あおり運転で成立する罰則は?被害を受けた際の対応や未然の対策も解説!

車間距離を狭めてきたり蛇行運転で走行を妨害してきたりと、非常に危険な「あおり運転」。後ろを走る車が近寄ってきて怖い思いをした…という方も多いのではないでしょうか。

あおり運転は、重傷事故や死亡事故を引き起こす危険な行為です。

そこで本記事では、あおり運転で成立する罰則や被害を受けた際の対応方法、あおり運転に遭遇しないための対策を解説します。

こんな疑問にお答えします

Q.あおり運転の加害者を訴えることはできるのでしょうか。法律ではどのような罰則があるのでしょうか。
A.あおり運転の被害を受け死傷が生じた場合は、民事上の責任として損害賠償請求が可能です。刑事責任としては加害者には罰則として懲役や罰金が科されます。刑事責任に関しては、被害者が直接関わることはできません。
あおり運転の被害は身近に潜んでおり、最悪の場合は重傷事故や死亡事故につながりかねません。もし被害を受けた場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

あおり運転とは

あおり運転とは、走行中に車間距離を無理やり詰めたり、前方で蛇行運転をしたりと、故意的に運転を妨害する危険行為のことです。

この他にも、執拗なパッシングやハイビームでの威嚇、不要にクラクションを鳴らす等の悪質行為もあおり運転とみなされます。

近年、一般道路はもちろんのこと、高速道路でもあおり運転による被害が増えています。

重傷事故や死亡事故も発生しており、社会問題となっているのです。

あおり運転の具体的な例

実際に、どのような行為があおり運転になるのか具体例を交えて解説します。

車間距離を詰める

あおり運転の典型的なパターンとなるのが、車間距離を詰める行為です。

よくある事例では、追い越し禁止の片側1車線の道路で、後ろを走る車が急かすように無理やり接近してくる状況です。

また、車間距離を狭めるだけでなく、車を左右に揺らして追い越しをするような素ぶりを見せることもあります。

幅寄せ

続いて、幅寄せもあおり運転のひとつです。

幅寄せは、並走する車が横から近寄り走行を妨害する行為のこと。幅寄せされた車は、周囲を走行している車や壁やガードレールへ衝突する可能性があり非常に危険です。

通行を妨げる蛇行運転や急ブレーキ

嫌がらせ目的での蛇行運転急ブレーキも、通行を妨げるあおり運転です。

よくある事例として、相手の車がいきなり前に回り込み蛇行運転や急ブレーキをかける状況です。

特に急ブレーキをかけられた場合は追突の危険を伴い、重傷事故のリスクが高まります。

執拗に鳴らすクラクション

執拗にクラクションを鳴らす行為も、あおり運転です。

道路交通法第54条2項では、クラクションの使用について次のように定めています。

車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
引用:法令検索 道路交通法 道路交通法第54条2項

つまり、嫌がらせや威圧目的でクラクションを鳴らす行為は立派なあおり運転であり、違反行為なのです。

不要なパッシングやハイビーム

不要なパッシングやハイビームも、あおり運転の一つです。

状況によっては、相手の車に道を譲る際の合図や対向車に対して危険を教えるときに使われることがあります。

ただし、合図を送るためのパッシングやハイビームは、道路交通法では使用を認められていないので注意しましょう。

一方で、あおり運転としてのパッシングやハイビームは威嚇目的です。例えば「邪魔だ進路を譲れ」という意思表示で使われます。

特に、夜間や暗い場所でのハイビームはまぶしく運転を妨げます。事故を招く恐れがあり非常に危険です。

あおり運転に関する法的罰則

あおり運転は、重傷事故や死亡事故を招く非常に危険な行為です。

そのため、あおり運転を行った場合は様々な刑事罰が成立します。

道路交通法違反

あおり運転により危険な走行をすると、道路交通法違反となります。

道路交通法は、運転者や歩行者が道路上で守るべきルールを定めたものです。

あおり運転による危険行為は道路交通に障害を発生させるため、懲役刑、禁錮刑、罰金刑の刑事罰に処されます。

妨害運転罪

あおり運転は、妨害運転罪として成立します。

これまで、あおり運転自体を取り締まる規定はありませんでした。

しかし、あおり運転による事故が多発したことから令和2年6月に道路交通法が改正され、あおり運転を取り締まる「妨害運転罪」が新たに創設されたのです。

妨害運転罪の対象となる行為は、「交通の危険の恐れがあるもの」「著しい交通の危険を生じさせるもの」の2種類に分かれます。

それぞれの罰則と処分は次のように定められています。

対象行為 罰則規定 処分内容
交通の危険の恐れがあるもの
(ほかの車両の妨害目的)
3年以下の懲役
または50万円以下の罰金
免許取消
違反点数25点
免許を再取得することができない期間を示す欠格期間2年
著しい交通の危険を生じさせるもの
(重大な交通事故いつながる場合)
5年以下の懲役
または100万円以下の罰金
免許取消
違反点数35点
免許を再取得することができない期間を示す欠格期間3年

