ネットの脅迫で警察は動かない?相談の準備や対応されない場合の対処法を解説

インターネットの掲示板やSNSで、「帰宅時間を狙って誘拐してやる」「〇〇駅で待ち伏せして現金を奪ってやる」

このように書き込まれて恐怖を感じ、警察に相談しようと決意されている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、ネットトラブルの特徴として誰なのか分からないことが多く「警察に相談しても動いてくれないのでは?」と疑問を持つ方も少なくありません。

そこで本記事では、ネット上の脅迫被害で警察が動いてくれるケースや、相談する際のポイントを解説し、警察が動いてくれない場合の対処法を紹介します。

こんな疑問にお答えします

Q.ネットの脅迫を警察に相談しても動いてくれないのですか?

A.ネット上の脅迫被害であっても、内容次第で警察は積極的に動いてくれるでしょう。
しかし、脅迫行為の事件性が低く証拠が不十分といった場合は、警察は告訴状の受理を渋る傾向があり、捜査を開始してくれない可能性があります。
警察が動いてくれない場合は、相談する際の準備の徹底や、警察以外の選択肢を検討することをおすすめします。

「弁護士保険ミカタ」1日たったの98円で高額な弁護士費用を補償

ネットの脅迫で警察は動かないのか?

まず「ネットの脅迫被害を警察に訴えても動いてくれないのか?」という疑問についてお答えします。

インターネットが普及した昨今では、ネットによる被害は広く認められており「ネットで起きた問題は対象外だ」と断られることは基本的にありません。

ネット上の脅迫被害であっても、内容次第で積極的に動いてくれるでしょう。

ここで重要なのが、警察が動くかどうかが「内容次第」という点です。

被害を警察に相談したとしても、脅迫行為の事件性が低く証拠が不十分といった場合は、警察は告訴状の受理を渋る傾向があり、捜査を開始してくれない可能性があります。

被害を受けている方にとっては、事件に発展してからでは手遅れだと主張したくなるでしょう。

実際に、ネット上で起きるトラブルによって加害者の脅迫行為に悩んでいる方は少なくありません。

警察に事件性を認めてもらうには、脅迫罪が成立する要素を示す必要があるといえます。

では、どういった場合にネットの書き込みで脅迫罪が成立し、警察が動いてくれるのかをついて次の章で見ていきましょう。

ネット上の脅迫被害で警察が動いてくれる基準とは


ネット上の書き込みであっても、事件性や緊急性があると判断されれば警察が動いてくれる可能性があります。

ここで重要なのが、脅迫罪が成立するかどうかです。

脅迫とは、人の生命や身体に害を与えることを告げる犯罪のこと。具体的には、生命や身体、自由、名誉、財産に対して危害を加える内容であることです。

脅迫罪に未遂の処罰はなく、被害者を恐怖に陥れて害悪を告知した時点で既遂となり成立します。

害悪に該当するかどうかは客観的に判断されるため、被害者が「あの人の言葉が怖いから脅迫罪で罰してやる!」と訴えかけても「犯罪」として認められない可能性があるため注意が必要です。

たとえば、ネット上で「殴る」「財産を奪ってやる」「監禁してやる」といった表現は害悪の告知と判断されやすく、脅迫罪として認められる可能性があるでしょう。

これは、対面であってもネット上で行われた行為であっても成立要件は同様です。

ネットの書き込みが脅迫罪になり得るケース

繰り返しになりますが、ネット上での脅迫被害であっても違法行為と判断されれば、警察は動いてくれる可能性があります。

たとえば、ネットで次のような行為を受けた場合は脅迫罪が成立する可能性があり、警察が動いてくれる要素となるでしょう。

  • 具体的な脅迫内容がある場合:ネット上で特定の個人や団体に対して具体的な脅迫を行った場合、脅迫罪に該当することがあります。たとえば、「殴るぞ」「財産に損害を与えるぞ」という旨の発言が挙げられます。
  • 恐怖や不安をあおる言動:被害者に対して恐怖や不安をあおる言動も脅迫罪として認められる可能性があります。たとえば、殺害予告を示唆する言葉が挙げられます。
  • 災害や事件を引き起こす言動:「火をつける」「〇〇駅で事件を起こす」など、特定の災害や事件を起こすような言動は、脅迫罪に問われることがあります。

脅迫罪は、インターネット掲示板の書き込みやSNSのコメント欄といった公の場だけでなく、1対1でのメールやチャットでのやりとりも対象です。たとえば、LINEやDMでも脅迫罪は成立する可能性があります。

脅迫罪の成立要件や対象となる被害者の範囲については、こちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事

