皆さん、新しい年を迎えると、何か新しいことをはじめようとする方も多いと思います。
新しいチャレンジをする対象が独学では難しいジャンルの場合、語学教室・家庭教師派遣・学習塾・パソコン教室……といったサービスを使いはじめる方も多いようです。
その結果、思い通りの成果が得られれば、支払った月謝や料金に関して不満に思うことはないでしょう。
でも、しばらく習ってはみたものの、思うような効果が得られなかった場合、たとえサービスの途中であっても中途解約をしたくなりますよね。
しかし、中途解約するにはさらに高額な違約金がかかったり、事前に前払いでたくさん買ってしまったりしていたレッスンポイントなどは、換金して返金してもらえるのかなどと色々と不安になるでしょう。
そこで、今回は、こうした習い事の中途解約と月謝の返金について、詳しく見ていきたいと思います。
こんな疑問にお答えします
Q.習い事を解約したいです。クーリング・オフは効きますか?
A.入会金や役務を受けるために必要になる関連商品を含めて、契約の総額が5万円を超える6種類のサービスの場合において、クーリング・オフを適用できます。特定商取引法によってクーリング・オフ期間は8日間と定められているため、クーリング・オフすることで代金や月謝が返金されます。
クーリング・オフ期間を過ぎてしまっていても、解約料には上限があるため高額な費用を支払う必要はありません。泣き寝入りしないよう、正しい知識を身につけておきましょう。
習い事=特定継続的役務提供?クーリング・オフは効く?
聞き慣れない言葉かと思いますが、習い事やエステなど以下の6種類のサービスのことを「特定継続的役務提供」と言います。
(1)語学教室
・語学(外国語に限定されていないので日本語も含まれる)の教授を行うこと。
・入学試験対策と大学を除く学校教育の補習は含まない。
・場所的な要件はないため、教室で行なうものに限定されず、電話やFAX、インターネット等によるものも含まれる。
(2)家庭教師派遣
・事業者の用意する教室等の場所以外で、中学、高校、大学、専修学校又は各種学校の入学試験対策をすること、並びに小学校、中学又は高校の補習をすること。
・「家庭」や「個別指導」という要件がないことに注意。
・通信添削、電話、FAX、インターネット等による指導も含まれる。
(3)学習塾
・事業者の用意する教室等の場所で、入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための児童、生徒又は学生を対象とした学力の教授を行うこと。
(4)パソコン教室
・電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授を行うこと
・教室で行なうものに限定されず、電話、FAX、インターネット等によるものも含まれる。
(5)結婚相手紹介サービス
・結婚を希望する者へ異性を紹介すること。
(6)エステティック
・人の皮膚を清潔にし、若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと。
いわゆる入会金や、役務を受けるために必要になる関連商品を含めて、その契約の総額が5万円を超えるものが対象になっています。
これらのサービスは
・中途解約が認められない
・高額な違約金を請求される
というようなトラブルが多発したため、法的に分類(指定)されたのです。
(一部のサービスは特定継続的役務提供に該当しないものもありますので、契約時には注意が必要です。)
ここから、もう少し詳しく特定継続的役務提供について、解説します。
「特定継続的役務提供」とは、「特定商取引に関する法律」(特定商取引法=特商法)第41条で定義される「いくつかの各役務の提供、又はその役務の提供を受ける権利を販売すること」を指します。
特商法41条における「役務」とは、私たち利用者が受けるサービスのことを指しており、条文内の「いくつかの各役務」にエステティック・語学教室・家庭教師派遣・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスが該当します。
そして、これら6種類のサービスは、特定商取引法によってクーリング・オフ期間は8日間と定められているため、その間に「この習い事は効果がないぞ」とわかれば、クーリング・オフすることで契約自体が無かったことにできるので、代金や月謝が返金されます。
このクーリング・オフという制度は、契約後であっても、一度頭を冷やす(Cooling Offする)ことで消費者に冷静に考え直す時間的な余裕を与え、その一定の期間内であれば、その契約を無条件で解除することもできるという、特別な制度のことです。
ただし、習い事についてはその性質上、ある程度の期間受けてみないと効果がわからないものであり、実際に受けてみたところ効果がないなと感じたタイミングで、中途解約を行ないたくなることが多いものです。
そのときには、すでにクーリング・オフ期間の8日間を超えてしまっている場合が多いのです。
それでもご安心下さい。
8日間を超えていた場合でも、中途解約への対処方法があるのです。
クーリングオフ通知をするときの内容証明郵便の書き方については、こちらの記事をご覧ください。
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クーリング・オフ期間は過ぎても大丈夫!解約料には上限があった!
クーリング・オフ期間を過ぎてから、受けている役務(サービス)の効果がないことを理由に中途解約をする場合には、解約料などを請求される可能性が高いのですが、その際、事業者が消費者に請求できる金額の上限はいくらなのでしょうか。
青天井に高額な解約料を請求されたのでは困ってしまいます。
実は、その上限金額は6種類の役務ごとに決まっており、さらに役務提供開始前解約料と役務提供開始後解約料の二つに分かれます。
いわゆるサービス自体を受ける前だったのか、受け始めてからか、という違いなのです。
業態 | 役務提供開始前解約料 | 役務提供開始後解約料 |
---|---|---|
エステティック | 2万円又は契約残額(契約に関する役務の対価の総額から、既に提供された役務の対価の相当額を、差し引いた額)の10%相当額のいずれか低い額+提供された役務の対価に相当する額 | |
語学教室 | 5万円又は契約残額の20%相当額のいずれか低い額+提供された役務の対価に相当する額 | |
家庭教師派遣 | 5万円又は1ヶ月分の授業料相当額のいずれか低い額+提供された役務の対価に相当する額 | |
学習塾 | 2万円又は1ヶ月分の授業料相当額のいずれか低い額+提供された役務の対価に相当する額 | |
パソコン教室 | 5万円または契約残額の20%相当額のいずれか低い額+提供された役務の対価に相当する額 | |
結婚相手紹介サービス | 2万円または契約残額の20%相当額のいずれか低い額+提供された役務の対価に相当する額 |
皆さんが中途解約しようと思っているサービスの場合はいかがだったでしょうか?
