美容師が知っておきたい法律トラブルのこと:クレーム対応

美容師が知っておきたい法律シリーズ。最初は、『クレーム対応」についてご紹介いたします。

美容室に訪れるお客様は美意識が高く、カットやカラーリングなどによってイメージ通りになることを求めています。

それだけに、お客さまの頭にあるイメージ、あるいはそれ以上のサービスを提供しないことには、満足を得られることはありません。

それどころかクレームをつけられてしまうこともあります。

接客業である以上、ある程度のクレームは避けることができませんが、落ち度がないにも関わらず難癖をつけられてしまうようなケースもあるのではないでしょうか。

ここでは、美容師に対するクレームについてご紹介し、クレーム対応の方法についても詳しくお伝えしていきます。

こんな疑問にお答えします

Q:クレーム対応で意識すべきこと、やるべきこととは何ですか?

A:弁護士保険の教科書編集部の回答サマリー

お客さまの要望が満たされないと、不満となって積み上がることになり、それがクレームとなって現れます。お客さまが何を求めておられるのか、どのようなことに対して不満を感じるのか分析しておけば、クレームの発生率を大きく下げることができるのではないでしょうか。さらに、お客さまに対する説明不足も、クレームの大きな要因となります。お客さまの不満は美容師との意識のズレにあります。お客さまと意識をしっかり共有することによって、不満を軽減させることが可能でしょう。

弁護士保険 事業者のミカタ

クレームとは

そもそもクレームとは賠償や保証を要求する行為であり、いわゆる「苦情」とは異なるものです。

ただ、現代においては同じ意味で捉えられることが多いでしょう。

つまり、お客さまから美容師や美容室に対する不満や怒りを伴った、要求や苦情であると言えるのではないでしょうか。

近年では「クレーマー」という言葉も登場し、悪質なクレームに対して使われていますが、本来クレームは不満の表れでありますから、お客さまとの関係性やサービスを見直すうえでとても重要な意味があります。

要するに、単なる苦情としてクレームを捉えた場合には、「言いがかりをつけられている」といった美容師本位の考え方となります。

しかし、「お客さまからの要望」「サービスに期待されている」といった捉え方をすれば、クレームには真摯に対応することができるでしょう。

そのようなことから、クレームを分析し、サービスを向上するために「クレーム対応方針」のようなものを定めている美容院も少なくありません。

美容院だけではなく、苦情対応に対する基本方針を定め、サービス向上に役に立てていることは一般企業においても数多く見受けられます。

美容師が受ける可能性があるクレーム

美容師が受けるクレームにはさまざまなものがあります。

そのため、クレームに対する基本方針などを定める場合には、種類に応じた対応方法をまとめておくといいでしょう。

どのような内容なのか、ご紹介していきましょう。

カットやカラーリング、パーマなどサービスに対するクレーム

「思ってたよりも短くなった…」

「もっとカットして欲しかったのに…」

「カラーが明るすぎる…」

「パーマが強すぎる…」

美容室では、お客さまから要望を聞いて、イメージを確認しながらカットやカラーリングなどを行っていきます。

ただ、お客さまからの要望は常に具体的なものではなく、「普通に」「ちょっとだけ」「軽く」などと抽象的なものが多いのではないでしょうか。

中には「3センチほど…」などと明確に伝えられるお客さまもおられますが、明確ではないからといって「何センチですか?」と聞き返すのも難しいケースもあるでしょう。

そこで意思の疎通にズレが生じることになります。

例えば「軽く」と言われ、「ボリュームを軽くする」と捉えれば、ある程度の量をカットしようと考えますし、「少しだけカット」すると捉えれば、毛先だけカットするのかもしれません。