【判例つき】脅迫罪はどこから?成立要件と慰謝料、証拠について

他人を脅すと脅迫罪が成立しますが、具体的にどのようなケースで脅迫罪が成立するのかについては、正確に理解されていないことが多いようです。 たとえば、どのようなことを言ったら脅迫罪になるのか、電話やメール、ネット上の投稿など …

加害者が匿名で脅迫行為を行っていても警察は動いてくれるのか

ネット上で脅迫被害を受けている場合、もっとも気になるのが加害者が匿名で誰なのか分からないという点でしょう。

匿名であっても、脅迫罪の成立要件を満たしていれば脅迫罪が成立する可能性があり、警察が動いてくれる可能性はあります。

ただ、違法性が仮に認められたとしても「顔も名前も分からない加害者をどうやって処罰するの?」という疑問が湧くかもしれません。

基本的には、刑事告訴や慰謝料請求をするには、先に加害者を特定する必要があります。

匿名の加害者に法的措置をとるには、「発信者情報開示請求」という手段で加害者を特定することが推奨されています。

発信者情報開示請求とは、プロバイダ責任制限法にもとづく手続きのこと。主にインターネット上で被害を受けた方が「書き込みを行った人の名前や連絡先を開示してください」と求めるものです。

刑事告訴や慰謝料請求を進めるには、先に開示手続によって加害者を特定し法的措置を進めてみましょう。

発信者情報開示請求の方法や必要な費用については、こちらの記事を参考にしてみてください。

関連記事

発信者の情報開示請求の費用相場はいくら?弁護士に相談すべき理由も解説

SNSやYouTubeなど、誰もが自分の考えや思いを自由に発信できる時代となりました。その反面、悪意のある書き込みや心無いコメントが増えているのも事実です。 誹謗中傷など悪質な嫌がらせに悩まされている方は、発信者情報開示 …

ネットの書き込みが脅迫罪になりにくいケース

ネットに書き込まれたコメントやメッセージは、すべてが違法となるわけではありません。

たとえば、以下のようなケースは脅迫罪が認められにくいと判断され、警察が動いてくれない可能性があります。

  • 書き込まれた内容が抽象的
  • 現実味のない空想的な表現
    実現不可能な殺害予告

脅迫罪が成立するためには、具体的な脅迫や危害の表現が含まれる必要があります。

たとえば「一生許すもんか!」「恨んでるからな」といった抽象的な表現や意図が明確でない場合は、脅迫罪が成立しにくいといえます。

現実味のない空想表現も、脅迫罪が認められにくい可能性があります。

たとえば「地獄へ落としてやる」「藁人形を使って呪ってやる」という表現は空想表現とみなされ、違法性が低いと判断されるかもしれません。

また、実現不可能な殺害予告も脅迫罪が成立しにくい可能性があります。

たとえば「宇宙空間へ飛ばして息の根を止めてやる」「タイムマシンで戦国時代へ送って刀で切ってやる」といった言葉は、一般的に考えると実現不可能です。

こうした場合は、脅迫罪が認められる可能性が低いでしょう。

ただ、上記はあくまで一般的な要因です。

脅迫罪が成立するかどうか、警察が動くかどうかは事案によって異なります。

法的な問題に関する具体的なアドバイスを得るためには、弁護士や法律専門家への相談をおすすめします。

殺害予告で問える罪や処罰の基準については、こちらの記事もご覧ください。

関連記事

殺害予告はどのように処罰される?問われる罪や逮捕基準を徹底解説

殺害予告は、多くの人に恐怖や不安を与える行為です。 これまでにも、殺害予告のニュースを目にしたことがある人は多いでしょう。 現在は、誰もが気軽にインターネット上へ書き込みができる便利な時代です。 しかし、それと同時に殺害 …

ネットの脅迫被害を警察に相談する際のポイント


ネットの脅迫被害を受けている方にとっては、今感じている恐怖から1日でも早く抜け出したいもの。警察に動いてもらうためには、事件性があると捉えてもらうための準備が必要です。

