相続放棄を自分で行うことは可能です。実際に、相続放棄を自分でやってみたという人は多くいます。ただし、用意した書類に不備があったり、手続きが可能な期限を過ぎていたりする場合は相続放棄が認められなくなる可能性があるので慎重に行わなければなりません。
本記事では、自力で相続放棄を行う手続き、注意点を解説します。相続放棄を自分でやってみようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
こんな疑問にお答えします
Q.相続放棄の手続きは自分でできるのでしょうか?注意すべき点があれば教えてください。
A.相続放棄は自分で行えます。ただし、用意した書類に不備があったり、申立が可能な期限を過ぎていたりする場合は相続放棄が認められなくなる可能性があります。慎重に行うようにしましょう。さらに、相続放棄が認められないケースもあるので注意が必要です。
現時点で、相続すべきかどうか迷っている方や、相続放棄の手続きに不安がある方もいるでしょう。
相続放棄に関する不安がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。
相続放棄を自力で行うことは可能か
結論、相続放棄を自力で行うことは可能です。
本記事を訪れた方の多くは、相続放棄を自分でやってみようと考えているケースが多いでしょう。
はじめに、そもそも相続放棄とは何かを確認していきましょう。
そもそも相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続する権利を放棄することです。
ここで指す財産とは、被相続人の預貯金や不動産から、住宅や車のローン、クレジット残債務といった借入金などが挙げられます。
つまり、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続放棄の対象となります。
相続人が相続を放棄をすることで、これらの財産を受け継がなくてもよくなります。
相続放棄を自力でやることの難しさ
相続放棄は自力でやってみることは可能だと解説しました。
しかし、相続放棄をはじめて行う人や、相続に関する知識がない場合は少し難しいかもしれません。
相続放棄の手続きには、準備すべき書類がいくつかあります。
一箇所でも記載漏れや不備があった場合、申し出が認められない恐れがあります。
また、後ほど解説しますが、相続放棄は手続きができる期限が法律で決められています。
期限内に行わないと、マイナスの財産も含めて全て背負うことになってしまいます。
これまで相続放棄を自力で行なった人は「戸籍など必要書類を集めるのに苦労した」「簡単にできると思っていたが自力では無理だった」という感想があります。
被相続人との関係によっては、準備しなければならない書類が10種類以上必要になるケースもあります。
相続放棄の手続き自体は自力でできます。
ただ、実際にやってみた人の意見を見る限り難しいと感じるケースが多いため、事前知識を得たうえで慎重に行うようにしましょう。
相続放棄を選択した方がよいケース
相続放棄を選択した方がよいケースを紹介します。
本記事を読み進めている方の多くは、すでに相続放棄をしようと決めている場合が多いと思います。
ただ、中にはまだ相続放棄を行うかどうか迷いを感じている方もいるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
被相続人が多額の負債を抱えているとき
まず、被相続人が多額の負債を抱えているときです。
先ほどお伝えしたように、相続の対象となる財産はプラスの資産だけでなくマイナスのものも含まれます。
被相続人が多額の借金を残している場合、相続人が承継することで全ての返済義務を背負ってしまいます。
相続放棄を行うことで、このような負担を背負わずに済みます。
もし、被相続人が多額の負債を抱えているのであれば、積極的に相続放棄を検討しましょう。
相続トラブルに巻き込まれたくないとき
相続トラブルに巻き込まれなくないときも、相続放棄を選択した方がよいケースでしょう。
相続は金銭が絡んでくるため、親族間であっても揉め事が生じる要因のひとつです。
相続トラブルをきっかけに、今まで良好だった関係も話し合いがまとまらず結果的に絶縁してしまう…ということにもなりかねません。
親族は関係が近い分、一度揉めると関係修復には時間と労力を要します。
相続放棄をすることで相続トラブルに関わることがなくなるため、精神的な負担を負わずに済むでしょう。
相続放棄を自力で行うための準備と手続き方法