参考:警察庁|危険!「あおり運転」はやめましょう

加えて、あおり運転の前科があり既に累積点数がある状態で運転を行った場合は、欠格期間が5年、危険行為の度合いによっては10年となります。

具体的に、妨害運転罪の対象となる違反内容は10種類あります。

先ほどご紹介したあおり運転の具体例を含め、以下の行為が取り締まりの対象となります。

  1. 通行区分違反(対向車線へはみ出して走行)
  2. 急ブレーキ禁止違反(急ブレーキをかける)
  3. 車間距離不保持(車間距離を詰める)
  4. 進路変更禁止違反(急な進路変更を行う)
  5. 追越し違反(急な追越し)
  6. 減光等義務違反(悪質なほどのパッシングやハイビーム)
  7. 警音器使用制限違反(威嚇目的でのクラクション)
  8. 安全運転義務違反(幅寄せ、蛇行運転で走行を妨害する)
  9. 最低速度違反(高速道路で時速50km以下で走行する)
  10. 高速自動車国道等駐停車違反(高速道路上で駐停車をする)

参考:警察庁|令和2年度改正道路交通法リーフレット

被害者が負傷・死亡した場合は危険運転致死傷罪

あおり運転によって被害者が怪我を負ったり亡くなった場合は、危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。

一般的には、危険運転致死傷罪はアルコールや薬物の影響で事故を起こした場合に適用されるケースが大半です。

しかし、あおり運転を行って相手を負傷・死亡させた場合も処罰の対象となります。

実際に、2017年に神奈川県の東名高速道路で発生したあおり運転による事故で家族4人を死傷させたとして、危険運転致死傷罪が成立しています。

参考:NHK首都圏NEWS WEB 東名あおり運転やり直し裁判懲役18年 危険運転致死傷罪認定

危険運転致死傷罪の罰則は15年以下の懲役、人を死亡させた者は最長20年以下の有期懲役に処されます。

あおり運転をされたときの対応

あおり運転は身近なところで発生し、いつどのタイミングで自分が被害者になるか予測が難しいものです。

では、あおり運転の被害に遭ってしまったらどのように対応するのがいいでしょうか。

相手にしない

あおり運転をされていると感じたら、基本的に相手にしないようにしましょう。

あおり運転を仕返したり、相手を逆撫でするような行為は避けてください。

気になる場合は、路肩に停まるか道を譲るなどして相手から離れるようにしましょう。

安全な場所へ停車し警察へ通報

あおり運転を受けた場合は、すみやかに警察へ通報しましょう。

その場合は人目のつく安全な場所へ駐車し、通報したあと車内で待機します。

通報する内容は、あおり運転を受けたこと、現在地、相手の車種や車のナンバーを伝えましょう。

この時、すべてのドアロックを行い、窓は必ず閉めてください。相手が後を付けてきて危害を加えられる可能性があるからです。

もし怒鳴ってきたり話しかけてきたりしても決して車外に出ないようにしましょう。

あおり運転でケガをした場合の対応

もし、あおり運転でケガを負ってしまった場合はどのように対応すればいいのでしょうか。

あおり運転による被害は、状況によっては命の危険を伴います。

ケガの程度に関係なく、即座に対処するよう努めましょう。

即座に病院で治療をする

ケガを負っている場合は、救急車を呼び適切な治療を受けてください。

交通事故によるケガは治療を怠ってしまうと後遺症となる可能性もあります。

救急車を呼ぶ際は、後続車の追突などの二次災害が起きないように、路肩に駐車したり近くのお店の駐車場に移動したりと、安全確保を心がけましょう。

相手方に損害賠償請求をする

ケガの治療を終え後遺症の障害認定の結果が出たら、加害者に損害賠償請求をします。

損害賠償請求については、相手が加入する保険会社との示談交渉を行い金額を決めていきます。

ここで、身体的にケガを負った場合は、治療費や入院・通院慰謝料、後遺障害慰謝料の請求が可能です。

しかし中には、相手が交渉に応じない場合や話がまとまらないケースもあります。その際は民事裁判へ移行します。

いずれにしても、あおり運転に対する慰謝料は、通常の交通事故よりも悪質性が認められやすく増額される可能性があります。

とはいえ、あおり運転を受けた恐怖は簡単に消えず、中にはトラウマになる場合もあります。

そのような中で示談交渉や裁判を行うことは、被害者にとっては精神的負担となるものです。

その際は、弁護士など専門家の力を借りることも一つの手です。

弁護士へ相談することで、状況に応じて必要なアドバイスを受けられます。

あおり運転に遭遇しないための対策

いつどこで被害を受けるか分からないあおり運転ですが、できる限りの対策を行うことで遭遇する確率を減らせます。

あおり運転に遭遇しないための対策をご紹介します。

車間距離を保って安全運転を心がける

まず、車間距離を十分に保って安全運転を心がけることです。

車間距離を気にせず前の車に近づいたり急ブレーキをかけてしまったりした場合、それが引き金となって自身があおり運転を受けることになるかもしれません。

周囲をよく見て、安全運転をするようにしましょう。

追越車線を走り続けない