ネットの脅迫被害を警察に相談する際のポイントを解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

脅迫被害を証明する資料を用意する

警察に動いてもらうには、ネットで受けている脅迫被害を証明する資料を用意しましょう。

具体的な証拠がないと、警察は動いてくれない可能性があります。

被害の証拠として有効なのは、以下のようなものが挙げられます。

  • 不快な書き込みや脅迫的な内容が書き込まれた画面
  • 加害者の情報が分かるIDやアカウントネーム
  • (加害者が分かる場合)氏名や連絡先が分かるページ

保存形式は、該当画面のスクリーンショットページ印刷で保管することをおすすめします。

被害を受けた日時が分かるページがあるとより良いでしょう。

注意点として、証拠はなるべく早めに確保するようにしてください。

SNSのコメントや掲示板への書き込みは、加害者によっていつ削除されるか分かりません。

消えてしまったら証拠がつかめなくなってしまうので、早急に集めるようにしましょう。

被害届と併せて告訴状も提出する

警察に捜査を開始してもらうためには、被害届だけでなく告訴状も提出するようにしましょう。

告訴とは、被害者が捜査機関に対して犯罪があったことを申告して処罰を求めることです。

脅迫罪は親告罪(※)ではないため、告訴に期限はありません。

※親告罪とは:被害者の告訴がなければ公訴の提起ができない犯罪のこと

ただし、犯罪には時効があり、一定の期間を過ぎると起訴できなくなってしまいます。これを公訴時効といいます。

脅迫罪の公訴時効は3年(※)なので、この時期を過ぎると処罰を求められず被害届の提出や刑事告訴ができなくなります。

(※)参考:e-Gov法令検索 刑事訴訟法

加害者を処罰するためにも、警察に被害を報告する際は告訴状も一緒に提出するようにしましょう。

ネットの脅迫被害で警察が動いてくれない場合の対処法

ネットの脅迫を警察に相談しても、事案によっては捜査に踏み切ってくれない可能性もあります。

被害を受けている方にとっては「怖い思いをしているのになぜ?」と思うかもしれません。

その場合は、警察以外に相談できる場所を頼ってみることをおすすめします。

サイバー犯罪相談窓口に問い合わせてみる

最寄りの警察署や交番で対応してもらえない場合は、サイバー犯罪相談窓口へ相談してみましょう。

サイバー犯罪相談窓口とは、ネット上で発生する犯罪やトラブルに対する相談や報告を受け付けてくれる機関のこと。警視庁の管轄になりますが、ネット犯罪に特化している窓口なので、サイバー犯罪に遭遇した際のサポートやアドバイスを受けられる可能性があります。

具体的な問い合わせ方法は、下記のサイトより確認してみてください。

警視庁ホームページ 相談窓口

弁護士へ相談する

弁護士への相談も非常に有効な手段です。

弁護士へ相談するもっとも大きなメリットは、受けている被害が犯罪に該当する見込みの有無に関係なく、被害者をサポートしてくれる点です。

一般的に、警察が動いてくれる案件は、事件性が高く緊急性が求められるものとされます。

捜査の必要がないと判断されると、加害者の逮捕どころか問題解決を見込めません。

弁護士であれば、刑事告訴から投稿の削除請求、加害者の特定、慰謝料請求に至るまであらゆる対処を行ってくれます。

刑事告訴に関する証拠収集の方法もアドバイスしてくれるでしょう。

ネットでの違法行為は悪質なものが多く、いつエスカレートしてもおかしくありません。

弁護士がサポートしてくれることで、精神的負担の軽減にもつながるはずです。

弁護士の相談窓口は、こちらの記事で紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

関連記事

弁護士の無料相談のおすすめの窓口は?対応できる範囲や事前準備を解説!

離婚や相続、労働問題や交通事故など、トラブルに巻き込まれることは少なくありません。 そんなときにおすすめなのが、弁護士への無料相談です。 弁護士へ無料相談することで、トラブルの全体的な見通しや解決策のアドバイスを受けられ …

まとめ:ネットの脅迫で警察が動いてくれない場合は弁護士に相談しよう

ネット犯罪は、いつ起きるか分からないのが怖いところ。被害を受けた方にとっては、犯人がどこの誰なのか分からず不安な毎日を過ごしているでしょう。

警察に被害届を出しても積極的に動いてくれない場合は、弁護士への相談を視野に入れてみてください。

ネットトラブルを弁護士へ相談した方がいい理由

ネットトラブルを弁護士に相談することで、以下のメリットが得られます。

  • 警察が動いてくれない案件にも対応してくれる
  • 犯罪の見込みがない場合もサポートしてくれる
  • 法的手段を用いて加害者を処罰してくれる
  • 犯人特定から慰謝料請求まで行ってくれる

弁護士であれば、これまでの経験と知見を活かして被害者を被害から守ってくれます。

また、弁護士を選ぶ際は「ネットトラブルに強い弁護士」に相談するようにしましょう。
ネットに強い弁護士であれば、ネットで起きる最新の犯罪動向を熟知しているためスムーズに解決してくれます。
ネットに強い弁護士の特徴や探し方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事

ネットトラブルに強い弁護士はどう探せばいい?相談前の準備や費用相場も解説

インターネットやSNSの発展に伴い、ネット上での誹謗中傷や嫌がらせが社会問題となっています。 「SNSで嫌がらせへの対応に悩んでいる」 「非公開の情報を勝手に公開されたり、噂話を書き込まれたりして仕事や私生活に影響が出て …

