リベンジポルノとは、元交際相手や元配偶者への仕返しや復讐を目的に、性的画像や動画をネット上に無断公開すること。
近年、SNSやインターネットの発達から被害が増加し社会問題となっています。
そこで本記事では、被害に遭った際の対処法や適切な相談先、慰謝料相場について解説します。
早期解決の参考になれば幸いです。
こんな疑問にお答えします
Q.リベンジポルノの被害に遭ってしまいました。適切な対処法を教えてください。
まずは被害証拠を確保し、公開されているWebサイト運営会社に該当コンテンツの削除依頼を出しましょう。
それでも削除されない場合は、裁判所に削除仮処分命令の申し立てを行う必要性があります。この場合、必要書類の準備や裁判所とのやりとりが必要となります。早期解決を目指すためにも、専門家の力を借りることをおすすめします。
リベンジポルノとは
そもそもリベンジポルノとは、元交際相手や元配偶者の性的画像・動画を本人に無断でネット上に公表する行為のこと。
リベンジという言葉の通り、復讐目的で行われるケースが大半です。
主に交際期間中に撮影した性的な写真や動画を、別れた腹いせにネット上に公開するといった例が典型的です。
インターネットの特性上、一度公開されると世界中に拡散され続け削除が追いつかない事態になりかねません。
自分の裸の画像や性的画像を公開された被害者のダメージは計り知れず、被害を相談するにも相当の勇気がいるでしょう。
インターネットやSNSの普及により、リベンジポルノの被害件数は増加傾向にあります。
そのため、リベンジポルノを取り締まる法律ができました。
リベンジポルノを取り締まる法律
リベンジポルノは「リベンジポルノ防止法」という法律で規制されています。
リベンジポルノ防止法
リベンジポルノ防止法の正式名称は、法律上で次のように明記されています。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
ここでいう私事性的画像とは、次の内容を意味します。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
つまりリベンジポルノ防止法は、相手の裸の写真や性的画像や動画を、不特定多数が閲覧できるインターネットサイトで公開することを禁止する法律なのです。
公表罪と公表目的提供罪の2つに分類される
リベンジポルノ防止法の処罰の内容は、「公表罪」と「公表目的提供罪」の2つに分類されます。
概要 | 罰則 | |
---|---|---|
公表罪 | 第三者が撮影対象者が誰なのか特定できる方法で、私事性的画像記録を不特定多数の者に提供する、または公然と陳列する行為 | 3年以下の懲役 もしくは50万円以下の罰金 |
公表目的提供罪 | 公表する目的で、インターネット上に私事性的画像記録を提供、またはその印刷物を提供する行為 | 1年以下の懲役 もしくは30万円以下の罰金 |
参考:法令検索 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
公表罪と提供罪には上記のように罰則が設けられています。
被害が深刻化した場合や悪質な行為のケースにおいては逮捕される可能性もあります。
リベンジポルノに関係する法律
リベンジポルノには、リベンジポルノ防止法以外にも、次の法律が関係する可能性があります。
- 名誉毀損罪
- 脅迫罪
- 児童ポルノ公然陳列罪
- 民法で責任が発生する肖像権侵害やプライバシー侵害
名誉毀損罪
まず、名誉毀損のリスクが高まることです。
名誉毀損罪とは、不特定多数の人が認識できる公然の場で何らかの事実を摘示して人の社会的評価を下げる犯罪行為です。
リベンジポルノ被害における名誉毀損については、加害者が問われるというよりも、被害者が二次被害を受けるリスクが関わってきます。
公然の場で拡散された画像や動画に対して事実に反する内容の声が殺到するなど、誹謗中傷の対象となるリスクが発生する可能性があるからです。
名誉毀損の特徴や慰謝料の相場については、こちらの記事でも解説しています。
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脅迫罪
リベンジポルノの加害者は、脅迫罪に問われることもあります。
脅迫罪とは、被害者の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加えることを伝えたことによって罪に問われる犯罪です。
