立件できるように被害の証拠を持参するといいでしょう。

被害内容を用いて説明することで、被害状況を理解してもらいやすくなります。

被害届は、本人または本人の親族であれば提出が可能です。

被害者が未成年の場合、保護者の同伴が必要になることもあるので覚えておきましょう。

被害届を提出するタイミングに決まりはありませんが、すでにお伝えしたとおり恐喝罪の公訴時効は7年と決まっています。

被害に遭ってからなるべく早く動くようにしましょう。

加害者から示談交渉の申し入れがあったら?

恐喝事件は、加害者から示談交渉の申し入れがあることも考えられます。

示談とは、被害者と加害者の当事者間で話し合って解決することをいいます。

恐喝事件における示談内容は、金銭支払いによる解決や加害者が被害者に関わらないよう約束するなどがあります。

示談が成立すると、捜査機関による取り調べはなくなり、加害者は不起訴処分されます。

ただ、加害者の恐喝行為が明らかに悪質で許せないものであれば、必ずしも示談に応じる必要はありません。

恐喝罪の被害を民事手続きで対処する

恐喝事件の民事手続きは、主に損害賠償を請求することができます。

恐喝行為によって巻き上げられたお金や財産のほか、事件によって受けた精神的苦痛の慰謝料などを請求できることがあります。

恐喝事件における慰謝料相場は、被害内容や事件の経緯によって異なりますが、被害額プラス10万円〜30万円程度です。

ただ、この金額はあくまで相場なので、精神的苦痛が大きいものであれば相場を超えた金額を請求できる可能性もあります。

請求できる慰謝料が妥当な金額かどうかは、専門家に相談して決めてもいいでしょう。

精神的苦痛による慰謝料請求の相場は、こちらの記事を参考にしてみてください。

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恐喝罪の被害を受けたら弁護士へ相談しよう

恐喝罪は、被害者に対して大きな精神的苦痛を与える非常に重い犯罪です。

被害を受けた際は、時効も考慮してなるべく早く対処を進めましょう。

恐喝罪に対処する際は、弁護士のサポートを受けることも検討してみてください。

これは、民事手続きだけでなく刑事対応する際も同様のことがいえます。

恐喝被害を弁護士へ相談すべき理由

恐喝事件は、被害届の提出や証拠収集、民事訴訟の提起や損害賠償請求などさまざまな手続きがあります。

さらに、加害者から示談交渉を求められた際は、弁護士が付いていれば示談金が妥当かどうかアドバイスしてもらえます。

適切な対処で早期解決を目指すためにも、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

弁護士費用に不安があるなら弁護士保険の利用も視野に

弁護士へ相談するにあたり、気になるのは弁護士費用の負担でしょう。そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。

弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。

通常、弁護士を通してトラブルを解決しようとすると、数十万から数百万単位の弁護士費用がかかる場合があります。

弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に弁護士に支払う費用を抑えられます。

恐喝被害を早期解決するためにも、弁護士保険も視野に入れましょう。

法人・個人事業主の方で法的トラブルにお困りの場合には、法人・個人事業主向けの弁護士保険がおすすめです。

弁護士保険の特徴について詳しくは、こちらの記事で解説しています。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.恐喝罪とはどのような犯罪ですか?
A.恐喝罪とは、脅迫や暴行を振るうなどで相手を恐がらせ、お金を巻き上げたり財産や財物を交付させたりする犯罪のことです。恐喝行為の典型例として、カツアゲやゆすり、タカリが挙げられます。

Q.恐喝に遭いました。まずはどうすればいいですか?
A.警察に被害届を提出しましょう。
このとき、被害の証拠を持参することをおすすめします。被害届の提出は、本人または本人の親族のみ行えます。被害者が未成年の場合は、親族の同伴が必要になるときもあるので覚えておきましょう。

Q.加害者から示談交渉の申し入れがあった場合は必ず応じないといけないですか?
A.加害者の恐喝行為が明らかに悪質で許せないものであれば、必ずしも示談に応じる必要はありません。応じる場合は、示談金や今後の取り決めをすることとなります。適切に対処できるよう専門家の力を借りることをおすすめします。

Q.加害者に損害賠償請求を考えています。慰謝料相場を教えてください。
A.恐喝事件における慰謝料相場は、被害額プラス10万円〜30万円程度です。ただ、この金額はあくまで相場なので、被害内容が大きいものであれば相場を超えた金額を請求できる可能性もあります。