弁護士費用が不安なら弁護士保険の利用も視野に

弁護士に相談しようと思っても、弁護士費用がいくらかかるか気になる方もいらっしゃるでしょう。

そこでおすすめしたいのが、弁護士保険です。

弁護士保険は、日常生活の個人的トラブルや事業活動の中で発生した法的トラブルに対し、弁護士を利用した時にかかる弁護士費用を補償する保険サービスです。

通常、弁護士を通してトラブルを解決しようとすると、数十万から数百万単位の弁護士費用がかかる場合があります。

弁護士保険に加入しておくことで、法的トラブルが発生した場合に弁護士に支払う費用を抑えられます。

インターネットで起きる犯罪は、次から次に新しい手口が出てきます。

今後の被害対策のためにも、弁護士保険を視野に入れてみましょう。

弁護士保険なら11年連続No.1、『弁護士保険ミカタ』

弁護士保険なら、ミカタ少額保険株式会社が提供している『弁護士保険ミカタ』がおすすめです。1日98円〜の保険料で、通算1000万円までの弁護士費用を補償。幅広い法律トラブルに対応してくれます。

>>弁護士保険ミカタの詳細はこちらから

経営者・個人事業主の方は、事業者のための弁護士保険『事業者のミカタ』をご覧ください。顧問弁護士がいなくても、1日155円〜の保険料で弁護士をミカタにできます。

>>事業者のミカタの詳細はこちらから

法人・個人事業主の方で法的トラブルにお困りの場合には、法人・個人事業主向けの弁護士保険がおすすめです。

経営者・個人事業主には『事業者のミカタ』がおすすめ!

『事業者のミカタ』は、ミカタ少額保険株式会社が提供する、事業者の方が法的トラブルに遭遇した際の弁護士費用を補償する保険です。

個人事業主や中小企業は大手企業と違い、顧問弁護士がいないことがほとんど。法的トラブルや理不尽な問題が起きたとしても、弁護士に相談しにくい状況です。いざ相談したいと思っても、その分野に詳しく信頼できる弁護士を探すのにも大きな時間と労力を要します。

そんな時、事業者のミカタなら、1日155円~の保険料で、弁護士を味方にできます!

月々5,000円代からの選べるプランで、法律相談から、事件解決へ向けて弁護士へ事務処理を依頼する際の費用までを補償することが可能です。

>>事業者のミカタの詳細はこちらから

弁護士保険の保証内容について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

関連記事

【2024年最新】弁護士保険の人気4社を徹底比較!補償内容や保険料、注意点を詳しく

「弁護士保険はいろいろあるけれど、何を基準に比較したらいいのか分からない」 弁護士保険に加入しようとしている方は、どこの保険会社を選んだらいいのか悩む方もいるでしょう。 本記事では、弁護士保険の人気4社の補償内容や保険料 …

記事を振り返ってのQ&A

Q.ネットの脅迫で警察は動いてくれないの?
A.ネットによる被害は広く認められており「ネットで起きた問題は対象外だ」と断られることは基本的にありません。
しかし、脅迫行為の事件性が低く証拠が不十分といった場合は、警察は告訴状の受理を渋る傾向があり、捜査を開始してくれない可能性があります。

Q.そもそも、ネットの書き込みで脅迫罪は成立するの?
A.脅迫罪の成立要件を満たしていれば、ネットの書き込みであっても違法行為として成立する可能性があります。

Q.ネットの書き込みが脅迫罪になり得るケースを教えてください。
A.以下のようなネット上のトラブルがあった場合は、脅迫罪が成立する可能性があります。

具体的な脅迫内容がある場合
恐怖や不安をあおる言動
災害や事件を引き起こす言動

Q.加害者が匿名で誰なのか分かりません。この場合は警察に動いてもらえないの?
A.匿名である場合でも、脅迫罪の成立要素が揃っていれば、脅迫罪が成立する可能性があり、警察が動いてくれる可能性があります。匿名の加害者に対しては「発信者情報開示請求」という手段で加害者を特定し、措置を進める方法があります。

Q.ネットの脅迫被害を警察に相談する際は何に気をつけたらいいの?
A.警察に相談する際は、「被害の証拠を提出すること」「被害届だけではなく告訴状も提出すること」を意識しましょう。

Q.ネットの脅迫で警察が動いてくれない場合は、諦めるしかないの?
A.警察以外に相談できる場所に頼ってみることをおすすめします。
たとえば「サイバー犯罪相談窓口」「弁護士」へ相談するといいでしょう。