過剰防衛の成立条件とは?科される刑罰や裁判例について解説

他者から危害を加えられたときに自分の身を守ることは大切ですが、度の過ぎた防衛行為は「過剰防衛」に該当する可能性もあります。
一方、防衛行為の必要性かつ相当性が認められた場合は、「正当防衛」が成立します。

しかし、「正当防衛にあたる行為、そして過剰防衛にあたる行為は、それぞれどういうものなの?」という疑問を持つ方はたくさんいるでしょう。

そこで本記事では、過剰防衛の成立条件を詳しく紹介します。
科される刑罰や裁判例、正当防衛との違いも解説しますので参考にしてください。

こんな疑問にお答えします

Q:過剰防衛とは何ですか?
A:過剰防衛は、必要性・相当性を欠く防衛行為を行った際に成立します。
例えば素手で暴行してくる老人を、大柄の男性が金属バットで反撃する行為などが過剰防衛として認められます。

過剰防衛とは?

過剰防衛について把握するために、まずは正当防衛との違いや科される刑罰をみてみましょう。

正当防衛との違い

正当防衛は、「急迫不正の侵害に対して自己または他人の権利を防衛することを目的とし、やむを得ずにした行為」です。

一方、過剰防衛とは、防衛の範囲を超えた行為です。

防衛行為が正当防衛であると認められるには、必要性や相当性が必要になります。
相当性の有無については、危害の内容や両者の年齢・性別・防衛手段などから総合的に判断されます。

また、正当防衛について詳説した記事はこちらです。ぜひあわせてご確認ください。

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過剰防衛に科される刑罰

例えば、過剰防衛として認められる程度の暴行を相手に加えた場合は暴行罪が問われます。

また、過剰防衛として認められる程度の暴行を加えて相手を負傷させた際は、傷害罪に該当します。

ただ、刑法36条にて、過剰防衛は「情状により、その刑を減軽し、または免除することができる」と規定されてます。

したがって過剰防衛の場合は、普通の犯罪とは異なり、情状によっては刑罰が大幅に軽くなるか免除される可能性があるのです。
ただし、必ずしも刑の減免を受けられるとは限りません。

一方、正当防衛が認められた場合は罪に問われることはありません。
そのため、相手を負傷させた場合や死亡させた場合でも無罪が成立します。

正当防衛
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
引用元:刑法|e–Gov法令検索

暴行罪
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
引用元:刑法|e–Gov法令検索

傷害罪
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法|e–Gov法令検索

 

過剰防衛の成立条件

ではここで、過剰防衛の成立条件について説明します。

正当防衛の成立条件とは

過剰防衛の成立条件を把握するには、まず正当防衛の成立条件を知っておくと良いでしょう。
ここでは正当防衛の5つの成立条件とその内容について、紹介します。

相手が違法な権利侵害行為をしていること

まずは、相手が違法な権利侵害をしていることです。

個人の生命・身体・財産は法律で保護されていますが、これらに危害を加えれば「不正の侵害」となり、違法行為に該当します。

反対に、相手の行為が不正の侵害にあたらなければ正当防衛は認められません。

急迫性があること

急迫性の有無も、正当防衛の成立に関与します。

急迫性がある状態とは、相手から危害を加えられている状況が現在進行形で、すぐにでも身を守らなければならないときです。

具体的には、相手がナイフで脅しながら攻撃をしかけてくるときが該当します。
しかし周囲からその行為を制止されて相手が観念したときなどに反撃を加えれば、急迫性は認められず正当防衛には該当しなくなります。

防衛行為の相当性があること

正当防衛として認められるには相当性も必要条件です。

相当性とは、防衛行為が必要最小限であったかということです。

相手が与えた危害の程度に対して大きすぎる防衛行為をした場合は、相当性を欠き正当防衛として認められません。

防衛行為に必要性があること

正当防衛として認められるには、その防衛行為が必要に迫られて「やむを得ずにしたこと」でなければいけません。

そのため、当該行為以外に取れる行動がなかった事実や当該行為が防衛行為として唯一の方法だった事実が必要となります。

危害を加える相手から逃げられた場合は必要性もなく反撃したことになるので、正当防衛は成立しません。

防衛の意思があること

正当防衛が成立するには、防衛行為をした理由に防御の意思があったかもポイントになります。

「相手が加える危害から自身を守るためには、防御する以外の方法がなかった」という状況でなければ、相手を攻撃する意思があったと見なされ正当防衛としては成り立ちません。

必要性・相当性がない防衛行為は過剰防衛になる

過剰防衛は、防衛行為の必要性・相当性を欠く場合に成立します。

では実際に、過剰防衛に該当するのはどのような行為でしょうか。

例えば、「素手で殴りかかってきた小柄な老人に対して若い大柄な男性が金属バットで殴り返す」という行為は過剰防衛として認められます。

このとき過剰防衛が認められる要因となるのは、「素手に対して金属バットという凶器で対抗した」「小柄な老人に対して若い大柄な男性が相手であった」という事実です。

過剰防衛が認められた裁判例

これまでにも、過剰防衛が認められた裁判例があります。
ここでは、2件の裁判例を紹介します。

暴れた息子を制止した行為が過剰防衛とされたケース

横浜地裁の裁判で、暴れた息子を制止した父親の行為が過剰防衛であったことが認められたケースがあります。

事件当日、当事者である父親と息子はスナックで飲酒をしていました。
その後、父親は酔った息子をタクシーに乗せて帰路へと向かいましたが、車内で息子が暴れ始めました。
困った父親はそれを制止するために暴行を加え、息子を窒息死させました。

