夫・妻/彼氏・彼女の携帯を勝手に見ると犯罪になるの?

 

hiraga

この記事の執筆者

川島 浩(弁護士)

毎日、夫婦・恋人関係に悩む人たちも多いのではないでしょうか。

そんな中でも特に、浮気に関する悩みは、おそらく多くの夫婦やカップルが悩むところのひとつではないかと思います。

近年、そうした浮気の悩みのきっかけとなるのが、

「旦那の行動が怪しいので着信履歴をチェック」
「妻がこんなチャットアプリ使っているなんて」
「妻の携帯を見たら浮気の写真を発見」
「彼が相変わらず元カノに、今もこんなメールを送っているなんて……」

などといった、携帯電話を見てしまったという行為です。

しかも、相手の同意を得て見たのではなくて、相手に隠れてこっそり盗み見したという場合が多いというところが今回のポイントでもあります。

あなたはパートナーの携帯電話(スマートフォン)をこっそりチェックしたことはあるでしょうか?

そして今回はそんなパートナーの携帯電話を見てしまうことのリスク、見た場合、犯罪に問われてしまうのか、といった内容について考えてみたいと思います。

勝手に見ると侵害になる?プライバシー権ってどんなものなのか


昨今、「プライバシーの権利を守る」という言葉をよく耳にするようになったかと思います。

では、このプライバシーの権利とは、いったいどんな権利なのでしょうか。

人は誰でも他の人には知られたくないと思うような内容の、ごく私的な情報を抱えていることがあります。

そのような情報をプライバシーと呼びます。

そして、このようなプライバシーについて、近年は自らコントロールする権利こそが「プライバシーの権利」とする説が有力になってきています。

これは憲法13条を根拠として認められる、新しい人権の1つであり、これは個人の尊重・生命・自由・幸福追求の権利として保障されると解されています。

そして人権とは本来、対国家に対する国民の権利という性質の権利です。もっとも、私人間同士の法律関係においても人権の規定は間接適用されると解されています。

もっともプライバシーの権利といっても、無制限なものではなく、一定の制約を受ける場合もあります 。

そもそもプライバシーの権利は、本来は「そっとしておいてもらう権利」として定義されており、個人の私生活上の秘密などを公表されないという権利として考えられていました。

しかしその後、情報社会の発展に伴い、「プライバシーに関するコントロール権」と定義されるようになっていきました。

つまり現在において、プライバシーの権利と呼ばれるものは、

他の人に知られたくないと思うのが当然と思われるようなプライバシーについて、本人の同意なく、他の人が勝手に情報を収集したり取得したり、情報を保有して利用したり、第三者へ開示したり提供されない

ということを意味すると見解が有力になっています。

また、プライバシーの権利は、例えばカルテや内申書などといった、他の人がその人に関するプライバシーを保有している場合に、自己情報開示請求権というその人に開示を請求することや、それが誤っている場合には訂正を請求する訂正請求権を含むとも、考えられています。

こうした内容をみると、たとえ夫婦・パートナー間であっても個人としてのプライバシーは守られるべきであることがわかります。

そうすると、携帯電話を盗み見る行為は、 プライバシー権の侵害に該当しうると考えられます。

法律上では旦那や妻の携帯・パソコンは見ても大丈夫なの?

道徳的には良くないこととはわかっていても、やはり夫や妻の浮気や不倫を疑ったら、真っ先に見たくなるのは携帯電話でしょう。

今の時代、浮気相手と連絡をとるのには確実に携帯電話を使っているはず。

通話やメールはもちろんのこと、LINE・Facebook・TwitterなどのSNSを利用して連絡をとっているかもしれません。

それでなくとも、浮気や不倫に限らず携帯電話というのは個人的な秘密が満載なもの。

刑法には携帯電話の盗み見については明記されていない

そんなプライバシーの塊のような携帯電話ですが、実はパートナーの携帯電話を盗み見たという行為に関しての規定は、現在の刑法では存在しません。

盗み見た対象がメールではなく、紙の手紙であった場合は、刑法第133条の信書開封罪になる可能性もあります。

正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する

という記述があるため、他人宛の手紙を勝手に開けた場合は法律上、罪に問われる可能性があります。

民法で考えるとリスクは大きい

かといって、それなら携帯メールの場合はお咎め無しなのかといえば、そうでもありません。

手紙と同様、携帯メールの盗み見にも、大きなリスクがあります。

民法の規定により、プライバシーの侵害による損害に対して、被害者は損害賠償請求を起こすことが可能であるからです。

送り主のプライバシーも侵害している可能性も

そして、さらにここで考えなければいけないのは、携帯電話の盗み見によって誰のプライバシーを侵害しているか、という問題です。

メールの受信内容を読むことは、携帯電話の所有者であるパートナーはもちろん、そのメールの送り主のプライバシーも侵害していることになり得ます。

例えば、あなたが親友へ送った深刻な悩み相談や、切羽詰った状況での真剣な会話が、会ったこともない親友のパートナーにも勝手に見られてしまったとしたら、決して心中穏やかではいられないことでしょう。