相続放棄を自力で行うための準備と手続き方法を解説していきます。
実際に自分でやってみた人の感想にあったように、必要書類の収集の大変さや簡単だと思っていた手続きの面倒さなど、やってみて気が付くこともあるでしょう。
手続きや申告方法を整理したうえで行ってみてください。
相続放棄ができる期限内に行う
相続放棄を自力で行う大前提として、相続放棄ができる期限内に申請するようにしましょう。
相続放棄の手続きを行う期限は、相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内と民法で定められています。
第九百十五条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
引用:民法 | e-Gov法令検索
「相続の開始があったことを知った日」とは、被相続人が亡くなったことを知った日ということです。
その日から3ヶ月を過ぎてしまうと相続することを認めたことになるため、相続放棄が認められないことになってしまいます。
この3ヶ月以内というのは、あくまで「申請」をする期限であり、手続きの完了時は3ヶ月を過ぎていても問題ありません。
ただ、必要書類を集めるために時間がかかることもあるので早めに手続きを始めるようにしましょう。
被相続人の財産をある程度把握しておく
相続放棄の手続きをする際は、被相続人の財産をある程度調べておきましょう。
相続放棄の手続き自体は、相続財産が不明であっても可能です。
ただ、マイナスの財産があるかどうかを知っておくことで、相続放棄をするかしないかの判断基準となります。
事前にある程度把握しておくメリットはあるでしょう。
被相続人の財産調査をするには、以下の方法があります。
- 利用していた金融機関の特定
- 残高証明の発行依頼
- 口座の預貯金の確認
- 有価証券やその他の権利の確認
- 不動産の確認(固定資産税課税明細書等の確認)
- 負債についての確認(信用情報機関への開示請求)
上記の財産調査以外にも、個人間の貸し借りがある場合は併せて調べる必要があります。
ただ、調べるには非常に時間がかかることが予想されるため、専門家の助けを借りてもいいでしょう。
相続放棄にかかる費用を確認する
相続放棄にかかる費用の確認もしておきましょう。
相続手続きを自分で行う場合は相続人1名につき約3,000円です。
仮に、弁護士に手続きを依頼した場合は、事務所によって異なりますが大体5万円前後が相場です。
かかる費用を比較すると自力で行う方が安く済みますが、時間と労力を考慮すると弁護士へ依頼した方がスムーズかつ不備なく行えるという利点があります。状況や予算に合わせて判断してみてください。
必要書類を作成する
相続手続きに必要な書類を作成しましょう。
必要書類の種類は、相続放棄を申し立てる人と被相続人の関係に応じて異なります。
以下の表を参考にしてみてください。
<相続放棄に関する必要書類の一覧>
被相続人との関係 | 配偶者・子 | 孫 | 父母・祖父母 | 兄弟姉妹(甥姪) |
---|---|---|---|---|
相続放棄申述書 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
被相続人の住民票除票 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
相続放棄を行う人の戸籍謄本 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
被相続人の死亡記載が記載された戸籍謄本 | ◯ | ◯ | – | – |
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本 | – | – | ◯ | ◯ |
被相続人の子の死亡記載のある戸籍謄本 | – | ◯ | – | – |
被相続人の子・孫が亡くなっている場合は、その子・孫の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本 | – | – | ◯ | ◯ |
被相続人の父・母の死亡が記載された戸籍謄本 | – | – | ◯(祖父母の場合) | ◯ |
兄弟姉妹の死亡が記載された戸籍謄本 | – | – | – | ◯(甥姪の場合) |
相続放棄申述書は、裁判所のホームページよりダウンロードができます。
戸籍謄本の書類は、各市区町村の役場で取得しましょう。
家庭裁判所へ相続放棄の必要書類を提出する