父親が行った暴行は息子の身体を押さえつけることや頸部圧迫をするなど程度が強いものでしたが、父親は「自分や息子を守るための行為であった」と無罪を主張。

ただし裁判所は、父親の行為について「生命の危険を脅かす行為」と評価したうえで過剰防衛という判断をしました。
最終的に、父親には懲役2年6か月(執行猶予3年)が言い渡されました。

出典:裁判例検索 | 裁判所 – Courts in Japan

暴行を加える夫を殺害した行為が過剰防衛とされたケース

名古屋地裁にて、暴行を加える夫を殺害した行為が過剰防衛と認められたケースもあります。

妻は日頃、夫から暴力や暴言を繰り返し受けていました。
事件当日も夫は妻に「ボコボコにしてやる」と言い、胸ぐらを掴んで攻撃しました。
その際、妻は反撃し夫の頸部に電源コードやネクタイを締め付け、窒息死させました。

本件について、裁判所は長年にわたる夫からの暴力に耐えていたことを酌みつつも、逃げることも出来た点や殺意を持っていた点に着眼し、過剰防衛であると判断しました。

最終的には、妻には懲役3年6か月の実刑判決が下されました。

出典:裁判例検索 | 裁判所 – Courts in Japan

過剰防衛で逮捕されたときの対処法


万が一、過剰防衛で逮捕されたときはどのようにしたら良いのでしょうか。

ここでは3つの対処法を紹介します。

防衛行為の状況を詳しく説明する

まずは、防衛行為の状況を詳しく説明することです。
状況を詳しく伝えることで、実は正当防衛の条件を満たしていたことが発覚する可能性もないとは言い切れません。

相手が加えた危害と自身が被った被害について、内容や程度をきちんと整理し、再度説明しましょう。

正当防衛であったと主張できないか検討する

正当防衛であったと主張できないかもあきらめずに検討してください。
一度過剰防衛であることが認められても異論があるならば、自ら主張していく姿勢が大切です。

防衛行為が正当防衛の成立条件を満たした場合は、早期の釈放や不起訴処分になる可能性が見込めます。

被害者と示談交渉をする

被害者と示談交渉をするのも対処法の一つになります。

正当防衛を主張している場合でも、被害者に対して反撃行為を行い負傷させたのは確かです。
そのため、相手を負傷させたことに対して「示談交渉をする」という選択肢もあるのです。

もちろん、すべてのケースにおいて示談が成立するとは限りません。
しかし、示談で解決できた場合は早めに釈放されたり不起訴処分で済む可能性が高まります。

過剰防衛をめぐる問題を弁護士に相談するメリット

過剰防衛をめぐる問題の当事者となったときは、弁護士に相談するのもおすすめです。
下記は、弁護士に相談するメリットになります。

取り調べで主張する際のアドバイスをもらえる

過剰防衛か正当防衛かをめぐる問題で逮捕された場合、弁護士に相談すれば取り調べで主張する際のアドバイスをもらえます。

自身の防衛行為が正当防衛であったことを主張する際は、感情論ではなく正当防衛の成立条件を踏まえて根拠を示さなければなりません。

しかし、特に知識がない状態で上手く主張をするのは難しいでしょう。

ここで法律の専門家である弁護士に頼れば、法的根拠と防衛行為を照らし合わせてどのように主張していくべきかを親身になって考えてもらえます。

被害者との示談交渉を一任できる

被害者との示談交渉を一任できるのもメリットです。

先述したように、過剰防衛をめぐる問題であっても両者の合意があれば示談により問題を解決することも可能です。

しかし、逮捕されて身柄を拘束されていれば、示談の手続きを行うことは不可能です。
そのようなときは、弁護士に示談交渉を一任するのも選択肢です。

弁護士に相談すれば、煩雑な手続きを任せられることや加害者と被害者が直接交渉をする必要がなくなることも、大きな利点になります。

費用やどの弁護士に依頼すべきかで悩むときは

弁護士に相談するメリットは上述した通りですが、「費用はどれくらいかかるのか」「どの弁護士に依頼すべきか」で悩む方もいるでしょう。

そのような方におすすめしたいのが弁護士保険です。

弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。

弁護士保険に加入することで、万が一トラブルが発生した際も、無理なく相談できる環境を得られます。

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まとめ

防衛行為も度が過ぎれば「過剰防衛」として認められ、罪に問われる可能性があります。

本人がどんなに「自分の行為は正当防衛であった」と主張しても、必要性や相当性がなかったと判断されれば、過剰防衛になるところには要注意です。

いざという時に自分が過剰防衛に該当する行為をしないためにも、本記事の内容を頭に入れておくと役に立つ時が来るかもしれません。

記事を振り返ってのQ&A

Q:過剰防衛と正当防衛の違いは何ですか?
A:過剰防衛は正当防衛と異なり、必要性や相当性のない防衛行為です。
また、過剰防衛は罪に問われる可能性がありますが、正当防衛の場合は無罪になります。

Q:過剰防衛をめぐる問題で逮捕されたときの対処法はありますか?
A:下記3つの対処法があります。

  • 防衛行為の状況を詳しく説明する
  • 正当防衛であったと主張できないか検討する
  • 被害者と示談交渉をする

Q:過剰防衛をめぐる問題を弁護士に相談するメリットは何ですか?
A:取り調べで主張する際のアドバイスをもらえること、被害者との示談交渉を一任できることです。