その捉え方に間違いがないように、美容師は「これぐらいで良いですか?」など、コミュニケーションを取りながら進めていきます。

ただ、意思の疎通にズレが生じたまま作業を進めてしまうと、できあがりに不満を持ってしまうことになるのです。

カラーリングやパーマなどについても、同じことが言えるでしょう。

ただ、カラーリングやパーマについては、注文通りに対応したとしても、できあがりイメージと違うようなトラブルは生じがちです。

そのため、考えられるリスクなども把握しながら、納得してもらったうえでサービスを受けていただく必要があります。

美容室の応対に対するクレーム

クレームは美容室の応対によるものもあります。

例えば、美容師やその他の従業員の接客態度。

笑顔や挨拶がないような場合には「不愛想」と感じてしまい、それが不満となってクレームになって現れることになります。

カット途中のコミュニケーションや対応についても、お客さまとの距離感が近いだけに、満足度に大きく現れるものになります。

また、上記でもお伝えした、意思疎通にズレが生じるのは、コミュニケーションが足りないことによって生まれるクレームです。

「美容師の接客がなっていない」という不満を抱いてしまうのです。

さらにサロンでは、シャンプーやトリートメントなどの美容用品を販売していることもあります。

それらも大事な収入源になるものですから、どのお客さまに対してもおすすめすることになるでしょう。

ただ、必要ないのにも関わらずすすめられてしまうと、「無理にすすめられた」と捉えられてしまうこともあります。

美容院によっては、美容師にノルマが課せられているようなケースもありますから、そのような場合にはどうしてもグイグイすすめてしまうようなこともあるかもしれません。

そのため、そこでクレームを受けてしまうことも少なくないのです。

待ち時間に対するクレーム

「待ち時間が長かった」というクレームが生じるときもあります。

待ち時間については直接言われることもありますが、お店の口コミに書かれる場合も多いです。
多くのお客さまが口コミを参考にしてお店選びをするなか、待ち時間についてのクレームを書かれると来店客数が減りかねません。

料金に対するクレーム

また、料金に対するクレームもあります。
お会計のときにお客さまが想定していなかった金額を請求すれば、クレームにつながるのは当然のことです。
カウンセリングの際にメニューの変更や追加が生じて料金が変わった場合は、必ずお客さまにお伝えするべきです。

お客さまの所有物に関するクレーム

お客さまの所有物に関するクレームもあります。

カラーやパーマの液やシャワー水をお客様の服に掛けてしまった場合、お客さまは気分を害します。

また、預かったカバンやコート、アクセサリーが紛失にあった場合もクレームに発展します。

お客様の所有物に関するトラブルが生じないようにするのも、お店の仕事です。

クレーマーによる理不尽な要求

近年、クレーマーによるトラブルが報じられるようになりました。

しつこい苦情や言いがかりを言う人のことを「クレーマー」と呼び、増えている傾向にあると考えていいでしょう。

クレーマーによるクレームにはいくつかの種類にわけることができ、次のようなものが多く見受けられます。

  • 些細なミスに対して過大な要求をする
  • いつまでもしつこく対応を求める
  • クレームの内容を次々変えていつまでもクレームをいう
  • 念書などを書かせようとする

きっかけとしては、美容師や従業員の些細なクレームによるものが多いですが、中には理不尽なものもあり、過剰な対応を求めることが特徴と言えるでしょう。

いつまでもクレームをやめようとしないことから、美容師や店長などが対応せざるを得ず、仕事に集中できなくなってしまいます。

売上が落ちてしまい、対応した美容師が辞めてしまうようなこともあります。

些細なものとは言え、きっかけになったのはクレームになってしまうような対応であることが多いために、クレーマーだと気付いても対応を止めるわけにはいかないと考えてしまいます。

そして、いつまでも続くクレームに根負けして、ついにはクレーマーの要求をすべてのんでしまうようなこともあります。

ただ、クレームのレベルに応じた謝罪をしておけば問題はなく、理不尽なクレームに対しては、法的な手段を考える必要もあるでしょう。

クレーム対応で意識すべきこと、やるべきこと

できる限り、クレームを起きないようにしたいと考えることは当然のことです。

ただ、美容師として働いている以上、お客さまからクレームを受けてしまうというリスクがあることは認識しておかねばなりません。

そのように認識することによって、サービスを向上させることができますし、仮にクレームを受けたとしても、そこから学ぶことも多いからです。

ただし、理不尽な要求を受けるようなことも近年では増えているために、しっかりとクレーマー対策をしておくことをおすすめします。

「どうしてクレームになってしまうのか」を考える

  • お客さまの要望が満たされない
  • お客さまに対する説明不足

美容室でクレームが生じてしまう理由をしっかりと認識していないと、同じクレームが度々起こってしまいます。

接客業においてはクレームが避けられないという側面がありますが、クレームの根源を認識しているのとしていないのとでは予防効果に大きな差が生じます。

クレームが生じる理由は、上記二つのポイントにまとめることができます。

お客さまの要望が満たされないと、不満となって積み上がることになり、それがクレームとなって現れます。

そのように考えると、お客さまが何を求めておられるのか、どのようなことに対して不満を感じるのか分析しておけば、クレームの発生率を大きく下げることができるのではないでしょうか。

