子供たちの中で起きる「いじめ」の問題。
スマートフォンの普及により、一昔前と比較していじめの構図は複雑化していますので、明らかになっているものは氷山の一角なのかもしれません。
SNSなどでのいじめは、とても安易な気持ちで投稿されているように感じますが、被害を受けた子供たちは深く傷つき、学校に登校できなくなってしまうことがあります。
場合によっては、自らの命を絶ってしまうことも。
つまり、SNSでのいじめは、子供の将来を奪ってしまう悪質な行為だと言えるのです。
そのため、早い段階でいじめに気付き、適切な対処をしたうえで、加害者である生徒自身にSNSの中傷がいかに重大なことであるのか理解させることが大切であると言えるでしょう。
ここではSNS上で生じた、いじめによる事例についてご紹介します。いじめを苦にした女子高生は、自死を遂げてしまいました。
このような最悪な事態に発展しないようにするためにはどのような解決策が必要なのか、法律の観点からお伝えしていきましょう。
【事例で学ぶ】高校生がSNSでのいじめにより慰謝料が認められたケース
今回はSNS上で中傷したいじめによる事例をご紹介します。
いじめを受けた埼玉県立高校2年の女子高生は自らの命を絶ってしまい、両親がいじめを行った生徒などを相手取り、慰謝料などの損害賠償を求める訴えを起こしています。
いじめを行った生徒などに対して、慰謝料50万円の支払いを命じる一方で、関わった先生らの対応は合理的であったとして請求を棄却しています。
ケースの概要
2017年に埼玉県立高校2年の女子高生が自殺したのは、交際していた元男子生徒とその妹がSNS上で中傷したいじめが原因だとして、慰謝料などの損害賠償を求めたという事例です。
元男子生徒と妹は、SNS上において「あの女ゴミすぎた笑」「学校にいづらい環境を作ってやる」などと投稿、女子生徒はほかの生徒からの目を気にして学校に登校できなくなりました。
SNS上において一連の投稿があった約2週間後に女子生徒は自宅で首をつって死亡。
県はその翌年に元男子生徒とその妹によるSNS上の投稿はいじめに該当すると報告書をまとめていました。
女子生徒の両親は、自殺したのは投稿による中傷したいじめが原因で、また学校側が適切な対応を取らなかったことに対して、元男子生徒や妹、県を相手取って慰謝料など約9650万円の損害賠償を求め訴訟を起こしています。
裁判所の判断
裁判の争点になったポイントは、
- 元男子生徒と妹のSNS上での投稿は共同不法行為にあたるのか
- 学校や教諭の対応は注意義務違反にあたるのか
といった2点になりました。
判決理由において、元男子生徒と妹が投稿した「あの女ゴミすぎた笑」「学校にいづらい環境を作ってやる」などについて、共同不法行為と認定しています。
判決理由で裁判長は、元男子生徒と妹が中傷をSNS上に投稿したのは、女子生徒にとって⼤きな精神的苦痛を与えるものになる、
女子生徒はこの投稿によって、学校へ登校することができなくなりましたが、「女子生徒に他の生徒から好奇の目で見られ、いじめられるかもしれないとの恐れを抱かせる」ものとして共同不法行為にあたるとしました。
学校や教諭の対応については、女子生徒の登校しやすい環境を整備しつつ、電話などで状況を確認しているなど対応を実施、
そのうえで「女子生徒の言動などから自死を予見できたとは認められない」として、注意義務違反はなかったとされました。
以上によって裁判所は、今回の投稿については元男子生徒と妹の共同不法行為によって損害を賠償すべきであるとし、損害額は50万円と認められる、としています。
ただ、学校や教諭の対応については、「女子生徒の登校しやすい環境を整備しつつ、電話などで状況を確認した」として、自死を予見できるとは認められないと、注意義務違反はなかったとして、請求を却下しています。
今回の判決に対して訴えを起こした女子生徒の父親は、「納得できない」として直ちに控訴する考えを示しています。
SNSでのいじめに対する解決策は
現代では、子供たちのコミュニティが学校だけではなく、SNS上においてもみられるようになり、SNS上のいじめが学校生活の影響を及ぼすことが多くなりました。
SNSでの行動は、先生や親からすると見えにくいものですが、子供たちのコミュニティの一つであることから、そこでいじめを受けることは大きな精神的ダメージに繋がります。
そのため、学校に通学できなくなり、転校を余儀なくされるようなことや、自らの命を絶ってしまうような最悪な事態まで発生してしまうのです。
