相続税は原則、現金一括での支払いをしなければなりません。
しかし、相続財産に現金が少なく、不動産ばかりであった場合などは、相続税が支払えない状況になってしまうことも想定されます。
このような場合は、相続税を延納・物納によって相続税を納めることも認められています。
相続税が支払えないからといって、いつまでも放っておけば、税務署側は差し押さえといった手続きに乗り出してきますので、現金一括での支払いができないことを必ず伝え、延納・物納によって納める許可をもらうようにしましょう。
相続税の延納ができる条件
相続税の延納とは、相続税を毎年一定額ずつ分割で納付してくことをいいます。
これにより、瞬間的な課税負担が軽減されるため、余裕をもって納税していくことが可能です。
ただし、相続税の延納が認められるためには、下記の条件を満たしていなければなりません。
・現金での一括納付が困難な事情があること
・延納税額、利子税額に相当する担保の提供をすること
相続税の納付期限までに、延納申請書とその関係資料を税務署に提出すること
上記の条件をすべて満たすことによって、延納が認められることになります。
ただし、延納の期間は、原則として5年以内です。
事情次第では10年以上に期間延長することも可能とされていますが、延長期間の分だけ利子税の負担が重くなってしまうので注意しましょう。
なお、担保については、相続税が100万円以下で延納期間が3年以下である場合は、提供をしなくても良いとされています(平成27年4月1日以降の相続)。
相続税の物納ってどんなもの?
相続税の物納とは、現金以外の財産によって相続税の納付をすることをいいます。
ただし、物納が認められる条件としては、
・延納によっても相続税の納付が困難である特別な事情があること
・相続税の納付期限までに物納申請書とその関係資料を税務署に提出する
という条件を満たす必要があります。
この条件さえ満たしていれば、相続税を物納にて納めることが可能です。
なお、物納の対象となる財産は日本国内になければならず、そして優先順位は下記のとおり定められています。
この順位に沿って物納がされていくことになります。
・第2順位 株式・証券投資・貸付信託の証券・社債
・第3順位 価値が認められる動産
ただし、上記の財産であっても、抵当権がついていたり、誰かとの共有名義になっていたり、所有権について争われている財産については、物納が認められていません。
延納・物納は後から切り替えることが可能
相続税の延納・物納については、後から切り替えることも可能となっています。
税務署からの許可が必要となってしまいますが、後になって事情が変わることも想定されますので、自身の状況に合わせた納付をしていくようにしましょう。
延納・物納の申請期限は10ヶ月
なお、延納・物納どちらであっても、申請書と関係資料の提出は必須ですし、その期間も定められています。
提出までの期間は、相続税の納付期限と同様で、相続開始または相続の事実を知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。
どうしても10ヶ月以内に提出が間に合わない場合、提出期限の延長を届け出ることも認められています。
ただし、1回の届け出で3ヶ月までしか延長できないため注意しましょう。
複数回届け出ることによって、最大で1年までは延長させることが可能です。
また、税務署は、申請書と関係資料の提出を受けた後、3~9か月以内に延納・物納を認めるかの調査をし、その調査結果に基づいて認否が下されることになります。
相続税の連帯納付義務に要注意
相続人が複数いる場合、相続税には連帯納付義務が定められています。
相続人のうち1人でも自身が負担すべき相続税を支払わないばかりか、延納・物納といった手続きもせずに、税務署からの督促にも一切応じないような場合、その相続税は他の相続人が代わりに支払わなければならないのです。
よって、相続人が複数いる場合、自分以外の相続税の支払い状況についても考慮しながら、遺産分割をする必要が出てくるといえます。
なお、連帯納付義務については、相続人だけでなく遺言書によって遺贈を受けた受遺者も対象となっています。
必ず覚えておくようにしましょう。
連帯納付義務による相続税は延納・物納ができない
通常の相続税であれば、上記のように相続税の延納・物納手続きを利用することが可能ですが、連帯納付義務によって生じた相続税は延納・物納をすることができません。
つまり、他の相続人が現金一括にてすべて負担しなければならないのです。
この支払いをしなければ、延滞している相続人の財産だけでなく、自身の相続税はしっかり納付していた相続人についても財産を差し押さえられてしまう危険にさらされてしまうのです。
このようなことにならないように、相続税の支払い状況にはしっかりと気を配らなければならないのです。