さらに、お客さまに対する説明不足も、クレームの大きな要因となります。

上記でもお伝えした通り、お客さまの不満は美容師との意識のズレにあります。

お客さまと意識をしっかり共有することによって、不満を軽減させることが可能でしょう。

そのため、利用者のマナーやコミュニケーションスキルの向上などに取り組めば、そのようなクレームも少なくなるのではないでしょうか。

クレーム対応で意識すべきこと、やるべきこと

  • リスクコントロール
  • ダメージコントロール

クレーム対応で意識すべきこと、やるべきことをまとめると「リスクコントロール」「ダメージコントロール」の2種類に分けることができます。

リスクコントロールとは、クレームが起きないようにするためにどうするかということ。

クレームの予防策をさまざまな視点から考え、それを実行するようにするのです。

今までに起こったクレームやお客さまからのアンケート調査などを活用して分析し、今後の接客に活かしていきます。

クレーム対応のマニュアルを作成しておくのも良いでしょう。

さまざまなケースを想定したマニュアルがあれば、スタッフ全員で対応方法を共有しやすくなります。

ただし基本的には、カウンセリングの際にお客さまの要望にしっかり耳を傾ければある程度のクレームを予防できます。

お客さまとの間に、認識のズレが起こらないように徹底しましょう。特に、新規のお客さまの場合はカウンセリングの時間を長めに確保して要望を聴くのがおすすめです。

ダメージコントロールとは、クレームが起こってしまったときにどうするかということ。

美容師が接客業であるために、どうしてもクレームを完全に避けることは難しいでしょう。

そのため、クレームが起こった際の対処法についても検討しておく必要があります。

お客さまからのクレーム対応をしっかり聞き、必要に応じて謝罪や対処を行い、クレーム内容を活かして今後のサービス向上に繋げていきます。

また、クレームを受けた本人が対応していても解決しない場合は、それ以降店長など責任ある立場の人に任せるのも選択肢です。

さらに、可能であればクレーム対応は別室で行いましょう。

クレーム内容をお店中に聞こえるような大声で言われた場合、他のお客さまを不快にさせてしまうのはもちろん、お店の評判も落としてしまいます。

つまりクレーム対応で意識すべきことは、クレームの予防とクレームの対処法の両輪で考えていかねばならないということなのです。

クレーマーから守るためにできること

クレーマーに対する被害は年々増加している傾向にありますから、クレーマー対策についてもしっかりと検討しておく必要があります。

些細なミスがきっかけとなることが多いですが、理不尽な要求に対して断固として断り続け、諦めさせることが大切です。

理不尽な要求が続いていくケースとして、穏便に収めようとして理不尽な要求をのんでしまうということがあります。

しかし、その要求をのんだとしても、さらに別の要求を受けることもあるのです。

仮に美容師に落ち度があったとしても、その落ち度に合ったレベルの謝罪だけで十分です。

クレーマーは謝罪を受けるたびにヒートアップしていきますから、言いなりにならないことがとても大切なのです。

もしも、美容師や美容院内で対処できないようであれば、やはり法のプロである弁護士に相談や依頼することが適切でしょう。

いざとなった場合は弁護士へ相談を

日常的に発生するクレームだけではなく、クレーマーによる理不尽な要求の可能性があるということも注意しておかねばなりません。

ひとたびクレーマーによる要求が始まると、どうしても美容師は手を取られてしまいます。

そのため法的な解決を目指す、弁護士に対する相談体制を持っておくことをおすすめします。

美容師が弁護士に相談するメリット

  • 理不尽なクレームから守ることができる
  • クレームの抑止になる

上記でもお伝えしましたが、落ち度に対する謝罪をしっかりと行なった上で理不尽な要求を受けているのであれば、法的に解決することが最も合理的な方法です。

どのように謝罪をしても受け入れてもらえなかったり、新しい要求を受けたりすることになりますので、美容師の対応にも限度があるからです。

かえって問題が複雑化してしまうケースもありますから、対応が困難だと判断した時点で弁護士が対応した方がスムーズに解決できるのです。

まとめ

美容師が知っておきたい法律トラブルのこととして、今回は『クレーム対応』についてご紹介しました。

美意識の高いお客さまからすれば、美容師に求めるサービスは高くなる傾向があるでしょう。

そのため、サービスに対して不満を感じることによって、それがクレームとなってあらわれることがあるのです。

クレームを避けたいことは当然のことですが、サービス向上のためには、お客さまのニーズを掴みクレームを分析することも大切です。

ただし理不尽な要求を続けるクレーマーには、法的に対処できる弁護士への相談体制を構築しておくことが最も合理的な対策となります。

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記事を振り返ってのQ&A

Q:美容院に寄せられるクレームの例は?
A:仕上がり、接客対応、待ち時間の長さ、料金、お客さまの所有物に対るクレームが挙げられます。

Q:美容院におけるクレームの予防策は?
A:カウンセリングの際にお客さまの要望をしっかりと聴くことです。認識のズレがない状態で施術を始めましょう。
また、過去のクレーム事例を活用することやマニュアルの作成も効果的です。
いざという時に弁護士に相談できる環境を整えておくのも良いでしょう。