例えば、「復縁しないと裸の写真をばらまくぞ」「この動画をSNSで公開して二度と人前に出られないようにしてやる」など、恐怖心を与える内容を告知した場合、脅迫罪に問われる可能性があります。
児童ポルノ公然陳列罪
被害者が18歳未満の場合は、加害者は児童ポルノ公然陳列罪に問われ、懲役5年以下もしくは500万円以下の罰金が科されます。
例えば、児童ポルノを不特定多数の場所への提供や画像や動画のデータをインターネット上で公開した場合が処罰の対象となります。
民法で責任が発生する肖像権侵害やプライバシー侵害
加害者は、肖像権侵害やプライバシー侵害の罪に問われることもあります。
無断で公表された画像や動画が、本人の知られたくないプライバシーの情報が含まれていた場合、プライバシーの侵害に該当する可能性があります。
また、無断で相手の動画や写真を公開・拡散されることは肖像権侵害にも当てはまります。
被害者が未成年の場合や犯罪を助長する場合は、数百万単位の慰謝料が発生する事例もあります。
肖像権侵害は、日常の中でも起こり得るものです。
定義や基準についてはこちらの記事でも解説しています。併せてご覧ください。
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リベンジポルノの被害に遭ったときの対処法
リベンジポルノの被害に遭ってしまった際の対処法を紹介します。
- 被害証拠を確保する
- 該当コンテンツの削除依頼
被害証拠を確保する
まずは、被害の証拠を確保することです。
公開されてしまったコンテンツのスクリーンショットや、該当するWebページを印刷しておくと効果的です。
とはいえ、自分の裸の画像や性的画像を公開された精神的ダメージは計り知れず、該当ページを見ることすら相当の勇気がいるでしょう。
辛い気持ちがあるとは思いますが、後に加害者を訴えて損害賠償請求をするためにも証拠の確保は重要な役割を果たします。
できるだけ早めに取りかかることをおすすめします。
該当コンテンツの削除依頼
インターネット上で公表された画像や動画は、証拠を確保した上で対象となるWebサイトの運営元に削除依頼を出しましょう。
削除依頼の方法は、サイトによって異なります。
専用フォームがある場合はサイト管理者へ削除申請を出します。
SNSやネット上の掲示板には削除申請フォームや問い合わせ先を設けていることがあります。
利用規約違反に該当すると判断された場合は、数日程度で削除されます。
専用フォームがない場合は、プロバイダ責任制限法に基づいて送信防止措置依頼の申し立てを行います。
必要書類を記入し、サイト管理者に提出します。
サイト管理者側でも事務処理にも時間を要するため、削除までに1ヶ月以上かかることもあります。
削除申請を行っても削除されない場合は、裁判所に削除仮処分命令の申し立てを行う必要性があります。
こうなってくると、必要書類の準備や裁判所とのやりとりが必要となるため不安を覚える方もいると思います。
被害の内容がセンシティブな分、頼りになる存在がいてくれたら…と思うかもしれません。
そうした場合は、専門家の力を借りるのも一つの手でしょう。
リベンジポルノの被害に遭ってしまった際の相談先
リベンジポルノの被害に遭った場合は、早急に警察もしくは弁護士へ相談することをおすすめします。
リベンジポルノの被害は精神的なダメージが大きいものです。
公開されてしまったコンテンツ内容によっては相談しづらい気持ちもあるかもしれません。
しかし、被害を最小限に抑えるためにも勇気を出して相談することで早期解決を目指せます。
警察へ相談する
警察へ相談することで、加害者への警告や逮捕といった対応が可能です。
リベンジポルノは立派な犯罪行為です。
実際、警察庁でもリベンジポルノの被害を受けたら早急に相談するようにと注意喚起しています。
警察への相談方法は下記の通りです。
- 最寄りの警察署
- サイバー犯罪相談窓口
- 性犯罪110番
相談へ行く際は、被害証拠を持参していくといいでしょう。
弁護士へ相談する
弁護士への相談も効果的です。
弁護士へ相談することで、該当画像の削除依頼や投稿者の特定、損害賠償請求の対応が可能です。
先にお伝えしたように、リベンジポルノの削除依頼を申請しても削除されない場合、裁判所とのやりとりが必要になります。
また、投稿者が不明であった場合は投稿者の特定をするために情報開示請求を行うことになります。