追越車線を走り続けないことも、あおり運転に遭遇しないための対策です。

そもそも、追越車線を走り続けることは通行帯違反に該当します。

追い越し車線を走り続けて後続車が追い越せない状況になると、あおり運転を誘発する可能性が高まります。

トラブルを避けるためにも、追い越すとき以外は走行車線を走るようにしましょう。

後続車が急いでいる場合は道を譲る

後ろを走る車が急いでいる場合は、道を譲ることも大切です。

あおり運転の多くは、後続車からの車間詰めから始まるものです。

後ろの車が接近していると感じたら、車線を変えて道を譲るか、片道1車線の場合は路肩に移動するなど、被害拡大を防ぎましょう。

あおり運転対策にはドライブレコーダーの設置も効果的

あおり運転に遭遇しないためには、ドライブレコーダーの設置も効果的です。

ドライブレコーダーを設置することで周囲の状況の録画や録音が可能になります。

種類によってはGPS、Gセンサーといった機能も搭載され非常に便利です。

走行時だけでなくエンジンを切っている際も稼働するため、車上狙いや当て逃げの被害を受けた際の有力な証拠としても役立つでしょう。

ドライブレコーダーを取り付けるメリットは、主に以下のようなものがあります。

  • あおり運転の抑止効果が期待できる
  • 録画機能により、状況の証拠を残せる
  • 駐車中も録画できる
  • 安全運転をサポートしてくれる
  • ドライバー自身も危険運転をしないか意識できる

あおり運転の被害を考えたときに、最もメリットが大きいのは状況の証拠を残せることです。

あおり運転を受けても、客観的な証拠がないと被害を立証することはできません。

あおり運転の客観的証拠になるのは、あおり運転を受けている最中の映像や目撃者の証言です。

あおり運転の加害者が逃げてしまった場合でも、車のナンバーや車種などの情報で犯人を特定する手がかりとなるでしょう。

ドライブレコーダーは種類が豊富で、前後撮影可能な2カメラタイプから360度撮影可能な高性能なものまで幅広いラインナップで販売されています。

万一の備えとして、ドライブレコーダーを設置しておくことをおすすめします。

あおり運転で被害を受けたら弁護士へ相談しよう

あおり運転の被害に遭わないためにも、運転する際は安全運転を心がけるようにしましょう。

しかし何度もお伝えしますが、こちらがどれだけ気をつけていてもいつ遭遇するか分からないのがあおり運転の怖いところです。

もし、あおり運転に遭遇し被害を受けた場合は、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。

弁護士へ相談することで、以下のメリットが期待できます。

  • 示談交渉を一任でき治療に専念できる
  • 慰謝料の増額が見込める
  • 正しい過失割合を主張できる

ただ、弁護士へ相談するとなると費用に関して不安になる方も多いでしょう。そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。

弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。

通常、弁護士を通してトラブルを解決しようとすると、数十万から数百万単位の弁護士費用がかかる場合があります。

しかし、弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に、弁護士に支払う費用を抑えられます。

あおり運転の被害に対応するのであれば、弁護士保険の加入も視野に入れましょう。

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記事を振り返ってのQ&A

Q.あおり運転の具体例を教えてください。
A.車間距離を詰める、幅寄せ、蛇行運転、執拗なクラクションやパッシングなど、運転を妨害する危険行為や迷惑行為が挙げられます。

Q.あおり運転の加害者にはどのような罰則がありますか。
A.道路交通法違反、妨害運転罪、相手を負傷・死亡させた場合は危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。

Q.あおり運転を受けたときはどのような対応が望ましいですか?
A.まず、相手にしないようにしてください。あおり返すなど、仕返しもNGです。あおり運転に遭遇したら、安全な場所へ駐車してすみやかに警察へ通報しましょう。その際はドアロックをし、車内で待機しましょう。

Q.もし、あおり運転でケガをしてしまった場合はどうすればいいでしょうか。
A.すぐに救急車を呼び治療を受けてください。ケガの治療を終え後遺症の障害認定の結果が出たら、加害者に損害賠償請求を行います。もし相手が話し合いに応じない場合は民事裁判へ移行します。とはいえ、あおり運転は被害者に恐怖と不安を与えます。その場合は、法律のプロである専門家に頼ることも一つの手です。

Q.あおり運転に遭遇しないためにどのような対策が必要ですか?
A.第一に、安全運転を心がけることです。その上で、十分な車間距離を保って走行する、追越車線を走り続けない、後続車が急いでいる場合は道を譲るようにしましょう。また、ドライブレコーダーの設置も抑止効果が期待できます。