夫あるいは妻に浮気をされ、ついには離婚まで考えていても、離婚時の財産分与がどうなるのか気になって、なかなか決意できないという方は多いのではないでしょうか?
「相手の浮気が原因で離婚するか悩んでいるのに、財産分与を理由に自らの財産を相手と折半しなければならないのだろうか・・・」
こうした不安を抱えている方はたくさんいらっしゃいますし、実際相談に来られる方は多いのです。
そこで今回は、浮気/不倫が原因の離婚でも財産分与は折半になってしまうのか、について詳しくご説明していきます。
こんな疑問にお答えします
A:相手の有責性と財産分与は別問題であるため、浮気をされたとしても財産分与は必要です。しかし、相手の行為によって受けた精神的苦痛を理由に「慰謝料」を請求することはできます。
相手の有責性と財産分与は別問題
婚姻関係にありながら、一方が浮気や不倫をした場合、法律では「不貞行為」と表現します。
不貞行為は法定離婚原因といって、法律上、離婚が認められる原因の1つであり、浮気をした側に責任が生じることから、相手を「有責者配偶者」といい、有責配偶者側から求められた離婚に関しては原則認められることはありません。
それゆえ、有責性のある相手からの要求は飲む必要がないという勘違いが生じ、「浮気はしたけど財産分与は求める」といった身勝手な主張が認められるわけがない、と考える方が多いのです。
しかし、相手の有責性と財産分与はまったく別の問題として取り扱われるため、たとえ相手の浮気が離婚原因であったとしても、財産分与はされなければなりません。
もちろん有責配偶者側が財産分与を求めなければ、親切に折半する必要はありませんが、原則は財産分与されなければならないと覚えておきましょう。
慰謝料と財産分与の違いについて
法律上そうだとしても、完全な折半に納得いかないのも当然です。
そこで、相手の不貞行為によって受けた精神的損害については、「慰謝料」として請求することが可能です。
有責配偶者からの財産分与を拒むことはできませんが、その分は慰謝料という形で請求できるため、ここでうまく調整しましょう。
たとえば、財産分与は財産分与として清算し、後から慰謝料分を上乗せする(財産分与の中から差し引く)といった請求は現実にも行われています。
3つの財産分与と慰謝料の関係
次に、財産分与と慰謝料の関係をさらに深く理解するため、財産分与についても知っておきましょう。
そもそも財産分与には、大きくわけて3つの種類があると考えられています。
清算的財産分与
財産分与の中でメインとなるのが、「清算的財産分与」です。
夫婦が協力しながら婚姻中に形成・維持してきた財産は、夫婦共有の財産とし、離婚時には公平に分配しましょう、というものです。
あくまでも公平に分配となっていますので、不貞行為があったかどうかを考慮する余地がありません。
これが有責配偶者からの請求であっても認められる理由です。
扶養的財産分与
こちらは離婚後、一方に生活費を稼ぐ手段がなく、生活苦に陥ることが想定される場合に、それを補助する目的で支払われるため「扶養的財産分与」といいます。
こちらも相手の有責性は関係なく、たとえ不貞行為があったとしても支払われなければならないケースもあります。
慰謝料的財産分与
不貞行為という法定離婚原因があった場合、離婚時には慰謝料が問題として取り上げられることは、よくあります。
しかし、何度も触れているように慰謝料と財産分与は別問題となりますので、本来であれば別々に金額算定されなければなりません。
とはいえ、どちらも「お金」という大きな括りでは同じであるため、慰謝料と財産分与といった細かい区別はせず、慰謝料分もまとめて財産分与として済ませてしまうことを、「慰謝料的財産分与」といいます。
財産分与の対象とは
続いて、財産分与の対象についても正しく把握しておきましょう。
夫婦の財産は2種類ある
前提として、夫婦の財産には「共有財産」と「特有財産(固有財産)」の2種類が存在します。
各特徴と例は、以下をご確認ください。
財産の種類 | 財産分与の対象 | プラスの財産の例 | マイナスの財産の例 |
---|---|---|---|
共有財産 | ◯ | ・現金、預貯金 ・家財道具 ・自動車 ・不動産 ・有価証券 ・価値の高い絵画や骨董品 ・保険料の払戻金 ・退職金 |
・婚姻中に借り入れをした住宅ローン ・子どもの教育ローン |
特有財産(固有財産) | × | ・婚姻前に各々が貯めていた金銭 ・婚姻前に実家から持ってきた家財 ・自分の親から相続・贈与によって得た財産 |
