インターネット掲示板「2チャンネル(現在は5チャンネル)」をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
誰でもさまざまなスレッドに参加して意見を書き込むことや、自らスレッドを立てて意見を投稿することもできます。
そもそも居酒屋で愚痴を呟くようなイメージで作られたという掲示板ですから、自由な意見が投稿されているのが特徴です。
ただ、匿名で書き込みができるが故に、知らないうちに誹謗中傷が書き込まれているようなこともあります。
そのような中傷の投稿は削除したいと考えたり、相手を特定して名誉毀損で訴えたいと考えたりすることもあるのではないでしょうか。
ここでは、2ちゃんねるで誹謗中傷され損害賠償が認められた事例についてお伝えし、ネット掲示板の書き込みを個人で削除できるのかについても解説していきます。
【事例で学ぶ】2ちゃんねるで誹謗中傷され損害賠償が認められた事例
2ちゃんねるで投稿された書き込みが名誉毀損にあたるとして、書き込みを行った相手と相手が務めている会社に対して慰謝料400万円、弁護士費用100万円、調査費用63万円の合計503万円の損害賠償を求めたケースです。
裁判所は名誉毀損の不法行為を認め、投稿者に対して慰謝料100万円、弁護士費用10万円、調査費用63万円の合計173万円の賠償を命じました。
ケースの概要
今回ご紹介するケースは、システムエンジニアである原告と、被告である電気通信機器を取り扱う会社の従業員との間に起こったトラブルです。
原告は、被告が務めている企業と業務委託契約を結んでおり、その契約に基づいてシステム担当として働いていました。
投稿サイト「2ちゃんねる」において、その企業名のスレッドが立っており、そのスレッド内において。原告の実名や風貌が投稿されたうえで「女子トイレに入るのを見た」「会社の女子トイレの盗撮映像がネットにながれているがいいんか」などと書き込みされています。
この原告に対して、業務委託契約を結んでいる企業の役員から書き込みに対する指摘があり、「来期は契約がないかもしれない」と告げられています。
原告は弁護士に調査を依頼し、発信者情報開示請求によって、書き込みを行ったのは業務委託契約を結んでいる企業の従業員であると特定、
この従業員と企業に対して、名誉を毀損されたとして慰謝料400万円、弁護士費用100万円、調査費用63万円の合計503万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
裁判所は、投稿をした従業員に対して名誉毀損の不法行為であることを認め、投稿を行った従業員に対して慰謝料100万円、弁護士費用10万円、調査費用63万円の合計173万円の賠償を命じました
裁判所の判断
本件について裁判所は、この従業員が行った掲示板への投稿は名誉毀損の不法行為であったと認定しています。
原告は、従業員が務めている企業にも責任があると主張していましたが、従業員の所属していた企業に対しては、この従業員が職務中ではなく休暇中に行っていたことを理由に請求は棄却されることになりました。
この判決によって注目されたのは、調査費用63万円がそのまま認められているという点です。
この調査費用63万円は、弁護士が2ちゃんねるに対して、発信者情報を特定するために費やした金額です。
それまでのネット掲示板に対する名誉毀損による慰謝料については合計で100万円前後になるものが多く見受けられていました。
しかし、そのような判決が出てしまうと、発信者情報を特定するだけで数十万円の費用が必要になり、訴えるだけで費用倒れになってしまいます。
そういう意味においては、今後このようなケースが生じた場合には、慰謝料にそのまま調査費用を上乗せして請求できる可能性があると言えるでしょう。
5チャンネル(旧2ちゃんねる)の誹謗中傷は削除できるのか
ネット掲示板やSNSでの投稿によって風評被害をもたらしたり、プライバシーが晒されたりといったことが珍しいことではなくなりました。
そのような書き込みによって、被害を受けているという個人や企業も増えていますし、またカッとなって書き込んだことを後悔しているという方からのお悩みも聞かれるようになりました。
さて、そのような中傷の投稿は、個人で削除することができるのでしょうか。
ネット掲示板で問題となる投稿
5チャンネル(旧2ちゃんねる)をはじめとするネット掲示板やSNSにおいて、
- 個人を特定できるような情報
- 過去の行為・過去の処分内容・犯罪歴
- 悪質な誹謗中傷・悪口
などが不特定多数の人に晒されてしまい、削除したいというお悩みが増えています。
あるケースでは、事件とはまったく無関係であるにも関わらず、事件の関係者であるとして個人情報が晒されてしまったということもあります。
このようなネット掲示板での風評被害をそのままにしていると、法人の場合であれば企業のイメージダウンに繋がってしまい、業績が悪化してしまう可能性があります。
また、個人においては、その投稿が拡散されてしまうことによって、本人の就職や結婚などに悪影響を及ぼすようなことがあります。
さらに家族や親戚が被害にあうようなこともあり、引越しを余儀なくされるようなことも起こってしまいます。
投稿して後悔してしまうケースも増えている
気軽に書き込みができるために、書き込んだ後になって後悔するケースも増えています。
- 一時的な感情で誹謗中傷するような内容を投稿してしまった
- 秘密を掲示板で暴露してしまった
- 頭に血がのぼってしまい脅迫するような投稿をしてしまった
- 営業妨害にあたるような投稿をしてしまった
このような投稿については、個人の場合には名誉毀損で、法人からは営業妨害として訴えられる可能性があります。
そのため、そのまま投稿を放置していることは、さまざまなリスクが考えられるのです。
ネット掲示板への削除依頼は個人でできるのか
ネット掲示板への削除依頼は本人、もしくは弁護士などの代理人から削除依頼することができます。
ネット掲示板に「削除依頼フォーム」が設置されていることも多くなり、そこから必要な情報を指定したうえで、管理者に対して削除依頼をすることができます。
ただし、個人で行う場合には注意すべき点があります。
ネット掲示板を運営する企業は独自の規約を設けており、どのような書き込みが削除の対象になるのか細かく定めています。
そのため、どのような投稿であっても削除してもらえるというものではなく、規約に定められていない内容であれば、対応してもらえない可能性があります。
投稿が誹謗中傷にあたると考えていても、客観的に判断した場合には削除対象に該当しないと判断されてしまうこともあるのです。
また、削除依頼するための方法や手順なども定められており、その手順に沿った対応を行わないと応じてもらえないこともあります。
そのようなことから、削除依頼は個人では限界があるように感じますので、ネット被害に精通した弁護士に相談することが適切なケースが多いでしょう。
まとめ
2ちゃんねるで誹謗中傷され損害賠償が認められた事例についてご紹介しました。
ネット掲示板による中傷の投稿は、多くのユーザーに閲覧されたり、拡散されてしまったりすることによって、個人・企業共に大きなダメージを負うものとなってしまいます。
そのため、そのような被害にあった際には、できる限り早く対処する必要があるでしょう。
個人で削除依頼を申請するようなこともできますが、運営会社が掲げる規約をしっかりと把握しておく必要もあり、個人では難しい場合も少なくありません。
そのため、ネットでの中傷でお悩みをお持ちであれば、ネットトラブルに精通した弁護士にいち早く相談することをおすすめします。
「弁護士費用保険の教科書」編集部

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