遺言書の必要性とは?相続トラブルから見る遺言の意義

近年では、財産の多い少ないといった問題とは別に遺産相続によるトラブル事案が増えているという傾向にあると聞きます。

イメージだけで考えるならば、いわゆる富裕層などのお金を多く持っている人たちが遺産相続を巡って骨肉の争いになる…といった場面が思い浮かびます。

しかし、現実には富裕層よりも多くの一般家庭がある訳です。

にもかかわらず年々増加する遺産相続トラブルは一体どこに原因があるのでしょうか?

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遺言書は何故必要なのか?

 

 

遺産相続のトラブルに関してもっとも多いと言われているのは遺産分割の問題です。

相続する財産そのものはそこまで多くない場合でも、相続人が民法上の法定相続分の主張をすることになり、金額の多寡とは別の問題でトラブルになるケースが多いようです。

例えば、亡くなった方の財産が住宅と土地、車などの生活において必須であるものだけであった場合でも子などから法定相続分の主張があれば、これらを金銭換算する、もしくは現金化してでも遺産を分割する必要があります。

老後の生活を続けていく上で、配偶者にとって自宅や土地は非常に重要ですが、生活状況によっては子も遺産を金銭に変えてでも受け取りたいこともあるでしょう。

一概には言えませんが、親子間で軋轢が起こったり、争いになるのは誰も望んでいる訳ではありません。

こういったトラブルを防ぐという観点からも遺言書の存在意義は大きくなります。

財産の多い少ないはあまり関係ない

もう少し状況を掘り下げて考えてみましょう。

例えば夫婦のうちのいずれかが亡くなってしまった時に

相続人となる配偶者が1人、子供が2人いたとします。(相続人が3名)

この時の法定相続分は配偶者が相続財産の半分(1/2)、さらに半分ずつ(1/4ずつ)が子の権利となります。

このように、一見どこにでもあるような遺産相続のケースでもトラブルになる可能性は充分にあります。

財産を割り切れない場合のトラブル

先に書いた通り、法定相続分での遺産分割でトラブルになりやすいのは相続財産を割り切れないケースです。

例えば、上記の例で言うと配偶者はまだ存命している訳ですから被相続人が死亡しても自宅であれば通常は住み続けたいかもしれません。

しかし他に大きな財産がなく、主な相続財産が自宅や土地であった場合には遺産の割合のほとんどが不動産となります。

ですが、法定相続分では子の2人にも1/4ずつ財産を相続する権利があるので

子が自宅や土地を処分して金銭として受け取りたいと言ったらどうなるのでしょうか?

権利を持つ以上は法定相続分は子が相続出来るので、自宅や土地を処分して遺産分割協議をしなくてはいけなくなるかもしれません。

こんな時に遺言書が残っていれば、遺留分を考慮して自宅は配偶者に相続させたまま、上手く遺産分割が出来たかもしれません。

法定相続分が必ずしも最善ではない

相続における民法で規定されている法定相続分の割合は、あくまでも目安の1つであり家庭の事情などによっては、遺言書の遺産分割によって相続後の生活が大きく変化する可能性があります。

親と子という関係だけで言えば、被相続人の立場であれば子がどのような生活をしているかはある程度把握していることでしょう。

それと同時に配偶者の現状や、先にどちらかが亡くなった場合には残された方がどうやって生活をしていくのか?

遺産分割において様々なトラブルや悩みなどの原因をみていると

相続財産の割合が預貯金ではなく土地や建物など限られた財産の方が争いに発展しやすい傾向が見て取れます。

もちろん、全ての家庭で相続争いが起こるわけではありませんし、法定相続では誰かが生活に困ってしまうということを考慮して、相続時に遺産分割協議をして相続人同士が誰も困らないような結果になることもあるでしょう。

しかし、少しでも相続におけるトラブルや争いのリスクを回避出来るのであれば、やはり遺言書があった方がスムーズかつ、各相続人の生活を考慮した遺産分割をしやすくなります。

相続権がない人にも財産を残せる

遺言書を作成しておけば、法定相続人以外の第三者にも財産を残せることもメリットの1つです。

民法に規定された遺留分に関しては考慮する必要がありますが、生前にお世話になった人に財産を残したい場合や、特別な事情があって家族以外にも財産を残したいと考えるのであれば遺言書はほとんど必須になります。

元々は相続権利がない第三者の場合、いくら被相続人との関係が大きなものであっても法律上で認められていない遺産相続には参加することも出来ません。

特に遺言書があった方が良いとされている環境をいくつか以下で紹介してみます。

特に遺言書を作成した方が良いケースもある

特に遺言書を書いておいた方が良いと言われる一例です。

・子供がいない夫婦の場合

子供がいない夫婦の場合、最も相続させたい相手は配偶者になると思います。遺留分を考慮しても遺言書によって7割以上の遺産相続をさせることが可能です。

・内縁関係の相手に残したい場合

法律上で婚姻関係にない相手は、配偶者とは認められず遺産相続の権利はありませんが、遺言書で財産を残すことは出来ます。

・相続関係が複雑な場合

例えば、再婚などによって相手の連れ子と自分の子などで相続の内容や方法を変えたい場合には遺言書が有効になります。

・相続人がいない場合

もしも相続人がいない場合、財産は国に入ります。少なからず生前に親交のあった人や、相続人ではなくても第三者や特定の団体などに残したい場合には遺言書を作成しておきましょう。

遺言書は自分の最後の意思である

 

相続財産はその金額に左右されず、亡くなった後に自分の残したものをどうしたいのか、どうしてもらいたいのか、といった意思を示す最後の手紙とも言えます。

自分に何かあった時に、家族間で揉めることなどは想像したいものではありませんが、実際にトラブルが発生する可能性を0にすることは出来ません。

しかし、法定相続よりも遺言書は優先されることから多くの場合は遺言書が残っていたことによってトラブルにならなかったというケースも多いのです。

遺言書は意思能力のある内に、専門家にしっかりと相談して作成しておけば後のトラブルを未然に防ぐという意味でも、重要な役割を果たしてくれる大切な存在になります。