私たちは、何か調べ物をするときに、よく「Google検索」を活用するでしょう。
例えば、買い物をする際やサービスを受ける際には、どのような商品なのか、どのような評判があるのかなど、気になって検索するのではないでしょうか。
特にインターネットが普及してからは、私たちのこのような購買行動には変化があり、まずネットで十分調べてからお店に行くようなことが多くなったようです。
このような検索をした際に、「詐欺」「騙された」などの情報が出てきたとしたら、購入することをためらったり、見送ったりするのではないでしょうか。
ただ、販売やサービス提供している側からすれば、このような記事が掲載されてしまうと、経営に大きな影響を及ぼすものになりますから、削除したいのは当然のことです。
今回ご紹介するケースは、Googleで検索してみると「詐欺」「騙された」といった、詐欺師かのように扱う記事が表示されているため、情報の削除を求めたものです。
この判決ではこの主張が認められることはありませんでした。
ここで争点となったのは消費者の被害を防ぐための「公益性」である情報なのかどうかという点です。
「公益性」とはどのようなものなのか、事例をご紹介しながら詳しく解説していきましょう。
【事例で学ぶ】Google検索結果に対する削除が認められなかったケース
「A」と検索すると表示される検索結果が、「詐欺」「騙された」などといった詐欺商材を販売しているといった内容が表示されるのは名誉毀損に該当し、削除を求めたという裁判です。
「A」とは原告の商号の重要な一部であるため、検索結果において、削除を訴えている原告に関するものであると認識することができます。
そのため、原告が詐欺行為をしているかの印象を与えているものになることから、社会的な評価を低下させるものであると主張しました。
しかし、裁判所は訴えを退けて、請求を棄却しています。
ケースの概要
原告の企業では情報商材を販売されており、この情報商材に関するキーワード「A」などと検索すると、「詐欺」「騙された」「詐欺商材」などといった記事が上位表示されています。
Google検索での結果は、記事のタイトルのほかにスニペット(記事の概要)が表示されますが、これらに「詐欺」などの単語が含まれていると、詐欺商材を販売し、詐欺行為を行っているように受け取られてしまうと原告は主張しています。
そのため、原告の社会的評価を低下させ、名誉毀損にあたると訴えており、検索結果の削除を求めています。
被告であるGoogleの主張としては、検索結果を通常の注意と読み方をすれば、原告が詐欺を行っていたり、詐欺商材を売っているという事実を示しているものではないと主張。
検索結果で表示されているウェブサイトは、原告が販売されている情報商材のレビュー記事が大半であり、内容は原告が詐欺商材を販売していると断定しているものではないため、社会的評価を低下させるものではないとしています。
また原告の情報商材は国民生活センターに対して、「簡単に稼げると信じたのに実際には稼げなかった」「返金保証に応じてもらえなかった」「24時間サポートの提供がなかった」といった相談事例が25件あり、
このような状況からすれば、この情報商材が「詐欺」「詐欺まがい」である可能性については真実であり、こうした情報が社会一般に共有される必要がある、
これらの情報が削除されてしまえば、消費者は正しい情報を知ることができなくなり、被害が拡大することになるから、検索結果は公共の利害に関り、公益目的を有すると主張しています。
明白な権利侵害を構成しているとは言えないことから、検索結果の削除請求は棄却されるべきだとしています。
争点となった内容と裁判所の判断
- 検索結果が事実を示しているのか
- 検索結果によって原告の社会的評価を低下させるのか
- 違法性阻却事由(違法性がないとして処罰対象に該当しない例外的な事情)の有無
- 検索結果の削除請求の可否
争点となった内容には、上記4つのポイントがあります。
裁判所の判断として、検索結果において「詐欺」「詐欺商材」「騙された」などといったキーワードがタイトルやスニペットに含まれることによって、詐欺行為の可能性があるという事実を示しているものとみるのが相当だとしています。
そのため原告の社会的評価を低下させるものになるとしています。
ただ、原告が詐欺行為をしている可能性があり、それが問題となっているために、その情報を広く共有して、新たな被害を防止するように消費者に対して警鐘を鳴らす必要がある、
そのため、インターネット上にこれらの情報を提供し続けることは、これから商品を購入しようという人だけではなく、それ以外の人に対しても重要なことである、
そのため公益を図る目的のものであると認めることができ、検索結果の削除請求を認めることはできないとしています。
検索結果に対する削除請求が認められるには
今回ご紹介したケースは、検索結果の削除請求が認められないと判断されたものでしたが、実際に認められたケースも存在します。
自分の氏名を検索すると、反社会的団体に所属していたという事実が表示されるというケースにおいて、検索結果の削除を求めて訴えた裁判では主張を認めています(東京地裁平成26年10月9日決定)。
これらの情報が個人の権利を違法に侵害していると認められれば、削除が認められることになります。
最高裁判所が示した、削除が認められる判断基準について事例をご紹介しながら説明していきましょう。
検索結果において男性の逮捕歴について削除を認めなかったケース
自分の氏名を検索すると、その男性の逮捕歴が表示されてしまうために削除を求めた裁判において、さいたま地方裁判所では削除するよう仮処分を命じました(平成26年12月22日決定)。
しかし、その後の東京高裁、最高裁の判断では削除を認めませんでした。
最高裁の判断はとても注目されるものになり、判決では削除を認めることはなかったものの、削除が認められる判断基準が示されています。
検索結果においては、このケースのように社会的な意義が存在する場合も多くあります。
男性の逮捕歴は児童買春によるもので、今もなお公共の利害に関するものだとしています。
男性は真面目に働いて妻子と生活していることからしても、プライバシーの保護が優越するといは言えないとして削除を認めなかったのです。
社会的な意義と、個人のプライバシー保護を比較して、明らかに個人のプライバシー保護が優越する場合には削除が認められると示されたのです。
請求によって削除が可能な場合も
裁判においては、国民の知る権利と、個人のプライバシー権が比較されることになり、総合的に判断されたうえで削除が認められることもあります。
ただ、裁判において削除を認めてもらうことが難しいケースであっても、情報の提供側と任意交渉することによって削除が可能な場合もあります。
まとめ
Google検索結果に対する削除請求が認められなかったケースという事例をご紹介しました。
検索結果の削除においては、国民の知る権利と、個人のプライバシー権のバランスが重要になります。
削除が認められたケースもありますが、国民の知る権利が優越するようなケースでは認められないこともあります。
ただ、任意に交渉することによって、元記事の削除が可能な場合やネット掲示板などの情報削除が可能になることもあります。
そのため、検索結果でお悩みの場合であれば、実績豊富な弁護士に速やかに相談することをおすすめします。