相続放棄の必要書類が揃ったら、被相続人の最後の居住地を管轄する家庭裁判所へ提出します。
提出方法は、持参もしくは郵送のどちらでも行えます。
家庭裁判所へ提出後、後日に相続放棄に関する照会書が届きます。
照会書にはいくつか記入する事項があり、記入をして家庭裁判所へ返送しましょう。
その後、10日前後で相続放棄申述受理通知書が届きます。この通知書が届くことで、相続放棄の手続きが完了します。
相続放棄を自力で行う際の注意点
相続放棄を自分で行う際は、次のことに注意しましょう。
相続放棄後は取り消しはできない
相続放棄は、一度受理されると原則として取り消しができません。
これは、相続放棄の手続きが可能な期限内であっても同じことです。
相続放棄の申立をする前に、本当に放棄すべきかどうかを慎重に考慮したうえで行いましょう。
手続きの期限を過ぎるとマイナス財産も相続されてしまう
繰り返しになりますが、相続放棄の申立は相続の開始があったと知った日から3ヶ月以内と期限が決まっています。
この期限を過ぎてしまうと、被相続人が負債を抱えている場合はマイナス財産まで相続されることになってしまいます。
「相続に関する手続きを知らなかった」「負債があるなんて聞いてなかった」と言っても通用しません。
もし、期限内に申立が間に合わないと判断したら期限内に延長を申請しましょう。
また、相続の手続きを忘れていて放置した状態になることで、様々な問題が発生する可能性があります。
考えられるトラブルについては、下記の記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。
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相続放棄が認められないケースを知っておく
場合によっては、相続放棄が認められないケースがあることを理解しておきましょう。
具体的には、以下のケースです。
- 相続人が被相続人の財産の一部、または全てを売却・処分してしまった場合
- 相続人が被相続人の財産の一部、または全てを自分のために使った場合
- 相続人が被相続人の財産の一部、または全てを隠した場合
このようなケースは、相続人が財産を単純承認したと判断されるため、基本的に相続放棄は受理されません。
単純承認とは、相続人が被相続人の財産を認めるという意味です。
単純承認をした場合は、相続放棄を申し立てても認められないので注意が必要です。
相続放棄は自力でできる!ただし、不安であれば弁護士への相談がおすすめ
相続放棄は、自力で行うことができます。ただし、申立の期限内に行うことと、必要書類を不備なく作成することが重要です。
また注意点として、相続放棄は一度受理されると原則として撤回はできません。
本当に放棄すべきかどうかをしっかりと考え、慎重に行うようにしましょう。
現時点で、相続すべきかどうか迷っている方や、相続放棄の手続きに不安がある方もいらっしゃるでしょう。
自分で行うと決めている方も、先ほどお伝えしたように相続放棄自体が認められないケースもあります。
相続放棄に関して不安が少しでもある場合は、早めに専門家に相談しましょう。
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記事を振り返ってのQ&A
Q.相続放棄の手続きは自分でできるのでしょうか?
A.できます。ただし、用意した書類に不備があったり申立が可能な期限を過ぎていたりする場合は相続放棄が認められなくなる可能性があります。慎重に行うようにしましょう。
Q.相続放棄の手続きは難しいの?
A.相続放棄をはじめて行う人や、相続に関する知識がない場合は少し難しいかもしれません。被相続人との関係によっては準備しなければならない書類が10種類以上必要になるケースもあります。必要書類を確認したうえで進めるようにしましょう。
Q.相続放棄をするかどうか迷っています。選択した方がいいケースはありますか。
A.被相続人が多額の負債を抱えているときや、相続トラブルに巻き込まれたくない場合は、相続放棄をした方がよいでしょう。ただ、相続放棄が認められないケースもあるので注意が必要です。
Q.相続放棄を自分で行う予定です。注意すべき点はありますか?
A.まず、相続放棄の申立は相続の開始があったと知った日から3ヶ月以内に行いましょう。
この期限を過ぎてしまうと、被相続人が負債を抱えている場合はマイナス財産まで相続されることになってしまいます。
次に、一度受理された相続放棄は原則として撤回できないことを理解しておきましょう。