もしも、事業者側から勝手な金額の請求を受けてすでに上記の金額を超えるお金を支払っている場合は、事業者は超過分を速やかに返還しなければならないので、大いに権利を主張しましょう。
もし、悪質な事業者で「もう解約はできない、返金もできない」などと言ってきた場合は、そんなことは全くないため……のらりくらりと逃げられてしまわないためにも、内容証明郵便を使って正式な書面で、適正額での中途解約ができるようにしましょう。
こうした手続きはプロの力を借りても良さそうです。
また、万が一ローンなどを組んでいた場合は、事業者にだけでなくクレジット会社へも同タイミングで、支払い拒否の意思表示を行いましょう。
知らずに大金を支払って、そのまま泣き寝入りする必要は全くないのです。
中途解約した場合の月謝はどこまで支払うべき?
ここまでは、解約した場合の解約料について解説してきました。
では、解約した場合の月謝はどこまで支払えばいいのでしょうか。
解約までに提供されたサービスについては支払う
中途解約をしても、解約までにサービスを受けていれば、その対価を支払うのが一般的です。
ただ、契約書に「毎月◯日までに解約の申し出がない場合は翌月の月謝(会費)を頂戴します」と記載されていれば、その内容に従うことになります。
月に一度も利用しなかった場合も支払いは必要
サービスに不満があり月に一度も利用しなかった場合も、解約が完了していなければ月謝(会費)の支払いが必要になります。
これは、「サービスを受けられる状況なのに利用しなかった」ということなので、解約するまでの期間は支払う義務があるのです。
心強い実際の判例を見てみよう!
請求される違約金の上限は決まっている、事前にまとめて買ったポイントも換金して返金してもらえる……とわかっていても、または、当初は割引キャンペーンで入会したけど、事業者からの請求は割引じゃない高価な通常の金額で精算されているから困った……なんてことも起きてしまうかもしれません。
しかし、それにも対応している以下の心強い判例をみてみましょう。
外国語会話教室の中途解約方法を定めた約款と特定商取引法
本件は、外国語会話教室に入学した生徒が中途解約をするに当たり、前払い金の払戻精算において控除される「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」について、入学時の単価と異なる単価をもって算定するとの約款が特定商取引法に違反することについて、詳細な判断が示された事例である。(東京地方裁判所平成17年2月16日判決)
裁判所ホームページ「裁判例情報」掲載
請求認容(控訴)結論として、本判決は、支払いを受けたレッスンポイントの購入代金78万7,500円から控除可能な提供済み役務の対価48万6,360円を差し引いた金額(30万1,140円)とVOICEチケットの購入代金10万5,780円から同じく控除可能な提供済み役務の対価4万6,434円を差し引いた金額(5万9,346円)の合計である36万486円から、解約手数料5万円を差し引いた31万486円をもって、YがXに精算すべき金額と判断した。
同種の事例の参考になる判決である。(注)なお控訴審(東京高裁平成17年7月20日判決)においても、原判決維持(消費者勝訴)の判決が出された(上告)。
引用元:国民生活センター
上記の判例では、業者の定めた独自の精算方法は認められないとされ、また事前割引キャンペーンと精算時の単価の問題でも、契約当初の単価よりも高額な単価での精算は、中途解約をしようとする利用者にとってそれを制約する役割を果たすため認められない、ということが言われました。
我々利用者としては、安心できる結論ですね。
最後に
人生をより豊かにするための習い事といったサービスで、効果がなかったがために中途解約をする際に、大金を請求されて苦しむことになってしまったら本末転倒ですよね。
是非皆さんひとりひとりが正しい知識を身に付けることで、心おきなく習い事にチャレンジして頂きたいです。
もし、習い事の解約や返金をめぐってトラブルに発展してしまった場合は、できるだけ早く法律のプロである弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は法律と照らし合わせて、クーリング・オフが適用されるかどうか、中途解約は可能かどうか判断してくれます。
クーリング・オフの期間外であっても、契約解除や返金ができないかあらゆる視点から解決を進めてくれます。
「中途解約したいけれど自分がどのような状況かわからない」「すでにサービスを受けているから無理なのでは?」と思われる方もいるでしょう。
ひとりで悩まず、弁護士へ相談してみることをおすすめします。
法律の相談窓口に関しては、こちらの記事もご覧ください。
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記事を振り返ってのQ&A
A.入会金や役務を受けるために必要になる関連商品を含めて、契約の総額が5万円を超える6種類のサービスの場合において、クーリング・オフを適用できます。特定商取引法によってクーリング・オフ期間は8日間と定められているため、クーリング・オフすることで代金や月謝が返金されます。
Q.クーリング・オフの8日間を過ぎた場合は解約料がかかりますか?
A.クーリング・オフ期間を過ぎてから中途解約をする場合には、解約料を請求される可能性が高いですが、上限金額は6種類の役務ごとに決まっています。事業者側から勝手な金額の請求を受けてすでに上記の金額を超えるお金を支払っている場合は、事業者は超過分を速やかに返還しなければならないので、大いに権利を主張しましょう。