携帯電話の盗み見によって被害を受けるのは、決してその所有者だけではないということを常に、念頭に置いておかなくてはいけません。

このようなことをふまえると、刑事罰に問われるわけではないとはいえ、例えば浮気や不倫を疑った場合に、夫や妻の携帯やパソコンを勝手に見るという行為は、法律上の責任を追及されるリスクもありますし、道徳、倫理的な観点でも容認されがたいといえるでしょう。

また、罪に問われる可能性のある行為もあります。

勝手にログインする行為はアウト

FacebookやAmazon、Googleなどのアカウントやパスワードが必要となるサービスに、勝手にパスワードを入れてロックを解除しログインすることは、不正アクセス禁止法に抵触するので罪に問われる可能性が高くなります。

さらに言えば、結婚や、婚約しているといった状態でない限り、パートナーの浮気は法律的には罪に問うことはできません。

そのため、パートナー(彼氏・彼女)の携帯を勝手に見た、さらに勝手にメールの消去などをした場合は、前述のプライバシー権を侵害したとして、民法709条の他人の権利を侵害したとして不法行為が成立し、慰謝料などの損害賠償請求をされる可能性もあります。

このようにプライバシー権の侵害は法的な責任を問われる可能性があり、プライバシー侵害を受けた人から損害賠償を請求されるリスクや、場合によっては犯罪となるリスクもあるため注意が必要です。

でも実は女性は結構な数の人が見ちゃっている……?

パートナーの携帯チェックという後ろめたい行為をしてしまった場合でも、匿名でなら告白ができるということなのか、ネット上に公開されているリサーチ結果を見てみると、携帯電話の盗み見に関する調査は色々なところで行われているようです。

例えば、少し前のデータになりますが、2007年5月にMMD研究所が実施した「携帯セキュリティに関する実態調査」では、10代から50代までの約4100人の回答が集まっています。

それによると「他人の携帯電話内の情報を無断で見たことがあるか」という質問には、男性の18.3%、女性では30.0%の人らが「見たことがある」と回答しています。

どうやら女性の方が、携帯をチェックする傾向が多いようです。

見てしまった内容は、「メール受信内容」が74.5%、「メール送信内容」が54.9%、「電話帳」が43.1%、「発着信履歴」が39.3%、「画像・動画」が33.6%となっています。

どうやら傾向としては、漠然と「どんな連絡先を登録しているのか、電話帳をチェックしてみよう」ということよりは、ずいぶんと具体的に怪しい行動や浮気の証拠探し、というような目的を持って、特定のメールを開いては受信内容を読んでいる様子が伺えます。

そして無断で見た相手は、「お付き合いしていた、もしくは現在している人」が55.8%で最多。

次いで「知人/友人」が19.8%になっているため、やはりパートナーの動向は多くの人が気になっているようです。

最後に

最初は軽い気持ちでパートナーの受信メールのチェックをしただけであっても、だんだんと不安が大きくなって携帯のチェックがエスカレートし、非通知の着信履歴の相手が気になったり、パートナーが携帯電話で閲覧していたサイトの履歴までも確認するようになったり、というように精神的に追い詰められてしまっている人も多いと聞きます。

こうなってしまった場合、たとえパートナーに携帯電話の盗み見がバレていないとしても、このような状態の男女関係は果たして良いものなのでしょうか。

また、携帯電話をチェックしたことで幸せになる人は果たしてどれだけいるのでしょうか。

本当に何か相手の隠し事や浮気の事実を知りたいのならば、パートナーときちんと正面から向き合い、相手の言動をよく観察し、直接語り合うことが一番なはず。

そうすれば携帯電話の中身をチェックしなくても、良い関係性が築けるでしょう。

まだ弁護士費用が心配ですか?
  • 交通事故
  • 労働問題
  • 近隣問題
  • 遺産相続
  • 離婚問題
  • 男女問題
  • 詐欺被害
  • 傷害事故

弁護士費用が心配なら、弁護士費用保険。
トラブル時の弁護士費用を通算1000万円まで補償。


The following two tabs change content below.
川島 浩(弁護士)

川島 浩(弁護士)

2010年12月、弁護士登録後、都内の法律事務所勤務を経て、2014年2月独立。大和法律事務所開業。「クライアントの皆様がどんなことでも相談できるような存在であり続ける」弁護士を目指し、日々の業務に取り組む。趣味はスポーツ観戦、歴史、釣り、お酒。第一東京弁護士会 犯罪被害者に関する委員会委員。第一東京弁護士会 若手会員委員会委員。著書に「ビクティム・サポート(VS)マニュアル -犯罪被害者支援の手引き-」(共著)がある。ご相談は事務所ホームページよりお気軽にお問い合わせください。
この記事のURLとタイトルをコピーする

いいね!を押して更新情報を受け取る

ページ上部へ戻る