ギャンブルや浪費などによる個人的な借金 |
財産分与にはマイナスの財産も含まれる
忘れがちなことですが、財産分与ではマイナスの財産についても考慮する必要があります。
ギャンブルや浪費などによる借金など個人的負債は、マイナスの特有財産にあたるため財産分与の対象ではありません。
しかし、たとえば婚姻中に借り入れをした住宅ローン、子どもの教育ローンなどはマイナスの共有財産にあたります。
では、プラスとマイナスの共有財産がある場合を例にとりましょう。
- プラスの財産の合計…1,000万円
- マイナスの財産の合計…500万円
例の場合、以下のようにプラスの財産からマイナスの財産を引いて1/2にした金額(250万円)が各々の受取額となります。
(1000万円-500万円)÷2=250万円
このように、プラスの財産だけでなくマイナスの財産についても抜け漏れなく分与することになるのです。
協議離婚時の財産分与の要注意
調停などでは話し合いの争点になることが多いのですが、財産分与といっても3つの種類があり、協議離婚の場合は、明確な区別がされず、慰謝料と財産分与の境が曖昧になり、双方に認識の違いが出てくる恐れがありますので注意しましょう。
そこで、財産分与の内容を離婚協議書に残しておくのも大切です。離婚協議書とは、財産分与や子どもの養育費、慰謝料など決定事項について記した元夫婦間の契約書です。協議離婚において財産分与の内容を決めた場合、離婚協議書にも決定事項を書き残しておけば証拠となります。口約束だけでは、後にトラブルを招くリスクがあることを覚えておきましょう。
後から慰謝料を請求しようと思っても、慰謝料的財産分与をしたのだと言われてしまえば、トラブルになることは間違いありません。
協議離婚では、このような水掛け論的なトラブルが非常に多いため、可能な限り専門家に介入してもらうことをおすすめします。
もっとも重要なのはお金があるかどうか
上記のように、慰謝料と財産分与はまったく別であり、請求は個別にすることが可能であることをご説明しました。
しかし、もっとも重要なのは、そもそも清算すべきお金、支払われるべきお金があるかどうかです。
これが一番の問題になってきます。
財産分与といっても、夫婦にほとんど財産がなければ財産分与などしようがありませんし、慰謝料請求にしても相手に支払えるだけの資金力がなければ回収のしようがありません。
なんとしても回収しようと裁判を提起し、判決を取ったとしても、差し押さえるだけの財産を相手が保有していなければ、なんの意味もなくなってしまうのです。
よって、財産分与・慰謝料の問題でどこまでの話し合いをするか、または、争うことにするかについては、お金の有無を見極める必要があるでしょう。
財産分与を請求できる「期限」が存在する
最後に挙げる注意点として、財産分与を請求できる期限が存在していることです。
民法768条の定めにより、協議離婚に基づく財産分与請求権は、離婚届が受理されてから2年が経過した時点で無効になります。
一方、元配偶者が任意で財産分与に応じた場合は、2年経過後でも請求可能です。
離婚問題を解決するために弁護士への相談を視野に入れてみよう
自分一人では、適切に離婚問題を解決できるか不安な場合は、弁護士への相談を視野に入れてみましょう。
弁護士に相談する場合には、弁護士保険がおすすめです。保険が弁護士費用を負担してくれるので助かります。
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今回の記事を参考にして、上手に弁護士保険を利用しましょう。
記事を振り返ってのQ&A
A:気持ちはわかりますが、有責性と財産分与は別問題になります。ただし慰謝料を請求することは可能です。
Q:財産分与の種類は?
A:3つあります。
- 清算的財産分与…公平に財産を分配する
- 扶養的財産分与…生活費を稼ぐ手段を持たない相手の事情を考慮して、財産分与をする
- 慰謝料的財産分与…慰謝料分もまとめたうえで財産分与をする
Q:財産分与の対象とは?
共有財産と特有財産です。
それぞれの財産には、プラスの財産とマイナスの財産が含まれます。
Q:財産分与における注意点は?
A:協議離婚の場合、離婚協議書にも財産分与の決定事項を書き残しておきましょう。後のトラブル予防になります。
また、財産分与請求権が有効なのは離婚届受理後から2年間であることも覚えておきましょう。