被害を受けた方は、今後の生活がどうなるのか不安な毎日を過ごしているでしょう。
弁護士へ相談することで、解決までの一連の流れを一任できます。
少しでも不安を抱えている場合は、早めに相談することをおすすめします。
弁護士への相談窓口は下記の記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。
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リベンジポルノ被害の慰謝料相場
リベンジポルノ被害を受けたら、加害者に対して慰謝料請求が可能です。
被害状況によって慰謝料は変動しますが、数十万から50万円程度といわれています。
ただし、リベンジポルノの場合は一般的なプライバシー侵害と比較して精神的な苦痛が大きいと判断されやすく、中には慰謝料が100万を超えるケースもあります。
正当な金額で慰謝料を求めるためにも、専門家に相談した上で進めるようにしましょう。
リベンジポルノの被害に遭わないために
リベンジポルノの被害に遭わないためには、相手に画像を撮影させたり、自身の写真を提供しないようにしましょう。
特に交際期間中は、相手を信頼してしまいがちです。
「撮らせてほしい」「写真を送ってほしい」と頼まれても、安易な気持ちで応じないようにしてください。
また近年ではマッチングアプリを通じたリベンジポルノ犯罪も多発しています。
チャットやメッセージのやりとりで仲良くなったとしても、画像や動画の送信は行わないことが得策です。
自身を守るためにも「撮影させない」「提供しない」を心がけるようにしましょう。
リベンジポルノの被害が拡大する前に専門家へ相談を
リベンジポルノは、被害者が負う精神的苦痛は非常に大きなものです。
とはいえ、被害内容が内容なだけに、相談しづらい気持ちもあるでしょう。
しかし、被害の拡大を防ぐためにもできるだけ早めに専門家へ相談することをおすすめします。
リベンジポルノ被害を早期解決するには、インターネットトラブルに強い弁護士の助けを借りましょう。
弁護士に相談することで、以下のメリットがあります。
- 該当画像や動画の早急な削除が目指せる
- 刑事告訴し、損害賠償請求がスムーズに進められる
- 投稿者不明の場合は、特定まで行ってもらえる
ただ、弁護士へ相談するとなると費用に関して不安になる方も多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。
弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。
通常、弁護士を通してトラブルを解決しようとすると、数十万から数百万単位の弁護士費用がかかる場合があります。
しかし、弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に、弁護士に支払う費用を抑えられます。
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記事を振り返ってのQ&A
Q.リベンジポルノの被害に遭った場合、どのように対処すればいいのでしょうか?
A.まずは被害証拠を確保し、該当画像の削除依頼を出しましょう。
被害証拠は公開画像のスクリーンショットや、該当するページを印刷します。その上で、公開されたWebサイトの運営元に削除申請を出します。
Q.リベンジポルノの画像を削除するよう申請しましたが、一向に削除されません。どうしたらいいでしょうか。
A.削除申請を行っても削除されない場合は、裁判所に削除仮処分命令の申し立てを行う必要性があります。この場合、必要書類の準備や裁判所とのやりとりが必要となるため、不安な場合は専門家の力を借りることをおすすめします。
Q.リベンジポルノの被害が拡大しないか不安です。適切な相談先を教えてください。
A.警察か弁護士へ相談しましょう。警察へ相談することで、加害者の逮捕につながります。弁護士へ相談することで、公開画像の削除依頼や投稿者の特定、損害賠償請求の対応が可能です。いずれにしても、被害が拡大する前に早急に相談してください。
Q.リベンジポルノの被害に遭わないために気をつけることはありますか。
A.性的画像を「撮らせない」「送信しない」、これに尽きるでしょう。
特に、交際期間中は相手を信頼してしまいがちです。リベンジポルノ被害の大半は、元交際相手が別れた腹いせに行うケースが大半です。安易な気持ちで性的画像を提供しないよう心がけましょう。