一昔前であれば、いじめは「子供だけの問題」とされたのですが、このような悲しい結果を招くようないじめはもはや子供たちだけの問題と済ますことはできないように感じます。
そのため、早くこのような状況に気付き、必要な対策を講じておくことが、わが子の命を守る最善策であると思うのです。
学校でのいじめの現状
文部科学省では、定期的に学校でのいじめに対する調査を行っており公表しています。
令和元年度の発表を見てみると、小中高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数は、なんと612,496件にのぼり、前年度よりも大幅に増加しています。
小中高等学校から報告のあった自殺した生徒数は317人となっています。
平成26年には自殺した生徒数は232人であることから、わずか5年で大幅に増えていることが分かります。
いじめの内容で一番多いものは「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」といったもので、その他にも「仲間外れ」「叩かれる・蹴られる」などといったものが多くなっています。
また、今回ご紹介した事例のように、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」といった、SNSなどでのいじめが増加傾向にあることが分かっています。
いじめの影響
「いじめはいじめられた方にも理由がある」と言われてしまうことがありますが、どんな理由があろうとも、いじめは肯定されるべきものではありません。
いじめを受けている時の辛さや苦しみはもちろんのこと、いじめを解消した後でも、さまざまな悪影響を及ぼすことがあります。
いじめが原因となって不登校になってしまったり、引きこもりとなって抜け出せなくなってしまうことがあります。
また、うつ病をはじめとして、PTSDやパニック障害などの精神疾患を引き起こす可能性も、専門家から指摘されているのです。
SNSでのいじめに対する解決策
どんな時でも親は子供の味方であるという姿勢を持っておくことが大切です。
特にいじめにおいては、仲間をはじめ、先生など周りで関わる人たちから孤立していると感じている状態であるため、味方がいるということはとても心強いものになります。
そのうえで、いじめの内容を明らかにしていきます。
SNS上の場合であれば、投稿をスクリーンショットによって保存するなどして、いじめと判断できるものを資料として残しておくようにしましょう。
いじめが確認できれば、まずは学校に相談することが大切です。
スクリーンショットの画像を確認してもらうようにし、担任の先生だけではなく、校長宛にいじめの概要を送付しておき、学校内で共有してもらうことが必要になります。
いじめを解決するには、加害者がどれだけ被害者に対して傷つけたのか認識したうえで、心から謝罪する機会が大切です。
また、今後のいじめの再発防止策を学校側から提案してもらうことが必要でしょう。
今まで学校で起きたいじめのケースをみていると、いじめがあったにも関わらず、「いじめはなかった」などと加害者および学校が主張していることがあります。
そのような場合には、いじめ問題に詳しい弁護士に相談して、アドバイスを受けることが適切です。
まとめ
学校のSNSでのいじめについてお伝えしました。
いじめを受けた女子高生はいじめによって自らの命を絶ってしまうという最悪の事態となり、両親は損害賠償を求める訴えを起こしました。
いじめを行った生徒などに対して、慰謝料50万円の支払いを命じる一方で、関わった先生らの対応は合理的であったとして請求を棄却するものとなりました。
いじめは、些細なことから始まるものが多いのですが、このケースのように最悪の事態となってしまうことがあります。
そのため、何かおかしいと周りの大人たちが気付いたのであれば、早めに対処することが適切です。
また、学校に相談しても解決できないようであれば、いじめ問題に精通した弁護士にご相談してみることをおすすめいたします。
弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。
保険が弁護士費用の負担をしてくれるので助かります。
また、法人・個人事業主の方には、法人・個人事業主向けの弁護士保険がおすすめです。
「弁護士費用保険の教科書」編集部

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